GHOST IN THE SHELL Blue Archive 作:H2O(hojo)
正直ここ最近まで忘れてました...。
百鬼夜行自治区上空
素子と忍術研究部は、ヘリで上空から丸瀬ロゼと功輪会の権藤を追跡していた。
「高速に乗って、車を換えてかれこれ1時間。彼らは一体どこへ向かっているのでしょう?」
「始めは自治区の外に出るのかと思っていましたが、方角が全然違いますね」
イズナとツクヨはヘリの中で彼らの乗る車を画面越しに見ていた。
『アロナはそのままIRシステムで車の位置を監視。プラナは周辺の功輪会と繋がりがあると思われる施設の検索を掛けろ』
『『了解』』
『目的もなく徘徊しているわけではないだろう。必ず何処かへと向かっているはずだ。そこを抑えてやる』
素子はアロナとプラナにそれぞれ指示を出す。彼女は丸瀬と功輪会の繋がりを暴くために、乗り気になっていた。
「あっ!先生殿、車が高速を降りたよ」
『少佐。近隣に功輪会系列の工場を見つけました。この辺りの山間部にあるようです』
『良くやったプラナ』
『…!!』
丸瀬と権藤が乗った車が高速を降りたと同時に、プラナが功輪会系の工場を見つけ出す。プラナは顔には出さないものの、素子に褒められ上機嫌であった。
「この山奥に功輪会の息がかかった工場がある。奴らはそこへ向かうつもりだろう。降下を開始しろ」
「りょうかい~」
プラナからの情報を聞いた素子は、チセにヘリを降下させるよう指示する。
「ようやく敵の隠れ家を見つけましたね主殿!!」
「こんな山奥で一体何を作っているんだか…」
「不気味ですね…」
百鬼夜行の山奥にある古びた工場を見た忍術研究部たちは、その佇まいを不気味に感じていた。
「お前たち、これを付けなさい」
「ん?先生殿これ何?」
素子は忍術研究部の3人にリュックを渡す。いきなりリュックを渡されたミチルは当然首を傾げた。
「何って…パラシュートよ。この下にヘリを降ろせる場所なんかないんだから、ここから飛び降りるしかないでしょう」
「「「えぇぇぇぇぇぇ!!!」」」
リュックの中身はパラシュートである。いきなりヘリから飛び降りると言われた3人は驚いて大声を出してしまった。
「い、イズナまだ心の準備が…」
「しぇんしぇえどにょぉ~もう少し低くできないのぉ?」
「これ以上低くすると潜入がバレる可能性が高くなる。ここから降りるのよ」
降下を目前にして、イズナとミチルは後ずさりしていた。だが素子は有無を言わさずここから降りると宣言した。
「わ、私が先に行きます…!」
「そこの2人と違って殊勝な心掛けね。足は震えているようだけど」
「「・・・・・・」」
怖気づくミチルとイズナをよそに、ツクヨが先に行くと立候補する。彼女が勇気を振り絞っているのを見た2人は、怯えるのをやめていた。
「いや、ここは部長としてこの私が最初に…」
「いいえ!ここはイズナが…」
「部長…イズナちゃん…」
ツクヨの覚悟を見た2人は、自分が先に飛ぶと競い始める。そんな彼女たちを見て、ツクヨは嬉しそうであった。
「順番の譲り合いをしている所悪いけど、最初に飛ぶのは私よ。私の後を追うように。それじゃ先に行くわ」
そう言って素子はヘリから飛び降りた。
「「「・・・・・・」」」
出鼻を挫かれた3人はその場で呆然としていた。
「じゃ、じゃあここは部長の私が…」
「お、お願いします…」
「き、気をつけて下さいね、部長」
「あ、うん…」
結局部長のミチルが最初に降りることになった。
百鬼夜行自治区・山間部 功輪会の工場
「外見は何の変哲もない工場だな。まぁ中に入って見なければ分からんか」
一足先に工場の屋根に降り立った素子は、周りを見渡し工場の外観を観察していた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「やれやれ…遊園地の絶叫マシンに乗ってるんじゃないんだがな」
上空で恐怖の叫び声を上げているのはミチルである。
「ぐへぇ!!」
「気分はどう?」
「目が回るぅ~」
ミチルは屋根に激突しながら着地した。彼女は空中で回転していたようで、目を回していた。
「シュババ!!とう!!大丈夫ですか、部長?」
「お怪我はありませんか…?」
「うにぇ~だいじょうぶ~」
一方イズナとツクヨは割と大丈夫だったようで、ミチルの心配をしていた。
『アロナ。中の様子はどうなっている?』
『工場内の監視カメラをハッキングしましたが、夜中なこともあり数人の警備員が巡回しているだけです』
『そうか。そのまま工場内の監視を続けろ』
『了解です。少佐』
素子はアロナに工場の中の様子を探らせると、彼女は監視カメラの映像を素子の電脳に流す。工場には数人の人間しかいないようだ。
『少佐。工場に関するデータを洗っていたところ、面白い物が見つかりました』
『プラナちゃん…?』
『ある一定の周期でこの工場の電力消費量が不自然に跳ね上がっています』
『この中で功輪会が隠れて何かをしているようだな』
アロナが工場の内部を観察している一方で、プラナは周辺のデータを集めていたようだ。彼女は一定の期間で工場の電力消費量が跳ね上がっていることに気付いたようである。
「工場内に潜入して、丸瀬と権藤を見つけるわよ」
「「「了解」」」
素子と忍術研究部の3人は、工場の内部へ潜入を開始した。
工場内部
『こちらミチル…工場内部に潜入しました』
『こちらイズナ。同じく潜入しました』
『こちらツクヨ…同じく…』
忍術研究部の3人は各々工場へ潜入する。
『よし。成瀬と権藤を見つけ次第無力化し捕縛しろ』
『『『了解』』』
工場内部・南側
「こちらミチル。丸瀬ロゼを発見したよ」
『どこに…ザザッ…そっち…ザザザッ!!』
「あ、あれ…?通信の調子が良くないのかな…?」
ミチルは工場の南側で丸瀬ロゼを発見すると、それを素子たちに報告しようとする。だが通信にはノイズが混じり、聞こえづらくなっていた。
『ピピピ…ザザザザザッ!!ザァァァァァ…』
(も、もしかして…これ私1人で何とかしないといけない感じ…?うぅぅ~!!ヤダなぁもう…!!)
ミチルは丸瀬を見つけたら、イズナかツクヨを呼んで捕まえようと考えていた。しかし、通信が繋がらないため、1人で何とかしなければならなくなったのである。
「も~こうなりゃヤケだぁー!!」
「だ、誰だ貴様!?」
「ドーモ、丸瀬ロゼサン。忍術研究部部長千鳥ミチルデス」
ミチルは覚悟を決めて、丸瀬の前へ姿を現す。そして彼女は名乗りを上げて、丸瀬に突撃していった。
工場内部・東側
「ムムム…通信が繋がりませんね。これが俗に言う妨害電波と言うヤツでしょうか?」
「貴様そこで何やっている!?」
「やや!!貴女が丸瀬ロゼですね?私は忍術研究部の久田イズナです」
「チッ!!百鬼夜行の連中が感づいたのか!!」
イズナが通信機をポチポチ弄っていると、向こう側から丸瀬ロゼが現れる。丸瀬は忍術研究部の名を聞いて、百鬼夜行が自分たちのことを探っていることを察知した。
「イズナ、参ります!!」
「この場所に入った以上、生かして返すわけにはいかん!!」
イズナと丸瀬は互いに銃を構えて、戦闘に入った。
「射撃の術!!」
「チッ…!!」
イズナはサブマシンを丸瀬に撃ち込む。ハンドガンで応戦する丸瀬は、銃がイズナに当たらず舌打ちしていた。
「こうなったら接近して…!!」
「なっ…!!」
このままでは埒が明かないと感じたのか、丸瀬は銃を捨てて丸腰でイズナの元へ走る。いきなり銃を捨てた彼女に、イズナは驚いていた。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そして彼女は拳を振り上げて、イズナに殴りかかる。
「うきゃぁぁ!!」
大柄な彼女に勢いよく殴られたイズナは、後ろへ吹っ飛んでしまう。
「貴様はコンクリートで固めて海に沈めてやるぞ」
「ぐぬぬ…イズナは負けません!!」
壁に激突したイズナは悔しそうに、丸瀬を見上げるのであった。
工場内部・西側
「クソッ…まさか百鬼夜行でも丸瀬に恨みを持つヤツに襲われるとはな…」
(あれは…功輪会の権藤って人…!!)
工場の西側にいるツクヨは、権藤の姿を捉える。
「だが彼女にはこれからも百鬼夜行に来て貰わらないと困るのだ…!!」
(やっぱり、丸瀬ロゼって人が百鬼夜行に来るのには理由があるんだ。それを調べないと…)
権藤は丸瀬に百鬼夜行に来てもらわねば困ると悲痛な叫びを上げる。それを聞いて、ツクヨは彼らの思惑を探る決心をした。
工場内部・北側
「・・・・・・」
工場の北側に辿り着いた素子は、丸瀬の姿を捉える。丸瀬は工場の中で一際目立った建造物の中に入ろうとしていた。
「丸瀬ロゼだな?武器を捨てて両手を挙げろ!」
「・・・・・・」
素子は丸瀬に近づき、彼女に銃を突きつける。彼女は振り返り、サングラスを外す。
「はぁぁぁぁぁ!!」
「抵抗するつもりか!!」
そして丸瀬は素子に襲いかかる。素子は銃を撃ち牽制するが、彼女は気にせず素子の元へ向かって来た。
(何だコイツ…?銃弾は命中しているというのに、当たった感じがしない…)
「・・・・・・」
(それに…コイツから出ている黒いモヤみたいなものは何だ?)
素子はロゼに銃弾を当てるものの、不思議な感覚に襲われる。さらには彼女の身体から黒いモヤが出始めていた。
「えあぁぁぁぁぁ!!」
「チッ…!!」
襲い掛かって来る丸瀬の腕を避けながら、素子はもう2,3発銃弾を撃ち込む。しかし彼女には傷一つつかず、素子は舌打ちした。
「へあぁぁぁぁぁ!!」
「うんッ!!」
「グハッ…!!」
丸瀬が腕を振りかぶったと同時に、素子は彼女に回し蹴りを喰らわす。大柄な彼女であるが、高性能義体の素子に蹴られたため吹っ飛んでしまった。
「まったく…手こずらせてくれたわね」
「・・・・・・」
丸瀬をのした素子は、彼女を見下ろす。倒れている彼女は、まるで魂の抜けた人形のようであった。
「さっきから通信が繋がらないわね。こんな山奥で電波妨害だなんて無意味だと思うけど…」
「・・・・・・」
「ハッ…!?」
素子が工場内の通信が繋がりにくいことに気を取られていると、彼女の背後に人影が現れる。
「殺してやる!!」
「ぐ、ぐぅぅぅぅぅ!!」
(バカな…!?何故丸瀬ロゼが2人いる?)
素子の背後に現れたのは、先ほど倒したはずの丸瀬ロゼであった。彼女は素子の首を両腕で締め上げ殺そうとしていた。
「私の秘密を知った以上、お前たちはここから生かして帰すわけにはいかない!!」
(やはりコイツには何か秘密があるのか!)
丸瀬は必死に素子を絞め落とそうとしている。彼女の態度に素子は何かしらの秘密があると感じていた。
「ぐッ…うぅぅぅぅ!!」
「ジェノバのためにも、我が姉のためにもこの事がバレるわけにはいかない!!」
素子は丸瀬に首を絞められながら、壁側に寄っていく。
「んんッ!!」
「ガハッ…!!」
そして丸瀬の頭を壁に激突させる。それによって彼女はたまらず素子を離してしまった。
「ハァ…ハァ…」
「クソッ…身体を保てない…」
すると丸瀬の身体から出ているモヤが、より大きくなり始める。
「ここまでか…」
「消えただと…!?」
そして丸瀬ロゼの2人分の身体はその場から消滅してしまった。その光景に素子は珍しく驚いていた。
『先生…!!聞こえますか先生!!』
「えぇ。ようやく通信が繋がったわね」
『良かった…このまま通信が繋がらなかったらどうしようかと…』
そして丸瀬を倒したところで、通信が回復する。最初に彼女に声を掛けてきたのはツクヨであった。彼女は素子と通信が繋がったことに安心していた。
『すみません先生。権藤を一度は捕まえたのですが、突然丸瀬ロゼが現われて2人共逃げられてしまいました…』
「これで3人か…」
『な、何か…?』
「いいや、何でもない。権藤の方はいい。どうせ後で百花繚乱の連中がガサ入れに事務所に入るだろうし」
どうやらツクヨは一度は権藤を捕まえたものの、そこで丸瀬が現れたことにより2人を逃がしてしまったらしい。しかし、素子はそれを聞いても慌てる素振りを見せなかった。
『主殿!!イズナやりました!!丸瀬ロゼを捕まえましたよ!!』
『ちょちょちょちょちょ!!丸瀬ロゼだったら今私の目の前にいるって!?』
「権藤は1人だけだったとしても、これで5人目ね。私もさっき丸瀬ロゼ『2人』に襲われたわ」
さらにイズナとミチルが、丸瀬ロゼを捕まえたと素子に報告してくる。これにより同じ時間、同じ場所に丸瀬が5人いたことになるわけである。
『いったいどぉ〜なってんの〜!』
『イズナ、さっぱり分かりません!!』
『私が襲われたあの人は一体…』
その事実を聞いた忍術研究部の3人は混乱していた。
「全員この工場の北側に集合しなさい」
数分後
『ここにいる丸瀬ロゼはどうするのさ』
「ほっときなさい。どうせ消えるわ」
素子は3人に自分がいる、工場の北側に来るように告げる。そしてミチルたちが拘束している丸瀬の事は放っておけと答えた。
『そんな事言ったって…』
『主殿!!丸瀬ロゼが消えました!!彼女は一体何処に…?』
『しょんなバカな…ってこっちもいないじゃん!?』
ミチルは目の前の犯人を放って素子の元に行くことを渋る。だがそうしているうちにもイズナとミチル双方が拘束していたはずの彼女が突如姿を消したのである。いきなり消滅したことに、2人は驚いていた。
「私の目の前にある建造物にその答えがある。私の『ゴースト』がそう言ってるわ」
『『『りょ、了解…』』』
忍術研究部は素子の元へ集まるのであった。
数分後
「「「「・・・・・・」」」」
工場の北側に集まった素子と忍術研究部は、彼女たちの目の前にある建物を見上げていた。その建物は工場には似つかわしくない、百鬼夜行の伝統的な五重塔が聳え立っていた。
「千鳥。百鬼夜行に伝わる噂や都市伝説の中で、先ほどのような事例に心当たりはあるか?」
「う~ん…そうだなぁ…」
「同じ人物が5人…まさに分身の術みたいでしたね」
建物に入る前に、素子はミチルに先ほどの現象に似た噂や都市伝説について心当たりがあるか尋ねる。ツクヨは丸瀬ロゼが同時に5人現れたのを、分身の術に例えていた。
「分身の術か…あっ!」
「部長!何か分かりましたか!?」
「『写し鏡』だよ、多分!!」
ミチルは丸瀬ロゼが増えたり、かと思えばモヤになって消えたりする事象を「写し鏡」の仕業だと推測した。
「その『写し鏡』とは一体何だ?」
「百鬼夜行に伝わる呪具の1つで、自分の想い描いた姿を現実に投影することができるっていう伝承がある。確かそれを題材にした昔話があって、その話では写し鏡を使って何人も同じ顔の人間を出現させて相手を怖がらせたりしてた。それに話のオチはその写し鏡で作った人間は強い衝撃を与えると消えるって感じだったはず…」
「なるほど。丸瀬ロゼに起こった事象と合致しているな」
「流石です部長…!!」
ミチルは素子に写し鏡の詳細の説明を求められたため、自身が知っている伝承などを一同に伝える。その伝承は、丸瀬ロゼにおこった事と合致していた。ツクヨはミチルの博識さに感激していた。
「それじゃあ確かめてみるとしましょう」
「うん」 「はい…」 「了解です!」
一同は塔の中へと入っていった。
塔内部
「工場の中に家があるなんて…」
「きっと丸瀬ロゼの正体である人物がここに匿われていたってところかしらね」
塔の中に入ると、快適そうな居住空間が広がっていた。素子はそれを丸瀬ロゼが匿われている証拠だと理解した。
「えぇ、その通り。私が本物の丸瀬ロゼです」
「う、嘘…!?」
「先ほどの姿と全然違いますよ!?」
そして彼女たちの前に本物の丸瀬ロゼが現れる。彼女は先ほどの大柄の姿とは打って変わって、小柄で肌も白く、黒髪の痩せた少女であった。
「この事を知っているのは?」
「功輪会の一部の人間と私の姉だけです」
「そうか。とりあえず尋問させてもらうぞ」
「お好きにどうぞ。種がバレた以上、隠しても無駄ですから」
どうやらこの事を知っているのは功輪会の一部の人間と、身内である丸瀬の姉だけのようである。彼女は素子の要求に大人しく応じる姿勢を見せた。
「ジェノバ高校出身のお前が何故百鬼夜行にいる?」
「2年前、ジェノバがまだデルタ高校の分校の時に、功輪会の構成員に誘拐されまして。それから私はずっとこの場所にいます」
「「「・・・・・・」」」
丸瀬ロゼがここにいた理由は2年前に功輪会によって誘拐されたと本人は語る。それを聞いた忍術研究部は何も言えなくなってしまった。
「それで、例の『写し鏡』はどうやって手に入れた?」
「確か、功輪会の人間が誰かの借金のカタとして手に入れたらしいです」
「なるほどな。首が回らなくなり手放したと…。で、何故お前がそれを使うことができる?」
「ヤツらの計画のためですよ。ジェノバ自治区で秘密裏に生産されている麻薬の利益を手に入れるためです。デルタにクーデターを起こしたのも、姉を生徒会長にしたのも、私に学園の英雄を騙らせたのも、すべて彼らが学園を裏から支配し利益を吸い上げるためです」
「つまり、『写し鏡』のお前は、功輪会にとって都合のいい偶像というわけか」
写し鏡は元々百鬼夜行の誰かが代々受け継いできたものであったが、借金で首が回らなくなったため功輪会に流れついたようである。そしてその能力を使い、功輪会はジェノマ高校を想うがままに支配しているのである。
「私はここに軟禁され、生殺与奪の権を握られています。そして私に何かあれば今度は本国の姉が始末されるでしょう」
「だろうな」
「許せない…!!」
丸瀬姉妹は功輪会に生殺与奪の権を握られ、彼らに従う他ないのである。汚い大人のやり方を目の当たりにしたミチルは、怒りに震えていた。
「事情は大方理解したわ。では何故数か月に一回百鬼夜行を訪れ、功輪会と接触する危険を冒す必要がある?ジェノマ高校にも功輪会の息がかかった連中が潜んでいる以上、百鬼夜行に来る必要はないはずだ」
「それはこの『写し鏡』を遠隔で維持できるのには限度があるからです」
「なるほど。所謂充電のようなものが必要なのですね」
「えぇ。この写し鏡には電気で作動しているので、文字通り充電ですね」
彼女の事情を理解した素子は次に、写し鏡のロゼが数か月に一回百鬼夜行に訪れている理由を問う。それにロゼは写し鏡の姿を維持するには定期的な充電が必要であると答えた。
「写し鏡って思った以上にハイテクなんだね…」
「元は百鬼夜行にいる雷神の持ち物だそうで…」
「そ、そうなんだ…」
(工場内の電力消費量が一時的に跳ね上がっていたのはそれが理由か…)
充電と言う単語を聞いて、ミチルはちょっと幻想を砕かれたようだ。写し鏡が充電できるのは、雷神の持ち物だからとロゼはミチルに説明するのであった。
「私はいつも姉の足を引っ張ってばかりだった…。そして今回も私のせいで、姉を危険な目に遭わせてしまう結果となってしまった」
「「「・・・・・・」」」
丸瀬ロゼは姉の事を心配し、自身が姉の身に危険を及ぼしてしまったことを嘆く。それを見た忍術研究部は、先ほどまで敵であった彼女を憐れみ始めていた。
「これから私はどうなるのでしょうか?」
「しぇんしぇどにょ~どうにかしてあげられない?」
「イズナも部長と同じ思いです!!お願いします、主殿!!」
「わ、私も…!!」
丸瀬ロゼのことを憐れんだ忍術研究部は、素子に彼女のことを助けて欲しいと懇願する。
「そうね…話を聞いた限りでは情状酌量の余地はあるだろう。それに、生徒を助けるのが『先生』の仕事だ。何とかしてあげるわ」
「本当ですか…!?」
それに素子は、先生として応えるのであった。
子ウサギ公園
『月雪。お前たちに仕事を依頼したい』
「少佐の頼みとあらば、如何なる任務でもこなしてみせます」
素子が連絡したのは、RABBIT小隊の小隊長月雪ミヤコである。
『今から、ジェノマ高校自治区に装備A2で出撃しろ。後で任務の詳細は公式の命令書付きで送付する』
「了解しました。我々RABBIT小隊にお任せを」
数日後 百鬼夜行連合学園 陰陽部の部室
「ようこそお越しくださいました丸瀬議長~!!私、百鬼夜行連合学園の陰陽部にて部長を務めさせていただいております、天地ニヤと申します~」
「ジェノマ高等学校議長、丸瀬ロナです。今日はよろしくお願いします」
陰陽部の部室ではニヤと、丸瀬ロゼの姉にしてジェノマ高等学校の議長である丸瀬ロナとの会談が行われていた。
「妹の件については感謝しているわ。功輪会で監禁されている妹を解放することは私の悲願だった」
「いえいえ~。こちらも百鬼夜行の裏社会で幅を利かせている彼らを長年野放しにしていた責任があります。貴女たちは我々の怠慢のせいで被害を被ったようなものですから」
「そうですか…」
素子がRABBIT小隊に仕事を依頼した後、彼女たちはジェノマ自治区に蔓延る功輪会勢力を一掃した。さらに百鬼夜行にある大元の功輪会も陰陽部主導の元、百花繚乱の協力もあり壊滅させている。それにより丸瀬ロゼは解放され、無事姉と再会することが叶ったのである。
「では、我々の今後の友好について話し合いましょうか」
「えぇ。そうですね」
その後、百鬼夜行連合学園はジェノマ高校と最初の交友を結ぶこととなった。
「「「「・・・・・・」」」」
その会談の様子を見守る影が4つ。素子と忍術研究部の3人である。
彼女たちの活躍は殆どに人間には知られていない。だがこの会談を実現させた裏には忍者の活躍があったという噂が百鬼夜行中に広がっていた。
英雄ロゼ 完
百鬼夜行には人間を複製する呪具くらいあんだろという割と行き当たりばったりで書きました。
それではまた来週。