やさぐれ女と時々奉仕部   作:レゾリューション

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【高校生活を振り返って】

高校生活とは、私からすれば、ほとんどの時間が"退屈の積み重ね”である。誰もが、期待と幻想に縛られ、表面的な楽しさや自己頭示のために時間を浪費する。
しかし、だからと言って全てが無意味というわけではない。
日々の繰り返しの中で、失敗や徒労は確かに生じる。だが、その経験を生かすのも、無駄にするのも本人次第である。
高校生活は決して美化されるべきものではないが、逃げずに向き合った者だけが、自分という存在の輪郭を知ることができる。

結論を言おう。青春は甘くない。だが、甘くないからこそ、意味がある。




地獄の三丁目にご案内(奉仕部送り)

午後のチャイムが鳴り響いたと同時に、教室内の空気が一気に緩んだ。授業の終わりと共に、解放感に満ちた声と足音が廊下に溢れ出す。昇降口へと向かう生徒たちの流れとは逆行するかのように、ひとりの少女がその波に背を向けて歩いていた。

 

 

霜月澪(しもつきみお)

 

 

見た目は少しやさぐれてる雰囲気の女子高生。冷静で現実主義であり一度スイッチが入ると口が悪くなり、皮肉も容赦なく飛ばす。友人は少なからずおり、彼女を気に入らない輩は彼女を「やさぐれ」と陰で呼んでいる。

 

もう少し、捻りのあるあだ名つけろよby霜月

 

行き先は“地獄の三丁目・特別棟行き”。

運転手は現国教師・平塚静。たぶん、近接戦闘なら教師陣最強。独身。もう一度いう、独身である。

 

「……で、それがどうして部活動に繋がるんですかね?」

 

霜月はそう問いながらも、すでに答えを期待していないような声音だった。退屈な罰ゲームでも課されたかのような足取りで、しかし黙って従っているのは、平塚先生から殴られない為である。彼女の指導は荒っぽいのだ。

 

 

「お前の書いたレポートが流石に擁護できないからな。教師として一発、指導的な意味でな」

 

「私、レポート字数埋めましたよ?それに本音も正直に書きました」

 

「本音を書くのは構わん。だがもう少し中身を伴わせるべきだったな」

 

「……つまり、それっぽく脚色して感動風に演出すれば良いってことを認めるんですね?」

 

「そういうことを言うからお前は信用ならないんだよ、霜月」

 

平塚は呆れたように肩をすくめながらも、微かに笑っていた。

 

二人は校舎の渡り廊下を通り、特別棟へと足を進める。春先の風が吹き抜け、窓の外では木々がざわめいていた。午後の光が伸びる影を床に作り出し、それが静かに揺れている。

 

やがて、平塚先生が立ち止まった。

 

「着いたぞ」

 

その目の前には、何の変哲もない古びた教室の扉。ペンキの剥がれたドアと、煤けたプレート。どう見ても部活が行われているとは思えない。

 

「……誰もいない空き教室を掃除するとかじゃないですよね?」

 

「違う。ここが“奉仕部”だ」

 

「名前が既にあやしいんですか....」

 

「気にするな」

 

そして、そのままノックもせずに扉を開けた。

 

その瞬間、冷たい声が部屋の中から響いた。

 

「平塚先生。入る時はノックをお願いしますと言ったはずですか?」

 

中にいたのは、ひとりの少女。整った顔立ちに、背筋の通った姿勢。制服の着こなしすらも品の良さを感じさせる。

 

雪ノ下雪乃。

 

霜月の目には、その人物が部屋の空気ごと支配しているように映った。

 

「すまんすまん。次からは気をつけるよ」

 

平塚が笑って応えるも、雪ノ下の目線は既に霜月へと向いていた。その視線は無感情で、同時に確かに“評価”していた。霜月はその空気を読み取りつつも、あえて黙っておく。

 

「それで、そちらの、やさぐれている彼女は?まさかとは思いますが……」

 

「そのまさかだ。彼女が霜月澪。前に言った新入部員だ」

 

雪ノ下はわずかに顔を伏せた後、小さく息をつきながら短く言った。

 

「……そうですか」

 

歓迎の色は皆無だった。霜月はとりあえず「よろしく」と言っておく。

 

その様子を見て、平塚はどこか満足げに頷く。

 

「ここで何かを学べ、霜月。……そして、ちゃんと青春しろ」

 

霜月は部屋の中を眺めながら答えた。

 

「放課後ヒマなんで、ちょっと試してみます」

 

酷く短い一言だった。

 

そんな中、後ろのドアがギィ、と控えめに音を立てて開いた。

 

「……うっす」

 

現れたのは、猫背でどこか気怠げな表情をした少年。比企谷八幡だった。制服の着崩し方にもどこか無頓着な様子が窺え、覇気のない立ち姿と相まって、周囲の空気を一段階落ち着かせるような陰を纏っていた。

 

教室の奥でその姿を見た雪ノ下雪乃は、言葉を発することなく彼に視線を向ける。それは挨拶でも、驚きでもない、ただ当然の存在としての受け入れだった。

 

平塚静もまた、少年の登場を予期していたように小さく頷き、「ああ、来たな」とでも言いたげに顎を引いた。

 

だが、比企谷の目はそのどちらにも向いていなかった。彼の視線は、既に部室内の“異質な気配”すなわち、霜月澪に向かっていた。

 

無言のまま交差する視線。その一拍の沈黙を、霜月が破る。

 

「アンタも連行された身?」

 

「え、誰?」

 

比企谷が思わず誰と口にするが、

 

「質問を質問で返すとテストでバツにされるってしってた?」

 

その声音に刺々しさはあるが、完全な拒絶ではない。言葉の端々に、対話を成立させるだけの“余白”が残っていた。

 

「比企谷八幡。……まあ一応、部員だ」

 

「私は霜月澪。今日からこの奉仕部で無償労働されるらしい。よろしく比企谷」

 

「ああ」

 

そして、それを見ていたもう一人、雪ノ下は、わずかに視線をそらし、そっと息をつく。

 

「……霜月さん、あなたは本気でここにいるつもりなの?」

 

問いかけは冷静だったが、言外に「あなたのようなタイプが真面目にやるとは思えない」という雪ノ下なりの牽制が含まれていた。

 

「やりたくて来たわけじゃないっての。ただ.....断ったら平塚先生先生なにするか分からない。……命までは取られないと信じて来たって感じ」

 

それを聞いていた平塚先生は、

 

「言いたい放題だなお前……安心しろ、命までは取らん。代わりに卒業単位は取り上げるかもしれんがな」

 

「教師がそんな事言って良いんですかね?奉仕の精神のようにホワイトにいきましょ?」

 

「ホワイトって……平塚先生が監督してる時点で、どう見ても社畜養成所だろ。福利厚生ゼロ、逃げ道ゼロ、希望もゼロ。ブラック超えてるわ」

 

その言葉に、平塚の眉がわずかにピクリと動いたのを見逃さなかった霜月は比企谷に視線を向ける。

 

「確かに」

 

それを横で見ていた雪ノ下は、呆れを通り越したような目で二人を見つめていたが、何も言わずそっと紅茶に手を伸ばしたのだった。

 

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