GHOST IN THE SHELL Blue Archive 作:H2O(hojo)
アリウスの話とかエデン条約編の話とかが少ないので書きました。
今回の少佐は2ndGIGのOPで着ている黒い上着を着てます。大体サオリと同じ格好。
エデン条約調印式での一件からしばらく経ち、素子はティーパーティー、救護騎士団、シスターフッドと共に後始末を続けていた。そしてとある雨の日に、彼女は1件のメッセージを受け取る。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
所定の場所へ向かうと、目の前には素子を撃った相手である錠前サオリが現れた。2人共傘をさしておらず、素子もサオリもコートがずぶ濡れになっていた。
「先生…アツコが…アツコが連れていかれてしまった…」
「仲間はお前含めて4人いたはずだが…」
「マスクを着けていた…あの娘がアツコだ」
アツコが連れて行かれたと嘆くサオリであったが、素子はアリウススクワッドの中で誰がアツコかを知らない。サオリはマスクを着けている少女がアツコだと言った。
「他の仲間は?」
「他の仲間もアリウスの襲撃に遭って、散り散りに…生死も不明だ…」
「そうか」
そして他の2人も仲間であったアリウスの襲撃に遭い、バラバラになってしまったようである。
「秤アツコ…彼女は、元よりそのように育てられた存在なんだ…。幼い頃からそうやって『生贄』にされる運命にあったのだと…。『彼女』は…。姫の運命を変えたいなら、彼女の命令に従えと…。そうすれば、姫だけでなく…他の仲間も助けてやると…。エデン条約を強奪し、ユスティナ聖徒会の力をアリウスのものとし…トリニティとゲヘナを手中に収めたら…。アツコが『生贄』にならずとも済む、と…」
(今回の件、ヤツらだけでは計画・実行したとは思えないことが多々あった。やはり裏で何者かが糸を引いていたようだな)
サオリはアツコの境遇を話し始める。彼女の話を聞いて、素子はアリウススクワッドやアリウスの生徒たちの裏で糸を引く存在がいると理解した。
「今の私は落伍者だ。トリニティにも、ゲヘナにも…同じアリウスにだって助けを求めることなどできない」
そう言ってサオリは膝を冷たい地面に着ける。
「だから、頼れるのはもう、草薙素子先生しか…」
そして両手まで地面につけ、いわゆる土下座の体勢になった。
「私の命を賭けて約束する、どんな指示だろうと従う。『ヘイローを壊す爆弾』、これも預ける。私の命を握ってもらって構わない。私を信用できないと判断したら、それを使ってくれ…。だから、頼む。どうか…アツコを…姫を…助けてくれ…」
さらには素子の言う事に全て従う、命も預けるからアツコを助けて欲しいと懇願する。
「ソイツが例の『ヘイローを壊す爆弾』か?」
「あ、あぁ…そうだ」
素子はサオリが差し出したヘイローを壊す爆弾を手に取る。
「まったく…」
そして彼女はその爆弾を宙に投げ、銃弾を撃ち込み破壊した。
「なっ!?一体何故…?」
「簡単に頭を下げるな。頭は立場が上の者が下の者に下げてこそ意味がある」
サオリは素子がヘイローを壊す爆弾を自ら破壊したことに驚きを隠せなかった。破壊した爆弾を再び何処かへ放り投げた後、素子はサオリに簡単に頭を下げるなと諭した。
「それと…くだらないことで命を賭けるな!!私にあんなものでお前を縛らせようとするな!!」
「先生…!!」
さらに素子はサオリの胸倉を掴み、彼女の発言と行動を叱った。そのあまりの気迫に、サオリは目を見開いて狼狽えていた。
「お前たちを裏で操っているのは何者だ?」
「『彼女』はアリウス自治区の代表であり、アリウス分校の主人。私たちは彼女と呼んでいるが、他の生徒からは『マダム』とも呼ばれている」
素子はサオリを放すと、彼女たちに指示をしている人物について尋ねる。サオリはアリウスの主人である『マダム』という人物が、アリウスを統率しているのだと答えた。
「それで、その『マダム』とやらはお前のお仲間を生贄に捧げて何をするつもりだ?」
「そこまでは私には分からない…。だが彼女がアリウスの奥にあるバシリカで儀式の生贄捧げられてしまったら、アツコは死んでしまう…」
次に素子はマダムの目的を尋ねる。しかし、サオリはマダムの目的については聞かされておらず、儀式の生贄に捧げられればアツコが死ぬということしか分からなかった。
「そうか。なら私をアリウスへ案内しろ。その『マダム』とやらの目的を探るついでに、秤アツコを救出してやる」
「本当に?手を貸してくれるのか…? わ、忘れたのか?私は、貴女を撃ったんだぞ!」
「あれは私が不覚を取ったまでのことだ」
サオリから情報を聞きだした素子は、彼女にアリウスに案内するように指示する。手を貸してくれるとは思っていなかったサオリは、彼女の言葉に驚いていた。
「それに…撃たれたところで私の身体は取り換えられる。この通り腹の傷などありはしない」
「どういうことだ?取り換えられるとはどういう意味だ?」
「私が義体化していることを知らないのか?」
「す、すまない…」
素子はサオリが自分を撃ったことを気にしていると感じて、コートの前ボタンを外して腹を見せる。彼女はサオリに撃たれた後、義体を換装しており、傷は既にないのである。だがサオリは義体化についてピンときていないようで、何故素子の腹に傷がないのか分からず首を傾げていた。
「まあいいわ。まずは残りの2人を探しに行くわよ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ先生。私はまだ理由を聞いていない…」
「企業のスキャンダル工作、学園内外での足の引き合い、子供の洗脳、そう言ったクソッタレな連中をこの世界から一掃するためよ」
素子はサオリを連れ、その場を離れた。
「こっちが槌永ヒヨリで、こっちが戒野ミサキだ」
『聞いたなアロナ。IRシステムでコイツらの居場所を見つけ出せ。それとタチコマを1機こちらに向かわせろ』
『了解』
サオリはアリウススクワッド4人が写った写真を見せ、素子にヒヨリとミサキを紹介した。するとすぐさま素子はアロナに彼女たちの捜索と、タチコマの招集を指示した。
「せ、先生?一体何をしているんだ?」
「はぁ…アンタ、私のこと何にも知らないのね。マダムとやらから教えて貰ってないの?」
「私たちはマダムに貴女のことを目的を阻む障害だとしか…」
「ターゲットの情報もまともに与えられないのなら、ソイツは指揮官失格だ。大人しく死んだほうがいい」
素子が電脳通信を行っている様子を見て、サオリは目を丸くしていた。自分のことを何も知らないサオリの様子に、素子はマダムの上に立つ者としての資質がないのだと判断した。
「しょうさー!!お待たせしました!!」
「ご苦労」
素子とサオリがヒヨリのところへ移動していると途中でタチコマが合流する。
「その娘ってまさか…?」
「・・・・・・」
そしてタチコマは素子の横にいたサオリに気付く。サオリは気まずいのかとっさに素子の後ろに隠れてしまった。
「少佐のお腹を撃った人でしょ?」
「あ、あぁ…」
「やっぱりそうだー!!ダメだよ~少佐はみんなと違って脆いんだからさ~。次は気を付けてよ?」
「えっ…?わ、分かった」
だがタチコマは並列化をしているため、サオリが素子を撃ったことを知っていた。にも関わらず、タチコマの態度は軽いもので、サオリを困惑させていた。
「リーダーと逸れて、ミサキさんとも離れ離れになってしまいました…私はもうおしまいです…」
「いたわね」
ヒヨリは歩道の脇で体育座りをしながら、曇った夜空をただ呆然と眺めていた。
「お前、槌永ヒヨリだな?」
「ど、どうしてシャーレの先生が私を…?」
素子は呆然としているヒヨリに声をかける。彼女は明らかに素子のことを警戒しており、後ろずさっていた。
「ヒヨリ…先生は私たちと共にアリウスへ…」
「サオリ姉さん?」
だがヒヨリはサオリの声を聞いたことで、その声が聞こえた方向へ振り返る。
「さ、サオリ姉さん…?」
「え、ボク?」
「そんな…サオリ姉さん。こんな姿になってしまったんですね…」
しかし、ヒヨリはタチコマをサオリと誤認していた。実際はタチコマの後ろにサオリがおり、タチコマからサオリの声が聞こえるようになっているだけである。彼女はタチコマを抱きしめ、憐みの目を向けていた。
「まさか!?シャーレの先生が私の元に来たのも、サオリ姉さんのように改造するためなんですか!?うわぁぁぁぁぁぁぁん!!もうおしまいです…まだやりたい事も、読みたい雑誌もたくさんあったのに…」
「別にボクみたいになっても雑誌は読めるよ?」
「ぐすっ…ホントですか?」
「うん」
そしてヒヨリは自分もタチコマみたいに改造されてしまうのだと、嘆き悲しんでいた。だがタチコマにこの機体でも雑誌が読めると聞いて、ちょっとだけ安心していた。
「ヒヨリ…私はここだ」
「あっ、リーダー…。じゃあこの子は?」
「ボク、タチコマ。思考戦車だよ」
「えへへ…よろしくお願いします」
見るに耐えかねたサオリがタチコマの後ろから顔を出すと、ヒヨリはようやく目の前の思考戦車がサオリでないと理解する。そしてヒヨリはタチコマに律儀に挨拶をしていた。
「そ、それで…先生は何故リーダーと一緒にいるんですか?」
「お前たちを裏で操る『マダム』とやらの目的を探るためだ。そのついでに秤アツコを救出する」
「姫ちゃん…そうだ、アリウスの生徒に連れていかれて…」
ヒヨリは改めて素子とサオリが一緒にいる理由を尋ねる。彼女は素子の口からアツコの名前が出たことにより、彼女の境遇を思い出していた。
「じ、実はリーダーの居場所を教えれば、アリウス自治区に戻れるよう便宜を図ると『マダム』に言われました…。わ、私はリーダーの言葉に従っただけの存在だから…情状酌量の余地があるのだ、と言っていて…へへ…」
「…そうか。ならばそうするといい」
「別に私はお前がそっち側に回ろうとアリウスへ向かうつもりだ。好きにしろ」
だがヒヨリはマダムからサオリの居場所を教えれば許すという取引を持ちかけられたと打ち明ける。それにサオリと素子は彼女の判断に委ねると答えた。
「ええと、その…もう断ったんですけど…」
「えぇ~そこは裏切る流れじゃないの~?」
「…な、何ですか、その裏切り者に理解を示すみたいなムーブ。私ってそんなに簡単に裏切ると思われてたんですか?」
「「・・・・・・」」
しかし、既にヒヨリはマダムからの取引を断っており、裏切ると思っていたタチコマにがっかりされる。彼女は自分が簡単に寝返る人間だと思われていたことに、地味にショックを受けていた。
「そもそも、『マダム』の言葉が本当かどうかもわかりませんし…それに、もう私たちは同じ船に乗った運命共同体のようなものですし…私1人で自治区に戻ったって、何の意味も…。それに…私1人が救われたとして、アツコちゃんは…」
「決まりだな。もう1人を見つけたらアリウスへ向かうぞ」
「えっ!?ちょっと待ってください…待ってぇぇぇ!!」
ヒヨリの意志を確認した素子は、さっさとミサキを探すために次の場所へ向かう。そんな彼女をヒヨリは慌てて追いかけるのであった。
長きに渡って放置された橋
「ここなら…」
「死ぬつもりか?」
「アンタは…それに、リーダーにヒヨリも…」
ミサキは橋の上に突っ立っていた。彼女を見つけた素子は、その様子を見て死ぬつもりなのか確認しようとしていた。ミサキは絶望しきった顔で振り返ると、素子の後ろにサオリとヒヨリがいることに気が付いた。
「この下の川は水深5m以上はある。流れも速いから、堕ちたらまあそのまま水底に沈むことになるだろうね」
「それで死ねるのか?」
「多分…」
ミサキはこの橋から飛び降りようとしていたのである。素子はキヴォトス人の耐久力的にそれで死ねるのか疑問だったようだが、ミサキの目算では死ねるようである。
「そっか…そういう選択なんだね、リーダー。まさかリーダーが、ね…それに、先生もそれを受け入れたんだ…。どっちにせよ、予想外だったな」
「コイツの頼みを聞いてやるのは目的を果たすためのついでだ。私はお前の思うほどお人好しじゃない」
「そう…。でも私にとってはどっちでも同じことだよ」
ミサキはサオリが素子に助けを求めたことと、彼女がそれを受け入れたことを意外に感じていた。素子は善意でサオリを助けてあげるわけではないと否定するが、ミサキにとって理由は関係ないようだ。
「でも先生、知ってる?私たちはアナタを始末すれば、アリウス自治区に戻れる」
「あぁ」
「いつ後ろから引き金を引くか分からないのに、先生は私たちを信用できるの?しかも、それが『かつて自分を撃った相手』なのに?」
「別に私はお前たちを信用していない。それと…二度同じ相手に不覚を取るつもりもない」
(((ゾクッ…!!)))
ミサキもヒヨリ同様、マダムから取引を持ちかけられていたようで、素子を殺すよう指示をされていた。そして、ミサキの自分たちを信用できるのかという問いに対し、素子はスクワッドのことを信用していないと言い、3人に視線を向けた。素子に視線を向けられた3人は、その無機質な冷たい眼に畏怖を抱いていた。
「でも、だからといって私は変わらない」
ミサキはそう言って橋から身体を半分ほど乗り出す。
「姫を救うのは無理。アリウス自治区に潜り込んでどうするの?姫がいるバシリカに辿り着くために、4人とそこの思考戦車1機で戦うの? アリウスの全生徒と? しかも日が昇るまでに?おそらく『彼女』は私たちすら知らない武器を用意しているはず。私たちだけじゃ、いくら大人の助けがあったとしても不可能だよ」
「「・・・・・・」」
ミサキの出した結論は自分たちだけでアツコを助け出すのは不可能だというものであった。改めてその絶望的な状況をミサキから聞かされたサオリとヒヨリは、何も言い返せず黙ってしまった。
「もし仮にアツコを救出できたとして、そこに何の意味があるの?帰る場所もないこの世界に取り残されて、泥水をすすって生きるだけの…この無意味で苦しい人生が続くだけでしょ?苦痛ばかりだった姫の人生を引き伸ばして…そこに価値があるの?『全ては虚しいものである』ただそれだけが、私たちが納得できる真実。そうじゃない?リーダー」
仮にアツコを救出できたところで、彼女たちには戻る場所はない。ミサキはもう、何もかもを諦めてしまっていた。
「ねぇ、さっきから気になってるんだけどさ」
「何だ…アンタ喋れたんだ」
ミサキが一同の言葉に耳を傾けていると、タチコマが音声を発し始める。ミサキはタチコマが意思疎通できたことに、少し驚いていた。
「どうして自ら命を絶とうとするの?君はボクたちと違って死んだらゴーストは消えちゃうんだよ?」
「もうこの辛くて苦しいだけの人生を生きるのは虚しいと感じたから。私にはもう生きる意味なんてないから、死んで楽になりたいの」
タチコマはミサキが自ら命を絶とうとすることが理解できないようである。タチコマの疑問に、ミサキは自身の感じている人生への虚しさについて素直に答えた。
「虚しいってどんな感情?辛いとか苦しいってどういう事?生きる意味って必要なの?」
しかし、タチコマにはミサキの言っている虚しさや辛い、苦しいといった感情がよく分からないようである。
「死んで楽になりたいなら、どうしてわざわざ苦しむような死に方をするの?」
「うるさいッ!!アンタに私の何が分かるって言うの!?」
「分からないから教えて欲しいんだよ。ボクの身体は衝撃を受けて破壊されることはあっても感覚器官がないから痛みは伴わない。川や海に流されて沈んでも、呼吸をしないから息が吸えなくて苦しむ感覚も分からないから」
矢継ぎ早にミサキの心情を考えていないような質問をするタチコマに、ミサキは遂に声を荒げて怒りだす。だがそれでもタチコマは彼女が何故死のうとしているのかを知りたいのである。
「ボクたちは少佐たちをサポートするために作られた。それがボクたちの存在する意味。だから少佐たちを助けるために意味消失を覚悟したときは、確かに幸福感を感じることができた」
タチコマは2度死の危機を体験している。1度目はバトーを救うため、2度目は米帝の潜水艦が発射した核を止めるため。彼らは2度とも9課のために命を捨てようとしており、その行為によって幸福感を感じたと語る。
「でも、君たち人間は予め意味を持って生まれてはこない。だから、生きる意味ってやつを探す必要があるみたいね」
「「「・・・・・・」」」
そしてタチコマはアリウススクワッドの3人を見てそう述べる。未だ生きる意味というものを見いだせずにいる彼女たちには、タチコマの言葉が深く心に刺さっていた。
「虚しく生きるよりも、苦しんで死んだほうが幸せなの?」
「分からない…」
「分からないなら、今死ぬ必要はないんじゃないかな?どうせいつでも死ねるんだからさ」
「・・・」
タチコマの話を聞いたミサキは、自ら死を選ぶことが正しいことなのか分からなくなっていた。そしてタチコマから分からないなら今死ぬ必要はないと言われたミサキは、とうとう橋の縁から離れてしまった。
「先生…大人であるあなたなら、この答えを知っているの?」
「私は常にゴーストの囁きに従って生きてきた。そして、これからもこの生き方を変えるつもりはない」
「だったら…私も姫を助けたい」
「好きにしろ」
ミサキは素子に生きる意味についての答えを求める。ミサキの問いに対し、彼女は自身の生き方を答えた。素子の回答を聞いて、ミサキは自身のゴーストの囁きに従い、皆と一緒にアツコを助けることを決めるのであった。
「夜明けまで時間がない。急ぐぞ」
「あぁ。私がアリウスへ向かう通路へ案内する」
「しゅっぱーつ!!」
サオリに案内され、素子たちはアリウス自治区へと向かった。
直前まで敵だったしスクワッドのことをまだあまりよく知らない頃なので、ちょっと当たり強めにしました。
なのでタチコマで中和してます。
少佐はゲマトリアに当たり強いです。特に地雷踏んだ同性のベアおばなんかは特に。
とはいえキヴォトスなので殺すまではいかんのですが…
それではまた来週。