頭上に聞き慣れない轟音を響かせ、3つの機影が通過していく
アークロイヤルは手でひさしを作り、その編隊を見上げていた
「早いな」
隣に居るネルソンが、そう口にする
「あぁ…だが、今の主力は私たちだ」
アークロイヤルはそう宣言し、目の前に広がるドーバー海峡を睨み付けた
「うーん…やっぱり泊地に戻らないと完全な修復は不可能かぁ」
艤装を装備し航行するピーターは、自身のレーダーの不調が完全には直っていないことに不満を漏らす
「しょうがないよ。僕の子たちも機銃しか今は使えないし」
「こういう時に真空管の電探が羨ましく感じる…」
「帰ったら対EMP防御を徹底するよう同志に頼むしかあるまい」
と、普段なら絶対に有り得ない至近距離で航行する皆が口々に返してくる
やいのやいのと騒ぐ中、普段なら騒がしいレイとロイが大人しく後方に下がっていた
その様子に気づいたピーターが少し速度を落とし2人に並ぶ
「2人ともどうしたの?元気ないね?」
「…ん?あぁ…ちょっと考え事をな」
一拍遅れて返事を返してきたレイに、ピーターは首を傾げた
「いつも作戦行動中は集中してるのに。何か気になることでも?」
「艤装の不具合の件でな」
「…そう。皆似たような状況だし、互いに補お!」
ピーターはそう返し、再び前に戻って行った
レイは胸の前に手を置いて、ほっとした
ピーターが返してくるまでの間に内心ではドキッとした
流石は総旗艦を任されるだけはある
観察眼が桁違いで、どんな隠し事も見抜かれる気さえしていた
『すかいあい よりかいいきの ぜんかんむすへ いっぽうそうしん』
上空のホークアイからの通信に全員が耳を傾ける
『てきかんたいを ほそく。もくひょう ほうい0-2-7、きょり 30まいる』
その報告を聞きた英艦隊旗艦のネルソンが声を張り上げた
「艦隊、両舷前進強速!一気に接近し敵を叩くぞ!」
艦隊が出港したのと同時刻、夜明け前のグラスゴー南縁
空は重く、低い雲が地平を押し潰している
「じこく0430。ぜんたい、さいしゅうかくにん」
前線指揮車両の中で、妖精さんがヘッドセットを押さえた
『だいいち せんしゃちゅうたい じゅんびよし』
『だいに ちゅうたい、ねっせんそうちに のいずあり、しゃげきは かのう』
『だいさん ちゅうたい、みぎがわりたい いちりょう けいびそんしょう きどうに ししょうなし』
低く唸るガスタービン音が、薄闇の中に重なっていく
「へりぶたい たいきこうど 200。AH-1、ぶそうかくにん」
『へるふぁいあ6、ろけっとだん まんさん。いつでもいける』
『UH-1、とうじょうはん とうじょうかんりょう』
各部からの報告を確認し、指揮妖精さんは外を見た
遠く、黒い地平線
そこから南は、すべて敵占領地
「……いよいよだ」
補佐の妖精さんが小さく呟く
「ぜんぶたいへ。ぜんしんけいろは あるふぁ、とっぱごは こうそくじゅうしん しんげき」
指揮妖精さんが睨む地図上の赤い占領区域が、まるで腐食のように広がっている
「ほきゅうは こうぞくしゃれつのみ。ちじょう たんどく さくせん」
一瞬の沈黙
簡易構築された防衛陣地
英軍残存部隊がバリケードを開き、道が出来上がる
妖精さんが深呼吸を一つ
「ぜんしゃ、ぜんしんじゅんび」
指揮車の外ではMー1エイブラムス30両が狩りを待つ獣のように、低い唸り声を発している
「せってききょり 2000いないで しゃげきかいし」
AHー1とUHー1のエンジン回転数が上がり出す
「じこく 0500。げんじこくをもって おぺれーしょん のーざんはんまーを かいしする」
闇の向こうに、低く光る複数の赤い点
深海棲艦の前哨だ
「ぜんしゃ、ぜんしん!」
ガスタービンが一斉に唸りを上げる
履帯が地面を掴み、重戦車群が動き出す
英国南部奪還作戦――オペレーション ノーザンハンマー
その第一歩が踏み出された