左遷提督は今日も元気です   作:僻地勤務の兵士

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第50話 疑心

クライド海軍基地へと満身創痍の状態で帰ってきたトラック空母打撃群は、大破状態のピーターとトリブツがすぐさま担架に乗せられ、それ以外の者は自力でドックへと向かった

 

「詳しく話を聞きたいのだが」

 

そう声をかけられ、無傷のキティは元帥と共に姿を消し、岸壁には軽傷のレイだけが残った

どれくらい待っただろうか

海面に白髪の髪をした少女が姿を表した

 

「モスクワ...」

 

レイは握り拳を作り、上陸してきたモスクワへと殴りかかった

 

「Hey!!cut it out!!」

 

近くを通りかかった兵士がレイを後ろから羽交い締めにする

 

「離せ!!モスクワ!なんでEMP攻撃を行った!こっちの損害は考えなかったのか!!」

 

羽交い締めにされた状態でもがくレイを冷静に見つめながら、モスクワが口を開いた

 

「やってなければ私が沈んでいた...それにあなた達の被害も拡大していた。安心して、敵も同様の被害を負って撤退したから」

 

「それ本気で言ってるのか?...お前は大気圏外に向けてとはいえ核を躊躇いもなく撃ったのか!!」

 

「敵は深海棲艦...核を使ってもどうということはないと思うけど?」

 

「Stop it! you two!」

 

互いに熱を帯びる言い合いに、駆けつけた別の兵士が怒鳴る

 

「何があったのかは知らないが、大勢の避難民が見てる。喧嘩はやめろ!」

 

その声にレイも暴れるのをやめ、開放される

そしてモスクワを殺意の篭った目で睨むと、踵を返してドックへと向かっていった

 

 

「核を使ったのか!?いや、そもそも日本は核の製作に成功したのか!?」

 

事の顛末を知ったイギリス側は仰天し頭を抱えていた

キティとしては、核を使うことは喜ばしい事ではないと思っていたし、手段として保持はするが使わないのが1番だと考えていた

しかし、この反応を見ると昔の人は核に対する認識が甘いなぁと感じる

しかもこの世界では日本に原爆も投下されていない

だから誰も核の恐ろしさを知らないのだから、当然と言えば当然の反応ではある

キティは首を横に振り、言葉を続けた

 

「今回の件ですが、モスクワの独断専行により私たちは通信的、戦術的優位性を失いました。こん作戦行動中に限っては何があっても核はもう使用しないのでご了承ください」

 

そう告げると、一発逆転を狙っていたのかイギリス側は落胆した様子を見せた

 

 

「ムカつくぜモスクワのヤツ」

 

遅れて入渠してきたレイが呟くと、隣のロイが声をかけてきた

 

「核を使ったことなんて言ってたの?」

 

「深海棲艦に対して使って何か問題あるかって言ってやがった…あれは危ないぞ」

 

頭を洗っていたロイは片目を開けてレイを見る

 

「監視が必要ね」

 

「あぁ…あいつが暴走した時に備えてな…いざとなれば沈めてでも止めるさ」

 

 

「はぁ…やっと開放された…」

 

キティは夜のクライド基地を歩き、お腹を押さえる

 

「お腹空いた…けど、もう食堂開いてないよなぁ」

 

腕時計を見れば、時刻はとっくに22時を回っていた

艤装の回線系統の復旧のために2、3日はかかると妖精さんに言われ、私たちは暫く出撃はなかった

もう最悪、外に食べに行こうか

そう考えながら泊まっている庁舎前へ戻ってくると、入口でレイとロイの2人が待っていた

 

「こんな時間にどうしたの?」

 

キティは疑問を口にすると、ロイが

 

「外出許可を取ってきた。3人で話がしたい」

 

そう言われたキティはご飯を食べるついでだと考え承諾

3人は夜の街に繰り出した

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