GHOST IN THE SHELL Blue Archive 作:H2O(hojo)
今回はSAC1期13話の「≠テロリスト NOT EQUAL」です。
未視聴者は視聴推奨です。
RABBIT小隊は、廃校が決定したSRT特殊学園の復活を目指して今日も今日とて子ウサギ公園で野宿生活を続けていた。
そんなある日のことである。
「そういえば、先生はキヴォトスに来る前はどのような任務に就いていたのですか?」
「凶悪犯罪の捜査、要人の護衛からテロの抑止まで、警察では手に余るような事件を色々とね」
「まぁやる事はウチらとそんなに変わらないか」
「バカ言え。少佐と私たちじゃ、事件の次元が違うに決まってるだろう」
「サキ…すっかり少佐の信奉者だね」
ミヤコはふと素子が前職で何をやっていたのか気になり、彼女にそのことについて尋ねる。素子は彼女たちに公安9課として、色々な事件に携わったことを示唆した。
「何かその時の話を聞かせて貰えますか?後学のために、経験者の話を聞いておきたくて」
「そ、そうだな!後学のために偉大な先輩の話を聞いておくのは大事だよな!決して興味があるわけじゃないぞ」
「おっ!それなら私も興味あるかな」
「私も…」
ミヤコは公安9課での話を聞きたいと素子にせがむ。そして彼女の過去に興味があるのは、ミヤコだけではないようだ。
「いいだろう。だが、これから話すのはあまり後味の良いものでなないぞ」
素子は後味の良い話ではないと前置きしつつ、昔の話を始めた。
「事の始まりは16年前、テロリスト集団に誘拐されて行方不明になっていた10歳の少女が、海上の廃プラントで目撃されたことだった」
「初っ端からきな臭さプンプンじゃん」
素子は公安9課時代に、ある一人の少女を救出した時の話を語りだした。
「彼女は一体何故テロリストに誘拐されたのですか?」
「そのためには、その少女を誘拐した『興国の旅団』について語る必要があるわ」
「『興国の旅団』か…いかにも思想犯が付けそうな名前だな」
ミヤコは何故その少女が誘拐されたのかと尋ねると、素子はテロリスト集団『興国の旅団』について説明する必要があると答えた。『興国の旅団』という名前に対するサキの感想は、テロリストらしいというものであった。
「『興国の旅団』は義体化と電脳化が一般的な技術として確立された社会にあって、それを認めないと主張する過激派組織だ」
「あぁ~そっち系かぁ」
「ひぇぇ…怖い人ばっかりで嫌だぁ…」
「今から嫌がってどうする…。特殊部隊ならそういった手合いを相手にすることも覚悟しておきなさい」
素子が『興国の旅団』の掲げる思想について説明すると、モエは顔を顰め、ミユは怯えてしまう。そんな2人を見て、素子は特殊部隊ならそれくらい覚悟しておけと注意した。
「でも何でそんな連中が子供を誘拐するんだよ?普通なら義体化とか電脳化をする病院を襲撃するとかじゃないのか?」
「何故だと思う?」
サキはテロリストが何故少女を誘拐したのか疑問に感じていた。そこで素子はRABBIT小隊にその理由を考えさせることにした。
「きっと子供を攫ってテロリストに洗脳してるんだぁ…」
「だったら普通に大人を洗脳して兵士に使ったほうが早くない?」
「だよなぁ…ウチらと違ってヘイローがないからすぐ死んじゃうわけだし」
ミユは子供を連れ去って洗脳すると予想するが、モエとサキに否定された。
「そうですね…その少女が攫うだけの価値があると考えたほうが妥当でしょうか?」
「だとすると身代金か?」
「その可能性は高いでしょう」
「まぁ、無難だね」
ミヤコは、その少女がテロリストが攫うだけの価値のある存在であると予想する。サキとモエも彼女の考えに同意していた。
「では、『興国の旅団』は何故彼女を選んだ?」
「まぁ金持っているのは当然として…他にも何か理由があるよねぇ」
答えに近づいてきたRABBIT小隊に対し、素子は何故彼女が選ばれたのかを問う。サキは身代金を払えるだけの余裕がある以外にも理由があると考えていた。
「テロリストは過激な行為を持って自らの思想を主張する集団なわけですから、やはり主張絡みでしょうか…?」
「義体化と電脳化への反対…」
「なるほど。つまりその少女は義体化と電脳化技術に携わる人間の関係者である可能性が高いってことか」
「おっ、いい線いってんじゃない?」
ミヤコは攫った相手がテロリストであることを鑑みて、何かしら自分たちの思想に絡んだ相手であると予想を付ける。そして彼女たちが出した答えは、その少女は電脳化や義体化といった技術に携わる人間の関係者であるということであった。
「正解を導き出せたな」
「それではやはり…」
「16年前に誘拐された娘は戸玖良エレクトロニクス社の社長令嬢の戸久良エカ。彼女の親の会社は電脳化技術をアピールするために、自分の娘に電脳化を施したことを大々的に公表したばかりだった」
彼女達の答えを聞いて素子は、攫われた戸久良エカの素性を明かした。
「それで問題なのは、彼女の姿を写したとされる写真が16年前とまるっきり同じ姿だったことだ」
「それは…何か変ですね」
「本人なの?」
「少なくともDNA鑑定ではそうだったわ」
そして素子は戸久良エカは16年前とまったく同じ姿で現れたことも付け加える。海上保安庁の隊員が採取した髪の毛をDNA鑑定した結果も、戸久良エカのものであると示していた。
「我々が海上プラントに潜入を開始する前に、海上保安庁…まぁオデュッセイアの海上治安組織のような部署が先に潜入を行なっていた。しかし、隊員4名全員の消息を絶ったため、公安9課にお鉢が回ってきたわけだ」
「少女の謎に加えて、隊員が消息不明か…」
「キヴォトスでも大事件だねこりゃ」
さらには先に海上プラントに潜入していた海上保安庁の隊員の消息不明。謎が謎を呼ぶ中、公安9課はプラントに潜入することになったのである。
「我々の任務は消息を絶った隊員の捜索と推定戸久良エカの救助だった。海上プラントの地下の警備はされておらず、容易に潜入できた」
「潜入任務か〜やったことないな〜」
「そもそもお前たちは1年生で、訓練を積んできただけで実戦すらまだ無い生娘だろう」
「はい…その節はご迷惑をおかけいたしました」
素子はRABBIT小隊に公安9課に課された任務の内容を話すと、モエは潜入任務について想像し始める。だが素子に訓練を積んだだけで実績が無いと指摘され、ミヤコはいつかの騒動のことを思い出し謝罪した。
「そういえば何で海上プラントを拠点にしたんだろう…」
「やっぱり攻められにくいからじゃないか?四方を海に囲まれているわけだし…」
「潜入はあっさりできたみたいだけどね」
ここでミユはテロリストたちが海上プラントを拠点に選んだこと、疑問を持つ。それにサキは攻め込まれにくいからと考えた。
「空井の言うような理由も勿論あるだろう。だがそれとは別に海上であれば違法な交易が容易に行える」
「なるほど…交易をおこなって、海上で自給自足の生活をしているというわけですか」
「実際にプラントでは露店が開かれ、随分と賑わっていたそうよ」
「テロリスト様専用の海上の楽園ってわけね」
素子はサキが答えた理由以外にも、海上であれば交易を容易に行えると答える。『興国の旅団』の拠点は、実際に商売によって賑わっていた。
「そして、プラントに潜入していた私の部下が海保の潜入員を見つけ出した。だがソイツはおかしなことを口走りながら、何かに怯えていた」
「テロリストの拷問か!?」
「私たちも最初はそれを疑った。だがそれにしては不審な点が多かった」
そして公安9課が潜入してすぐに、バトーとサイトーが海保の潜入員を見つけ出す。だが彼は精神が消耗しきった状態であった。サキは当然テロリストの拷問による後だと疑うが、素子はそれにしては不審な点が多かったと語る。
「まず、その潜入員は櫛やら化粧品らしき物を所持していた。これは恐らく戸久良エカの私物か何かだろう」
「確かに…。敵に捕まって拷問されていたとすれば、そういった物は本人に返却するはずです。潜入員が持っているというのには、違和感があります」
その潜入員は推定戸久良エカの私物を所持しており、それが少し変だったと素子は語る。
「そしてその潜入員はしきりに『消してくれ』と泣きながら懇願し、自らの頭に銃を突き付けていた。そこでようやく、彼が戸久良エカの電脳と直接繋がったことを理解した」
「ひ、ひぃぃぃぃぃ…!!」
「つまり彼女の記憶を覗いたってことか。だとしたら一体何を消して欲しいんだろう?」
「攫われた時からまったく姿が変わっていない対象者もそうですが、謎が謎を呼びますね…」
そして素子は海保の潜入員がしきりに「消してくれ」とうわ言のように呟いていたことも付け加える。そこでバトーは戸久良エカの電脳に直接繋がったことを理解したのである。
「そして私たちは監視役を始末しつつ、プラントの最上階でようやく彼女を見つけた」
「さらっと監視役を倒してるじゃん…」
「彼女は一緒にいた老婆に怒鳴っていたわ」
「テロリストの拠点に老婆ですか?海上プラントで色々な人間が出入りしているとはいえ、変ですね」
素子とトグサはプラント内部を、監視役に対処しながら進み、遂にプラントの最上階へとたどり着く。だがそこには戸久良エカと思われる人物の他に、老婆のような姿をした女性がおり、ミヤコたちの謎をさらに深めたのである。
「私は戸久良エカと思われる人物を確保した。だが、彼女は戸久良エカ本人ではなかった…」
「本人じゃない!?何で!?」
「最初に彼女は親の経営している会社の影響で電脳化したと言ったわね。電脳化した者にはある特徴があるのよ」
そして素子は光学迷彩で彼女へと近づき、彼女の電脳へとアクセスを試みる。だがそこである事に気付き、彼女が戸久良エカではないことが判明したのである。
「電脳化した者の特徴…?」
「これよ」
電脳化した者の特徴と聞いて首を傾げるミヤコに対し、素子は首のうなじ部分を彼女たちに見せる。電脳化を施した者には、大体このネットに繋がるための端子が備え付けられているのである。
「彼女にはそれが無かったわ」
「な、無いタイプだったとか…?」
「それは有り得ない。彼女が電脳化を施された際に記者会見をした映像記録が残っている。そこで彼女がうなじを見せた映像がはっきりと写っているわ」
「じゃあ別人か~」
ミユは素子の話を聞いて、端子の無いタイプだったのではと言う。しかし、彼女が電脳化を施した時の映像記録が残っているため、その可能性はないと答えた。
「だが彼女の真実を調べる前に、テロリスト共が我々のことを嗅ぎ付けてな。そこで私たちはテロリストと衝突した」
「待ってました!やっぱり特殊部隊なんだからテロリスト相手にドンパチやんないとね!!」
「テロリストの相手なんて気分の良いものじゃないわよ?『興国の旅団』は義体化もしてないのに、お構いなしにこちらを殺しに来る。まるで死を恐れていないみたいにね」
「「「「・・・・・・」」」」
テロリストとの戦闘と聞いて、モエは目を輝かせる。だが素子は、テロリストの相手をすることがどれほどものなのかを語り、彼女たちは一気にテンションが下がった。
「奴らは仲間の屍を盾にして、私の部下たちに襲い掛かってきたわ」
「外道が…」
「本当におぞましいのはここからよ」
「これ以上あるの…?」
素子はテロリストが仲間の死体を盾にして、バトーたちに襲い掛かってきたことを話すと、サキは顔を顰めた。素子にこれ以上があると聞かされたミユは、その事実に怯えていた。
「その後テロリストの相手をしつつ、我々は上空で待機していたヘリに少女と老婆を収容。そのまま海上プラントを離脱したわ」
「え?帰っちゃうの?」
「モエ。少佐はそもそも最初に少女の救出と隊員の捜索が任務だと言っていますよ」
「ちぇ~」
そして素子たちは上空に待機していたヘリからの援軍で、テロリストを倒しつつ海上プラントから離脱する。テロリストを殲滅するものだと思っていたモエは、撤退したことに肩透かしを喰らっていた。
「それで、結局あの少女と隣にいる老婆は何だったんだ?」
「私が気になったのは少女と共にいた老婆のほうだ。少女のほうはしきりに彼女に触るなと言っていた」
「ということは…その老婆は少女の関係者?」
サキは少女と老婆のことを思い出し、素子にそのことを尋ねる。素子は少女よりもその老婆のほうが気になっていた。
「私はヘリの中で衰弱しきっていた老婆の首元を見た」
「嘘だろ…?」
「そんなまさか…!!」
「あぁ、彼女には電脳化を施した人間特有のアレが付いていた。つまり、戸久良エカは少女ではなく、老婆のほうだったというわけだ」
そして素子は老婆の髪を持ち上げ、首の後ろを見ると電脳化を施した者に付いている例の端子が付いていたのである。そう、戸久良エカは少女のほうではなく老婆のほうであった。
「私が老婆の首元を確認していると、少女が飛び出してきてこう言ったわ。『お母さんに触るな』ってね」
「娘…!?」
「10歳でテロリストに誘拐された少女は、16年経ち老婆のような姿になって発見された。娘と一緒にね」
「「「「・・・・・・」」」」
そして16年前の戸久良エカそっくりの少女はその娘だったというわけである。その事実を知ったRABBIT小隊は、彼女のことがいたたまれなくなり黙ってしまった。
「つまり救助された隊員が『消してくれ』と呟いていたのは…」
「ソイツは直接戸久良エカと繋がった。つまり、16年の間で少女から老婆の姿に変わったしまう程の『何か』をされた彼女の記憶を消して欲しいということだ」
「な、何てやつらだ…!!」
海保の隊員が『消してくれ』と言っていたものは、戸久良エカと繋がった記憶であったことが判明すると、サキはテロリストたちの非道さに怒っていた。
「さすがに私も彼女の電脳にダイブする勇気は無かった…」
「結局、彼女はどうなったのですか?」
「その事実をマスコミに嗅ぎ付けられ、今度は取材に追われたわ」
「いたたまれないですね…」
「そうね」
ミヤコは彼女のその後が気になり、素子に尋ねる。彼女がマスコミ追いかけ回されたと聞かされたミヤコは、彼女のことを思ってさらに悲しい気持ちになっていた。
「テロリストというヤツらは目的のためならば手段を選ばないし、どんな非道な行いもする。今後、お前たちはそういった手合いを相手しなければならないということだ」
「非道なテロリスト相手に私たちが負けるもんか…!!」
「精々励むことね。まずは、私に殴られてゲロを吐かないようにしなさい」
「はい…」
素子は今回の話からテロリストの非道さについて、彼女たちに理解させようとしていた。サキは気合十分だったが、素子にもっと励めと言われて、その勢いはすぐに失速した。
「これでもアンタたちのことはそれなりに期待しているつもりよ」
「「「「・・・・・・」」」」
「じゃあ、明日も早いんだからさっさと寝なさい」
素子は唐突にRABBIT小隊のことを期待していると述べ、普段褒めない彼女にいきなりそんな事を言われた4人は面を喰らっていた。すると彼女は立ち上がり、シャーレへと帰っていった。
「『期待してる』ですか…頑張らないとですね」
「うん…」 「あぁ…」 「そうだね」
少佐は割と厳しいイメージだけど、結構「良くやった」とか褒めてはいるはず...。
まぁ部下の皆さんも優秀ですからね。
それではまた来週。