GHOST IN THE SHELL Blue Archive 作:H2O(hojo)
アビドス編のカイザー基地に襲撃するあたりです。
実はこのあたりはまだ義体の替えもない設定なので本当は結構キツイ状態です。
アビドス砂漠・某所
「ん、着いた」
シロコたち対策委員会一行はホシノを助けるため、再びカイザー基地へと赴いていた。
「これより、カイザー基地に侵入し小鳥遊を奪還する。準備はいいなお前たち」
「「「「はい」」」」
素子は4人の前に立ち、ホシノを奪還するための作戦を開始すると宣言する。彼女は公安9課の戦闘服を身に纏い、ハンドガンではなく「セブロC-26A」のアサルトライフルを装備していた。
「ん、早速突撃する!!」
「待ちなさい」
「ん、どうして…」
早速銃を構えて突撃しようとするシロコに、素子は襟を掴んで引き戻す。早くホシノを助けに行きたいシロコは、しょんぼりしていた。
「シロコ先輩、ちゃんと先生の話聞いてた?私たちだけで突撃したって意味ないんだって…」
「そうだ。黒見の言う通り、この作戦は小鳥遊1人を連れ戻すだけの話ではない。この基地を無力化し、アビドスからカイザーの影響力を一掃するためのものでもある」
「ん、セリカにそういう事を言われるなんて…。複雑」
「ちょっとそれどういう意味…?」
彼女たちの目的は単にホシノを取り戻すだけではない。アビドスに駐留するカイザーPMCの軍団を壊滅させることも、今後のアビドスにとって重要なのである。シロコはその事をセリカから教えられたことに、複雑な思いを抱いていた。
「そろそろ時間だな…」
素子はそう言ってカイザー基地を見渡す。
『先生。お久しぶりでございます。ティーパーティーのホスト、桐藤ナギサです』
『久しぶりだな』
するとトリニティ総合学園の生徒会であるティーパーティーのナギサから連絡が入った。
「ティーパーティーのホスト…!?」
「先生はトリニティの生徒会長ともお知り合いなんですね…!!」
ナギサから連絡が入ったことにアヤネとノノミは驚く。とはいえ素子もヒフミとの繋がりがなければナギサと連絡を取り合うことはなかったわけだが。
『演習の着弾目標地点の様子は如何ですか?』
『そうね…「何もない」わ』
『そうですか。わざわざ現場に出向いてまでご確認いただきありがとうございます。これで私たちも安心して演習を行えます』
ナギサは唐突に素子にそう尋ねると、彼女はカイザーの基地があるにもかかわらず何もないと答える。それを聞いたナギサは素子に礼を述べ、安心して演習を行えると答えた。
「さっきの会話…どういう意味?」
「あの基地は地図上には記録されていない…つまりは存在しないことになっているわ。裏を返せばあそこに偶然砲弾が着弾しても、知らなかったとしらを切れる」
「うわぁ…そんなのアリ?」
「それが政治というものよ」
シロコは先ほどの素子とナギサの会話の意図を尋ねる。カイザー基地は公式には存在していないことになっており、トリニティの砲撃部隊はそれを逆手に取って基地へ攻撃を仕掛けようとしているのである。それを聞いたセリカは眉を顰めるが、素子はそれが政治だと涼しい顔をして答えた。
『始めていいわよ』
『砲手、支援を』
素子の合図を受けて、ナギサは待機している砲手たちに指示を出す。
「おぉ…本当に砲撃が基地に飛んできてる」
「正確無比な砲撃…流石トリニティの砲撃部隊ですね」
数十秒後、カイザー基地に砲弾が降り注ぐ。セリカとアヤネは砲撃が基地の施設を破壊する様を見て、トリニティの砲撃術に感心していた。
『トリニティの砲撃術はいかがでしたか?』
『見事ね』
『えぇ。トリニティの砲撃術は優秀ですから』
砲撃を終え、ナギサは砲撃隊の能力についての評価を求める。それに素子は見事と答え、ナギサは満足気であった。
『後は我々でやる。ご苦労だった』
『今後ともトリニティをご贔屓に…』
『えぇ。阿慈谷にもよろしく言っておいてちょうだい』
『かしこまりました。それでは…』
ナギサはそう言って通信を切った。
トリニティ総合学園・ティーパーティーテラス
「ナギサ様、いかがでしたか?」
「先生からトリニティの砲撃術についてお褒めの言葉をいただきました。苦労してアビドスとの境界付近に砲兵隊を配置した甲斐がありました」
「わぁ…流石ですね!!」
ティーパーティーのテラスではナギサに素子のことを紹介したヒフミが、一緒にお茶をしていた。ナギサは先ほどの素子からの言葉をヒフミに伝えると、彼女は素直に喜んでいた。
「それと…先生がヒフミさんによろしくと」
「わ、私ですか!?」
「勿論です。先生がキヴォトスに来てから短期間でこれほどの関係を構築するとは、流石ヒフミさんですね」
「あ、あはは…」
(ブラックマーケットでたまたま会ったなんて言えない…)
そしてナギサは素子がヒフミによろしくと言っていたことを伝える。ナギサはヒフミが素子と良好な関係を結んでいることを絶賛する。だがヒフミは理由が理由だけに愛想笑いをするしかなかった。
カイザー基地管制室
「北西方面より砲撃を受けています!!」
「どういう事だ!?誰の仕業だ!?」
「ダメです!分かりませんレーダーに反応ありません!!」
「そんなバカなことがあるか!!よく調べろ!!」
トリニティの砲撃隊からの攻撃を受けたカイザーPMCであったが、どこの誰が攻撃したのかを掴めずにいた。カイザーコーポレーションで開発している高性能レーダーですら反応しない事態に、管制室の動揺は広がるばかりであった。
ミレニアムサイエンススクール・ヴェリタス部室
「上手くいってるみたいね」
「当然です。このミレニアム最高の病弱美少女ハッカーである私がハッキングを主導したのですから」
「「「ZZZ…」」」
レーダーにトリニティの砲撃隊が映らないように細工したのは、素子から基地のシステムのハッキングを依頼されたヴェリタスの部員たちである。彼女たちは1週間という期限で、見事カイザーPMCのセキュリティを掻い潜り掌握を完了していた。だが、短期間での高難易度の依頼だったため、コタマ、ハレ、マキの3人は徹夜続きで力尽きていた。
「さてと…では我々も先生のお力をここでじっくりと見させていただきましょうか」
アビドス砂漠・カイザー基地正門前
「では、これよりカイザー基地に侵入を開始する」
「ん」 「はい」 「うん」 「分かりました」
砲撃の隙に一同はカイザー基地の正門近くまで歩みを進める。対策委員会の4人は銃を手に持ち引き金に指を掛けており、緊張が高まっていた。
「我々の目標は施設の中心にあるこの建物だ。ここに小鳥遊は囚われている」
「ホシノ先輩…」
「まずは建物まで辿り着き、内部へと潜入するぞ」
素子は先日自身で抜き取ったカイザー基地の内部情報からホシノがいる位置を特定していた。彼女たちが目指す場所は管制室のある施設中央の建物である。素子はシッテムの箱にカイザー基地の地図を映し、4人にそれを説明していた。
「砂狼と黒見は私の横に付け。十六夜は少し下がって2人を援護。奥空は安全な場所を探して状況をモニタリングしながら支援しろ」
「「「「はい!!」」」」
「良い返事だ。行くぞ!!」
突入を前に素子は4人にそれぞれの役割を指示する。それに彼女たちは思いの籠った返事で答えた。
「し、侵入者だ!!」
「あれは…アビドスの生徒たちか!?それにシャーレの先生、草薙素子もいるぞ!!」
「敵襲!!敵襲ー!!」
カイザー基地へ突入する彼女たちを発見した見張りは、基地の全てにそのことを報告する。特にアビドス市街で素子に手ひどくやられた記憶があるため、彼女の姿を見た彼らは軽くパニックを起こしていた。
『門開けるね』
「あぁ」
「何で正門が勝手に開き始めてるんだ!?うっ…!!」
「大人しく眠っていたほうが地獄を見ずに済むわよ」
チヒロは正門の扉を遠隔で操作して開錠する。素子は門が勝手に開いて驚いていた見張りの頭部を正確に撃ち抜き、シロコたちを率いて基地の中へと入っていった。
カイザー基地管制室
「先ほどから鳴っているサイレンは何だ?状況を報告しろ」
「ジェネラル…!!」
基地に轟々と響き渡るサイレンを聞いて、カイザー理事から指揮を移譲されたジェネラルが管制室に乗り込んできた。他のPMC兵たちが慌てているなか、彼だけは落ち着いていた。
「現在基地内の連絡が不通!!セキュリティシステムも異常をきたしています!!」
「機械トラブルか?」
「原因を解析中ですが、分かりません!!」
管制室の人員はレーダーの異常から始まり、通信回線の不通とセキュリティシステムの異常をジェネラルに伝える。ジェネラルは機械の故障を疑ったが、それすらも分からない状況であった。
「緊急事態発生!!」
そんななか、管制室に1人の兵士が緊急事態を伝えるために急いで飛び込んで来る。管制室の中にいた者全員が彼に視線を向けた。
「どうした?」
「アビドス高校の生徒4名が基地内へと侵入したようです!!そしてそれを指揮しているのは、シャーレの草薙素子です!!」
「やはり来たか」
彼は素子がアビドスの生徒たちを率いて基地へ突入してきたことを報告する。ジェネラルはそれを聞いて、目を赤く光らせた。
「だとすれば基地のシステムが悉く不調なのは、あの女か、あの女の指導を受けた生徒がハッキングをしているのだろう」
「ハッキングですか!?この基地のシステムには三重の防壁が仕込まれているのですよ?突破できる人間など存在するはずが…」
「それがあの女だ」
そしてジェネラルはシステムの不調がハッキングによるものであると推察する。彼の部下は三重の防壁を巡らしている基地のシステムをハッキングできる者などいないと思っていたが、ジェネラルは素子及び彼女から指導を受けた凄腕のハッカーならばそれができると確信していた。
「この基地のシステムに繋がっているネットを全て切断しろ。そうすればハッキングなど意味をなさない」
「で、ですがそれではどうやって部隊に指示を出せばいいのですか…?」
「指示など不要。お前たちは何も考えずただ武器を取り、ヤツらを倒すために死ぬ気で戦えばいい。勿論ゴーストハックされぬように自閉モードでな」
「りょ、了解!!」
ジェネラルは部下にシステムとネットの接続を切るよう指示する。その指示に部下は困った様子を見せるが、ジェネラルは死ぬ気で戦えとだけ言いその場から離れた。
(せいぜい私のために時間を稼げ、歯車共)
ミレニアムサイエンススクール・ヴェリタス部室
「おっと…ネットとの接続が切断されましたか」
「けどそれも対策済みだよ」
システムのネットが切断されたことにより、ヒマリのハッキング中断される。しかし、ヒマリたちはそれに慌てることなく、作業を続けた。
「よし、来たね」
「こんなこともあろうかと、システムとネットの接続が切れた際に自動で発動するウイルスを仕込んでおいて正解でしたね」
ヒマリたちはネットを切断されても、自動的に再接続するウイルスをシステムに仕込んでいた。これにより、彼女たちは再びカイザー基地のシステムにアクセスすることができるのである。
アビドス・カイザー基地
「いたぞ!!」
「撃て撃て撃て!!」
基地に駐在しているPMC兵は素子たちを見つけると、警告無しに発砲する。
「どいて!!」 「邪魔よ!!」
「うわぁ!!」 「ぐはぁッ!?」
しかし、シロコとセリカによって彼らはあっさり倒されていく。
「おい、もっと数を集めろ!!いくら強くたって大人数で袋叩きにしちまえば…」
「なッ!?どうなってる!?」
「どうした!?」
「基地内の建物がどんどん爆発しています!!」
PMCの隊長が人員を集めようとしていると、突如基地内の建物がけたたましい音を立てて爆発し始める。
「やっほー!アビドスのみんなー、元気?」
「ここに来るまでだいぶ時間掛かっちゃったけど、何とか間に合ったね」
「死んでください!!死んでください!!死んでください!!死んでください!!」
「便利屋68華麗に参上よ!!」
そしてその爆発の煙の中から現れたのは、アルたち便利屋68のメンバーであった。彼女たちは素子たちに依頼され、わざわざ砂漠を渡ってここまで来たのである。
「あと5分来るのが遅かったら、依頼料を5%引くところだったわ」
「なななななっ、なんですってぇぇぇぇぇ!!」
「冗談よ」
素子はアルにそう言うと、彼女は目に見えて慌て始める。何だかんだ素子も、彼女の反応を見ることを楽しんでいた。
「あれ~?タチコマちゃんは?」
「タチコマは砂漠を横断できるだけの能力は持ち合わせていない。だから別行動だ」
「別行動?それじゃあ何かしらの方法で来るってこと?」
「そうだ」
ムツキはカイザー基地にタチコマがいないことに気が付く。タチコマは砂漠での長時間の移動には向かないため別ルートで基地に来ると素子は答えた。
「我々が小鳥遊を取り戻す間、お前たちはこいつらの相手をしろ。手段は問わない」
「手段は問わない…フフッ、いい言葉ね」
「えぇ~どうなっちゃってもしらないよ、先生」
「好きにしろ」
素子は便利屋にカイザーPMCの足止めを指示する。アルたちは素子からの手段を問わないという言葉に、自然と口角が上がっていた。
素子たちは便利屋にカイザーPMCの相手を任せ、中心の建物へ進んでいった。
「5人が9人に増えようが関係無い!!ゴリアテを出せ!!奴らを管制室へと行かせるな!!」
「了解!!」
痺れを切らした隊長は基地に配備されているゴリアテを出すよう指示した。すると基地の地下から数体のゴリアテが現れた。
「わぁ~おっきいのがいっぱ~い」
「かなりの数だね。どうする、社長?」
「そんなの決まってるわ。私たちは便利屋68。無慈悲にアウトローに敵を倒すだけよ」
「アル様…!!」
複数体のゴリアテと対峙しても、4人は後ずさりせずただ敵の姿だけを見据える。彼女たちはカイザーとの戦闘を開始した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「な、何だコイツは!?」
まず動いたのはハルカである。彼女は叫びながら、ゴリアテに向かって銃を乱射して突撃し始める。その命知らずの行動に、操縦者は恐れおののいていた。
「そーれ、どっかぁぁん!!」
「「「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」」」
「クフフ…ポップコーンみたい」
ムツキは自前のキャリーバッグを敵に投げつける。バッグの中には爆弾が詰め込まれており、それを起爆させることにより敵を吹っ飛ばしていた。
「社長!!危ない!!」
「へ?」
「ぐはぁ…!!」
「た…助かったわ、カヨコ」
アルを狙っている兵士に気付いたカヨコは、即座に銃を撃ち敵を無力化させる。一方のアルは自分が狙われているとは思わなかったため、内心ヒヤヒヤしていた。
「もぉ!!しっつこい!!」
「この基地にこれだけの人員がいるなんて…このままじゃ埒が明かないですね」
基地の中心に近づきつつあるアビドスの生徒たちだったが、敵の数が多く中々目的地に辿り着けずにいた。そんな状況にセリカは痺れを切らし始めており、ノノミも埒が明かないと思っていた。
「そろそろ援軍その2が来る頃だ。彼女たちが到着次第一気に本丸に攻め込むぞ」
「タチコマも?」
「そうだ」
彼女たちが心配するなか、素子は援軍その2が来ると答える。シロコはここまで自力で来れないタチコマも一緒に来ることを期待していた。
『こちら、ゲヘナ学園風紀委員会。応答願います』
『来たか。こちら連邦捜査部S.C.H.A.L.Eの草薙素子だ』
『お久しぶりです。行政官の天雨アコです』
その直後、彼女たちの元にゲヘナの風紀委員会から連絡が入る。素子が呼んだ援軍その2とは風紀委員会であった。
『実はヘリでアビドスへ向かっていたのですが、調子がよろしくないようで、一度着陸して調べたいのですが…』
『そうか。なら指定の座標へ降りるといい。ただし、最近ここら一帯には「追い剥ぎ」が出没するらしい。警戒を怠るな』
『承知いたしました』
アコは素子にヘリの調子が悪いので一度着陸して調べたいと伝える。それに彼女は追い剥ぎがいるから気をつけろと注意を促した。
『先生、今度はどういう言い訳を用意したんですか?』
『便利屋と違って風紀委員会はゲヘナの公的な治安組織だ。理由が無ければアビドスへ派遣はできない。風紀委員会には、アビドス襲撃時にタチコマを損傷させたため修理してアビドスへ返すよう依頼した』
『それで報告書にはヘリが故障したため着陸したところ「追い剥ぎ」に襲われたため、やむを得ず戦闘することになったと書かせて、実際にはカイザーと戦わせると…』
アヤネは素子に、風紀委員会がここへ来る理由について尋ねる。風紀委員会は便利屋と違い依頼をすれば動いてくれるというわけではない。なので素子は風紀委員会と一計を案じ、彼女たちがアビドスへ向かう正当な理由と、カイザーと戦闘することになった動機まで用意したのである。
「大嘘じゃん!?」
「方便よ、方便」
なおそもそもタチコマは損傷していないため、セリカから大嘘だと突っ込まれる。それに素子は方便だと答えた。
『みんなー!ヤッホー!!』
「ん…タチコマがヘリに逆さ吊りにされてる」
そして風紀委員会のメンバーの乗ったヘリがカイザー基地上空へと到着する。タチコマはヘリに逆さ吊りされており、シロコは彼のことを若干不憫に感じていた。
「とぉーう!!」
タチコマはヘリからワイヤーを切り離し、地面へと着地する。
「委員長、タチコマの着地を確認しました」
「分かった。私も先に下へ降りる。貴女たちは着陸を優先して」
「「「了解」」」
ヘリに搭乗しているのは、委員長のヒナを含めた主要メンバー4人である。ヒナはアコたちに指示を出すと、降下の準備を開始した。
「後よろしく」
そう言ってヒナは顔色一つ変えず飛び降りた。
「うぉあっ!!」
「・・・」
そして彼女は砂埃をあげて地面へ着地する。ここまでの衝撃が出るとは思っていなかったのか、セリカは腕を顔の前に上げながら驚いていた。
「約束通り助けに来たわ、先生」
「アナタの噂は色々聞いているけど、実際に戦闘を見るの初めてね。それなりに期待してるわ」
「えぇ。準備はできてる」
ヒナは振り返り、素子と対面する。素子にしては珍しく、彼女に期待の言葉を掛けた。
「ちょっとアンタ…委員長ばかりで私たちのこと忘れてない?」
「あぁ、いたのね。アンタの実力はあの時分かったから、別に来なくてもよかったのに」
「先生!!わざと私がムカつくような事言ってるでしょ!!」
「そうよ。少しは受け流せるようになったら?」
次にヘリを着陸させて基地に侵入したイオリたちが現れる。彼女は素子のヒナ以外視界に入っていないような態度が不満のようだ。しかし素子はイオリを煽るように素っ気なく接し、彼女を怒らせる。素子は煽りをそのまま受け取るイオリをからかっているのである。
(イオリ…いつの間に先生と仲良くなったのかしら)
(何でイオリだけ…ゲヘナで最初に先生とお会いしたのは私なのに…)
(あぁ、イオリ…すっかり先生のペースに乗せられてしまっていますね。まぁ、私はあんな無様は晒しませんが…)
イオリと素子のやり取りを見て、ヒナたちはそれぞれ思うところがあるようである。なお、あんな無様を晒さないだろうと自信満々に思っているアコであるが、今後イオリ以上の無様を素子の前で晒すことになるのは、また別の話である。
「ゲヘナの風紀委員長空崎ヒナまでお出ましか…!!仕方ないアレを出せ!!」
「しかし、あれはまだ試作段階のはずでは…?」
「基地内でテストはしたんだろ?だったらもうなりふり構ってられるか!!」
「了解!!」
ヒナの姿を見たPMC隊長は、カイザー虎の子の兵器を出すよう部下へ伝える。その兵器は試作段階のようだが、基地内のテストは終えており、この状況では出すしかないと隊長は考えていた。
「セットアップ完了。いつでも行けます」
「よぉし、ジガバチ発進!!」
カイザー基地のとある区画から、1機のヘリが飛び立つ。名称はジガバチ。キヴォトスの外から何者かによって持ち込まれた設計図を元に、カイザーグループが製造した対戦車ヘリである。
「少佐、アレ!!」
「ジガバチか…!!」
空に飛び上がったジガバチを見て、タチコマと素子は驚いていた。彼女たちにとってジガバチは何度もその行く手を阻んできた天敵とも言える存在である。
「アレの相手は私がするわ」
「気をつけてね、ヒナちゃん。あの根暗なAIおっかないから」
「えぇ。ありがとう」
ヒナは銃をジガバチに向けて、対決する構えを見せた。タチコマはヒナを気にかける言葉を述べると、彼女は微笑みながらジガバチの元へ向かっていった。
“ターゲットロックオン。掃討開始”
ジガバチはタチコマ同様自律思考能力を持つAIを搭載しており、無人である。ジガバチはヒナをロックオンすると30mmを彼女の方へ可動させた。
“掃射”
「…ッ!!」
ジガバチは30mmを掃射する。しかしヒナはジガバチのAIが認識できない速度で移動して銃撃を躱した。
ターゲットロスト。再捜索開始“
「腹の30mmだけじゃなく、翼部にも多数のミサイルを搭載している。それがこれだけの機動力で動き回れば、私たち生徒にとっても脅威になり得るわね」
ヒナは再度ロックオンを試みるジガバチの追跡を、飛び回りながら躱していく。彼女はジガバチの性能を冷静に分析し、脅威と捉えていた。
“ターゲット、再度ロックオン”
「けど…」
そしてジガバチは再度ヒナをロックオンする。だがヒナはロックオンされたにも関わらず、ジガバチに向かって飛び上がった。
「ある程度の実力があれば、対処は可能ね」
“ターゲット正面へ移動。迎撃に移る”
「墜ちなさい」
飛び上がったヒナはジガバチの正面に浮き上がる。彼女はそのまま滞空したまま銃をジガバチへ向けた。一方のジガバチも迎撃に移ろうとするが、ヒナはそれよりも前に一斉射をしたためジガバチは回転しながら墜落していった。
「これでいい、先生?」
「あのジガバチをこれほど簡単に落とすとは…見事だな」
「そう。ありがとう」
ジガバチを落としたヒナは、無表情で再び素子の前に立つヒナの実力を見た素子は、彼女のことを素直に褒めた。
「この娘たちとタチコマは、これからあの建物の中へ侵入して小鳥遊を救出する。お前たちはカイザーの連中を建物に近づけさせるな」
「「「「了解」」」」
素子は風紀委員会に足止めを指示し、シロコたちと共に基地中央の建物へ侵入していった。
カイザー基地本部
「ここからはフォーメーションを変えるぞ。十六夜とタチコマが前、奥空は私の隣、砂狼と黒見は後ろだ」
「「「「了解」」」」
「りょーかい!!」
室内へと入ったことにより、素子は先ほどの配置から室内用へと変更する。それを聞いた一同は速やかに配置を変更する。
『小鳥遊ホシノさんが捕らえられているのは、この建物の3Fのこの場所です』
『了解した』
『大丈夫だと思うけど、私たちも全てを掌握できてるわけじゃないから気をつけてね』
ヒマリは通信でホシノのいる場所を素子たちに伝える。だが彼女たちも館内のシステム全てを掌握しているわけではないため、チヒロは注意するようにと釘を刺した。
カイザー基地本部地下1F
「これでこの基地もヤツらも終わりだ」
管制室を離れ地下1Fへと赴いたカイザージェネラルは、目の前のあるスイッチを見てそう呟いた。スイッチの周りには危険を示す赤い縞模様が貼られ、「危険」や「CAUTION」といった文字が書かれている。
「さらばだアビドスの生徒たち。そして草薙素子」
ジェネラルはそのスイッチを押すと、地下から基地の外へと繋がる通路へと消えていった。
そしてその直後、基地内に危険を知らせるサイレンが鳴り響くのであった。
本部2F
「な、何何何!?」
「ん、うるさい」
そしてセリカやシロコたちもサイレンの音に気づき始める。
「今すぐここから離れるぞ!!」
「クソッ!あのクソ野郎、そこまでするか!?」
2人がサイレンの音を鬱陶しがっていると、PMC兵が慌てて走ってくる。彼らは近くに敵がいるのにも気付かない程の慌てようであった。
『先生、大変!!』
「どうした?」
『基地内の自爆装置が作動し始めてる。このままじゃ10分もしない内に建物ごと爆発しちゃうよ!!』
「「「「……!!?」」」」
「えぇぇぇぇぇ!!!」
その直後、チヒロから再度通信が入る。彼女は建物内の自爆装置が作動し始めてると言い、10分後には建物が爆発すると述べる。それを聞いた4人は驚愕の表情を浮かべ、タチコマは慌てて腕を振り回していた。
「それまでに小鳥遊を連れ出せば済む話だ。急ぐぞ!!」
「は、はいッ!!」
一同はホシノがいる場所へと急ぐのであった。
本部3F・実験室
「私、これから一体どうなるのかな…」
ホシノは実験室で拘束されていた。彼女は天井を見上げてそう呟く。
「みんなにも、先生にも、悪いことしちゃったな…。でも、もう私にはどうすることもできない…」
そして彼女は再び俯き、涙を流すのであった。
「いた!!ホシノ先輩!!」
「シロコちゃん!?」
だがその直後実験室の扉が開き、ホシノはシロコの姿をその眼に捉える。
「ホシノ先輩!!」
「先輩!!」
「無事でよかった…!!」
「みんな…!!」
さらにその後ろでは、ノノミ、セリカ、アヤネも彼女の無事を喜んでいた。
「先輩、今助けるから…!!」
シロコはホシノが捕らえられている部屋の中央へと駆けだす。
「うっ…!?」
「シロコちゃん!?」
だがその時である。突如部屋が爆発し、床が抜け始めたのである。
「「うわぁぁぁぁぁぁ!!?」」
「タチコマ!!」
「はい少佐!!」
床が抜けて落下し始めた2人を見て、素子はタチコマに乗りワイヤーを括り付ける。そしてタチコマは実験室の扉からジャンプした。
「はぁッ!!」
「先生!!」
素子は飛び上がったタチコマを踏み台にしてさらに飛び上がる。彼女はシロコを上手い事右腕でキャッチする。
「小鳥遊掴まれ!!」
「うん!!」
そして素子は左腕をホシノへと差し出す。ホシノは自身の小さい体を必死に伸ばして、素子へとしがみついた。
「タチコマ!!」
「えいッ!!」
「んッ…」 「ふぅ…」
2人を捕まえた素子は、タチコマの名を呼ぶ。それに応じたタチコマは粘着性のワイヤーを壁に貼り付ける。落下が止まったことにより、シロコとホシノは安堵の声を漏らした。
「小鳥遊…お前には本当に手を焼かせられるな。とんだ不良生徒だ」
「ご、ごめんなさい…」
「けど、こうして無事でいてくれて良かったわ」
「先生…」
救出したホシノに素子はそう声をかける。ホシノは素直に素子に謝ると、彼女は微笑して無事を喜んだ。
「もうここには用はない。この建物が自爆する前にさっさと脱出するぞ」
「「「「「はい!!」」」」」
一同はホシノを連れ、建物の外部へと脱出した。
その後
「それじゃあ改めて…」
「えぇ…ホントに言うの?」
「はい。そう約束しましたから」
「うん」
建物から脱出し基地の外でホシノに再開した4人は、みんなで彼女の前に立つ。
「せーの」
「「「「おかえりなさい!!」」」」
「フッ…あはは…。うん、ただいま…」
4人は帰ってきたホシノに「おかえり」と言葉をかける。それにホシノは照れくさそうに「ただいま」と答えた。
これでアビドス1,2章の話はあらかた書いたかな。
ジガバチ:攻殻機動隊世界で自衛軍などが使用している対戦車ヘリ。戦車であるタチコマの天敵であるが、キヴォトスの実力者相手だとポンポン落とされる。
燃費がバチクソに悪い。
それではまた来週。