GHOST IN THE SHELL Blue Archive 作:H2O(hojo)
※該当スレ削除済み
また「傀儡廻」の後なのは私が2045を見ていないからです。
その他解釈違いは許して下さい。
草薙素子
『傀儡廻』事件からしばらく経った頃、元公安9課の草薙素子は、キヴォトスという学園都市にその姿を見せていた。
素子は夢で血塗れの謎の少女に会った後、連邦生徒会の首席行政官七神リンなる人物から、自分が先生としてこの場所に招かれたと聞かされ、彼女からキヴォトスという場所についてレクチャーを受けていた。
連邦生徒会・レセプションルーム
(まさか私が教師をさせられることになるとはな。私をここに呼んだという連邦生徒会長とやらは一体何を考えてこんなことを…)
「先生、こちらです」
「ありがとう」
素子はリンに案内されて、連邦生徒会のレセプションルームへ来ていた。
「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んできて! …うん?隣の大人の方は?」
「首席行政官。お待ちしておりました」
「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています」
「あぁ…面倒な人たちに捕まってしまいましたね」
(学校の制服のようなものを着ているし、容姿もあどけなさが残る。女子高生…には見えるな。だが、耳が尖ってるのがいたり、羽が生えてたりするのがいるのはどういう事だ?)
レセプションルームに入った途端、素子とリンは3人の生徒に囲まれる。彼女たちの容姿を見て、素子は不思議な感覚を抱いていた。
「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん。こんな暇そ…大事な方々がここを訪ねて来た理由は、よく分かっています。今、学園都市に起きている混乱の責任を問うために…でしょう?」
「そこまで分かってるなら何とかしなさいよ!連邦生徒会なんでしょ!」
(おまけに全員銃を携帯している。それに「学園都市の混乱の責任を問う」か…一学生の言うセリフとは思えんな)
リンはわざわざ連邦生徒会までやって来た学園の生徒たちを、青筋を立てながら対処していた。素子はリンに詰め寄る女子高生が銃を持っていることと、おおよそ学生が発する言葉ではないことを抗議していることを疑問に感じていた。
「数千もの学園自治区が混乱に陥ってるのよ!この前なんか、うちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」
「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱出したという情報もありました」
「スケバンのような不良たちが、登校中のうちの生徒たちを襲う頻度も、最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています」
「戦車やヘリコプターなど、出所の分からない武器の不法流通も2000%以上増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます」
(コイツらまるで大臣や官僚だな。まさかとは思ったが、学生が学園の自治を行っているのか?まったく、ふざけた世界だ)
集まった4人はそれぞれ自分たちの学園で様々な問題が起き始めていることをリンに訴える。ここまでの話をリンの横で聞いていて、素子は彼女たち学生が、学園の自治運営を行っていることに気付いて呆れていた。
「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの?どうして何週間も姿を見せないの?今すぐ会わせて!」
「連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました」
「…え!?」 「・・・!?」 「やはりあの噂は…」
(私を呼んだ張本人は行方不明か…)
青髪のツインテールの少女が連邦生徒会長に会わせろと叫ぶ。だがリンは連邦生徒会長は行方不明になったと述べ、彼女に詰め寄っていたメンバーは一様に驚いていた。
「結論から言うと『サンクトゥムタワー』の最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態になります。認証を迂回できる方法を探していましたが…先ほどまで、そのような方法は見つかっていませんでした」
「それでは、今は方法があるということですか、首席行政官?」
「はい。この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです」
「!?」 「!」 「この方が?」
「・・・・・・」
リンはサンクトゥムタワーの行政権が失われたことにより今回の騒動が起きたことであると述べ、この数週間はその迂回方法を模索していたと答える。そしてリンは素子の方を向き、彼女こそがこの事態を解決する存在だと目の前の4人に紹介した。
「ちょっと待って。そういえばこの先生はいったいどなた?どうしてここにいるの?」
「キヴォトスではないところから来た方のようですが…先生だったのですね」
「はい。こちらの草薙素子先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です」
「行方不明になった連邦生徒会長が指名…?ますますこんがらがってきたじゃないの…」
リンが素子を先生として紹介したことにより、4人は一斉に彼女のほうを向く。リンは彼女のことを連邦生徒会長が指名した人物であると紹介し、彼女たちは興味津々に素子を見つめていた。
「この度連邦捜査部S.C.H.A.L.Eに先生として赴任した、草薙素子よ。よろしく」
「こ、こんにちは、先生。私はミレニアムサイエンススクールの…い、いや、挨拶なんて今はどうでもよくて…!」
「そのうるさい方は気にしなくていいです」
「あらそう?私は別に構わないけど」
「誰がうるさいって!?わ、私は早瀬ユウカ!覚えておいてください、先生!」
素子は目の前にいる4人に自分がこれから所属する組織と自分の名前を明かす。青髪のツインテールの少女は早瀬ユウカと名乗り、先生に覚えておいてくれと念を押していた。
「私はゲヘナ学園の風紀委員会所属の火宮チナツです。先生、よろしくお願いします」
「トリニティ総合学園、正義実現委員会副委員長の羽川ハスミです」
「同じく、トリニティ総合学園の自警団所属の守月スズミです。よろしくどうぞ」
「えぇ、よろしく」
ユウカを皮切りに、他の三人も先生に自己紹介を始める。ここに集まった4人は皆、学園でそれなりの地位にいる者たちのようである。
「それで? S.C.H.A.L.Eって一体何なのかしら?」
「シャーレは連邦生徒会長が先生のために立ち上げた、一種の超法規的機関です。連邦組織のため、キヴォトスに存在するすべての学園の生徒たちを、制限なく加入させることすらも可能で、各学園の自治区で、制約なしに戦闘活動を行うことも可能です」
「随分期待されているようね」
「なぜこれだけの権限を持つ機関を、連邦生徒会長が作ったのかは分かりませんが…」
素子は自分でシャーレ所属だと名乗ったものの、そのシャーレについて何か説明をされておらず、リンに説明を求める。説明を聞いた素子は、その強大な権限に自身が連邦生徒会長から多大な期待をされていることを感じていた。
「シャーレの部室はここから約30km離れた外郭地区にあるます。今はほとんど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に『とある物』を持ち込んでいます。先生を、そこにお連れしなければなりません」
「そのとある物とやらがあれば、サンクトゥムタワーの行政制御権が回復し、キヴォトス各地で起こっている混乱は収まるってことでいいのかしら?」
「はい」
(まったく…どういう理屈で学園都市を運用しているんだ?そこのところを『ネット』に繋いで調べたいところだが…今それを実行するにはリスクが高いな)
連邦生徒会長はここから30kmのシャーレ部室にある物を持ち込んだと言い、先生をそこに連れていくと明かす。素子はサンクトゥムタワーやとある物の存在など、キヴォトスの行政に関する事が気になって仕方なかったが、自身をネットに繋ぐことについては慎重であった。
「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど…」
『シャーレの部室? …ああ、外郭地区の?そこ、今大騒ぎだけど?』
「大騒ぎ…?」
『矯正局を脱出した停学中の生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ』
先生をシャーレの建物へと移動させるべく、リンは同じ連邦生徒会のモモカにヘリの手配を頼む。だがモモカはシャーレの近くは矯正局を脱出した生徒たちが騒ぎを起こしており、とても近寄れないと答えた。
『連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に、周りを焼け野原にしているみたいなの。巡航戦車までどっかから手に入れてきたみたいだよ?』
「ねぇ、一つ聞きたいんだけど?」
『何?って、アレが連邦生徒会長が呼んだ先生?私は由良木モモカ。よろしく~』
「ここじゃいつもこんな感じなわけ?」
『う~ん…まぁそうかな。少なくとも銃撃音を聞かずに一日を過ごすのは無理だね、アハハハハ!!』
不良たちがシャーレの建物で騒ぎを起こしていると聞いて、素子はモモカにキヴォトスではいつもこうなのかと尋ねる。するとモモカは笑いながら日常茶飯事だと答え、素子は顔を顰めた。
「貴女たちよくここまで生きてこれたわね。こんなんじゃ20まで生きれる人間の数も少ないでしょう?」
「そういえば先生にはまだ『ヘイロー』について説明していませんでしたね」
「ヘイロー?お前たちの頭についているソレか?」
「はい。我々はヘイローが無事な限り死ぬことはありません。身体に銃弾が当たっても大した傷にはならないのです。もちろん限度はありますが」
「つまり銃で撃たれても小突いた程度でしかないと言うことか。はぁ…ますますふざけてるわね」
銃撃戦が日常の世界に、素子は彼女たちの命の心配をする。だが、キヴォトスの生徒たちにはヘイローがあり、銃で撃たれた程度では傷付くことはないとリンに言われ、ため息をついていた。
『それで、どうやら連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしてるらしいの。まるでそこに何か大事なものでもあるみたいな動きだけど?まあでも、もうとっくにめちゃくちゃな場所なんだから、別に大した事な…あっ、先輩、お昼ご飯のデリバリーが来たから、また連絡するね!』
「・・・・・・」
「大した後輩だな、七神?」
「…だ、大丈夫です。…少々問題が発生しましたが、大したことではありません」
モモカは不良たちがシャーレの建物を占拠して何かを手に入れようとする動きがあると報告し、お昼のフードデリバリーが来たことを口実に通信を勝手に切ってしまった。
「・・・・・・」
「な、何?どうして私たちを見つめてるの?」
「ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです」
「…えっ?」
そしてリンはレセプションルームに来た4人の生徒たちの方を見つめる。いきなりこっちを見だした彼女にユウカは困惑していた。そしてリンは彼女たちのことを心強いと言って、悪い笑みを浮かべたため、ユウカをさらに困惑させた。
「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。行きましょう」
「どうやら、ある物とやらを確保しないと始まらないらしいわね」
「ちょ、ちょっと待って!?ど、どこに行くのよ!?」
D.U.外郭地区・シャーレの部室付近
「な、なに、これ!?」
「ここまでとはね…」
素子たちがシャーレの部室に移動しようとしていると、街中で不良たちが大暴れしていた。各所で銃声や爆発が聞こえ、流石の素子も困惑していた。
「なんで私たちが不良たちと戦わなきゃいけないの!?」
「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためには、あの部室の奪還が必要ですから…」
「それは聞いたけど…!私これでも、うちの学校では生徒会に所属してて、それなりの扱いなんだけど!何で私が…!」
ユウカは自分がわざわざ戦場に出て戦わなければならない事態に、不満を漏らしていた。
「いっ、痛っ!!痛いってば!!あいつら違法JHP弾を使ってるじゃない!?」
「伏せてください、ユウカ。それに、ホローポイント弾は違法指定されていません」
「うちの学校ではこれから違法になるの!傷跡が残るでしょ!」
「JHP弾を喰らって、『傷が残る』か…頑丈なのは間違いないようね」
そんなユウカに不良たちが撃ったホローポイント弾が命中する。だがユウカはそれを痛いで済ませ、彼女たちが自分たちとは違う存在であると素子に実感させるのには十分であった。
「今は先生が一緒なので、その点に気を付けましょう。先生を守ることが最優先。あの建物の奪還はその次です」
「ハスミさんの言う通りです。先生はキヴォトスではないところから来た方ですので…」
「あら、私は戦うつもりだけど?」
チナツとハスミは素子にはヘイローがないため、彼女を守るのが最優先であると、互いに作戦方針の確認を行う。だがしかし、当の本人は連邦生徒会が保有しているサブマシンガンを拝借し、戦うつもりであった。
「せ、先生は私たちと違って、弾丸一つでも生命の危機にさらされる可能性があるんですよ!?」
「そうです!!安全な場所にいてください!!」
「心配ありがとう。でも私のことは大丈夫よ。こう見えて私、強いの」
自分も戦うと言った素子に対し、チナツとユウカは必死に彼女が戦場に出ることを止めようとする。しかし彼女は生徒たちの制止も聞かず、戦場へと足を踏み入れた。
「ここからは私が指揮を執る。早瀬、羽川、火宮、守月は私の指示に従え」
「え、えぇっ?戦闘に参加するだけでなく、戦術指揮もされるんですか?指揮は…まぁ先生ですので…」
「分かりました。これより先生の指揮に従います」
「生徒が先生の言葉に従うのは自然なこと、ですね。よろしくお願いいたします」
「はい。よろしくどうぞ」
元公安9課の草薙素子、キヴォトスにて初の戦闘が始まった。
「敵は10人、所持している武器はサブマシンガンとガトリングか。手持ちの銃以外に何か武器等を携帯している者は?」
「私は閃光弾を数個携帯しています」
「私は自身にシールドを展開できる機器です」
「私は応急処置用の医薬品になります」
素子たちは敵に見つからないよう近づき、遮蔽物に身を隠しながら相手の様子を伺っていた。彼女は生徒たちに銃以外の武器があるか聞くと、スズミとユウカとチナツが各々自身の持つ武器などを取り出した。
「よし。ではまず守月は私の合図で閃光弾を投擲しろ。その隙に私と早瀬で敵を制圧する。羽川は後方で私と早瀬の援護。火宮は後方で状況を見つつ加勢しろ」
「「「「はい」」」」
「始めるぞ。各員位置につけ」
素子は4人にそれぞれの役割を与え、的確な指示を出していく。生徒たちも素直に彼女の言葉に耳を傾け、全員が配置についた。
「オラオラオラァ!!」
「死ね死ね死ねぇ!!ギャハハハハァ!!」
「今だ!!」
「「うぉ!?眩しっ!!」」
素子の合図でスズミは閃光弾を不良たちに投げつける。閃光弾は見事不良たちの前で炸裂し、彼女たちの視界を奪った。
「眼がぁぁぁ!!眼がぁぁぁ…ごはっ!!」
「誰だ、閃光弾なんか投げつけてきたのは…ぐへぇ!?」
「遅いわよ」
「せ、先生が早すぎるんですって…!!私は…戦闘が得意なわけじゃないんです…」
閃光弾が炸裂した瞬間、素子は不良たちの元へ走り出し、すぐさま彼女たちを無効化する。完全に出遅れたユウカは、彼女に追いつくのがやっとだった。
「す、すごい…これが連邦生徒会長が選んだシャーレの先生の力…!!」
「相手の隙をついた投擲指示…お見事でした」
「不良を無力化する動きも素晴らしかったです」
「先を急ぐぞ」
「「「「はい」」」」
生徒たちは素子の実力に驚いていた。彼女たちの賞賛にも、素子は眉一つ動かさず先へと進むのであった。
「もうシャーレの部室は目の前よ!」
「先生、首席行政官からご連絡です」
「そう。私に直接繋ぐよう言ってちょうだい。やり方はさっき教えたから」
「直接?承知しました」
シャーレの部室が目の前に辿り着いたところで、リンから連絡が入る。素子はチナツにリンに直接自分に繋ぐよう伝える。チナツはその意味が分からず戸惑っていた。
『先生、聞こえていますでしょうか?』
「えぇ、問題無いわ」
『今、この騒ぎを巻き起こした生徒の正体が判明しました。ワカモ。百鬼夜行連合学院で停学になった後、矯正局を脱獄した生徒です。似たような前科がいくつもある危険な人物なので、気を付けてください』
リンは素子から教えてもらった方法で通信を繋ぐと、彼女の電脳とアクセスされる。
「えっ!?何?どうなってるの?先生は通信機もスマホもないのに何で行政官の通信が聞こえてるわけ?」
「私の身体には義体化と電脳化を施してある」
「義体化?電脳化?」
「つまり、私の肉体は脳と脊椎の一部以外は人工物で、脳みそもマイクロマシンが注入されているサイボーグってわけ。まぁあなた達ほど頑丈なら義体化は必要ないでしょうけどね」
通信機器も無しにリンと通信している素子を見て、ユウカはどうやっているのかと疑問に感じていた。ユウカの疑問に対し、素子は義体化と電脳化について軽く説明した。
「義体化というのは何となく理解できるのですが…電脳化というのは一体どういう技術なのでしょうか?」
「電脳化は簡単に言えば脳とネットを直接接続する技術よ」
「つまり脳がパソコンやスマホみたいになるってこと…?想像つかないわ…」
「さて、無駄話は終わり。さっさとこの仕事を片付けるわよ」
チナツは素子の話を聞いて何とか義体化と電脳化について想像するが、電脳化については理解できなかったようである。そんな彼女に素子は電脳化についてもっとかみ砕いて説明するが、電脳化技術のないキヴォトスでは、想像もつかないようであった。
「騒動の中心人物を発見!対処します!」
「フフ、連邦生徒会の子犬たちが現れましたか。お可愛らしいこと」
「あれがワカモか。狐の面に狐耳…フッ『まさに』だな」
シャーレの部室を目前に迫ると、ハスミがワカモを発見する。素子はワカモを見て、その名前と容姿がそのまんまだと思うのであった。
「人員は5人。1人はヘイローがないようですね。私が相手をするまでもないでしょう。後は任せます」
「逃げられた!?追わないと!」
「いや、待て早瀬」
素子たちを見たワカモは、彼女たちのことを自分を楽しませるだけの相手ではないと判断し、その場から立ち去る。ユウカは彼女を追おうとするが、素子に制止された。
「この音は…」
「気を付けてください、巡航戦車です…!」
「クルセイダー1型…!私の学園の制式戦車と同じ型です」
「難敵だな」
ワカモが逃走した次の瞬間、彼女たちの前に巡航戦車が現れる。ハスミは目の前の戦車が自身の所属しているトリニティ総合学園の制式戦車であると特定した。
「先生、ここは私が」
「その銃で戦車の装甲を抜くのか?」
「はい。こちらの射程まで誘い込んでくれれば必ずや」
(羽川の銃は明らかにこの時代にそぐわない物だ。第一次大戦期の骨董品と言っても過言じゃない。だが先ほどの戦闘を見るに、明らかに想定される性能以上の威力だった…。この世界には何か、まだ私の知らないルールのようなものがあるのかもな)
「分かった。我々であれを引きつける」
「ありがとうございます」
巡航戦車を前にして、ハスミが戦車を倒す役を買って出る。素子は彼女の持つ銃がこの時代にそぐわないものであることが気になったが、先ほどの戦闘で性能以上の能力を持っていたことに着目し、彼女の言う事を信じることにした。
「私はあの上からアレを狙い撃つ。お前たちは地上から牽制しろ。羽川、狙撃のタイミングはお前に任せる」
「「「「はい」」」」
素子は4人に指示を出すと、後方の建物へ向かった。
「す、すごいジャンプ力…ツルギ委員長みたい」
「確かに…ああいったのはツルギでなければできませんね…」
「まるでヒナ委員長みたいです…」
「あんな動き、ネル先輩でしか見たこと無いわ…」
素子は建物の看板を足場にして、軽やかに屋上へと登っていく。その動きを見た4人は、それぞれ知り合いの顔を思い浮かべながら驚いていた。
『ぼさっとするな!戦車で身体を吹き飛ばされたいか!?』
「は、はい!!」
『まったく…頑丈さにゴザをかいているとそのうち痛い目を見るぞ』
「き、肝に命じます…」
素子の跳躍を呆然と見ていた4人は、彼女の声によって正気に戻る。その耐久力から生まれる油断を、素子は深刻に捉えていた。
『よし、今だ撃て』
「さぁ、こっちへいらっしゃい!!」
素子たちは戦車に銃弾を当て、照準をこちらに向ける。
「あと少し…」
「もうちょっと…」
「目標捕捉。撃ち抜くっ!」
(やはりな。どうやったのかは知らんが、あの銃であれほどの威力が出ることは普通は有り得ない。彼女たちだけが持つ、特殊な何かがあるということか…)
そして戦車がハスミの銃の射程距離に入ると、彼女は手持ちの銃に何か念のようなものを込めて撃ちだす。それを屋上から眺めていた素子は、彼女たちが使うことのできる謎の力を興味を抱いていた。
シャーレ・地上玄関
「着いた!!」
『「シャーレ」部室の奪還完了。私も、もうすぐ到着予定です。建物の地下で会いましょう』
「えぇ」
素子たちは無事シャーレの地上階を制圧完了した。素子はリンに促され、シャーレの地下へと向かった。
シャーレ・地下
「うーん…これが一体何なのか、まったく分かりませんね。これでは壊そうにも…」
「ソイツが七神が言っていた例のブツか?」
「あら?」
素子よりも先に地下を訪れていたワカモは、そこにあったタブレット端末を持って首を傾げていた。そんな彼女に素子は熱光学迷彩を使用して、背後に近寄っていた。
「誰だ!?」
「初めましてだな、狐坂ワカモ。私は連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの草薙素子だ」
「あ、ああ…」
ワカモは声の聞こえる方向に振り返ると、そこには熱光学迷彩を解いた素子が自前のハンドガンを構えて立っていた。彼女の顔を見た途端、ワカモは狼狽え始めた。
「お前の持っているソイツを渡せ。そして即刻ここから立ち去れ。今なら見逃してやる」
「し、し…失礼いたしましたー!!」
「・・・?」
素子がワカモに彼女が手にしているタブレット端末を渡すよう警告すると、彼女はすぐさまブツを置いて立ち去ってしまう。いきなりの展開に、流石の素子もあっけにとられていた。
「お待たせしました。…?何かありましたか?」
「いや、何でもない」
「…そうですか。ここに、連邦生徒会長の残した物が保管されています」
「これが七神の言っていた例のブツか?」
「はい。幸い、傷一つなく無事ですね」
ワカモが去った後、リンが遅れて地下の部屋へと到着する。素子は彼女にタブレット端末を見せ、それが彼女の言っていた例のブツであることを確認した。
「これは一体何だ?」
「これは、連邦生徒会長が先生のために残した物、『シッテムの箱』になります」
そしてリンはこのタブレット端末のことを、連邦生徒会長が残した『シッテムの箱』だと答える。
「普通のタブレットに見えますが、実は正体の分からない物です。製造会社も、OSも、システム構造も、動く仕組みのすべてが不明。連邦生徒会長は、このシッテムの箱は先生の物で、先生がこれでタワーの制御権を回復させられるはずだと言っていました」
「コイツは私専用の端末であり、ココの行政権を司るサンクトゥムタワーを起動するキーでもあるということか。何とも…信じられんな」
「私たちでは起動すらできなかった物ですが、先生ならこれを起動させられるのでしょうか、それとも…」
シッテムの箱は謎が多く、その謎を知っているはずの連邦生徒会長も今はいない。2人はシッテムの箱の曖昧な情報を聞きながら、ソレの性能を想像するのであった。
「まぁいいわ。私がコイツに直接繋いで構造解析する」
「大丈夫でしょうか…?危ないことになりませんか?」
「大丈夫よ。恐らくね」
「その理由は?」
「そう囁くのよ、私の『ゴースト』が」
結局素子は考えても仕方ないと思い、自分自身でシッテムの箱を構造解析することに決める。心配するリンを余所に、素子はいつも通りゴーストの囁きを信じることにした。
「承知しました。では、私はここまでです。ここから先は、全て先生にかかってます。邪魔にならないよう、離れています」
そう言ってリンはこの場から立ち去った。
素子は身代わり防壁を使用せず、直に自身の首元からコードを伸ばし、シッテムの箱にプラグを接続する。
…
Connecting To Create of Shittim..
システム接続パスワードをご入力ください。
「…我々は望む、七つの嘆きを。…我々は覚えている、ジェリコの古則を」
(何だ今の感覚は?聞いたことのない言葉のはずなのに、口からスラスラと出てくるなんて…)
シッテムの箱を起動してすぐ、素子はシステムにパスワードの入力を求められる。すると彼女は無意識にパスワードらしき言葉を口にし始める。これには当人も驚きを隠せずにいた。
……。
接続パスワード承認。
現在の接続者情報は草薙素子、確認できました。
シッテムの箱へようこそ、草薙素子先生。生態認証及び認証書生成のため、メインオペレートシステムA.R.O.N.Aに変換します。
シッテムの箱
パスワード入力画面から推移すると、そこには教室と青空が広がっており、1人の少女が机の上でうつ伏せで居眠りをしていた。
「くううぅぅ…Zzzz」
「コイツは…このシステムのAIか?」
「むにゃ、カステラにはぁ…いちごミルクより…バナナミルクのほうが…」
(この感じ…タチコマを思い出すな)
素子は少女に近づくと、彼女の様子を近くで眺める。無邪気に寝言を言う彼女を見て、素子は前職の部下のことを思い出していた。
「起きなさい」
「うにゃ…まだですよぉ…しっかり噛まないと…」
「ほら、起きるのよ」
「あぅん、でもぉ…」
素子は寝ている少女の身体を揺すり起こそうとする。だが少女の眠りは深く、なかなか起きそうにない。
「はぁ…幼児の介抱も先生の仕事か?まったく…」
「むにゃ…んもう…ありゃ?」
「よく眠れたかしら?随分と長い夢だったみたいね」
「ありゃ、ありゃりゃ…?え?あれ?あれれ?せ、先生!?」
素子はなかなか起きない少女に対し、ため息をつきながらも根気よく身体を揺すり続ける。ようやく目を覚ました少女は、勢いよく席をたち、素子の顔を見て顔を赤くし始めた。
「この空間に入ってきたっていうことは、ま、ま、まさか草薙素子先生…?!」
「そうよ。貴女がメインオペレートシステムA.R.O.N.A?」
「はい!!私はアロナ。この『シッテムの箱』に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!」
「そう。よろしくアロナ」
そして目の間の少女はようやく、素子が彼女の前にいることを理解する。少女はアロナと名乗り、このシッテムの箱のメインOSだと言った。
「やっと会うことができました!私はここで先生をずっと、ずーっと待っていました!」
「あら、寝てたように見えたけど?」
「あ、あうう…も、もちろんたまに居眠りしたこともあるけど…」
ずっと待っていたというアロナに対し、素子は寝ていたことを指摘する。彼女の指摘にアロナは気まずそうな顔をした。
「まだ身体のバージョンが低い状態でして、特に声帯周りの調整が必要なのですが…。これから先、頑張って色々な面で先生のことをサポートしていきますね!」
「えぇ」
「あ、そうだ!ではまず、形式的ではありますが、生体認証を行います♪」
アロナはまだ調整が必要と言いつつも、素子をサポートすると述べる。そして彼女は生体認証をすると言って、素子の元へ近付き始めた。
「さあ、この私の指に、先生の指を当ててください」
「これでいいかしら?」
「…はい!確認終わりました♪」
素子とアロナは互いの人差し指を合わせて、指紋認証を行った。
「そうだアロナ、今後私のことは『先生』ではなく『少佐』と呼びなさい」
「少佐…ですか?それは一体どうして…」
「お前は生徒たちとは違い私をサポートするAI、言わば私の部下のような存在だ。私が元いた場所では皆私のことをそう呼んだ。だからお前には特別にそう呼ぶことを許す」
「私にだけ…特別ですか!!分かりました少佐!!」
アロナとの認証が終わった後、素子は彼女に自分のことを『少佐』と呼ぶように命じる。アロナは自分だけ特別にその呼び名で呼ぶことを許され、喜ぶのであった。
「では私の部下としての最初の仕事だアロナ。サンクトゥムタワーの行政制御権を取り戻せ」
「承知いたしました。サンクトゥムタワーの問題は私が何とか解決できそうです」
「頼んだぞ」
「はい!分かりました。それでは、サンクトゥムタワーのアクセス権を修復します!少々お待ちください!」
素子はアロナにサンクトゥムタワーの行政制御権を取り戻すよう命じる。彼女の命令を聞いて、アロナはサンクトゥムタワーへ接続し始めた。
「サンクトゥムタワーのadmin権限を取得完了…。少佐。サンクトゥムタワーの制御権を無事に回収できました。今サンクトゥムタワーは、私アロナの統制下にあります」
「良くやった。思いの外早いじゃない」
「勿論です!!私は優秀な少佐のサポートAIですので!!」
「ではサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管しろ」
「分かりました。これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します!」
アロナがサンクトゥムタワーの制御権を取り戻すと、素子はその権限を連邦生徒会に移管させる。これによりキヴォトスの行政制御権は連邦生徒会長個人から連邦生徒会へと移管されることになった。
シャーレ1階・エントランス
「終わったわよ」
「はい。サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました。お疲れ様でした、先生。キヴォトスの混乱を防いでくれたことに、連邦生徒会を代表して深く感謝いたします」
1階で待機しているリンたちに、素子はサンクトゥムタワーの制御権を取り戻したことを報告する。リンは彼女の姿を確認すると、労いと感謝の言葉を述べた。
「お前たちも自分たちの学園に戻っていいぞ」
「あ、あの…一つお聞きしたいことがあるのですが…よろしいですか?」
「何だ?」
「先ほどの戦闘での指揮や戦闘技術…お見事でした。そこで気になったのですが、先生はキヴォトスにいらっしゃる前は何をしていたのですか?」
そして素子とともについてきた4人にも、彼女は解散を命じる。彼女たちは自分の学園に戻る前に、彼女が何者なのか気になり、その疑問を本人に投げかけた。
それに彼女は、
「内務省公安9課。通称『攻殻機動隊』よ」
そう答えた。
少佐は生徒を苗字で呼びます。生徒は少佐を先生と呼びます。少佐呼びはアロナと一部の生徒だけです。