GHOST IN THE SHELL Blue Archive   作:H2O(hojo)

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元ネタは山海経のイベントのやつです。
少佐は山海経にいる時は『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』で最初に来ていたチーパオっぽい服を着ているイメージです。


龍武同舟

シャーレ部室

 

『少佐。生徒からお電話が来ています』

 

「そう。繋いでちょうだい」

 

『了解です!!』

 

シャーレの部室で仕事をしていた素子の元に、生徒から連絡が入る。アロナは素子に言われ生徒との通信を彼女の電脳に繋いだ。

 

『こんにちは。私は山海経高級中学校、玄武商会所属の朱城ルミ。貴女が先生?』

 

『そうだ。私が連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの草薙素子だ』

 

先生に連絡を取ってきた相手とは、山海経高等中学校の朱城ルミという生徒であった。

 

『それで、私に一体何の用?』

 

『最近ちょっと困っててさ。先生に力になってもらいたくて』

 

どうやらルミは最近困っていることがあり、先生を頼って連絡してきたようだ。

 

『先生の事は山海経でも噂になってるよ。数々の事件を解決した凄腕だってね』

 

『それはココでの話?それとも前職の話?』

 

『さぁどっちだろう。私は先生の前職についてはよく知らないし…玄龍門なら知ってるかもだけど』

 

そして素子の噂は、山海経の中でも広がっているようだ。

 

『とにかく…一回ウチに来てよ。詳しいことはこっちで話そう』

 

『いいだろう』

 

 

 

 

 

山海経・玄武商会

 

「いいね、先生。その山海経風の衣装似合ってるよ」

 

「ありがとう。春原も喜ぶと思うわ」

 

「へぇ~シュン教官から貰ったんだね、ソレ」

 

ルミに呼ばれた素子は、玄武商会を訪れていた。彼女はシュンから貰った紺色の山海経風の衣装に身を包み、商会の施設の椅子に脚を組んで座っていた。

 

「先生は食べるは好き?」

 

「昔はこの身体だとサイボーグ用の大して美味しくもない合成タンパク質しか口にできなかったけど、ここに来てからは何故か普通に人間用の食事も口にできるようになったから、それなりに食事を楽しむことができるようになったわ」

 

「へぇ~いいなぁ~。身体が機械だと太らないわけでしょ?」

 

「そうね。別にそこまで暴食するつもりはないけど」

 

料理人であるルミは、素子に食事は好きかと尋ねる。彼女は元々義体化しているため、サイボーグ用の食事しか口にできなかったが、キヴォトスでは食事を楽しめるようになったようである。

 

「それじゃあ、まずは私たち玄武商会の料理を楽しんでくれると嬉しいな」

 

「私小食だけど?」

 

「いいよ。お客さんがお腹一杯になるほどの量を卓にならべて楽しんでもらうのが山海経流だからね」

 

ルミは素子の前にたくさんの食事を持って来て、食べて欲しいと言う。食べきれないほどの料理を出して、客を満足させるのが山海経の流儀なのである。

 

「流石、自慢するだけあって味のクオリティはなかなかね」

 

「お褒めにあずかり光栄かな」

 

素子はルミの作った料理を口にして、そのクオリティを褒める。

 

「これであとは酒の1つでもあれば完璧なんだけど…」

 

「先生…仕事中にお酒飲むつもり?」

 

「私の義体にはアルコールを瞬時に分解できる機能が付いてるから問題ないわよ」

 

「そういう問題じゃないと思うけどなぁ…」

 

素子は料理にお酒が付いていないことに不満を漏らす。勤務中にアルコールを摂取しようとする彼女に、ルミは冷ややかな目線を向けた。

 

「会長、お呼びでしょうか?」

 

「あぁレイジョ、こちらシャーレの草薙素子先生だよ」

 

「どうも。玄武商会本店のマネージャー兼ルミ会長の護衛の鹿山レイジョです」

 

ルミの作った料理を味わっている素子の前に、ルミが呼び出したレイジョが現れる。

 

「それで、困ってることがあるって言ってたわね?」

 

「うん…ちょっとね」

 

「「・・・・・・」」

 

食事を終えた素子は、早速本題に入る。ルミはそれに対し、気まずそうに素子の後ろを見る。彼女の後ろにはスーツにサングラスを付けた2人組が店内を監視しており、その影響からか店は閑古鳥が鳴いていた。

 

「アレかしら?」

 

「えぇ…まぁ、はい」

 

「何だ貴様は!!」

 

「文句でもあるのか?」

 

素子は親指を後ろにいる2人に向けると、レイジョはそうだと頷く。3人が見ていることに気付いたグラサンの2人は、彼女たちに喰ってかかった。

 

「彼女たちは玄龍門の構成員でね。私たちを監視しに来てるんだ。正直お店の迷惑だから止めて欲しいんだけど…」

 

「玄龍門とは何だ?」

 

「玄龍門は山海経の生徒会組織で、自治区の管理や運営、治安維持を行っている組織だよ」

 

玄武商会の本店を監視しているのは玄龍門の構成員である。玄龍門は山海経の中でも一番権力を持った組織である。

 

「萬年参を山海経に密輸出しているのはお前たちだろ?」

 

「だから…それは私たちじゃないって何度も言ってるだろ!!」

 

「隠しても無駄だ!!証拠は挙がってるんだぞ」

 

どうやら玄龍門の構成員は、萬年参なるものを玄武商会が密輸出していることを疑っているようである。レイジョは声を荒げてそれを否定するが、構成員は聞く耳を持たなかった。

 

「なるほど…大方事情は理解できたわ」

 

「話が早くて助かるよ」

 

ここまでの会話で、素子はルミたちが何に困っているのかを察した。

 

「ん…?お前山海経じゃ見ない顔だな?」

 

「まさかお前が萬年参の密輸出を手引きしてるんじゃないんだろうな?」

 

そして玄龍門の構成員は素子のほうを見ると、部外者である彼女のことを疑い始める。

 

「おっと…あまり失礼な口を利くのは良くないんじゃないかな?」

 

「何だと?」

 

「こちらにいらっしゃるのは山海経でも噂になっている、シャーレの草薙素子先生だよ」

 

「・・・・・・」

 

素子を睨みつける玄龍門の構成員に対し、ルミは彼女がシャーレの先生であると紹介する。ルミに紹介された素子は、わざとらしく付けていたサングラスを取り、彼女たちのほうを見つめた。

 

「連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの教員として貴女たちに頼みたいことがあるんだけど?」

 

「な、何だよ…?」

 

そして素子は構成員の1人に顔を近づけて、シャーレという組織名をチラつかせ彼女に頼み事をしだす。彼女は色気のある仕草をして、構成員の動揺を誘った。

 

「玄龍門の門主、竜華キサキに会わせてくれるかしら?」

 

「な、ななななな…!!門主様に会わせろだとぉ!?」

 

「そうよ。そうすれば萬年参を密輸出している者の正体を暴いてあげるわ」

 

素子が玄龍門の構成員に要求したのは、門主である竜華キサキに会わせろというものであった。そしてその対価に彼女は今回の事件の解決を提案したのである。

 

「・・・・・・」

 

「わ、分かった…!上と相談する…!!」

 

そしてその緋色の眼はサングラス越しでも魅力的に映るらしく、構成員は顔を赤くして本部の六和閣へ走っていった。

 

「先生って結構大胆なんだね…」

 

「単なる処世術よ」

 

 

 

 

 

その後 玄龍門本部・六和閣

 

「門主様のおなーりー!!」

 

「「「「「おなーりー!!」」」」」

 

六和閣へと案内された素子たちは、大広間で門主であるキサキと面会していた。

 

「其方がシャーレの先生かえ?」

 

「そうよ」

 

キサキと対峙した素子はいつもと変わらない態度で彼女に向き合う。

 

「貴様…!!いかにシャーレの先生と言えど、門主様に向かってその態度は許さんぞ!!」

 

「よい」

 

「ですが…」

 

「妾がよいと言ったらよいのじゃ」

 

玄龍門の構成員の1人が素子の態度が気に入らなかったようで、彼女のことを睨みつける。だがキサキは、構成員のことを制止させた。

 

「して何用かの?先生」

 

「朱城の依頼でな。例の萬年参の密輸出の件を調べている」

 

キサキは早速素子が何故自分に会いに来たのかを尋ねる。それに素子は萬年参の密輸出の件だと答えた。

 

「その件なら妾も聞いておる。玄武商会の段ボールが使用されていたそうじゃの」

 

「だからそれは誤解だ!いくら玄武商会の段ボールが使われていたからと言って、それで私たちのせいにするのはおかしいだろ!」

 

「黙れ!!お前たち玄武商会は山海経外部との繋がりがある!!お前たち以外にだれが萬年参を密輸出するというんだ?」

 

「「・・・・・・」」

 

キサキは萬年参の密輸出に玄武商会の段ボールが使用されていたと述べると、レイジョがそれに反発する。そしてレイジョにまた玄龍門の執行部長である近衛ミナが反論し始め、2人はヒートアップしていく。その様子をキサキと素子は黙って見ていた。

 

「熱くなっている所悪いけど、もうその件については調べがついているわ」

 

「「は…?」」

 

熱くなっている2人に対し、素子は調べがついたと言って言い争いを止めさせた。

 

「先生それホント?私が事情を話してからそんなに時間も経ってないのに…」

 

「そうよ。自治区外とのやり取りが制限されている山海経において、物の流れを追跡することはそれほど難しいことではないわ」

 

「噂に違わず優秀じゃのう…」

 

既に犯人の調べがついたと言う素子に、ルミは驚いていた。そしてキサキも、彼女の優秀さに舌を巻いていた。

 

「お前たちは梅花園の最近の現状について知っているか?」

 

「梅花園…?どうしてまた…」

 

「最近、梅花園では社会勉強の一環として園児に配達の手伝いをさせているそうよ」

 

そして、素子は唐突に梅花園の事を一同に話し始める。梅花園は最近荷物運びの手伝いを行っていることを、彼女はシュンから聞かされていた。

 

「先ほど春原の妹の方に荷物を調べさせたところ、コイツが出てきたわ」

 

「これは…玄武商会の段ボール!!」

 

「奴らは萬年参を何処かから確保した後、一度梅花園を通して山海経外部に荷物を持ち出しているらしいな」

 

そこから素子はココナに梅花園にある段ボールを調べさせ、玄武商会の名の入った段ボールを見つけ出したのである。

 

「早く回収しないと…!!」

 

「その必要はないわ」

 

「どうして…!?」

 

「コイツを餌に運び屋と持ち出し役を釣り出すためよ」

 

梅花園に萬年参の入った玄武商会の段ボールがあると知ったレイジョは、慌てて回収しようとしていた。だが素子は一度犯人を泳がせることによって、運び屋と持ち出し役を同時に確保しようとしていた。

 

「さっき春原の姉の方に『おつかい』を一時的に中断させたわ。これでヤツら直接萬年参を持ち出そうとするはず。そして受け渡しをする瞬間を抑える」

 

「こ、これがシャーレの先生の手腕か…!」

 

素子は既にシュンに連絡を取り、おつかいの一時的な中断を要請していた。これにより犯人たちに直接受け渡しをさせようと仕向けたのである。素子のその手際の良さに、ミナは感激していた。

 

「して、妾たちに何をして欲しいのじゃ?」

 

「まずはここに写っている犯人2人の素性を調べてちょうだい。あと、犯人を確保するのに人手がいるから人員を1人寄越して」

 

「先生…!!犯人を捕まえるだけなら私たち玄武商会だけで…」

 

「自作自演を疑われても面倒だ。監視役の1人でも付けさせてやれ」

 

素子の話を聞いてキサキは彼女が玄龍門に何を要求しているのかを尋ねと、素子は監視カメラに写った犯人たちの画像を見せて、2人の素性を明かすよう指示する。さらに犯人を確保するために玄龍門から人員を寄越すよう要求した。それにレイジョは反発したが、玄龍門に自作自演を疑われないようにとの素子の思惑があったのである。

 

「承知した。ミナ、犯人確保まで先生の指示に従え」

 

「はっ…!!」

 

キサキは素子の要求を聞き入れ、ミナを先生の下へ付かせた。

 

「感謝するわ」

 

「礼には及ばぬ」

 

 

 

 

 

数日後

 

素子たちは一般のトラックにカモフラージュした装甲車に乗り、犯人が乗るトラックを追跡していた。車内には素子とレイジョとルミがおり、ミナは別行動でもう一人の犯人を追跡している。

 

「まさか、萬年参を玄武商会の段ボールに詰めて梅花園に渡していたのが、下っ端の1年生とはいえ玄龍門の構成員だったなんてね…」

 

「そのことが判明した瞬間、玄龍門の奴ら目の色を変えて事態の収拾に積極的に参加するようになりましたからね」

 

「身内の恥というのは隠しておきたいものよ」

 

ルミが車を運転し、レイジョと素子が後ろで待機している。密輸出をしていた犯人の1人は、玄龍門の1年生であり、彼女たちはその犯人の乗るトラックの後ろにピッタリと付き、受け渡し場所まで尾行を続けていた。

 

「もう一人のほうは、ブラックマーケットを拠点に活動する売人のようね」

 

「山海経の貴重な特産品を高値で売りさばいているなんて許せない…!!」

 

そして、もう一人の山海経から外部に萬年参を持ち出す役を担っているのは、ブラックマーケットの売人(ロボ市民)であった。彼の違法行為に、レイジョは義憤に駆られていた。

 

1つ前のトラック

 

「まさか梅花園を通じて萬年参を山海経の外に持ち出しているのが玄武商会の連中にバレるなんて…想定外だったわ」

 

素子たちの1つ前を走るトラックでは、密輸出の犯人が焦りながら目的地へと向かっていた。

 

「この取引を玄武商会に邪魔されるわけにはいかない。早くあの男にも伝えないと…」

 

犯人は素子たちが後ろにいることには気づかずに、玄武商会の邪魔が入ったことに歯噛みしていた。

 

 

 

 

 

その後 受け渡し場所

 

「遅いな…。そろそろ梅花園の園児がくる時間のはずだが…」

 

持ち出し役の犯人は、目的の場所でいつものように梅花園の園児を待っていた。

 

「おーーーーーい!!」

 

「!?」

 

そこに運び役の玄龍門構成員がトラックの窓から顔を出し、持ち出し役に手を振りながら現れる。彼女は慌てた様子で何かを訴えようとしていた。

 

「梅花園の件が玄武商会の連中にバレたんだ!!何か別の方法で…!!」

 

「あのバカ…!!取引の内容を大声でベラベラと…」

 

運び役は持ち出し役に、梅花園を中継していたことがバレたと大声で叫びながら伝える。持ち出し役は取引の内容を聞かれる恐れがあるため、彼女の行動に顔を顰めていた。

 

(あの後ろにピタリと付いてるトラックはまさか…!!)

 

「尾けられやがったな!!」

 

「なっ…!?何を…!!」

 

そして持ち出し役は運び役のトラックの後ろにピッタリと付いているトラックを見て、彼女が尾行されていたことに気付く。その瞬間持ち出し役は手持ちのサブマシンガンを構えて2台のトラックに銃口を向けた。

 

「…!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「まずい…!!」

 

持ち出し役は2台のトラックに向けて発砲する。運び役もルミも弾を避けるためにハンドルを切る。

 

「2人共しっかり掴まってて!!」

 

「わぁぁぁぁぁ!!」

 

「・・・・・」

 

運び役の車は柱に激突し、その後ろにいるルミたちの乗る車もタイヤを撃ち抜かれ横転する。車が横転したにもかかわらず、素子は冷静であった。

 

(やはりカモフラージュした装甲車か。ならば…)

 

「フッ…」

 

持ち出し役はサブマシンガンをルミたちの乗るトラックに撃ち込むが、トラックの装甲が不自然に厚いのに気づき、弾倉を別の物に取り換える。

 

「2人共外に出るぞ!」

 

「うん…!!」 「はい!!」

 

素子は横転したトラックの窓を割り、ルミとレイジョと共に外へ脱出する。

 

「・・・!!」

 

弾倉を装填し直した持ち出し役は腰だめでサブマシンガンを構え、一気に素子たちが乗っていたトラックへ連射をする。銃弾の威力は絶大で、サブマシンガンであるにもかかわらず装甲板がベコベコにへこんでいた。

 

「爆発する!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

そして銃弾の喰らったトラックは無惨にも爆発し、ルミとレイジョは爆風であらぬ方向へ吹き飛ばされる。一方素子は頭部をガードしていたため少し飛ばされるだけで済んだ。

 

「クソッ…遅かったか!」

 

「チッ…増援か」

 

装甲車が爆発した直後、乗用車に乗ったミナが到着する。

 

「装甲板をおしゃかにするなんて…」

 

『強装弾の固め撃ち!車のドア抜かれるわよ!』

 

「サブマシンガンでですか…!?」

 

(何て無茶なヤツだ…)

 

ミナは目の前の光景を見て、驚いて口を半開きにしていた。ボケっとしているミナに素子は注意を促すと、彼女は銃を構えて車を飛び出す。だがミナはサブマシンガンで装甲を抜いたことを、未だ信じられずにいた。

 

「このッ…!!」

 

「チッ…!!」

 

「待て!!」

 

ミナは持ち出し役に向かって二丁拳銃を構えて発砲する。だが持ち出し役はミナに背を向け、脇の通路へと逃げていく。

 

「路地裏に逃げられた…!!」

 

『近衛、そのままソイツを追え。私は上から回り込む!』

 

「了解…!!」

 

素子はミナに持ち出し役を追うよう指示した。

 

『朱城と鹿山は、まだ意識があるならトラックの犯人を拘束!』

 

「う、うん…」

 

「分かりました…」

 

「まさかこんなことになるなんてね…」

 

さらに素子はルミとレイジョに運び役の確保を任せる。ルミは目の前で起きている光景を見て、戸惑っていた。

 

 

 

 

 

山海経市場

 

「旦那!!ここ最近どう?」

 

「まぁボチボチってとこ」

 

「クソッ…!見失ったか?」

 

時刻はお昼過ぎを周り、山海経の市場は活気に満ち溢れていた。そのせいか、ミナは持ち出し役を見失ってしまった。

 

「おい、そこのお前」

 

「は、はい…私でしょうか?」

 

ミナは近くにいた住人に声を掛ける。

 

「すまんが、コイツがどこに行ったか知らないか?ここらへんを通ったはずなんだが…」

 

「さ、さぁ…?山海経にもロボット型の市民はそれなりにいますので…」

 

「そうか…」

 

(ヤツめ…何処へ消えた?)

 

そして住人に持ち出し役の写真を見せるが、住人の反応は芳しくなかった。

 

『アロナ、半径100m以内の電波通信を監視。ヤツが通信を開いた瞬間に逆探して現在位置を割り出せ』

 

『了解!!』

 

一方素子は5階建ての建物の屋上から市場全体の様子を眺めていた。彼女はアロナに指示を出し、持ち出し役の居場所の特定を図っていた。

 

『捕捉しました…!!』

 

『近衛、そこから3つ先の通路を右に曲がって、突き当りを左だ!!』

 

『りょ、了解…!!』

 

そしてすぐにアロナが持ち出し役の通信を捕捉し、居場所を素子に伝える。彼女はミナが今いる場所を特定し、持ち出し役を追うよう指示した。

 

「・・・・・・」

 

(いた…!!先生の言う通りだ)

 

ミナが素子に指示された場所に辿り着くと、持ち出し役が辺りをキョロキョロと見渡しているのを見つける。

 

「玄龍門執行部長の近衛ミナだ!!」

 

「チッ…しつこい女だ!!」

 

ミナは再び二丁拳銃を持ち出し役に向けて、自らの所属と名を名乗った。

 

「なんだなんだ…?」

 

「玄龍門の構成員が銃を構えてるぞ?」

 

「おい…!危ないから離れてくれ!!」

 

だがそれにより市民が野次馬に集まってきてしまう。ミナは彼らを追い払おうと注意するが、人が散る様子はなかった。

 

「へへへ…助かったぜ」

 

「おい待て…!!」

 

ミナが人ごみに紛れていくのを見た持ち出し役は、これをチャンスだと考え再びその場から逃走を始めた。ミナは彼に標準を合わせるが、市民が邪魔で発砲することができずにいた。

 

「そこまでだ」

 

「アイツの仲間か!?」

 

だがその時、逃走する持ち運び役の前に素子が現れる。彼女は市場の出店を飛び移って、この場へ急行してきたのである。

 

「ヘイローのない人間なんぞさっさと倒して…」

 

「はぁッ!!」

 

「ぐへぇ!!」

 

持ち出し役が素子のことを甘く見ていると、彼女は回し蹴りを喰らわせる。彼女の蹴りをくらった持ち出し役は、その場に気絶して倒れてしまった。

 

「すまない、先生!」

 

「サブマシンガンで強装弾を撃ったからフレームもバレルもダメになってるわね」

 

ミナは持ち出し役を倒した素子に駆け寄る。素子は彼の使っているサブマシンガンを見ながら、ゴースト錠を首元に取りつけていた。

 

『こっちは終わったぞ。そっちはどうだ?』

 

『こっちも玄龍門の下っ端を捕まえたよ。気絶してて話を聞ける状態じゃないけどね』

 

『そうか』

 

素子と山海経の3人は無事犯人を捕らえることに成功した。

 

 

 

 

 

その後 六和閣

 

「以上が尋問の結果になります」

 

「「「「「・・・・・・」」」」」

 

六和閣に集まった一同は、犯人の1人である玄龍門の下っ端を尋問した結果を聞かされて唖然としていた。

 

「ちょっとコレどういう事…?」

 

「つまり、あやつが言うには妾が直接萬年参を外部へ持ち出すように命じたそうじゃ。無論そんな指示を出した覚えもないし、そもそも妾はあやつに会ったことすらないがな」

 

「さらには私や玄龍門の他の幹部たちからも承認を受けていると言い出す始末だ…」

 

ルミたちがそうなるのも無理はない。何故なら彼女は門主であるキサキが直々に萬年参を持ち出すように命じたと証言したからである。勿論キサキもミナも、他の玄龍門の幹部たちもそんなことを下っ端に命じることは有り得ない。

 

「それじゃあ何でそんな嘘を…」

 

「それがそうでもないようじゃ」

 

「どういう事…?」

 

レイジョは下っ端がすぐにバレる嘘をついて、何の意味があるのかと疑問に感じる。だがキサキはそれを否定し、ルミは首を傾げる。

 

「このままでは埒が明かないので、錬丹研究会のサヤ会長に診断を依頼した。そしたら彼女の身体から記憶を混濁させる成分が検出された」

 

「つまり、あやつは本当に妾が命じたと思っておるのじゃ」

 

「「・・・」」

 

尋問で意味不明な言動を繰り返す下っ端に違和感を感じた玄龍門は、錬丹研究会の薬子サヤに診断を依頼する。すると、解析の結果彼女の身体から記憶を混濁させる成分が見つかったのである。その事実を知らされた玄武商会の2人は、驚きすぎてなにも言えなかった。

 

「して、そちらの犯人の様子はどうかの?先生」

 

「そっちと同じようなものよ。ヤツの電脳に潜ってみたが、ご丁寧に萬年参を山海経外へ持ち出した後の記憶が消去されているわ」

 

「そうか…残念じゃ」

 

キサキは素子にブラックマーケットで活動している持ち出し役の様子を尋ねる。だがこちらのほうの結果も同じで、キサキは落胆した様子であった。

 

「ですが、サヤ会長からこの件の首謀者と目される者の名前について聞き出すことができました」

 

「まさか…あやつか?」

 

「はい…このような薬を作れるものはそういないかと」

 

「そうか…」

 

だが下っ端を診断したサヤには、この事件の真犯人に心当たりがあるようであった。さらにはキサキとルミも何か知っているような感じである。

 

「申谷カイ…」

 

その者の名は申谷カイ。元錬丹研究会会長にして、キサキによって山海経を追放された、『七囚人』の1人である。

 

 

 

 

 

山海経郊外

 

「思ったより取引がバレるのが早かったな」

 

山海経と他自治区の境界で佇んでいたのは、この事件の真犯人である申谷カイであった。彼女は山海経を追放され、矯正局送りにされた後、七囚人として脱獄、今は各地を転々としていた。

 

「シャーレの先生か…興味深い存在だ。一体どのような化学反応を起こしてくれるのか楽しみだよ。クックックッ…」

 

カイは自信の計画を暴いた先生に興味を示していた。

 

 

 

 

 

龍武同舟 完




月華夢騒→五塵来降と続きます。
少佐の攻撃と言えば蹴りよ蹴り。

それではまた来週。
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