GHOST IN THE SHELL Blue Archive   作:H2O(hojo)

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dividual episode
今回で海賊編は最後になります。

アビドス編2章以降の少佐の義体はキヴォトス用のエンジニア部製です。
キヴォトス人との戦闘にある程度耐えられるよう耐久と出力が1段階くらいアップしています。

元々の本編の描写だけでも耐久以外はだいぶキヴォトス人より寄りですけどね。


海賊④ PIRATE

海上プラント上層・最上階

 

「連邦捜査部シャーレだ!そこのお前大人しくしろ!!」

 

「・・・・・・」

 

素子とカンナは海上プラントの最上階へ辿り着く。カンナは銃を構えて、目の前にいる人物に付きつける。その男は大柄の茶虎猫の獣人で、静かに窓の外の海を眺めていた。

 

「名を名乗れ」

 

「バイアン…」

 

その男は自分のことをバイアンと名乗った。

 

「村上キョウを唆し、オデュッセイアの業務を妨害し、麻薬や武器の密売を指示したのはお前で間違いないか?」

 

「あぁ。その通りだ」

 

カンナの尋問に対し、彼はただ静かにそう答える。

 

『少佐…バイアンという名前だけでは候補者が多くて絞り込めません』

 

『オデュッセイア関連で検索は?』

 

『しましたが、見当たりません』

 

カンナが尋問している横で、素子は電脳空間でアロナとプラナと会話をしていた。バイアンという人物をネットで検索をかけたようだが、結果は芳しくなかった。

 

『これほど大規模で周到な計画を立てれるヤツだ。無名の存在というのは考えにくい…』

 

『無名というよりは、意図的に情報が消されているのでは…?』

 

『どういう事ですかプラナちゃん?』

 

『なるほど。オデュッセイア側からの情報統制か…』

 

あまりにも情報が見つからないため、プラナは情報がないのではなく意図的に情報が抹消されていることを疑う。素子は彼とオデュッセイアに何かしらの後ろ暗い関係があるのではないかと疑っていた。

 

(本人に直接問いただすしかないようだな)

 

「お前も村上キョウも随分とオデュッセイアを嫌っているようだが、動機はオデュッセイアへの復讐か?」

 

「そうだ」

 

「やはりそうか」

 

このままネットの情報を漁っていても埒が明かないと感じた素子は、バイアンに直接犯行の動機を尋ねる。素子の問いに彼はそうだと頷くのであった。

 

「ポセイドン海賊団…それが40年前に私が所属していた組織の名前だ」

 

「「ポセイドン海賊団…」」

 

「ポセイドン海賊団は40年前にオデュッセイアによって壊滅させられた。ヤツらに通じていた仲間の裏切りによってな…!!」

 

バイアンはポセイドン海賊団という言葉を口にすると、2人のほうへ振り返る。彼の顔は壮年の獣人のものながら、その眼は復讐の炎に燃えていた。

 

「ポセイドン海賊団壊滅後、その記録はオデュッセイアによって闇に葬られた。もはやオデュッセイアの人間でさえ、その名を知る者は限られているだろう」

 

(40年前か…なるほど。誰もヤツのことを知らないし、ネットにも情報が記録されていないわけだ)

 

裏切りによる闇討ちという卑劣なやり方を隠したかったのか、オデュッセイアはポセイドン海賊団を壊滅させた後その記録を抹消したようである。それゆえに誰もその事を知らず、ネットにも記録がなかったのだと素子はようやく理解した。

 

「だがあの頃を知る私はここでこうして生きている。そしてあれから40年間私はヤツらへの復讐の機会を伺っていた」

 

「この海上プラントも麻薬や武器の密売も、ここに泊っている艦船も全てはその復讐のためか?」

 

「そうだとも。相手は学園という巨大組織。ヤツらを倒すためには金も武器も人員も必要なのでな」

 

そしてバイアンはオデュッセイアにされた仕打ちを忘れることなく、復讐を果たす機会を虎視眈々と狙っていたのである。この廃棄された海上プラントも、そもそも素子たちがこの事件に介入するきっかけとなった麻薬の密売に関しても、全てはオデュッセイアに復讐するための計画の一部だったのである。

 

「連邦捜査部シャーレとか言ったか?申し訳ないが私の復讐の邪魔をしないでもらいたい」

 

「それはできない相談だな」

 

バイアンは自身がオデュッセイアに復讐する理由を語り終えると、素子とカンナに自分の邪魔をするなと述べる。だが当然2人がそれで退くはずもなく、素子たちはバイアンに向け銃を構えた。

 

「ならば仕方あるまい。ぬぅっっ!!」

 

「「…!?」」

 

素子たちが退かないと分かったバイアンは戦闘態勢に入る。彼は筋肉を隆起させ、獰猛な牙を剥きだしにし、2人に殺気を撒き散らした。

 

「改めて名乗ろう。私は元ポセイドン海賊団操舵手のバイアン」

 

「ヴァルキューレ警察学校公安局長の尾刃カンナだ」

 

「連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの教員、草薙素子」

 

戦闘を始める前に、バイアンは改めて自身の名前を名乗る。彼が名前を名乗ったので、カンナと素子も自分の所属と名前を明かした。

 

「いざ尋常に勝負!!」

 

 

 

 

 

「うらぁぁぁぁ!!」

 

「速いッ…!!」

 

バイアンはその場から跳躍し、猛スピードでカンナの元へ迫る。

 

「はぁぁぁ!!」

 

「ぐはぁッ…!?」

 

「尾刃!!」

 

彼はカンナの腹に拳を叩き込むと、彼女は後ろの柱まで吹き飛ばされる。彼の攻撃をモロに喰らってしまった彼女はその場に倒れ、気絶してしまった。

 

「海賊団において私は操舵手を務めていたが、海賊に最も必要なのは腕っぷしだ。白兵戦となれば否が応でも戦う必要がある」

 

「武器は?」

 

「持ち合わせていない。私はこの腕一つで海賊団の幹部へとのし上がったのでな」

 

バイアンはポセイドン海賊団時代は操舵手を務めていた。だが彼は本職の戦闘員ではないにも関わらず、これほどまでの戦闘能力を持っているのである。

 

「・・・・・・」

 

「ほう…武器を捨てるか」

 

バイアンの動きを見た素子は、持っていたサブマシンガンを床に置く。

 

『お前たち余計なことはするなよ。これはコイツと私の勝負だ』

 

『は、はい!!』 『はい…』

 

そして素子はアロナとプラナにもシッテムの箱の能力を使わないよう、釘を刺した。

 

「ふっ!!」

 

「はぁっ!!」

 

素子とバイアンは互いに拳を突き出す。2人の拳が正面から激突すると、空気の衝撃波が部屋に広がった。

 

「私と真正面から打ち合って拳が無事とはな。ヘイローもないのになかなかやるではないか」

 

「お褒めに預かり光栄だわ」

 

バイアンはヘイローのない人間である素子が自分と互角に打ち合えることに驚いていた。

 

「「・・・・・・」」

 

そして再び、2人は向き合い構えを取った。

 

「はぁぁぁぁッ!!」

 

「…ッ!!」

 

バイアンは右拳を素子の顔面に向けて放つ。だが彼女はしゃがんでそれを避け、彼の拳は空を切った。

 

「やぁぁぁッ!!」

 

「くっ…!!」

 

(何という動き…!?)

 

素子はしゃがんだ後にすぐに体勢を元に戻し、右脚をバイアンの顎目掛けて振り上げる。バイアンはすかさずそれを躱す。彼は素子の人間離れした動きに驚愕していた。

 

「うぉぉぉぉぉ!!」

 

(人間離れした俊敏さと、その体幹…。この女只者ではない!)

 

「はぁぁぁぁぁッ!!」

 

(年齢は恐らく50後半から60前半…ヘイローを持たない獣人だというのにここまで動けるか!)

 

バイアンと素子は戦いながら互いの実力を冷静に評価していた。2人共その豊富な経験からくる洞察力で、侮れない相手であると認識するのであった。

 

「先ほどからどうも動きが読みにくいと思ったが…。貴様、生身の肉体ではないな?」

 

「ご明察。私は脳と脊髄の一部以外が機械で構成された全身義体のサイボーグよ。それも、戦闘に特化した特注のね」

 

「なるほど。ならばその人間離れした動きも頷ける。最もその機械の肉体に振り回されないだけの実力があってこそのものだろうが…」

 

「そこまで『視えて』いるか。お前も相当な修羅場をくぐり抜けてきたらしいな」

 

バイアンはここまでの戦闘で、素子が生身の人間ではないことに気付く。そして彼はそれだけではなく、義体を自分の自由自在に操る素子の卓越した技量についても見抜いており、彼が単なる壮齢の獣人ではないと素子に感じさせていた。

 

 

 

 

 

海上プラント・表層

 

「さてさて…少佐たちの様子はどうかな」

 

敵をあらかた蹴散らしたモエは、ドローンを飛ばして上層の様子を伺う。

 

『はぁぁぁぁぁぁ!!』

 

『うぉぉぉぉぉッ!!』

 

「おぉー、小鳥遊ホシノとあの眼帯っ娘が戦ってる」

 

「2人ともよくあんな重いものを振り回せますね」

 

上層の2階ではホシノと村上キョウの一進一退の攻防が続いていた。2人は錨と盾を軽々と振り回しており、マシロはそれに感心していた。

 

「さてさて、少佐とカンナ局長はっと…」

 

『ハァッ!!』 『フッ!!』 『えぁぁッ!!』 『おぉッ!!』

 

続いて、モエはドローンを上昇させて素子と黒幕であるバイアンのいる最上階に向ける。そこでは2人が肉弾戦を展開しており、激しい戦闘が繰り広げられていた。

 

「こっちは『メスゴリラ vs オスタイガーの海賊島デスマッチ』って感じだねぇ…」

 

「私、こんな激しい殴り合いを見るの初めてですよ…」

 

「うわぁ…あれ痛っいだろうな。うっ、少佐に腹パンされた時のこと思い出してきた…」

 

そんな対決の様子を見て、モエは冗談めかしに『デスマッチ』だと揶揄する。銃撃戦が基本のキヴォトスにおいて、マシロは大人同士のガチの殴り合いを見て若干引いていた。

 

 

 

 

 

海上プラント・最上階

 

「らぁぁぁッ!!」

 

「フンッ…!!」

 

素子は回し蹴りでバイアンの顔を狙う。彼はそれに片腕を顔の横に持ち上げ、もう片方の腕でそれを押さえることで、彼女の蹴りを受けた。

 

「・・・・・・」

 

先ほどまでバイアンの一撃によって気絶していたカンナであったが、ここでようやく目を覚ます。だが彼女は2人の戦闘には入らず、じっと勝負の行方を見守っていた。

 

(先生は私が助けに入ることをお許しにならないだろう。今、私のやるべきことは、先生があの男との勝負に勝った後にヤツが余計な悪足搔きをしないよう取り押さえること…!!)

 

彼女は素子の意図を察し、この戦いの勝敗を見届けることにした。

 

「うおぉぉぉぉッ!!」

 

「ぐッ…!!」

 

バイアンの拳が素子の正面に飛んでくる。素子は腕をX状に組み、攻撃を防ぐ。だが彼の攻撃の威力は凄まじく、その場から2mほど後ろに下がってしまった。

 

(この義体の耐久値も限界だな…。そろそろ決めないとまずわね)

 

(肉体が悲鳴を上げ始めているな。やはり全盛の頃と同じようにはいかぬか…)

 

ここまで激しい肉弾戦を繰り広げてきた2人だが、そろそろ限界が見え始めていた。

 

「お前の義体にしても私の肉体にしても、次が最後の一撃だ」

 

「あぁ」

 

次の攻撃が最後であり決着となることを理解している2人は、息を整えて準備をする。

 

「ふんッ…!!」

 

「・・・・・・」

 

(再び肉体に力を入れ始めたな)

 

そしてバイアンは再び自身の肉体に力を入れ始める。彼の肉体からは湯気のように気が立ち昇っていた。

 

「草薙素子覚悟ぉぉぉぉぉ!!!」

 

「来い!!!」

 

2人は互いに相手に向かって拳を構えて走り出した。

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁッ…!!!」」

 

2人の右拳が再び激突する。この部屋に一際大きな破壊音が響く。

 

「…ッ!!」

 

「先生…!!」

 

その破壊音とは素子の義体の右腕部分が破壊された音であった。

 

「私の勝ちだぁッ!!」

 

「はぁぁぁぁッ!!!」

 

「なにィ!?」

 

(右腕を囮にしただと…!!)

 

バイアンは素子にトドメを刺すために左拳を彼女の心臓部分に向けて打ち込もうとする。だがそれよりも早く、素子の右脚が彼の顔面に飛んでくる。

 

「がはぁッ…!!!」

 

素子の回し蹴りはバイアンの右頬に直撃。これが決着の一撃となった。

 

「動くな。そこまでだ!!」

 

「待たせて悪かったわね」

 

「い、いえ…お見事でした」

 

決着が付いたのを見て、カンナはその場で倒れているバイアンに銃を構える。素子が右腕を破壊されている以上、今彼を取り押さえられるのは彼女だけである。

 

「私の負けだ…」

 

「バイアン。貴様を連邦捜査部シャーレの権限により逮捕する」

 

バイアンは素直に自身の敗北を認める。カンナはジャケットに入れておいた手錠を取り出し、彼に掛けようと近づいた。

 

「だが、お前たちも道連れだ!!」

 

「貴様ッ…!?」

 

だがバイアンはズボンのポケットからスイッチのようなものを取り出す。

 

「貴様らもこの海賊島ごと海に沈め!!」

 

「自爆スイッチか!?」

 

彼が持っているのは海賊島の自爆スイッチであった。彼は取り押さえようとするカンナを振り切ってスイッチのボタンを押した。

 

「ハッハッハッハッ…なに?」

 

「爆発しない…?」

 

しかし、バイアンが自爆スイッチを押したにも関わらず、海賊島は何も起きなかった。

 

「残念だったな。海上プラントに仕掛けてある自爆装置は全て破壊させてもらった」

 

「バカなッ!?いつのまに…?どうやって…?」

 

「管制室でデータを解析した際に、このプラントに自爆装置を仕掛けていることを知ったわ。ご丁寧に配置している場所のデータも置いてあったし」

 

素子はバイアンに自爆装置は全て破壊したと言い放つ。彼女が管制室のデータを解析した際にその事実を知ったのである。

 

『はぁ…はぁ…工作員の救出と、自爆装置の破壊完了…』

 

『はぁ…はぁ…先生、これでいいか?』

 

『ご苦労』

 

実際に自爆装置を全て破壊したのはレンゲとイオリとタチコマ2機のチームである。彼女たちは短い時間で工作員の救出と自爆装置の破壊を行っており、へとへとであった。

 

「お前の負けだ」

 

「・・・・・・」

 

ポセイドン海賊団幹部にして元操舵手のバイアンは、ここに完全敗北した。

 

 

 

 

 

その後、海賊島では周辺海域で待機していたオデュッセイアの保安部隊が上陸する。

 

「オヤジ…すまねぇ」

 

「いや、いい。もういいのだ」

 

海上プラントの表層でバイアンとキョウは手錠を掛けられ対面する。2人の顔は先ほどまであった覇気が消え、意気消沈といった顔であった。

 

「ほら、さっさと歩け!!」

 

「チッ…コイツら…」

 

「・・・・・・」

 

そして2人はオデュッセイアの保安部隊に連れられて、下層にある船の停泊所へ連行されようとしていた。

 

「キョウ…今まで私の復讐に付き合ってもらって礼を言う。そして、すまなかった」

 

「いいんだよ。俺だってアイツらの鼻を明かしてやりたかったんだ」

 

「そうか…。だがお前はこれ以上オデュッセイアに縛られる必要はない。好きに生きろ」

 

「オヤジ…?」

 

バイアンはキョウに今まで自分について来てくれたことに感謝し謝罪する。だがキョウは自分の意志でバイアンについて行ったのだと、笑顔で応えた。それを聞いたバイアンはフッっと笑うと、覚悟を決めたような表情を見せた。

 

「はぁぁぁぁぁッ!!」

 

「うおっ!?」

 

そしてバイアンはオデュッセイアの生徒を体当たりで倒し、その場から離れる。

 

「貴様ッ!!」

 

「どけっ!!」

 

「クソッ…!!何をするつもりだ…?」

 

もう一人のオデュッセイア兵がバイアンに銃を構えるのを横目に、彼はキョウが持っていた錨を手錠で縛られた手で奪い、プラントの端に移動する。彼の立つ場所から海上までは20m程あり、一歩踏み出せば海へ真っ逆さまである。

 

「このまま晩年を失意のうちに過ごすくらいならば、私は潔く死を選ぶ!!」

 

「何だと…!?」

 

「バカな真似は止めろ!!」

 

「オヤジ…」

 

そして彼はオデュッセイアの保安部隊とキョウの前でそう叫ぶ。オデュッセイアの生徒たちは必死で彼を止めようとするなか、キョウは彼の行動に呆然としていた。

 

「オデュッセイアの者たちよ!!かつて貴様らが恐れたポセイドン海賊団の最期だ!!とくと見届けよ!!」

 

そう言ってかれは錨を抱えて、プラントから飛び降りる。

 

「オヤジィィィィィィィィィィィィ!!!」

 

キョウの絶叫がプラント中に響くのと同時に、プラントの下では大きな水しぶきが上がった。

 

 

 

 

 

数日後、シャーレの建物の一角にて

 

「でねでね~その時用水路に現れたワニがさぁ~」

 

「へぇ~そっちはそうなってたんだね~」

 

ここはシャーレに併設されている室内プールである。窓にはきらめく太陽が照らす南国の映像は写されており、プールサイドにはビーチチェアーが並ぶ。そこでタチコマたちは先日の作戦での体験を語り合っていた。

 

「よしっ!」

 

「それっ!」

 

「そっち行ったぞ」

 

「分かってるよ」

 

マシロ、モエ、レンゲ、イオリの4人はプールにつかり、ビーチボールをトスして遊んでいた。

 

「うへぇ~若いっていいねぇ~」

 

そしてホシノはビーチチェアーに寝そべり、トロピカルジュースを堪能しながら4人の様子を眺めていた。

 

「その後、バイアンの死体は見つかっていません」

 

「そうか」

 

ホシノの横で同じくビーチチェアーに水着を着て寝転んでいる素子に、カンナは水着姿で報告する。

 

「あの後、古関と空崎に40年前の記録を調べさせたわ」

 

「例のポセイドン海賊団ですか…?」

 

「えぇ」

 

素子はトリニティとゲヘナの古い記録にアクセスできるウイとヒナにバイアンが所属していたポセイドン海賊団のことを調べさせていた。

 

「ポセイドン海賊団は40年前キヴォトスの海を支配していたと言っても過言ではない。それこそ今のオデュッセイアと同程度の規模の勢力を保持していたそうよ」

 

「それが今は影も形もないわけですか…」

 

「歴史の闇に葬られたのよ」

 

バイアンの言う通りポセイドン海賊団は40年前にキヴォトスの海上を支配していた組織であった。しかし今は影も形もなく、素子が言うには歴史の闇に葬られたとのことである。

 

「海賊団には船長の他に7人の幹部がいたそうよ。あのバイアンって男もその1人ね」

 

「彼はポセイドン海賊団は仲間の裏切りによって滅んだと言っていましたが…」

 

「幹部のうちの1人が裏切ったのよ。いや…この表現は正確ではないわね。海賊団の幹部の1人は当時のオデュッセイアの生徒会長の双子の妹で、元より海賊団を内側から崩壊させるために送り込まれたスパイだった」

 

素子はトリニティとゲヘナの情報部からもたらされた情報をカンナに語る。バイアンの言うように、ポセイドン海賊団は幹部の裏切りのよって崩壊したのである。

 

「海賊団の船長はその裏切り者によって殺害、頭を失った団員たちはオデュッセイアの追撃により撃破されていった…あの男を除いてな」

 

「「・・・・・・」」

 

オデュッセイアからの刺客である彼女によって船長は殺害されたことにより勢いを失った海賊団は、その後オデュッセイアに撃破されたようである。騙し討ちの事実を知ったカンナとホシノの顔は曇っていた。

 

「その後ポセイドン海賊団の施設や艦船はオデュッセイアによって接収され、生徒会長とその妹は海賊団の壊滅と学園の最盛期を作り出した英雄となったわけだ。不都合な事実を闇に葬ってね」

 

「そんなことが…」

 

「オデュッセイアがいつも以上に協力的だったのも、その真実が露呈するのを防ぐためだろう。いくら記録を抹消したとはいえ、上層部の中の一部の人間はこのことを知っているはずだ」

 

そしてその後、ポセイドン海賊団の遺産は全てオデュッセイアに渡ることとなる。これによってオデュッセイア海洋高等学校は今の繁栄を手にしたのだ。そして、今回の事件に彼女たちが協力的だった理由もこの事が明るみになることを恐れたからであると素子は推測していた。

 

「彼が恨むのも分かる気がするよ…」

 

「小鳥遊、余計な同情はするなよ。騙し討ちで崩壊しようがアイツらはれっきとした海賊だ。あの男は自由な海がどうだとのたまっていたが、実際には海賊団の連中だけが好き勝手やれる無法地帯だったらしい。40年前のアレコレは単なるポセイドンとオデュッセイアの覇権争いに過ぎない」

 

「所詮は海賊か…」

 

ホシノはポセイドン海賊団に同情を見せるが、彼らは海賊であり大義があったわけではない。彼らが自由を謳歌していた陰で略奪に苦しむ者たちがいたのもまた事実なのである。それを聞いたカンナは、所詮は海賊と吐き捨てた。

 

「あの娘は…?」

 

「矯正局送りが決まった。最も矯正局は常に満員御礼だ。反省が見られればすぐに釈放されるだろうがな」

 

「そっか…自分の道を見つけられるといいんだけど…」

 

ホシノは自分と戦った村上キョウの心配をしていた。カンナはヴァルキューレの人間のため、彼女の処遇を知っており、矯正局に収監されたと伝える。それを聞いて、ホシノは彼女の更生を望むのであった。

 

「さてと、湿っぽい話は終わらせてカンナちゃんも後輩に混ざって遊ぼうぜ~」

 

「私は別に…ってこら!腕を引っ張るな」

 

バイアンとキョウの顛末を聞き終わったホシノは、ビーチチェアーから起き上がって他のメンバーたちの遊びに加わろうとする。彼女はこういった水遊びに消極的なカンナの腕を引っ張り、一緒に遊ぼうとしていた。

 

「はぁ…若いっていいわね」

 

プールではしゃぐ生徒たちを見て、素子は彼女たちの若々さを眩しく感じていた。

 

 

 

 

 

「あっ!ここにいたんですね!!せ~んせ~い!!そして皆さんも、いつまでそこで遊んでいるつもりですか?」

 

その後しばらく各々でプールでのバカンスを楽しんでいると、そこへユウカが現れる。

 

「まだ今回の作戦の報告書や経費精算書が山積みなんですよ?まったく…」

 

「「「「「・・・・・・」」」」」

 

ユウカはそう言って、窓に映されている南国の景色の映像を消す。先ほどまでの陽気な光景は消え、窓の外は雨の降るどんよりとした天気であった。それを見た一同は一気にテンションが下がってしまった。

 

「本気で転職考えようかしら…」

 

素子の言葉が室内プールに響いた。

 

 

 

 

 

海賊編 完




メスゴリラがメスゴリラしてるシーンを描きたかったので素手での対決にしました。

バイアン:村上キョウが『オヤジ』と呼ぶ人物。大柄な茶虎猫の獣人。58歳。元ポセイドン海賊団幹部。操舵手として卓越した技術を持っており、その技量の高さから『海馬(シーホース)』の異名で呼ばれた。
全盛期は勿論の事、今も獣人タイプの住人のなかでは最強格の強さを持つ。

ポセイドン海賊団:40年前に結成された海賊団。最盛期にはキヴォトスの海上網の殆どを掌握するほどの力を持っていた。しかし、仲間による裏切りの結果オデュッセイア海洋高等学校によって壊滅させられ、現在は歴史の闇へと葬られている。

オデュッセイアの話が始まる前に終わって良かった...

それではまた来週。
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