左遷提督は今日も元気です   作:僻地勤務の兵士

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第7話 波乱の幕開け

「ひーまーだーよー...」

 

事務室で机に突っ伏するピーター

その姿からはトラック泊地の旗艦を務めているとは到底思えない

 

「それより溜まってる報告書を片付けないと。提督が帰ってきたら怒られますよ?」

 

横でパソコンを打ち込むウォルトが小言を言う

ピーターは頬を膨らませるが、ふと疑問を口にする

 

「提督かぁ...そういえば提督ってなんでこんな所に飛ばされたのかな?」

 

ウォルトは手を止めず、目線だけをピーターに向ける

 

「本人が話さない事を詮索するのはどうかと思うけど?」

 

実際、提督は元々大本営に居たがここに配属されたとしか言っていない

しかし、この泊地の現状を見れば左遷だと誰でも分かる

 

「提督って優秀なのにね」

 

「それには同意します」

 

 

そんな話がトラック泊地で行われているとは知らず、桐生は連絡もなくやって来た2式大艇に詰め込まれ、日本へ戻って来ていた

そして目の前には見慣れた建物

日本国海軍大本営

桐生の元職場であり、今では苦い思い出の場所でもある

営門で身分証を見せ、敷地内へ入ると呼び出した人物の元へ一直線に向かう

 

「桐生遼司です。ただいま到着しました」

 

扉をノックしてから名乗ると、中から低く貫禄のある声が聞こえる

 

「入っていいぞ」

 

「失礼します」

 

桐生は意を決して扉を開け、室内へと踏み入る

視線を正面に向ければ、そこには海軍少将 大塚 正忠《おおつか まさただ》が執務机を挟んで座り、その傍らには彼の現場時代からの右腕である駆逐艦 電が立っていた

 

「桐生遼司、命令によりトラック泊地より参りました」

 

そう挨拶をすると大塚は顔をしかめる

 

「俺とお前の間柄でそんな堅苦しい挨拶をするんじゃねぇよ。ここには俺と電しか居ねぇんだからよ」

 

「ではお言葉に甘えて」

 

桐生は堅苦しい空気を霧散させると、歩み寄ってきた大塚と握手を交わす

 

「トラック泊地に飛ばされたと聞いた時はどうなるかと思ったが...元気そうだな」

 

「お陰様で...着任当初は散々でしたが」

 

互いの顔に笑みがこぼれる

 

「立ち話もなんだ。そこに座れ」

 

桐生は大塚に促され、応接用のソファーに腰掛けた

 

「どうぞなのです」

 

そのタイミングで電がお茶を持ってきてくれる

 

「ありがとうございます。頂きます」

 

1口飲むと香ばしい緑茶の香りと苦味が口内に広がり、日本に帰ってきたことを改めて実感した

しかし、そんな余韻には長く浸ってはいられなかった

 

「さっそく本題に入りたいんだが...お前、妙な艦娘を指揮しているらしいな?」

 

やはりその話か

予想していたとはいえ、こんなにも早く情報が筒抜けになるとは思っていなかった

 

「...えぇまぁ...アメリカ海軍の艦娘2名と日本の艦娘2名を建造しました」

 

「近藤から聞いた話では、既存の艦娘とは姿が違うというが?」

 

近藤中佐め

余計なことを中央へ報告してくれた

苦虫を噛み潰したような顔をしていたのだろう、大塚がフォローを入れる

 

「近藤は俺にしか話していない。情報漏洩の心配はしなくていい」

 

その言葉を聞いて安心した

俺は大塚に現状のトラック泊地の話をした

 

「なるほど...つまりは完全に未知の艦娘ってことだな」

 

大塚は背もたれにもたれ掛かり、天井を仰ぎ見る

そして電に問いかけた

 

「電はこの件どう思う?」

 

意見を求められた電は暫し考えた後に口を開いた

 

「やはり情報統制しかないと思うのです。幸い、その艦娘...艦娘Xと呼称しましょうか。艦娘Xについて知っているのは、私たちを含めて近藤中佐だけなのです。今、公にしてしまうと艦娘兵器派の暴走、妨害を誘発するだけになると思います」

 

電の意見を聞いた大塚は

 

「分かった。その案を採用しよう...という訳だ。桐生、この件は俺が預かる。許可あるまで口外を禁止する。それと任務については俺の方から手配しておくからお嬢ちゃん達にもよろしく伝えといてくれ」

 

「了解しました」

 

「よし。なら帰っていいぞ...お前はあまりここに長居しない方がいい」

 

大塚少将はそう言うと立ち上がり、正面玄関まで見送ってくれた

俺は帰る前に皆にお土産を買おうと1人繁華街へ向かった

 

 

桐生が大本営で大塚と話している頃、トラック泊地工廠では妖精さんたちが勝手に建造と開発を行っていた

 

「ていとくさんから、しげんがかくほできたらすきにけんぞう、かいはつさせてやるといわれているからおおばんぶるまい〜」

 

おおすみ が知ったら怒るのが必須な勢いで資源を使う妖精さんたち

そして新たな装備が開発された

その内訳は

Fー15戦闘機×8機

Bー2爆撃機×5機

Eー2D アドバンスド・ホークアイ×2機

MIMー104 パトリオット(PAC3)×8基

AN/FPSー117 早期警戒レーダー×1基

それに加えて、建造も完了する

 

「USS kitty Hawk、任務に復帰だよ!トムキャットもホーネットも準備万端!空は僕のホームグラウンド...って誰もいないじゃないか!? 」

 

【挿絵表示】

 

桐生は帰還してから、資源の減り具合とキティホーク、装備の数々に泡を吹いて倒れウォルトに看護されたのは、また別のお話

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