1/32の峠 ―Drift & Dash― 作:Kataparuto
アストロレンジャーズに勝利して数週間後
途中オーストラリア代表のARブーメランズ戦も制し、短い休息期間に入っていた。
といっても、手を止めることなく、この日もビクトリーズは土屋研究所に集まり、コースにはそれぞれのマシンが走っていた。
「みんな、差し入れだ、好きに飲んでくれ」
藤原拓海は昼過ぎになって顔を出していた。
手には1ケース丸ごとのスポーツドリンクとお菓子。
「コーチ!!サンキュー!走りっぱなしで喉乾いてたんだ!」
「ありがとうございます!」
「あぁ、皆に配ってくれるか?」
星馬兄弟に返事をしながら拓海はコースを見る。
自分がいない間に走らせているハチロクセイバー、今はリョウとJを相手取ってそのラインを見せつけていた。
「くそっ、直線なら追いつけるんだが、コーナーの入り口でどうしても離される」
「なんというか、ここから曲がり始めるって思った場所より奥で曲がっていくから速く見えるのかな?」
「わからん、だが、ハチロクセイバーに追いつけるようになれば世界戦でも十分に戦えるようになるはずだ、やるぞ、J」
「うん、とりあえずタッグフォーメーションを試そう」
すでにビクトリーズは拓海の指示がない状態のハチロクセイバーにコーナー数個で置いていかれるようなことはなくなっていた。
正直なところ実際に自分で走っていないとはいえあのハチロクを再現した走りに数か月で追いすがれるようになっているというのは驚異的なことだと拓海は思う。
とはいえ、拓海自身、実を言うと今のハチロクセイバーに満足しているわけではない。
前のハチロクは下り専門での公道の峠道を極めるという目的からあのスペックと車体がベストだと思っていたし、プライドもあったからこそ最後までハチロクだった。
だが、ハチロクセイバーはボディ設計は単純な型落ち状態。モーターなどの内装品もグランプリマシン作成のための試作品などが使われており、今のビクトリーズのマシンたちに比べて性能が低い、なので今発揮できている走りも及第点ではあるが、まだ上があると確信している。
とはいえ、このハチロクセイバーが試合に出るわけではないのだから強化しても仕方ないと、土屋博士と相談し一種の封印としてこのスペックのままにしている。
若干距離を詰められつつあったハチロクセイバーを見て思わず拓海はコースに入る時に装着していたインカムのスイッチを入れる。
「行くぞ、ハチロク」
その後は圧倒的だった、直線なら追いつけると言っていたリョウのトライダガーを、コーナー脱出速度を拓海の指示で数段向上したハチロクセイバーが追いつかせず、タッグフォーメーションでプレスをかけてきた二人をわずかな進路変更でかわし、あざ笑うかのように大げさなドリフトでヘアピンを駆け抜けていく。
途中から見ていた土屋博士に、大人気ない、とたしなめられた。
拓海自身は反省することになったが、ビクトリーズの面々からは改めて尊敬の目を向けられることになる。
そして区切りの良いところで拓海はビクトリーズの全員を集めた。
「みんな良い話を持ってきた。オレの知り合い、っていうか尊敬するドライバーの一人なんだけど、高橋啓介って人が話を付けてくれて、サーキットを見学できることになった」
「サーキット!?F1!?」
目を輝かせる豪に拓海は若干申し訳ない表情を作る。
「いや、さすがにそれは無理だ……、だけどドライバーとしては一流、峠の走りではトップクラス、WGPみたいな色んなコースで走るならすごく参考になる人だと思う」
「それって、コーチと一緒に走ってた……?」
「そうだ、オレが正直味方で良かったって思ったぐらいすごい人だよ」
かつて峠を走り抜けた黄色のFDの姿を思い出しながら拓海は言う。
鳥肌が立つほどの強烈な走りを思い出した後拓海は気を取り直してビクトリーズの面々に向き直る。
「それで、今日の午後っていうかこの後に、アポは取ってるから、行きたい奴は?」
「はいはいはいはい!!俺行きたい!!」
「僕も!!本物のサーキットが見学できるなんて夢みたいだ!」
「俺も行ってみたいな……!」
手を挙げたのは豪と烈とリョウの三人だった。
「ボクも行きたいところだけど、まだエヴォリューションの調整をしないといけないから……」
「わてもでゲス。この間のブーメランズ戦で頑張ってくれたスピンコブラもオーバーホールしないと……。とりあえず何か参考になりそうなものはビデオで撮ってきてほしいでゲス」
「そうか……、じゃあ土屋博士、博士は2人のマシンメンテを、オレは三人を引率してきます」
「分かった。……三人とも折角の機会だ、しっかり見てくるんだぞ。あぁあと、道中の藤原くんの運転にも注目してみるといい、勉強になるはずだ」
そうして、拓海、豪、烈、リョウの四人は富士の子サーキットへと向かうことになった。
使う車はインプレッサ、藤原家の唯一稼働している車である。
富士の子サーキットは富士山近くにあるサーキット場で、国内有数の規模を誇る。カート用コースも併設されており練習から本格的なレースとその需要を満たしている。
その道中のSAにて、昼食を兼ねた休憩を一同は取っていた。
「コーチ、一つ良いですか?」
「ん?なんだ?」
「今日初めてコーチが運転する車に乗ったんですけど、コーチの運転は本当に上手いですね」
「おべっか使う小学生はかわいくないぞ……?」
「いや、俺もコーチの運転は上手いと思う。加減速に無駄が無い、エンジンブレーキも上手く使って、先を読んだ走り方をしているように思える」
「たしかになー、父ちゃんの運転と比べたら雲泥の差だよ。父ちゃんなんてゆっくりとろとろ走るもんな」
そう子供たちに言われて拓海は昔似たようなことを言われたことを思い出す。
クルマをいたわる走り、余計な力を入れない走りと言うのは確かに自然に身に付いた気がする。
改めて思えば練習したことではないのだが、豆腐を傷めないように走るというのは無駄な加減速をしないということであり、荷重の移動も穏やかでスムーズ。
だからこうした形に出るのかと改めて得心する。
しかし拓海は豪の言葉に親のやさしさがあることを注意した。
「豪、ゆっくり走ってるのはお前らを乗せてるからだと思うぞ。カワイイ自分の子供がのってるのに危ない運転はできないだろ?」
「……それもそっか!」
「ってことはコーチは今の走り方で十分安全だって考えてるってことですか?」
「揚げ足を取るなよ……。まぁ三人も預かってるんだ、いつもより7割増しで周りに気を付けて運転してるから結構気疲れしてるかな……。まぁでも、いい大人としての負うべき責任だから気にしないでくれ」
ここまで言って、テーブルに置いていた呼び出し機が音を立てる。
「よし、じゃあさっさと飯食っていくぞ。早くついて、めいっぱい見学させてもらおう」
こうして昼食を終えた一行は富士の子サーキットへと到着した。
サーキットでは練習走行をしている車のエンジン音やスキール音が響き、1チームしか動いてないにもかかわらず賑やかな様子だった。
到着した一行を出迎えたのは高橋啓介だった。
「おー、藤原、時間より早くきたな。お前の事だから時間一杯ギリギリかと思ってたぜ」
「いつの話してるんっすか……。っと、本日お世話になります、TRFビクトリーズです、よろしくお願いします」
軽いハイタッチをかわした二人だったが、拓海が姿勢を正して礼をする。
それに習ってビクトリーズの面々も礼をした。
「おう、よろしくな」
啓介も軽く手を上げて答え歩き出す。
「しっかし、藤原が指導者とか世も末だな。ビクトリーズの……えっとたしか青いのが豪、赤いのが烈、背が高いのがリョウだったか、お前らこいつの天然ボケ発言に苦労してないか?」
「天然ボケ?」
啓介のからかいに烈が首をかしげる。
「藤原は根っからのスーパー天然ボケ感覚派ドライバーだ。行けると思ったら行けるとか感覚で話しやがるからわかんねーんだよ」
その言葉にビクトリーズは指導の内容を思い出す。
たしかに、基本的には理論整然とした指導が行われるのだが、走りに関してはフィーリングで話している所も多々あるように思える。
ただ、実際に走って見せてくれ、すぐに腑に落ちるので苦労したということはないような気がした。
「ま、勝ってるってことは指導自体は上手くやってるみてーだな。で、本題だけど、お前らを招待した理由なんだけど、お前らはミニ四駆が走る姿は見ているが、自分がその視点に立ったことはないはずだ」
立ち止まった啓介の目の前には黄色のFD。
峠で走っていた頃よりも戦闘力が上げるための改造やチューニングが施されているそれがいた。
「もっと早くなりたいなら、車の挙動から発生する各Gのかかり方、荷重移動を自分で体験する、そうすることで自分のマシンの力の使い方が分かるようになるはずだ。ガキ乗せて公道でやるわけにはいかねーからな、今回は特別にサーキットで体験させてやる」
そう、今回の招待の目的はこれだ。
ビクトリーズの面々は想像力豊かだ、走るマシンを上から見るだけで様々なことを学び取る。だからこそハチロクセイバーに追いすがれるのだ。
だが、そこから一歩、いや数歩先の領域へ入るためには、車体にかかる力を学ばなければならない。
ここまでいったら滑る、ここまでなら踏み込んでいい。逆にわざと滑らせたいならこの状態に。今彼らはなんとなくそれは学べている、だが、あくまで想像の結果でしかない。
だが、自分自身がそれを体験すれば経験の裏打ちが出来るようになるわけだ。
こうして豪、烈、リョウの三人は一人ずつFDのナビシートに座り、高橋啓介のタイムアタックを体験することになった。
四点式ベルトを確認して、ヘルメットの顎紐を閉める。
車のこともあるので本気で攻め込むようなことはしないが、わざとGが発生しやすい挙動で車を振り回している。
ロングストレートからギリギリでのブレーキング、余力を残したコーナーからアクセル全開での脱出。ヘアピンではドリフトも織り交ぜて走る。
ホームストレートを通り過ぎるたびに、ナビシートに乗る小学生の絶叫が尾を引いて最初のコーナーへ消えていく。
「啓介さん……楽しくなってるな……」
こうして一人ずつ啓介の走りを体験してもらった。
下りるたびにそれぞれふらふらの状態で車から降りてくるが、倒れ込むようなことはなかった。
「ひえー……ジェットコースターよりすげーや……」
「でも……言ってることは分かったかもしれない……。コーナーだって単純に横にGがかかるだけじゃなく、ブレーキやアクセルが交われば負担のかかるタイヤも変わってくる……」
「……ロングレースの時にタイヤマネジメントに差が出るなこれは……」
各々が感じ取ったことを意見交換する中、啓介は三人を見やる。
「根性あんじゃねーか、あんな振り回したら大の大人でもゲロるやついるのに」
「あいつらはこれぐらいじゃ大丈夫ですよ」
「みてーだな。そいじゃ体験したなら次は実戦だ。マシンは持ってきてんだろ?」
「そりゃまぁ……って、ここで?」
「カート用のミニコースがあるからそっちでな。タイヤの耐久力ってどんなもんだ?」
「そうですね……、グランプリ仕様の新品のソフトタイヤでこの長さなら、3周でピーク、あとは8周前後でバーストですかね」
「じゃあ目標は10周以上だな、藤原お前のマシンも出せ、実戦じゃお前が参考値になる。タイムはあいつらの平均ラップタイム相当、少しハイペース目に設定してくれ」
「わかりました。よし、みんな、小休止したら実戦だ、ソフトタイヤで耐久走行を行う。今の啓介さんの走りから荷重移動でタイヤの負担をずらせるのが分かったと思う。マシンとタイヤをいたわる走りをするんだ。ただし、単純に遅く走ってもダメ、俺が指示するタイムは常に上回る様に走ること、良いな?」
その後、耐久レースが始まる。
ルールは簡単、タイヤ一つでどこまで走れるかだ。
無論拓海が一周走って三人の実力的に攻め込まないといけないタイムを割り出し、そのタイムより速い状態を維持していくという物だ。
これはマシンとタイヤをいたわる走りを行うことで、タイヤを長く活かせば相手より長い距離走れる、下手すれば二回ピットに入る所を一回で済むかもしれない。
そうでなくてもピークタイムを長く取れればタイムも良くなるだろう。
こうして始まった耐久レース、最初は拓海の見立て通り8周ほどで各マシンのタイヤがバースト。
しかし、並走していたハチロクセイバーは悠々とサーキットを走行していた。
「ガキども、お前らより前に走ってた藤原のマシンのタイヤにはまだ余裕はある。この差が分かるか?藤原は負担の強いコーナーでは荷重を上手く変えてタイヤの負担を上手く逃がしてるんだ。無理な加減速を避けて、常に一定の速度で走ることを意識しストレートでの負担も減らしている」
拓海の代わりに前に立ち高橋啓介が今回の走りを指摘していく。
「まずは豪とリョウ、ストレートに入ったらすぐ踏む癖、あれは直せ。どちらもスーパーダウンフォースマシンなんていう特性からダウンフォースを稼がないといけないのは藤原から聞いてるが、踏み過ぎりゃコーナーでツケを払うことになる。特に豪、サイクロンドリフトとか言う技で誤魔化せてるがあれだってそんなもん使わなくていいコーナーでも使うような走り方をすれば、必要以上にタイヤが早く摩耗しちまう。走り屋じゃストレートで速くて初心者、コーナーで速くて中級者って言葉があるんだ、今走ってるコースのストレートでどこまで出していいかは一目見て判断できるようになれ」
直線重視のマシンを操る2人への指摘をした後、烈の方を見る。
「烈、お前は割とましだ、コーナーも速いしストレートだってビビってない。マシンへの負担も抑えたうえでの攻め所ってのを良く抑えてる、藤原の走り方をよく見てるな。だが、真似るで終わるな、お前があのハチロクセイバーを抜き去りたいならお前の走りをしないといけない、これがどういう意味か分かるか?分かんねーなら今日のこの練習で掴んで見せろ」
具体的な指示と言うよりも基礎はできてるんだから後は自分で殻を破れという物らしい。
それはそれで分かりづらい指摘だが烈は真面目に考えているようだった。
そこまで言って全員を見回しながら啓介が続ける。
「良いか覚えとけ、速さってのは区間の寄せ集めじゃねぇ。全てが繋がってるんだ。それを分かれば本物だ」
「ちくしょー、大体平均点はクリアしてんじゃねーか、これ以上タイヤを持たせる走りをしたって遅いだけじゃねーかよ」
「いや、それは違うぞ豪。俺たちより前を走っていたコーチのハチロクセイバーを見ろ、一回も俺たちに抜かれずに前にいる。もしこれがもっと長いレースでピット可能だったら?俺たちがピット作業をしている間にもっと引き離される。そうなったら追い上げるためにまた無茶をしてタイヤの摩耗を速めてしまい……一生追いつけない」
タイヤ交換をしながら愚痴る豪にリョウが指摘した。
それに対して豪も想像してみたらしく青い顔をしている。
「リョウくんの言うとおりだ、コーチのハチロクセイバーは僕たちより速いのにタイヤに余裕がある、じゃあもし追い抜こうとペースを上げていたらこっちのタイヤが先にダレてしまって、あっさり負けてたろうね」
「くそっ、じゃあどうすればいいんだよ?」
「コーチたちが言うように、無駄な加速をしない、コーナーの進入を最適な速度で行う、これしかない。だが、たぶんだが俺や豪、烈の最終的なタイヤ耐久はそれぞれ異なるだろうな。まぁマシン特性がそれぞれ異なるんだ、それは当たり前だろう」
「……だぁ!!グダグダ考えてもわかんねぇ!要は消耗するより速けりゃいいんだろ!!行くぜ、マグナム!!」
「あ、おい!豪!」
烈の静止を聞かずに走り出すマグナムと豪、あきれた様子で見送る烈はリョウを見上げる。
「リョウくんはどう思う?」
「俺もマグナムに近いからな、ドリフトよりグリップ走法を重視している以上タイヤの摩耗を抑えるというのはかなり重要だ。とりあえずコーチのハチロクセイバーの真後ろについていろいろ試してみるつもりだ。烈はどうする?」
「僕はよくわからないからね、ただ、ラインをまねてるだけじゃ勝てないってのは事実だ、だからタイヤ消耗を抑えながらハチロクセイバーを抜いてみようと思う」
あのハチロクセイバーに挑む、フルレースではないため速さは抑えられているがこの条件での達成は相当に困難だろう。
だが、烈は脳裏に焼き付いて離れない拓海が指示を出している時のハチロクセイバーの鮮烈なドリフトを思い出し、あれを上回る走りをすると決意する。
こうして彼らの挑戦は太陽が山影にかかるまで続くこととなる。
「お前なぁ……俺の話を聞いてたか?」
「いいんだよ!俺の走りはかっとびなんだよ!他のマシンがピットインするまでにもっと前に居れば回数増やしたって一緒なんだよ!!」
「あほかお前は……。まぁ言わんとすることは分かるがよ……」
「あはは……、豪がすみません……。こいつ本当に直線バカで……」
最後の一周を終え、何一つ改善しなかった豪に高橋啓介があきれた顔を見せ、烈が代わりに謝る。
その烈に啓介は頭を掻きながら答えた。
「あー、良いんだよ。冷静に見ればタイヤの寿命は延びてるんだ全くの無駄ってわけじゃなかったし。藤原とは違う意味で感覚派だなこいつ……。それで、烈、どうだった?あのハチロクは抜けねーだろ?」
「はい……全然隙がありませんでした、抜けるビジョンが見えないんです」
「そういうもんだ、今日一日であのラインを見切ったら俺らのプロジェクトDの一年が無駄になっちまう。あとはリョウ、お前はだいぶ良くなったな、ハイグリップを活かしたキレのいいブレーキング、加速しすぎずアベレージスピードを上手く維持してて、いい感じだったぞ、烈と一緒で藤原のラインを真似するってのは悪い事じゃねー、ただしあれを抜くっていうモチベーションは維持し続けろよ?あこがれだけじゃ一生抜けねーからな」
啓介はビクトリーズの面々を見まわし頷く。
「課題としては及第点だな、俺からすればまだまだだけど。まぁ、俺と藤原の二人から教えられてるってことは実質お前らはプロジェクトD代表なんだ、無様な負け方は絶対すんなよ」
啓介の言葉に三人は頷く。すっかり指導者役を奪われた拓海はそれでも今日ここへ来たのは間違いではなかったと思っていた。
自分だけでは強い言葉での指導は難しい、ズバズバとした物言いでそれぞれに指導をしてくれた啓介には感謝していた。
その考えを察したのか啓介は拓海をにらむ。
「あと藤原、お前ももうちょっと厳しい事言えよな、こいつらはそんなやわじゃねーってのはお前が言ったんだ、しっかり言ってやれば十分に理解するだろ。あぁ、それと、そのマシン、ハチロクセイバーだっけ?その名前使うんなら本気で走れ、何に遠慮してるか知らねーけど、俺の見立てじゃ本調子じゃねーだろそれ、そろそろ今の走りに追いつかれ始めてるんだ、次の目標として本気の走りを見せてやれ」
啓介の言葉に拓海はケースに戻したハチロクセイバーに手をやる。
指導者としての立場から出しゃばったりするのは良くないことだと思っていた。
現に参考にしていたプロジェクトDの涼介の立ち位置はそうだった。
だが、拓海は思いなおす、確かにレースをするのはビクトリーズだが、練習であれば別にそうではない、指導者としての立場を考えるならより高い壁を用意させて挑戦させてやる方がよほどいいのではないかと。
そう考えた拓海の顔を見た啓介は軽く笑い声を張り上げた。
「うっし、お前ら腹減ったろ、飯奢ってやるよ!藤原、親に連絡してやれ!」
こういう面倒見の良さも見習わなくてはと拓海は思うのだった。
帰路の車内、疲れが出たのか爆睡する子供たちを乗せながら、拓海は次のレースを考えていた。
次はアストロレンジャーズ戦、アストロドームも整備完了し、相手からしたら完全なリベンジマッチになる。
ビクトリーズの面々も速くはなってきているが、次のレースは相当苦戦するだろう。
ただ見せていた走り、それに追いつきつつあるなら、その先を示すことがビクトリーズのためになるはずだ。
ハンドルに触れた指先に、まだわずかな熱が残っている。
――封印を解くときがくる。次は壁はそう簡単に追いつけないぞ。
オリジナル回でした
短期連載のつもりなので本来予定してませんでしたが、全体シナリオの都合で差し込むことになりました。
オリジナル回、啓介の活躍はどうでしたか?
-
良かった
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ダメ
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別のキャラも出して!!