GHOST IN THE SHELL Blue Archive   作:H2O(hojo)

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パヴァーヌ2章のアリスがリオにエリドゥに連れ去られた後の場面です。
原作と違って、アリスが暴走した時とリオがゲーム開発部の部室に来てアリスを連れ去ったときに少佐はいません。
リオは少佐がいるときにアリスを攫おうとはしないだろうと思ったからです。


生徒か王女か

素子がミレニアムを離れている間、アリスがミレニアムの廃墟にあったDivi:Sionなるロボットを起動させ暴走。その被害がモモイに及ぶ。さらにその後、リオがゲーム開発部の部室に現れ、アリスのことをキヴォトスを滅ぼすために遣わされた「名もなき神々の王女」であると言い、彼女を連れ去る事態に発展した。

 

ミレニアムサイエンススクール 大広間

 

「待たせたわね」

 

「「「「「・・・・・・」」」」」

 

大広間で待っていたのは、ゲーム開発部のミドリ、ユズ。エンジニア部のウタハ、コトリ、ヒビキ。C&Cのネル、アスナ、カリン、アカネ。ヴェリタスのコタマ、ハレ、マキ。セミナーのユウカ、ノアと言ったそうそうたる面子である。

 

「先生…リオ会長がアリスちゃんを…」

 

「知ってるわ。調月の一連の行動は映像記録で全て確認したもの」

 

ミドリは先生がこの場に現れたと同時に、アリスの身に起きたことを説明しようとする。だが彼女は既に映像記録の閲覧を終えており、状況を把握していた。

 

「あの娘を廃墟から連れ出した時から、彼女が一体何者なのか調査を続けていた。それに監視もな」

 

「じゃあアンタも、アリスの事をキヴォトスを滅ぼす敵だと思ってんのかよ?」

 

「そうならない保証はないと感じているわ」

 

素子はアリスを廃墟で見つけた時から彼女の正体について独自に調査を続けており、同時に監視をしていたことを一同に明かす。秘密裏にアリスについて監視をしていたという事実にネルは憤る。彼女は素子がリオと同じく、アリスが危険な存在だと捉えていたことが許せないようだ。

 

「天童の事をどうするにせよ、彼女が戦闘用アンドロイドである事実は受け入れなさい。その事実から目を逸らしていても不幸になるだけよ」

 

「アリスは人じゃないってのかよアァン!?」

 

「そうよ。むしろアンタたちは今まで彼女のことを自分と同じ存在だと思っていたの?」

 

「そ、それは…」

 

アリスを人間扱いする一同に、素子は彼女が戦闘用アンドロイドであることを受け入れるよう諭す。素子の言葉にネルは反発するが、自身も薄々キヴォトス人とは違う存在であると感じていたことを指摘され、言い淀んでしまった。

 

「じゃあ先生は、リオ会長のようにアリスちゃんを殺すことに賛成なんですか?」

 

「そうね…彼女の破壊が選択肢の一つとして浮かび上がったことについては否定しないわ。『名もなき神々の王女』とやらの力が本格的に目覚めれば、キヴォトスは滅びる。だからその前に私が責任を持って彼女を破壊すべきか否か、一度考える必要があった」

 

ミドリは素子がアリスを破壊するつもりなのかを問うと、彼女は一度そうするべきか考えたと述べる。素子としてもアリスの処遇については、すぐに決められるものではなかったのである。

 

「それで考えた結果は…?」

 

「私の今までの経験と、『ゴースト』の囁きに従うことにしたわ」

 

彼女は考えた結果、自身のこれまでの経験とゴーストの囁きを信じることに決めた。

 

「せ、先生…それじゃあ分かりません。ちゃんと説明して下さらないと…」

 

「まぁそう焦るな、早瀬。そうやって結論を急ぐのがお前たちの悪い癖だ。今回の調月の行動はその典型だな」

 

「と言うよりも、私たちミレニアムサイエンススクールの生徒の性かな…」

 

だが先ほどの素子の言葉だけでは当然彼女の考えを理解することはできず、ユウカはそれを指摘する。それに素子はミレニアムサイエンススクールの理系ゆえの悪癖を指摘し、ウタハはそれにミレニアムの性だと答えた。

 

「少し昔話をしましょうか」

 

「先ほど言っていた先生の過去の経験の話ですか?」

 

「そうよ」

 

素子はノアたちに過去の経験を話し始めた。

 

「私が元いた公安9課には、AIを搭載した多脚戦車が配備されていた。我々は多脚戦車を『タチコマ』と名付け、彼らは自ら思考し自律的に行動することができた」

 

「なるほど…そういう意味じゃそのタチコマもアリスと似ているかもしれないね」

 

素子は公安9課にいたタチコマの事を彼女たちに語り始める。タチコマの概要を聞いて、ウタハはアリスと類似点があると感じていた。

 

「タチコマは任務が終わると、記憶を並列化して兵器として個体差が出ないように調整していた」

 

「へ、並列化…?」

 

「恐らくタチコマは複数体で運用しており、任務発生時にどの機体を選んでも差異が出ないようにしているのでは?」

 

「お、おう…」

 

(全然分かんねぇ…)

 

タチコマは任務終了時に記憶の並列化をおこなう決まりである。そのことがピンとこないネルに、コトリが親切に説明をする。しかし彼女の説明を聞いても、ネルは内容を理解できていなかった。

 

「だがウチの課の1人がタチコマを専用機的な扱いをし始め、天然オイルを与えたことでその前提が崩れ始めた」

 

「天然オイル…?それは興味深いね。何故天然オイルを与えたら並列化の妨げになるんだい?」

 

「タチコマのAIに使われているニューロチップに使用しているタンパク質が、天然オイルによって溶解した。そこに消去されるはずだった記憶が残されていたわけだ」

 

「なるほど…参考になるよ」

 

だが並列化されているはずのタチコマに、愛着を持ち1機を自身の専用機とし天然オイルを与えた者がいた。バトーである。ウタハは素子の話を聞いて、天然オイルが並列化に支障をきたしたことに興味を持ち始める。

 

「本来消去されるはずの記憶が復元されたことによって、タチコマは個性を持ち始めた。しまいには、『死』や『神』の存在について語り始めたわ」

 

「元々自律的な思考が可能とはいえ、そこまで進化するなんて…」

 

「信じがたいですね…」

 

そしてバトーが与えた天然オイルを契機として、タチコマは個性を持ち始める。ユウカとノアはAIが個性を獲得したことに驚いていた。

 

「私はタチコマの兵器としての運用に問題が出ることを危惧し、彼らをラボに送るよう指示した。その後タチコマは解体又は民間に払い下げとなった」

 

「せっかく育てたのに…」

 

「そうね。私もあの時の選択は間違いだったと思っているわ」

 

その事実が発覚すると、素子はタチコマをラボ送りにした。ヒビキはせっかく個性が目覚めたタチコマをラボ送りにしたことに、勿体ないと感じていた。

 

「だが9課が窮地に陥った時、彼らは何の指令も受けていないにも関わらず、我々を助けに自ら動き出した。さらには自己犠牲の精神まで働くようになったわ」

 

「AIが自己犠牲なんて、往年のSF映画みたいだね」

 

「だがそれが実際に起こった。その時私は考えを改めたわ。個性の発現は彼らが進化するために必要なものだったと…」

 

そしてその後9課が海自の特殊部隊に襲撃された際に、生き残っていたタチコマがバトーを助けるために独断で行動を始めたのである。マキはその様子をSF映画のようだと感じていた。彼らがアームスーツ相手に奮戦する姿を見た素子は、彼らの個性が必要であったと認めたのだ。

 

「へ、へぇ~すげぇじゃん」

 

「部長?話が分からないのなら無理に反応しなくてもいいのですよ」

 

「はぁ!?分かるし!!全然余裕だし!!」

 

素子の話を聞いたネルは、ぎこちない反応をする。アカネにそれを指摘された彼女が理解できていると強がった。

 

(分かってませんねこれは…)

 

(分かってないな多分…)

 

「アハハッ!絶対分かってないでしょ〜」

 

なお部員からは理解していないことがバレバレであった。

 

「それで、その話が今の現状にどう繋がるんですか?」

 

「それは天童を見つけ出し、ここまで彼女と一緒にいた2人に聞いてみるといいわ」

 

「ミドリとユズですか?」

 

先ほどまでの話を聞いたユウカであったが、いまいちアリスとの繋がりにピントきていない様子であった。すると素子はミドリとユズを指名し、その場にいた者は2人に視線を向ける。

 

「せ、先生の話を聞いた時、アリスちゃんを廃墟から連れ出して、部員として部室で匿っていた頃を思い出しました」

 

「私が最初にアリスちゃんに会った頃くらい?」

 

「はい。あの時、アリスちゃんは今のような性格じゃなかったんです。もっと機械的というか、それこそAIみたいな受け答えをしていました」

 

みんなに見られたことに恥ずかしがりつつ、ユズが廃墟から連れ出した頃のアリスの様子を話し始めた。始めて会った頃の彼女は、今のような性格ではなかったことを知るものはゲーム開発部の3人と素子くらいである。

 

「アリスちゃんがあんな感じになったのは、私たちがレトロゲームを沢山やらせたからで…」

 

「だから勇者だの魔王だの言ってたのかアイツ…」

 

「はい…お姉ちゃんがやらせようって言い始めて」

 

そしてアリスが今のような性格になったのは、ゲーム開発部の部室に置いてあるレトロゲームに影響されたからだとミドリは語る。それを聞いてネルはようやく腑に落ちたようだ。

 

「つまり、キヴォトスを滅ぼす兵器であったAL-ISはレトロゲームを学習することによって個性を獲得した…ってことかな?」

 

「そうだ」

 

「た、確かに初めて会った時から比べれば随分と感情的になったと思います。それこそ私たちと同じくらいに…」

 

ウタハはアリスがゲーム開発部の部室にあったゲームをプレイしたことによって個性を獲得したのではという見解を述べ、素子はそれに同意する。ユズの言うように、アリスはゲームによって彼女たちと同じくらいにまで成長したのである。

 

「調月のように合理的に考えれば、天童を破壊することミレニアム、ひいてはキヴォトスの安寧に繋がるかもしれない。だが、彼女の破壊を踏みとどまれと囁くのよ、私の『ゴースト』が」

 

合理的に考えればリオの考えを否定することはできない。しかし、彼女のゴーストはアリスを生かせと囁いているのである。

 

「モモイ降臨!!ってあれ?みんなどうしたの難しい顔して」

 

「お姉ちゃん!!」 「モモイ!!」

 

一同が素子の話を聞いていると、昏睡していたはずのモモイが現れる。モモイの復活にミドリとユズは驚いていた。

 

「よく眠れたかしら?」

 

「うん、バッチリ!!こんなに寝たのは久しぶりだったな~」

 

「それは寝る間も惜しんでゲームやってるからでしょ」

 

モモイは皆の心配をよそに、よく眠れたと呑気な感想を述べる。それには素子も呆れていた。

 

「アリスが調月に連れ去られたわ。彼女がキヴォトスを滅ぼす危険な存在だから破壊するそうよ」

 

「はぁ?調月ってリオ会長のことだよね?何言ってるの?」

 

素子はモモイに彼女が寝ていた時に起こったことを簡単に説明する。それを聞いたモモイは顔を顰め、理解不能といった様子であった。

 

「そういうわけでこれからどうしようかここにいる全員で話し合ってたわけだけど、アンタはどうしたい?」

 

「アリスをリオ会長から取り戻しに行きたい!!」

 

「彼女がキヴォトスを滅ぼす兵器だったとしても?」

 

「関係無い!!アリスは私たちの大切な仲間だもん!!」

 

そして素子はモモイの意志を確認する。彼女はアリスに不慮の事故とはいえ攻撃されたにも関わらず、何の躊躇いもなく取り戻しに行くと答えた。

 

「そうだ。それでいい…」

 

「せ、先生が笑ってる…」

 

「あぁ…珍しいこともあるもんだな」

 

モモイの回答を聞き、素子は満足そうにそう呟いた。普段余り笑顔を見せない素子であったが、この時は少しだけ笑ったような顔をしており、ユウカやネルたちを驚かせた。

 

「お前たちはどうする?」

 

「フッ…今さら聞くまでもないんじゃないかな?」

 

「あぁ。その通りだ」

 

「私たちも…」

 

「私もモモイと同じ想いよ」

 

そして素子はその場にいるメンバーにも問いかけると、ウタハ、ネル、コタマ、ユウカを筆頭に皆同じ考えだと答える。

 

「しかし…リオ会長は何故1人でそのような事を…」

 

「他人に責任を負わせず、ミレニアムの会長である自分が責任を被れば万事収まると思っているのよ」

 

「確かに…会長って何でも1人でやろうとするタイプだし」

 

ノアはリオが1人(一応トキがいるが)でアリスを破壊するための行動を起こしたのか、疑問に感じていた。それに素子は、全て自分が責任を負えばいいと考えているからと答えた。

 

「そもそも、あの娘を廃墟から連れ出したのはコイツらだ。そしてその時引率として私が同行した。よって責任は私が負うわ。それが筋ってもんでしょ?」

 

「いいえ。これはミレニアム全体の問題です。アリスちゃんの事はリオ会長の独断ではなく、私たちで決めます。責任も私たちが取ります」

 

「ユウカの言う通りだ。私たちがミレニアムの生徒として彼女を受け入れる以上、責任も私たちが背負うべきだろう」

 

素子は廃墟からアリスを連れ出した時に同行した自分が責任を取ると一同に述べる。しかし、ユウカとウタハはこれはミレニアムの問題だとし、自分たちが責任を背負うと答えた。

 

「まったく…アンタたちは難しいこと考えずに好きなようにやればいいのよ。生徒の責任は教師である私が負うわ」

 

「責任責任って…みんな難しいことばっか考えて大変だね。アリスを助けたいって気持ちだけじゃダメなの?」

 

「大人になったり、役職が付いたりするとそういうわけにはいかなくなるのよ。悲しいことにね」

 

「へぇ~大変なんだね」

 

自分たちが責任を背負うというユウカたちに対し、素子は再度先生である自分が背負うと答える。そんな様子を見ていたモモイだったが、大変そうだという呑気な感想を呟いていた。

 

「まぁ何にせよ…いかにミレニアムの会長とはいえ、独断で天童を破壊しようとすることは許されんはずだ。我々はこれより調月が潜伏する要塞都市エリドゥに潜入し、天童を取り戻すぞ」

 

「おーっ!! …って要塞都市エリドゥって何!?」

 

気を取り直して、素子は一同にリオが潜伏している要塞都市エリドゥへの潜入を宣言する。その単語自体初耳だったモモイは、唐突に出てきた話に驚いていた。

 

「彼女がミレニアムの予算を横領して秘密裏に建造していた“名もなき神々”とやらの侵攻に備えるための城塞都市よ。随分と巧妙に隠されていたけれど、私には通用しないわ」

 

「はっ…?えっ…!?横領!?」

 

「・・・・・・」

 

要塞都市エリドゥはリオが名もなき神々に対抗するために、ミレニアムの資金を横領して建造された都市である。素子はリオによって巧妙に隠されたソレを、見つけ出していたのである。その話を聞いたユウカとノアは、驚いて開いた口が塞がらなかった。

 

「エリドゥはその名の通り要塞都市だ。心配性の調月らしく多くの仕掛けが施されているだろう」

 

「フッ…面白れぇ!!今度こそあの生意気な後輩に一発入れてやる!!」

 

要塞都市エリドゥは防衛のために多くの仕掛けが施されているだろうと素子は推測する。それを聞いたネルはトキへのリベンジに燃えていた。

 

「天童をどうするかの議論は、彼女を手元に取り戻してからだ。我々でエリドゥに乗り込むぞ!!」

 

ミレニアムの生徒たちは、素子と共にエリドゥへと乗り込むのであった。




少佐は一回はアリスを破壊することは考えると思う。けど、タチコマのことを思い出して踏みとどまるかなって思って書きました。
これ書いた当時は12月の中頃だったのでデカグラマトン編があんな風になるなんて微塵も知りませんでした。

それではまた来週。
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