GHOST IN THE SHELL Blue Archive   作:H2O(hojo)

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場面はミカのメモロビ。つまりミカの部屋です。2人が朝までの時間潰しにエデン条約編のことだったり、少佐の過去だったりを話します。
タイトルは皆さんお馴染みあのセリフ。

攻殻機動隊の新作は7月だそうですね。楽しみです。


世の中に不満があるなら…

深夜・ミカの部屋

 

「さて、せっかくだから朝まで問題児に構ってあげようかしらね」

 

ミカに半ば騙される形で部屋に連れ込まれた素子は、彼女の一緒にいたいという願いを聞き入れてあげることにした。

 

「うん。で、でもバレたら…」

 

「私を誰だと思ってるの?そんな足が付くような真似しないわよ」

 

「そうだった…。先生は姿を消せる魔法が使えるんだもんね?」

 

「熱光学迷彩のこと?別に魔法なんかじゃないわよ、あんなの」

 

ミカは寮にいる他の人たちにバレないか心配していた。だが素子は自分がそんなヘマをするつもりはないと言い、彼女を安心させた。

 

「実は先生に聞きたいことがあったんだ」

 

「何?」

 

ミカは素子に聞きたいことがあったと言って、彼女と二人きりの会話を始めた。

 

「私はとっても『悪い事』をした。だからあの時先生に叱られた」

 

「そうね」

 

 

 

 

 

数か月前 トリニティ・第6体育館

 

素子と補習授業部は、いきなり現れたガスマスクを付けたアリウス兵たちと交戦を続けていた。そして同時に、ミカがこの場に現れた。

 

「聖園ミカ。貴様一体何のつもりだ?」

 

「んー?聞きたい?先生にそう言われたら仕方ないなぁ」

 

「・・・・・・」

 

「そんなに怖い顔…しないでよ」

 

ミカが素子たちの前にトリニティの裏切り者として現れたとき、彼女はすぐに銃をミカに向けた。今の素子は、連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの草薙素子ではなく、公安9課の草薙素子の顔になっていた。

 

「私はエデン条約には反対なの。だからナギちゃんにエデン条約を結ばせないために、こうやってアリウスと手を組んだ」

 

「理由は?」

 

「それはね…ゲヘナが嫌いだからだよ。私は本当に、心から…心の底からゲヘナが嫌いなの」

 

ミカがアリウスと手を組んだのは、エデン条約を結ぼうとするナギサの思惑を阻止するためである。そして、彼女がそうした理由は、ゲヘナが嫌いだからという極めて個人的なものであった。

 

「それでエデン条約を取り消して、コイツらと一緒にゲヘナと戦争でもするつもりか?」

 

「う~ん。まぁ、それもいいかもね」

 

「お前、ふざけるなよ…!!」

 

ミカのゲヘナとも戦争を辞さない態度に、素子は顔に怒りを滲ませていた。そして素子はミカにこう言い放つ。

 

「世の中に不満があるなら自分を変えろ。それが嫌なら目と耳を閉じ、口を噤んで孤独に暮らせ。それも嫌なら…」

 

だが、その言葉を途中まで口にしたところで、シスターフッドの一団が到着。結局素子は最後までその言葉を口に出すことはなかった。

 

 

 

 

 

ミカの部屋

 

「でもあの時の先生は、何と言うかいつもの先生じゃないみたいだった」

 

「確かに、冷静さを欠いていたことは認めるわ。教師としては反省しなきゃいけないわね」

 

ミカはあの時のことを思い出し、素子が普段の様子とは違ったと指摘する。素子はそれを認め、冷静さを欠いていたと反省していた。

 

「そう言えばいつから私がアリウスと繋がってるっていつ分かったの?」

 

「実際にあの瞬間までアンタがアリウスと繋がってることは知らなかったわよ。でもそう囁いたのよ『私のゴースト』が」

 

「わーお」

 

ミカは素子がいつから自分がトリニティの真の裏切り者だと気づいていたのかを尋ねる。実際、素子はミカが自身の正体を明かすまでは知らなかったが、自身のゴーストが彼女には何かあると囁いていたのだ。

 

「私が内務省公安9課に所属していたことは知ってるわよね?」

 

「うん。みんな結構知ってるよ」

 

素子は前職の事を聞かれる機会が多いため、その度に公安9課について説明していた。そのせいか、彼女の前職が内務省公安9課、通称攻殻機動隊であることがすっかりキヴォトスに浸透していた。

 

「私は公安9課では『少佐』と呼ばれていた。少佐と言うのは軍の階級だ。私は公安9課に入る前は軍にいたんだ」

 

「軍に?」

 

「お前がやろうとしていたことを、実際にやった人間ということよ」

 

「・・・・・・」

 

だがその前に彼女が何をやっていたのかについては誰も知らない。ここで素子は初めて自分が自衛軍にいたことを明かし、実際に戦争に従軍したことを明かす。それを聞いたミカは、その場でうずくまってしまった。

 

「そっか…先生は本当に戦争をしたことがあるんだ」

 

「アンタたちと大して変わらない歳でね」

 

「どう…だった…?」

 

「戦争の話なんて子供に聞かせるものじゃないわ。言えることはただ一つ。『地獄』よ」

 

素子は内戦中のメキシコに15歳で派兵されている。ミカはその時のことについて恐る恐る聞くが、彼女は詳しいことは話さずただ地獄だとだけ答えた。

 

「そっか…だから先生はあんなに怒っていたんだね」

 

「そうよ」

 

素子の経歴を聞き、ミカはようやくあの時なぜ彼女があれほど怒っていたのかを理解した。

 

「けど、私もアリウスがあそこまでやるとは思ってなかったわ。私も所詮は子供のやることだと侮っていたのかもしれないわね」

 

「ごめんね。私がアリウスと手を組もうとしなければ、先生やみんながあんなことには…」

 

「別に私はアリウスに歩み寄ろうとしたことには怒ってないわ。むしろ評価してるくらい」

 

その後、エデン条約調印式にアリウスが巡航ミサイルを撃ち込む事態が勃発。ミカはそのことに対して素子に謝ろうとするが、それに関しては彼女は怒ってはいなかった。

 

「あの一発は中々堪えた…まさか足がすくむなんてね」

 

「先生にも怖いことってあるんだ」

 

巡航ミサイルの直撃を受けた時、素子は足がすくんでいたと回想する。ミカは彼女のそういう姿が想像できず驚いていた。

 

「6歳の時、私はミサイルテロによって生死を彷徨った。結局この身体になって何とか生き延びたけど…」

 

「・・・・・・」

 

「あの時、ずっと心の奥底に沈んでいたあの恐怖が蘇ってきた…」

 

素子が義体化した理由を聞いたミカは、何も言えなくなってしまう。あの事件は素子にとって、心に刻み込まれた大きく深い傷なのである。

 

「ぐすっ…ごめんなさい…本当に…」

 

「いいのよ…」

 

彼女の傷を深くえぐってしまったと知ったミカの眼には、涙が溢れていた。そんな彼女の背中に素子は手を当て、慰めるのであった。

 

「あの時は私が腑抜けたせいで生徒に苦労をかけてしまったわ。特に空崎にはショッキングな物を見せちゃったし」

 

「む~…」

 

「何?自分の前で他の女の話をするなっていうの?」

 

「そ、そんなんじゃないもん…!!」

 

素子は自分が弱腰になったことで、ヒナを筆頭に生徒たちに苦労をかけたことを悔やむ。ミカは彼女がヒナの名前を自分の前で出したことに不満気だった。

 

 

 

 

 

「そう言えば、どうしてサオリたちを助けようと思ったの?」

 

「一回説明したと思うけど?」

 

「ゴメン。あの時サオリのことしか見えてなくて…」

 

そして話題は素子がアリウス自治区へと向かい、ミカがサオリに復讐を果たすためにアリウス自治区まで追ってきた時のことに移る。

 

「あの時は彼女たちに味方したというよりは、その裏で彼女たちを操る黒幕を自分の手で始末してやろうと思っただけよ。ミサイルを頭上に撃ち込まれて頭にきてたし」

 

「先生も人の事言えないんじゃない?」

 

「失礼ね。私はちゃんと周りが見えてるわよ」

 

素子がサオリたちに手を貸したのは、彼女たちを動かしていた黒幕であるベアトリーチェを始末するためである。私情を滲ませる素子に、ミカは人の事言えないと揶揄った。

 

「それにしても、あの時アンタ凄い顔してたわよ?」

 

「うっ、言わないで…」

 

「次も同じことで後悔したくなかったら、以前私が言ったように自分を変えることね」

 

「うん…」

 

サオリを追っていたミカは、まさに鬼の形相であったと素子は回想する。本人にとってはあまり思い出したくないようで、苦い顔をしていた。

 

「私も特にアンタの行動を止めなかったとはいえ、あそこで錠前のことを踏みとどまってくれて良かったと思うわ」

 

「そうだね。あそこでサオリを殺していたら、私はもうここにはいれなかったと思う」

 

その後サオリと対峙し、その命を奪う寸前までいったところで、ミカは彼女のことを理解し踏みとどまったのである。

 

「でもアンタなら踏みとどまるだろうと思ってたわ」

 

「それも『ゴーストの囁き』ってやつ?」

 

「そうかもしれないわね」

 

素子は彼女ならば踏みとどまるだろうと感じていた。根拠はないが、ゴーストがそう囁いたのである。

 

「結局その後のことは私は知らないんだけど、その黒幕はどうなったの?」

 

「ベアトリーチェには一発お見舞いしてやったわ」

 

「殺したの?」

 

「まさか。生徒の前でそんなことしないわよ。それにね、私は任務で人を殺したことはあっても、私怨で人を殺したことはないわ」

 

素子はベアトリーチェを倒しに、ミカは襲い掛かるユスティナ聖徒会を食い止めるために一度分かれたため、ミカはベアトリーチェと彼女たちとの戦いを見たわけではない。素子はベアトリーチェに一発銃を撃ったが、生徒の前であるため殺すことはしなかった。

 

「じゃあ生きてるの?」

 

「いや。あの女はどっちみち仲間に殺されているだろう」

 

だが殺されなかったからと言って彼女がそのまま生きながらえているわけではなく、ゲマトリアによって処理されただろうと素子は考えていた。

 

「何か…変な感じ。私を酷い目に遭わせた元凶が死んだのに、ちっとも嬉しくないや」

 

「実際、復讐を遂げてスカッとするほうが人として欠陥があるのかもしれないわね」

 

だがミカを苦しめた元凶が死んだと聞いても、ミカは嬉しいとは思わなかった。素子はむしろ、復讐でスカッとするほうが人間として欠陥があるのではと考えていた。

 

 

 

 

 

「でもあの後、先生は私を助けに戻って来てくれた。あれは本当に嬉しかった…!!」

 

「そう言ってくれると、あのデカい迷宮を突っ走った甲斐があったわ」

 

ベアトリーチェを倒した後、素子はアリウススクワッドたちと別れ、1人でユスティナ聖徒会を押しとどめているミカの元へ急いで向かったのである。

 

「そう言えばあの時、先生以外の人が色々出てきたけど、あれは一体何だったの?」

 

「コイツか?」

 

「そうそう、そのクレカ」

 

ミカは素子が自分を助けるために使った『大人のカード』が気になった。クレジットカード状のそれは、素子が使用を宣言すると6人の人間と何体かの多脚戦車をその場に召喚したのである。

 

「私もあまり使う機会がないから原理はよく知らないわ。でも、コイツを使うと私の元同僚の影が現れるみたい」

 

「へぇ~じゃああれが公安9課の人たちなんだ」

 

「そうよ」

 

素子が大人のカードを使用して呼び出しているのは公安9課のメンバー、バトー、トグサ、イシカワ、サイトー、パズ、ボーマの6人とタチコマの影である。

 

「先生の同僚っておじさんしかいないの?」

 

「いないわ。女は私だけ。オペレーターは見栄え良く女性アンドロイドだけど」

 

公安9課で女性なのは素子だけである。あとは全員中年の男だけだ。

 

「女が自分1人だけの職場ってどんな感じ?」

 

「私を女として見てるのは精々1人くらいよ。あとのヤツらは私のことをメスゴリラか何かだと思ってるわ。まったく、失礼な連中だ」

 

「あはは!何それ!」

 

実際素子は公安9課では紅一点である。しかし、彼女を女性として意識しているのはバトーくらいである。

 

「それなりに大変なことはあったけど、やりがいのある仕事だったわ」

 

「ふぅ~ん、そうなんだ」

 

「まぁ最後は自分から逃げ出したんだけどね」

 

「えぇ~台無しなんだけど…」

 

素子は公安9課での日々を振り返っていた。彼女は最後には失踪したものの、その後一度戻ったこともあって、それなりに思い入れがある職場だったのである。

 

 

 

 

 

「これからは心を入れ替えて、自分の過ちを受け入れて償いに励むことね。ちょうどその機会も用意されてることだし」

 

「うん。私自分を変えるために頑張る。だからちゃんと私のこと見ててね?」

 

「えぇ、勿論」

 

エデン条約の一件の振り返りが終わり、素子はミカに心を入れ替えて償いに励むようにと伝える。そしてミカの見守って欲しいというお願いを、快く受け入れるのであった。

 

「ねぇ、何か他の話もしてよ」

 

「そうね…じゃあ、公安9課の任務で怪盗の真似事をした時の話でもしましょうかね」

 

「何それ、面白そうじゃん!?」

 

素子とミカは朝まで会話を続けた。




一応、少佐がサオリに撃たれる事態に至った理由も作れたかなと思います。子供の頃生死を彷徨ったトラウマが蘇ってまともな精神状態じゃなかったってことで...。
そこまで弱体化しないと少佐が不覚を取る絵面が思い浮かばないですね

それではまた来週。
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