GHOST IN THE SHELL Blue Archive   作:H2O(hojo)

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時系列は「夏空のやくそく」のミニゲーム「正義実現委員会の終わらない夏休み」開始前です。
水着のトリニティ生がどうやってあのビーチに来たのかを書いてます。


暴走の補習授業部

ナギサがティーパーティー専用プライベートビーチを一般開放して数日経った頃

 

トリニティ総合学園

 

「あれ、あの戦車誰が動かしてるの?」

 

「このやり取りなんか前もしたな…」

 

トリニティ総合学園の戦車置き場を巡回していた正義実現委員会所属の生徒2人は、動かないはずの戦車が勝手に動き出していることに気付く。

 

「うわっ!!」

 

「撃って来た!?」

 

そして戦車は2人に発砲し始めてる。ただ威嚇射撃のようで、直撃はしなかったようだ。

 

「すみませーん!!通して下さい!!」

 

「懐かしいな。以前もこうやってヒフミと海へ行った…」

 

「ウフフ♡今回は私たちも一緒ですよ…」

 

「何で私まで…」

 

戦車の中に入っていたのは、阿慈谷ヒフミ、白洲アズサ、浦和ハナコ、下江コハルの補習授業部の4人である。彼女たちは何故か水着を着ており、コハルはこの状況に頭を抱えていた。

 

「緊急事態発生!!戦車泥棒が現れました!!またアイツらです!!」

 

 

 

 

 

 

シャーレ部室

 

「照りつける夏の日差しというものはこの身体でも嫌なものね…」

 

『お忙しいところ申し訳ないっす、先生。今お時間よろしいですか?』

 

「いい報告?悪い報告?」

 

『…悪い報告っす』

 

一度ティーパーティーのプライベートビーチからシャーレに戻った素子だったが、そこにイチカから連絡が入る。そしてどうやらそれは悪い報告であった。

 

『トリニティ総合学園で使用している多脚戦車が強奪されました』

 

「また?前にもあったわよね?」

 

『はい…主犯は前と同じヒフミとアズサっす。さらには浦和ハナコとうちのコハルまで同乗しているみたいで…』

 

「補習授業部揃い踏みね」

 

イチカはトリニティの備品である最新鋭の多脚戦車が強奪されたことを、素子に報告する。そして強奪した相手が補習授業部であると明かす。

 

『ツルギ委員長が戦車を止めようとしたのですが、コハルが乗車しているとあって普段の力が出せず…自治区外へ逃げられてしまいました』

 

「それで私の手を貸して欲しいの?」

 

『はいっす…』

 

「まぁいいわ。それが仕事だもの」

 

トリニティ最強のツルギも戦車を止めようと対処に当たったが、後輩のコハルが戦車に同乗していると知り、本来の実力を出せなかったようである。今戦車はトリニティの自治区外へ脱出してしまったのだ。

このままでは埒が明かないため、イチカは素子に助けを求めたのである。

 

「聞いてたわね?行くわよ、若葉、古関」

 

「はい先生。一緒に行きますよウイさん?」

 

「うえぇあ!?せっかく涼しい部屋で作業できると思ったのに…」

 

素子はシャーレに業務の手伝いで訪れていたヒナタとウイを引き連れて、多脚戦車を止めるためにシャーレを出るのであった。

 

 

 

 

 

ティーパーティーの元プライベートビーチ

 

「我々は少々野暮用で外します。ミカ様、ナギサ様、セイア様はそのままこのビーチでバカンスをお続け下さい」

 

「何かトリニティで問題でも起こりましたか?」

 

「い、いえ…ナギサ様がお気にするようなことは何も。我々で対処できますので…」

 

「そうですか…申し訳ありませんね、皆さん」

 

「いえいえ…」 「あはははは…」

 

事態を正義実現委員会の生徒から聞いてハスミとイチカは、ティーパーティーの3人に知られないよう現場に向かうのであった。

 

 

 

 

 

『アロナ。多脚戦車の行き先は分かるか?』

 

『う~ん…目的は分からないので何とも言えませんが、向かっている方向からして海辺に出るつもりのようです』

 

『分かったわ。このまま追跡を続けてちょうだい』

 

『了解です、少佐!!』

 

素子はアロナに戦車の追跡をさせ、彼女たちの行き先を予想させる。アロナは海に向かっていると素子に伝え、再び戦車の監視を続けるのであった。

 

「やれやれ…アロナの予想なら海を目指しているらしいが、それにしても車の合間を縫ってよくやるわね」

 

素子たちは自家用車で戦車の後方に張り付き、尾行を続けていた。タチコマはいないので車での追跡である。

 

『こちらクロノススクール報道部川流シノンです!!さて、ここからはトリニティから脱走した多脚戦車について最新の状況をお届けします!!』

 

「あれは…クロノススクールの報道ヘリですね」

 

「うるさいですね…!!こっちは出たくもないのにこの真夏の日差しの中戦車を追わされてるのに、彼女たちは高みの見物ですか!!」

 

そしてこの騒ぎを聞きつけたクロノススクールの報道ヘリが、上空へ現れる。ウイは自分が夏空の下で戦車を追っているのに、彼女たちが高みの見物をしているという事実にイラついていた。

 

『先生…』

 

「どうした、剣崎?」

 

『あのクロノススクールの報道ヘリ、何とかなりませんか?』

 

「報道ヘリがここまで来てしまっている以上、今更報道管制を敷くのは無理だけど、何かバレてまずいことでもあるの?」

 

戦車を追っているなか、素子たちと合流しようとしているツルギから気まずそうな声で連絡が入る。彼女はクロノススクールによって今回の事態が公になることを心配していた。

 

『実はこのことをティーパーティーの皆さんは秘密にしておりまして…。御三方には何の心配もなくバカンスを楽しんでもらいたいとのハスミとイチカの配慮なのですが…』

 

「なるほど、彼女たちの休息の邪魔をしたくないという部下の意を汲みたいというわけか」

 

『はい。お願いします先生』

 

「いいわ。こっちで何とかしてあげる」

 

『ありがとうございます』

 

ツルギはハスミとイチカから、この事態をティーパーティーに秘密にしていることを聞いており、クロノススクールの報道によって知られることを恐れていたのである。ツルギの話を聞いた素子は、彼女の部下に対する思いに答えることにした。

 

「若葉、長距離無線を全方位でスタンバイ。妨害電波を出すから、数値を計測しろ」

 

「それはいいですが…大丈夫ですか?」

 

「普通なら電波通信法に抵触します…」

 

「局所的非常事態ってやつよ」

 

「分かりました。準備します」

 

ツルギの頼みを聞いた素子は、ヒナタに長距離無線をスタンバイするようヒナタに命じる。ヒナタとウイは今から素子がやろうとしていることは法律違反なのではと言うが、彼女は局所的非常事態だと言ってツルギの頼みを優先した。

 

「トンネル出たら送信できます」

 

「よし」

 

素子は長距離無線のケーブル端子を口に咥え、妨害電波のスタンバイをする。ヒナタがトンネルを出たら送信できる旨を伝えると、即座にうなじの接続口に端子を接続した。

 

「送信スタンバイOK」

 

「ゴー」

 

そしてヒナタの言葉通り、素子はトンネルを出た瞬間に妨害電波を全方位に発射した。

 

「あれ…スタジオとの通信が切れてる。おーい?」

 

「ま、まずい!!ヘリのナビゲーションシステムもぶっ壊れてる!!このままじゃ墜落しちゃうよぉ!!」

 

「「あ~れ~」」

 

クロノスのヘリは妨害電波により、河川に墜落していった。

 

「先生、これ以上は危険です」

 

「了解。妨害電波を切るわ」

 

数値を測定していたヒナタからこれ以上危険だと言われ、素子は妨害電波を切った。

 

「ハナコちゃん、この道で合ってますか?」

 

「問題ありませんよ♡先ほどからスマホのGPSが繋がらない状態だったのですが、回復したようですね」

 

「ツルギ委員長ごめんなさい…!!私は、私は…!!」

 

一方多脚戦車の中にいる補習授業部のメンバー4人は、妨害電波で車がいきなり停車しはじめたのを横目に一路海へ向かっていた。

 

「私たちの後ろをぴったりと付いてるあの車、先生の車じゃないか?」

 

「本当ですねぇ。ここからは先生と鬼ごっことしゃれこみましょうか♡」

 

「もう降ろしてぇー!!」

 

「いいえ、コハルちゃん。ここまで来たらもう止まれません!!海まで一直線です!!」

 

アズサは自分たちの乗る戦車について来ている車が先生のものであると気づく。降ろしてくれと懇願するコハルであったが、ヒフミはもう止められないと戦車を加速させた。

 

 

 

 

 

『彼女たちの大方の行き先が特定できました』

 

『そうか』

 

『向かっている方角からして先日少佐も訪れたティーパーティーのプライベートビーチだと思います。最近一般に開放されて、キヴォトスで話題になっていますから』

 

『お友達と一緒にバカンスってわけね。だとしても最新鋭の多脚戦車を奪ってまで行こうとするその衝動は理解できないけど…』

 

アロナは素子に補習授業部の行き先を特定できたことを伝える。彼女たちが向かう先はナギサたちのいるビーチであった。

 

「連中の行き先は恐らく、例のプライベートビーチだ」

 

『うえぇ!?あの娘たち、こっちに来るんすか!?』

 

「そうだ。彼女たちに事態を知られたくなかったら必死で止めなさい」

 

『了解』 『了解しました』 『了解っす』 『了解です』

 

補習授業部たちがティーパーティーのプライベートビーチに向かっていると伝えると、イチカはマズいといった反応を見せる。必死に止めろと言う素子の言葉を聞いて、正義実現委員会のツルギ、ハスミ、イチカ、マシロは覚悟を決めた。

 

 

 

 

 

その後、多脚戦車は山間部に入る。

 

『静山、準備は?』

 

「もう少しです」

 

『急げよ。ヤツが狙撃ポイントまで迫っているぞ』

 

正義実現委員会の静山マシロは多脚戦車が事前に来るであろう場所にスタンバイしていた。

 

「先生、準備が整いました。離れてください」

 

『まだだ。気づかれないように、ギリギリまで張り付く』

 

マシロはスナイパーライフルを構えて、多脚戦車の脚部の付け根に照準を合わせる。彼女は素子に離れるよう促すが、彼女はギリギリまで張り付くと答えた。

 

「弾丸装填、照準よし…射撃開始!」

 

『よし!しっかり掴まってなさい!』

 

『うえぇあ!?』 『ひぇぇぇぇ…!!』

 

マシロが射撃の開始を宣言すると、素子は車に急ブレーキ掛けた。そして、マシロの放った銃弾は多脚戦車に向かって行くかに見えた。しかし…

 

「なっ、避けられた!?」

 

多脚戦車はまるで撃つタイミングが分かっていたかのように、その機体を右に逸らす。マシロの放った銃弾は地面へとめり込んでしまった。

 

「うふふ♡凄いですね、この最新鋭の多脚戦車の性能は。衛星とリンクしているので、マシロさんのいる位置が丸見えです」

 

「移動もスムーズで、運転しやすいです!!」

 

「凄い…!!煙幕まで張れるみたいだ」

 

「マシロぉ…助けてぇ…」

 

一方戦車内部では、最新鋭の多脚戦車の性能にハナコ、ヒフミ、アズサの3人ははしゃいでいた。一方コハルは彼女たちを横目に、同級生のマシロに助けを求めていた。

 

「せめて一発だけでも…!!ファイア!」

 

諦めきれないマシロは戦車が煙幕を張るなか、最後の一発を発射する。

 

「おっと…当てられてしまいましたね」

 

「すみません。煙幕で弾道が見えなくて…」

 

「煙幕を使用する際は注意が必要だな…」

 

煙幕の影響で彼女たちのほうの視界が遮られてしまったため、マシロの放った銃弾が戦車の左端あたりに命中する。だがそれでも、彼女たちは止まるつもりは毛頭なかった。

 

「くっ…ボディを掠めただけですか…」

 

『ここはもういい。お前は羽川と合流しろ』

 

「はい先生…」

 

マシロは多脚戦車のボディを掠めることしかできなかったことを残念がる。素子はハスミと合流するよう指示し、その場を去った。

 

 

 

 

 

『お待たせしました、先生』

 

『うわ~本当にトリニティで実験導入されてる最新鋭の多脚戦車っすね~』

 

「ツルギさんにイチカさんですね。お待ちしておりました」

 

補習授業部の乗った多脚戦車は、海沿いの街道へと出る。そこでツルギとイチカが正実のバギーに乗って合流していた。

 

「で、どうするつもり?あの中にはお前たちの可愛い後輩が、ある意味人質に取られてるわけだけど」

 

『我々が前に出て、あの戦車の脚を止めます』

 

『ちょ、マジですかツルギ先輩!?』

 

素子はツルギにどうやって戦車を止めるのか尋ねると、ツルギは自分が戦車の前に出ると答える。無茶な行動をしようとするツルギに、イチカは驚いていた。

 

「アレの性能を知らんわけじゃないだろう?それでもやるのか?」

 

『はい。元も辿れば私の失態です。ですので、私が始末をつけます』

 

「いいだろう。骨は拾ってやる」

 

ツルギは一度トリニティで多脚戦車を逃しており、そのリベンジをしたいと答える。その心意気を聞いた素子は、ツルギのその無茶な行動を容認した。

多脚戦車とツルギ、二度目の対決である。

 

「またツルギ委員長が出てきましたね」

 

「つ、ツルギ委員長~!!」

 

「私が出る」

 

「相手はトリニティ最強のツルギ委員長です。気を付けてくださいね」

 

イチカの運転するバギーに乗ってツルギは多脚戦車の前に現れる。彼女の姿を見たアズサは、自分がツルギの相手をすると言って戦車のハッチを開け外に出た。

 

「けひゃひゃひゃひゃー!!」

 

「来い!!」

 

ツルギとアズサは互いに車上で相手を見据え銃を構える。

 

「アヒャヒャヒャァァァァァァァァ!!」

 

「うっ…!!」

 

そしてツルギは絶叫しながら、戦車へと飛び乗った。

 

「お前たちも剣崎の援護をしてやりなさい」

 

「は、はい…!!」

 

「う、うぅぅ…流れ弾が当たっても怒らないでくださいね…」

 

後方に控えている素子たちは、車の窓を開けツルギの援護を始めた。

 

「げりゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ぐっ!!う…!!」

 

アズサは何度もツルギに銃弾を撃ち込むものの、彼女はものともせずに襲い掛かってくる。

 

「どうしましょう…このままではアズサちゃんが…」

 

「私に考えがあります。ヒフミちゃんはそのまま運転を続けてください」

 

「ハナコちゃん…?」

 

アズサがツルギにやられそうになっているのを見て、ヒフミは狼狽えていた。そんな中、ハナコがいい考えがあると言って、ハッチを開け外に出る。その際にさりげなく、外の様子が分かるモニターを切りながら…

 

「けひっ!」

 

「ハナコ…!?」

 

「お邪魔してしまいましたか?」

 

ハッチが開き、中からハナコが出てきたことにツルギとアズサは驚いていた。一方ハナコのほうは、相変わらずその笑みを絶やさず彼女たちの元へ近づく。

 

「ツルギ委員会…見逃していただけませんか?私たちはただ、お友達と海を楽しみたいだけなんです」

 

「だったら、ウチの備品を奪わず普通に行け…」

 

「フフフ…ご尤も。ですがそれでは波に乗り遅れてしまうとうちの部長が申しておりまして♡」

 

「そうだ。私たちは一刻も早く海でバカンスを楽しみたいんだ」

 

「・・・・・・??」

 

ハナコはツルギに見逃して欲しいと訴えるが、彼女は当然それを許さない。だがそれでは乗り遅れてしまうと言うハナコとアズサに、ツルギは言っていることが理解できず首を傾げた。

 

「悪いが、ここで終わりだ」

 

「こうなっては仕方ありませんね。私もこういう手はなるべく使いたくはなかったのですが…」

 

「ハナコ…?」

 

ツルギは2人に銃を構える。このままでは海に行けないと分かっているハナコは、ここで作戦を実行する。

 

「このままツルギ委員長が退いてくれないと、私たちもなりふり構ってはいられません…」

 

「まさか…」

 

「そう、コハルちゃんです。彼女を戦車にくくりつけて盾にして進むことになりますね」

 

「・・・!!」

 

(うふふ、効果抜群♡)

 

ハナコはツルギにコハルを盾にすると脅しをかける。これは勿論ブラフである。当人はそんなことをするつもりは毛頭ない。ハナコはコハル本人とヒフミに聞かれないように周到にモニターを切って、ツルギの前に現れたのである。

そしてハナコの予想通り、ツルギは彼女の話を聞いて狼狽えてしまった。

 

『ツルギ先輩、浦和ハナコの言う事を聞く必要はないっす!ヤツがそんなことできるはずないっすよ!!』

 

「・・・・・・」

 

「さて、どうしますか?ツルギ委員長」

 

イチカはハナコがそんなことが出来るわけが無いとツルギに訴える。しかしツルギは、明らかに迷いの表情を浮かべていた。

 

「分かった。退く」

 

『先輩!!』

 

「確かにイチカの言う通りかも知れない。しかし、少しでも後輩を危険にさらす可能性がある以上、こちらから手を出すわけにはいかない…」

 

「うふふ♡賢明なご判断に感謝いたします」

 

結局ツルギはハナコの提案を飲んでしまう。彼女は自身の失態の回復よりも、後輩の無事を優先したのである。

 

「あわわわわ…どうしましょう!?外で何が起こっているのかまったく分かりません…!!」

 

「ツルギ委員長はどうしてるの?アズサは?ハナコは?」

 

一方何も知らないヒフミとコハルは、戦車の中で慌てていた。

 

「もう分かりません!!このボタンを押してみましょう!!」

 

ヒフミは戦車の操縦席にある、あるボタンを押した。

 

「イチカ、一旦先生と合流するぞ」

 

「はいっす」

 

ツルギは戦車奪還を諦めて、正実のバギーに後退する。すると…

 

「・・・!?」

 

「あ、ヤバい…」

 

戦車の前方の銃口からガトリングが発射される。イチカとツルギは紙一重のタイミングで車を飛び降り、何とか直撃は避けられた。

 

「あらら~」

 

「凄い威力だな…」

 

「覚えとくっすよお前らぁ!!」

 

バラバラになって炎上するバギーを見て、ハナコとアズサはその威力に驚いていた。多脚戦車はイチカの叫びを横目に、彼女たちの元を過ぎ去っていった。

 

「若葉、古関。ヤツらを追う前に剣崎と仲正を回収しろ」

 

「はい」 「分かりました…」

 

素子は一度多脚戦車を追うのを中断し、ツルギとイチカを2人に回収させる。

 

「すみません、先生。一度ならず二度までも…」

 

「気にするな。浦和がそういう手に出てくるだろうというのは予想していた。お前が後輩を危険に晒せないこともな」

 

「ですがどうします?このままだとビーチに到着してしまいますよ」

 

「そろそろ私も本腰を入れるとするか…」

 

ツルギは二度も戦車を取り逃がしてしまったことを素子に謝罪する。素子は彼女に気にするなと言いつつ、自分も戦車停止に参加しようと考えていた。

 

 

 

 

 

「この道を越えたらもうビーチは目前です…!!」

 

「先生との鬼ごっこは私たちの勝ちですかね」

 

「うん。中々楽しかった」

 

「・・・・・・」

 

その後、ヒフミたちはとうとうビーチの目前までたどり着く。巻き込まれたコハルは、ただ黙って呆然とモニターを眺めていた。

 

「ん?あれ?」

 

「どうしたヒフミ?」

 

「戦車が思うように進まなくて…」

 

だが、ビーチを目前までとらえたところで、戦車は唐突に動きを鈍くする。

 

「ふぐぐぐぐぐぐぐ!!」

 

「止まるっすよぉぉぉぉ!!」

 

「ぎぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

 

一方戦車の外では、ヒナタを筆頭にイチカとツルギが粘着性のワイヤーを戦車に引っ付けて、力ずくで動きを止めていた。

 

「古関、車の運転はお前に任せる」

 

「うえぇえ!?先生はどうするんです?」

 

「あのじゃじゃ馬のハッチを無理矢理こじ開けるわ」

 

「無茶です先生!!」

 

「やるだけやってみるわよ!」

 

素子はウイに自家用車の運転を任せると、外へ出る。そしてハッチを力ずくでこじ開けると言って、多脚戦車のもとへ駆けていった。

 

「フッ!」

 

「んぐぐぐぐぐぐぐぐ!!」

 

「まずはロックを壊してやる!!」

 

素子は多脚戦車に飛び乗るとハンドガンを構える。そしてヒナタたちが動きを止めるなか、ハッチのロック部分に銃口を向け、一気に5,6発ほど撃ち込んだ。

 

「銃声!?」

 

「先生がハッチを無理矢理こじ開けようとしているみたいですね」

 

「んんんんんんんんんん!!!」

 

「ハッチからミシミシと音が鳴ってるぞ。流石先生だな」

 

そして素子はハッチを掴んで、力一杯持ち上げようとする。戦車の中ではハッチが音を立てているのが聞こえていた。

 

「ど、どうにかしないと…!!」

 

「まだやる気!?いい加減先生に降参しなさいよ!!」

 

「いいえ、あの海をこの目で見るまでは諦めきれません!!」

 

「その情熱は一体どこから来るのよ…?」

 

素子がハッチをこじ開けようとしているのを前に、ヒフミは何とか対処しようと付近を探り出す。彼女の海への憧れは何よりも優先されるのである。

 

「何とかなれー!!」

 

追い詰められたヒフミは、操縦席のなかでも一番目立つボタンを押した。

 

「!?ワイヤーを切れ!!」

 

「「「!!?」」」

 

ヒフミが押したボタンは主砲発射のボタンである。多脚戦車はオートでヒナタのいる方に砲身を向ける。それを察知した素子は、彼女たちにワイヤーを切れと叫んだ。

 

「ちょっとぉぉぉ!?戦車の主砲を人間相手に撃つのはダメでしょ!?」

 

「凄まじい威力だ…」

 

「あうう…わざとじゃないんですぅ。まさかこんな高威力な砲撃だとは思わなくて…」

 

ヒフミが戦車の主砲を生徒に向けて発射したことに、コハルは信じられないという感想を抱いていた。ヒフミはわざとではないと言うが、発砲してしまった後ではもう遅かった。

 

「ですが、これで拘束が解けました。あとは戦車の上にいる先生だけです」

 

「先生には申し訳ないですが、振り落とさせてもらいます!!」

 

「アンタ、本当に申し訳ないと思ってるんでしょうね!?」

 

「ヒフミは本当に思っているぞ、多分」

 

ワイヤーが切られたことにより、多脚戦車の拘束が外れる。ヒフミは戦車の車体を揺らして、素子を振り落とそうとしていた。

 

「ぐっ…!!このじゃじゃ馬め!!」

 

『先生、遅くなって申し訳ございません!!』

 

「ようやく来たわね」

 

素子は戦車から落ちまいと、ハッチを掴んで踏ん張っていた。そしてその直後、ヘリに乗ったハスミと、合流したマシロが現れる。

 

「さぁ、これでも喰らいなさい!!」

 

「なるほど…トリモチですか」

 

「流石ミレニアム製、効果てきめんです」

 

マシロはロケットランチャーを構えると、戦車に向かって発射する。ロケットランチャーの砲弾には、トリモチが仕込まれており戦車の脚を止めるのであった。

 

「ふぅ…ようやく止まりましたね」

 

「ここまで苦戦させられるとは思わなかったっすよ」

 

戦車の動きが止まったことによって、正実の娘たちはようやく安心していた。

 

「先ほどから何か騒がしいようですが…どうかしましたか?」

 

「な、ナギサ様!!」

 

「不味い…!!」

 

だが彼女たちが安心していたのも束の間、この騒ぎを察知したナギサたちがこの場に現れてしまう。

 

「こんなところで終わりになんてさせません、まだまだ続けていくんです!」

 

「まだ動くんですか!?」

 

「なっ…!?何ですかこれは…!?」

 

「私たちの、青春の物語はまだ始まったばかりです!!」

 

さらにナギサが来た途端に、ヒフミは無理矢理戦車を動かして海へ行こうとする。ナギサはその異様な光景を見て呆然としていた。

そして、戦車がナギサの目の前にまで迫ると、ちょうどそこからティーパーティーの元プライベートビーチが眼下に広がっていた。

 

「ど、どういうことですかこれは!?」

 

((((終わった…))))

 

「ナギサ様~!!」

 

「ヒフミさん!?」

 

多脚戦車の姿をナギサに観られてしまった正実の娘たちは、任務の失敗を悟る。だが次の瞬間、ヒフミ自らハッチを開けて戦車の中から出てきたことにより、ナギサはさらに驚きの表情を見せた。

 

「どうしてヒフミさんがここに?」

 

「すみません…私たちどうしても海に行きたくて、急いで来ちゃいました!!」

 

「ヒフミさん…。言ってくれれば一緒にお連れしたのに…」

 

ヒフミはナギサのことを真っすぐ見て、曇りなき眼で海に行きたいので急いで来たと答える。その眼を見たナギサは、彼女の言葉を何一つ疑うこと無く信じてしまった。

 

「え?何これ?何で感動的なシーンみたいになってるの?アレ、ウチで実験的に導入されてる最新鋭の多脚戦車だよね?」

 

「むぅ、ズルいぞヒフミめ…。私が最初に乗り回そうと思って狙っていたのに」

 

「セイアちゃん?まさかと思うけど、導入に乗り気だったのって自分が乗りたかったじゃないよね?」

 

「まさか…。私がそんなことするわけないじゃないか」

 

「うーわ、職権乱用だ職権乱用」

 

ヒフミの言葉をあっさり信じるナギサを見て、彼女と一緒に来たミカは戸惑っていた。さらにセイアが自分が最初に戦車を運転したかったと述べると、彼女にも呆れていた。

 

「さぁ、海が私たちを待ってます!!アズサちゃん、ハナコちゃん、コハルちゃん、一緒に海へ…」

 

「おい」

 

「あっ…せ、先生」

 

ヒフミが戦車のハッチから飛び出て、海へ駆けだそうとしている所に素子は声を掛ける。ヒフミは素子の声を聞き振り返るが、その顔は青ざめていた。

 

「海に行く前に、何か言う事があるんじゃない?」

 

「はい…すみませんでした」

 

「浦和、白洲、お前たち2人も阿慈谷の隣に並べ」

 

「は~い♡」 「くっ…あと一歩だったか」

 

素子に詰め寄られたヒフミは、自分のしでかしたことを思い出し項垂れて彼女に謝罪する。素子はハナコとアズサをヒフミの隣に並ばせるのであった。

 

「あの…私は…?」

 

「コイツらの説教が終わるまで、先輩と一緒に遊んでなさい」

 

「あ…はい」

 

「は~い、コハルちゃんは私たちと一緒に海を楽しむっすよ~」

 

一方残ったコハルは手持ち無沙汰となり、素子にどうすればいいか尋ねる。コハルは素子から正実の娘たちと一緒に遊ぶように言われ、イチカと共に海へと向かうのであった。

 

「まったくお前たちは…」

 

そこから、素子の長い説教が始まった。




元ネタはSAC2話の「暴走の証明 TESTATION」です。そういや戦車で暴走したヤツがいたなと...。
おかしいな...元ネタは泣ける話だったんだけどな...。

それではまた来週。
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