(PL2?ってことはこの人も俺と同じ“力”を持ってるってわけか?)
『半分正解で、半分間違いです。彼女は貴方と同様に技能を使い
(....つまり、怪異に立ち向かう一般人ってこと?意味深なこと言ってたのに?)
『そういうことになりますね。』
....KPとの会話を一旦止め、彼女のほうに向き直る。依然として表情を崩しておらず、こちらの対応を待っているようだ。
気まずい雰囲気に耐え切れず、こちらが先に口を開いた。
「あの、なんで俺の名前を知ってるんですか....?」
「え....私のこと、覚えてないの....?」
「あぁ、まぁはい。」
そう返答すると、彼女が明らかに気分を落としたのが分かる。
なんというか、こう、心にクるものがあり、焦って口を開く。
「せ、せめてお名前だけでも教えてくれたら思い出せるかも....なんて....」
「日向詩織....」ボソッ
『アイデアロール
成功値65≫78 失敗』
(ここで失敗かよ....何にも思い出せねぇ!ここはリアル記憶力で....)
「あ!?」
「!!!思い出したの!?」
えぇ、なにその食いつき具合....急にテンション上がってる....
「確か同じクラスの人ですよね。すみません、周りのことに気を配るのが昔から下手で....」
「そ....それだけ....?あぁ、うん、それであってるよ....」
なんかさらに落ち込んでるんだけど....でも、合ってるのになぜ....
「それより、さっきの動画....そこの部屋の中を取ったんだよね....」
やばっ、やっぱり見られてたか。なんとかごまかして....
「あぁ、ち、違いますよ。これは合成動画なんですよ。いや~ホラー路線は苦労した」
『日向詩織の心理学ロール
???≫??? 成功』
「....なんで嘘をつくの?」
(おいぃぃぃぃぃ!なんで日向さんがダイスロール使えてんだよ!)
『言ったはずです。あなた以外のPLでも“技能は”使えると。つまり、結果は見えませんけど判定は自動で算出されます。』
(言い方ってもんがあるだろ!)
「ねぇ、なんで....」
無表情で問いただしてくるのめっちゃ怖い....
でも....巻き込むのはもっとまずいし....
「貴方には関係ないこ「ある!」…!?」
急な日向さんの力のこもった返答に驚いて発言が止まる。
彼女は続けて言葉を発した。
「もう私の前で誰も失わさせない。蓮くんならなおさらだよ....」
....結局、泣きそうな目で見てくる彼女を、俺は拒むことができなかった。
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それから、俺は彼女にこれまでの経緯を話した。無人の部室でピンポン玉の跳ねる音が聞こえること。スマホで撮影したら目玉が跳ねていたこと。
そのすべてを聞き終えた彼女は、怖がるでも騒ぐでもなく、終始落ち着いたままだった。
しばらく無言で考え込んでいた彼女だったが、急に俺に向き直り、口を開いた。
「蓮くんは先に帰っていいよ。後は私がどうにかするから。」
その発言に思わず面食らう。なぜかその言葉からは、不自然なほどの強い“決意”をひしひしと感じ取ることができたのだから。
「えっと、それはどういう....」
「こんな怪異は関わっても碌なことにならないよ。蓮くんはこんな経験ないだろうし、言い方は悪いけど、一般人には危険すぎるから。」
「....」
(これは....どういうことだ、日向さんは怪異について何か知ってるっぽいし....。KP、何か知らないか?)
『PLの情報開示には双方の同意がないと行えません。』
(....もうちょっと温情のあるキーパリングしてくれませんかねぇ....)
諦めてKPとの会話から意識を逸らし日向さんの方を向くと、彼女の姿がない。
急いで彼女の姿を探すと、今まさに部室のドアノブに手を掛けている状態だった。
「な、何してるんですか!さっきの話聞いてましたか!?」
急いで彼女の手首をつかみ、扉から離す。
「?....調査しようとしてるんだけど。」
「そんなすぐに行くことないでしょう!それに、さっきのことで納得したわけじゃないですから!」
「なんで?あなただって怖いでしょう?」
「だからって、行かない理由にはなりませんし、貴方を一人で行かせるのは自分の性に合わないです!」
『信用ロール
成功値65≫53 成功』
ダイスロールは成功。これでうまくいってくれれば....
「やっぱり、あなたは....ううん、なんでもない。分かった、一緒に行きましょう。」
「....えぇ、分かってくれたようで何より....」
あぶねぇ~流石に一人で行かせてロスト…は胸糞悪すぎるからな。
そういえば、少し微笑んでいたように見えた気が....。
「じゃあ、どんな方法があるの?」
(....やば、全然考えてない。でも、情報はあらかた出し尽くしたはずだから、部屋を開けるかどうかの二択くらいか....?)
「....よし、自分先頭にして入りましょう。」
「さっきと変わって無くない?」
なんか聞こえる気がするが、無視だ無視!
彼女の呆れたような目線に耐えつつ、扉の前まで来る。
「あぁ、そうだ。なるべく視線は下げて、目を見ないようにした方がいいと思いますよ。」
(目玉がいたのは台の上だから、たぶん大丈夫なはず。それに、さっきのスマホの様子から察するに、あの目玉は“視認される”ことが認識の条件だと思うし....えーい、ままよ!)
目線を下にしたまま、部室へと入る。ピン球が跳ねる音は止まらないが、あの声は聞こえない。
少し前に進むとふいに、ボールが床に落ちたような、一際大きい音が響く。
そしてすぐに、目の前に何かが転がってきた。
それは先ほども見た、人間の目玉に似たまんまるとした物体。
そして俺はソイツと、目が合ってしまった。それと同時に、頭の中に声が響く。
「みつけ…た…」
「....!!」
『SANチェック 1/1d3
成功値74≫56 成功 SAN値73』
急いで踵を返し逃げようとした瞬間、後ろから声が響く。
「上に“ナニカ”いる....!見上げちゃダメ!」
日向さんの言葉の通りに、上を見ないまま振り返り、外へ出る。
そしてそのまま扉を閉じると、声が収まった。
(あぁ~やらかした。そうだよな~球なんだから転がれるよな。もっと慎重になってれば....)
「大丈夫だった、蓮くん?」
そちらを見ると、日向さんが俺の顔をのぞき込んでいた。不安そうな表情をしており、どうやら心配してくれているようだ。
「全然大丈夫ですよ。それにしても、あんなこと言ったのに不甲斐ないばかりで....そうだ、中の状況を説明しときますよ。」
そうして先ほどの出来事を日向さんに伝えると、無言で考え込んでしまった。少しすると、頭の中で声が響く。
『日向詩織:複合ロール
オカルト 成功値??≫?? 成功
クトゥルフ神話 成功値??≫?? 失敗』
...............は!?
(ん~?KP、なんかミスしてないか~?)
『いいえ、正式な判定を行いました。』
(そっか~。じゃぁ、なんでこの人クトゥルフ神話技能持ってるんだよ!
一般人っつってただろうが!)
『....日向詩織の技能は彼女の過去の経験に基づいたものです。第一、私はあなた専用のKPなので過去のことなんて詳しく知るわけないでしょう。』
(なんであんたがやれやれ感出してんだ、こちとらそこんとこの情報全部KP頼りなんだよ?)
....はぁ、まったく厄介なKPを持ったものだ。ていうか、クトゥルフ神話技能持ってるってことは、彼女はほんとに“慣れ”てるってこと....
「考え込んでるところ、少しいい?」
「あ、はい。」
どうやら不自然に思われてしまったようだ。今後はこういうところに注意が必要かもしれない。
「あの目玉は、話を聞く限り目が合うことが認識される条件ってことでしょ?いま、扉を閉めたら認識されなくなったのなら、なんで最初あなたに目を合わせようとしたのか、それに、なんで“最初から”認識されていたのかが疑問なの。」
「....!!。あぁ、たしかに!」
「なんとなく答えは出てる。ずばり、今もうっすら認識されているってことじゃない?蓮くんの“スマホ”から。」
....!その答えを聞き急いでスマホを取り出す。そう、最初に部屋の中を取ったあのスマホだ。
「....たしかに、自分は“動画の中で”目を合わせた....!?」
「なら、話は早いよ。その動画を消せば、相手からの認識をすべて絶てるってことじゃないの?」
急いでスマホを操作し、あの忌々しい動画を消す。すると、急に周りの空気が軽くなったように感じた。そう、まるで“視線”が消えたように。
俺の反応で察したのか、彼女は少しだけ自慢げな表情をして向き直る。
「あんなこと言ってくれたんだから....私も、活躍しないとね。それに....」
彼女は一区切り置いて言う。
「未だに敬語外してくれないよね。私と蓮くんはもう、“仲間”じゃないの?」
....転生してから、いつもそうだ。人を“仲間や友達”と思うのが苦手だったいや、心を許すことができなかったのだ。。
「....はぁ、そうだ。日向さ「詩織」....詩織の言うとおりだ...」
力なく出た俺の声に、彼女は嬉しそうに答える。
「うん....蓮くんはそっちの方が似合うよ。」
....最初よりずいぶん表情を出してくれる彼女を見ながら、俺は怪異に立ち向かう覚悟を決めるのだった。
馴れ合いパート終了!次回から探索一筋じゃ!
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