やさぐれ女と時々奉仕部   作:レゾリューション

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昨日、ふとランキングを見たら日間8位になってました。

ありがとうございます。


勝負はカードとツッコミと大声で決まる

遊戯部が提案してきた「ダブル大富豪」とやらは、普段の大富豪にチーム戦要素をぶち込んだ、

 

いかにも頭の悪い――いや、青春ノリ全開のゲームらしい。

 

奉仕部+αで5人いるため、2人のペアを2組作る必要があり1人余ることになるが、由比ヶ浜の提案でジャンケン大会が開催された。

 

結果――霜月、あえなく余り枠。

 

(まぁ、しゃあないか。どっちにしろ巻き込まれた時点で負け確定みたいなもんだし)

 

ルール説明によると、今回は8切り(3〜7まで切れる)・革命・11バック・スペ3あり。縛り、都落ち、階段系、2上がりとジョーカー上がりはなし。

 

(……縛りも都落ちもなし?意外と緩いのね)

 

さらにチーム戦なので、相談なし・ターンごとに交代でカードを出すという仕様。

 

「ゆきのん、一緒にやろうよ!」

「ええ、お願いするわ」

 

由比ヶ浜&雪ノ下の“奉仕部ガールズ”が成立。結果、残された比企谷は。

 

「……八幡。我についてこれるか?」

 

どや顔の材木座、キラリとメガネが光る。

 

「ステージ5、アンタが比企谷の足引っぱんないか心配なんだけど?」

 

霜月の毒舌がクリーンヒット。材木座が「ぐぬぬっ……」と呻いた。効果は抜群だ。

 

そんな中、遊戯部側がトランプを取り出し、勝負開始。

 

序盤、奉仕部サイドは順調にカードを出していき――

 

「チェックメイト!!!」

 

突然の叫び声とともに、材木座がカードを叩きつけた。

 

(……トランプで“チェックメイト”はないでしょ)

 

霜月は心の中でため息をつく。

 

「ふはははは!我の力を思い知ったか!!」

 

「いやー負けちゃったねー秦野君」

 

「そうだねー相模君」

 

(棒読みにも程があるでしょ)

 

そう思った瞬間、二人の遊戯部員がベストを脱ぎ始めた。

 

「「だって、負けたら服を脱がなきゃいけないんだから」」

 

「なっ!? 何よそのルール!?」

 

 由比ヶ浜が、全力でツッコミを入れる。

 

「え? 負けたら脱ぐのが普通じゃないですか?」

「麻雀とかジャンケンでも脱ぎますしね」

 

遊戯部の二人は、完全に悪びれる様子もない。

 

「はぁ!?意味わかんないし!!」

 

由比ヶ浜のツッコミも虚しく、腐れ眼鏡コンビは淡々と次のカードをシャッフルしていた。

 

「では、二回戦に参りましょう」

 

「ちょっ!話を聞けぇぇぇ!」

 

由比ヶ浜が悲鳴を上げる中――。

 

「待ちなさいよ、腐れ眼鏡その1、その2」

 

霜月が静かに割り込む。声こそ冷静だが、目は完全に“説教モード”だった。おまけにつけたあだ名も過去一酷い。

 

「そんな大事なルール、最初に言いなさいよ。脱衣ネタとか古すぎでしょ。それにその発想、倫理委員会で秒で処されるレベルだからね? 分かってやってるのよね?」

 

冷静なトーンで淡々と毒を吐く霜月。あまりの正論っぷりに、遊戯部員は一瞬たじろぐ。そして彼女は、雪ノ下に助けを求めた。

 

「雪ノ下、アンタも何か言ってやって」

 

常識的なツッコミを期待して。

 

「問題ないわ、霜月さん。勝てばいいもの」

 

即答だった。しかも真顔。

 

「ハァァァァァ……」

 

霜月は頭を抱えた。そう、これだ。これが“雪ノ下雪乃・勝負モード”の恐ろしさ。

 

(こうなったらもう止められない……。あーあ、地獄の二回戦、開幕っと)

 

雪ノ下の目は完全に“勝ち”の光を宿していた。その瞬間、奉仕部の空気がピリッと張りつめ、霜月は悟った。この勝負、カードゲームのはずなのに、もう別の戦場が始まっている。

 

 

 

 

材木座がやたらと張り切っていたが、鬱陶しいので全員スルーした。

 

そんなこんなで奉仕部チームが1抜けを果たし、報酬としてジョーカーとダイヤの2をゲット。で、材木座がカードを交換する番になったのだが....

 

彼が差し出したのは、よりにもよってスペードのKとハートのQ。

 

……つまり、強カードを相手に渡した。

 

(アホなの?コイツ)

 

霜月の心の声が地鳴りのように響く。大富豪のルールを理解してないはずがない。となれば、目的はひとつ、

 

「……それは一体何のマネ?中二病患者ステージ5?」

 

霜月が低音で告げる。

 

「ぶ、武士の……情けだ……」

 

「へぇ……じゃあ負けたらアンタ切腹ね。介錯はしないわよ」

 

「ひぃぃぃぃ……」

 

材木座、見事に沈黙。そんなやり取りを経て、第二回戦が幕を開けたがやはり材木座のプレイがおかしい。どう考えても、自軍を負けさせるような出し方ばかり。推察するに、彼は女子の下着姿見たさに裏切りを決め込んだらしい。

 

(あの腐れ中二……!)

 

しかも遊戯部の2人は男女ペアで組んだことにより、奉仕部内の空気をギスギスさせようとしている。要するに、心理戦である。

 

だが、その策略に――。

 

「2人の分の負けまで、俺が背負う」

 

比企谷が待ったをかけた。……が、その勇気が裏目に出るのも時間の問題だった。

 

回を重ねるごとに、比企谷の服が減っていく。4戦目に突入する頃には、もう下着一枚。対して材木座はというと―厚着が功を奏し、未だにワイシャツとズボンが現役。この不公平感、もはや教育委員会案件である。

 

「よし……絶対に、勝つ……」

 

パンツ一丁で決意を固める比企谷。いや、決意はカッコいい。姿が致命的にダサいだけだ。

 

(かっこいい台詞なのに、姿がダサい……)

 

「ぶっふーっ!パンツ一丁の男がカッコつけてる!みっともなーい!」

 

材木座が大爆笑。

 

(中二病患者ステージ5改め『腐れ眼鏡その3』に認定)

 

遊戯部の腐れ眼鏡その1とその2も一緒になってクスクス笑っている。雪ノ下すら肩をぷるぷる震わせて笑いをこらえている。さすがの比企谷も反撃に出ようとしたが、その反応すら笑いのネタにされる始末。

 

「……くくっ、落ち着け八幡。ゲームとは楽しんでするものだ。もっと余裕を持て」

 

(アンタが原因だろうが)

 

霜月の心のツッコミが全力で響く。

 

次の瞬間。

 

「チェンジよ」

 

霜月が冷ややかに言い放った。

 

「比企谷、チェンジして。流石に見てられないわ。……あと、腐れ眼鏡その3」

 

ピシッと指を突きつけながら、にっこり笑顔で言葉を続ける。

 

「次そんなプレイしたら頭に真っ赤なお花、咲かせちゃうぞ♡」

 

訳:次ふざけたらテメェの頭撃ち抜く。

 

材木座、即座に青ざめて震え上がり、比企谷がいた所に霜月が座り机にコーラを置いた。空気がピシリと締まりようやく地獄の第2ラウンドが動き出したのだ。

 

2回戦はなんとか勝てたが第3戦、第4戦と連敗を重ねた奉仕部は、すでに後がなかった。

 

次は最終戦。これで全てが決まる。場の空気は重い。……正確には、材木座が勝手に重くしているだけだった。

 

「剣豪さん、なんでゲーム作りたいんすか?」

 

挑発めいた声が飛ぶ。遊戯部のひとり、秦野がトランプをくるくる回しながら笑う。

 

(……剣豪さん?)

 

霜月は誰の事かと思った。彼女の中ではもう材木座=腐れ眼鏡その3が定着していたからだ。

 

「ふむ。好きだからな。好きなことを仕事にしようと思うのは、当たり前の考えだと思うが」

 

一見落ち着いた口調だが、声が微妙に裏返っている。どうやら“ラノベ作家を目指す”設定は今だけ休業中らしい。

 

「はっ、好きだから、ね。最近多いんすよね、それだけでできる気になっちゃう人。剣豪さんもそういう人種でしょ?」

 

「な、何が言いたい」

 

材木座のこめかみがピクピクと動く。

 

「あんたは夢を言い訳にして現実逃避してるだけなんですよ」

 

(キッツ……仮にも先輩相手にえぐいわね……)

 

霜月は思わず内心で苦笑した。けれど、同時に「よく言った」とも思っていた。あの裏切りプレイをかました腐れ眼鏡野郎にはこれくらい刺されて然るべきだと。

 

材木座は言葉を失い、代わりにカードを落とす。霜月はそれを拾い上げると、ちらりと目を細めた。

 

(……6が四枚。革命、できる)

 

だが、まだだ。今使えば勢いに飲まれて潰される。ここは温存。場ではさらに材木座の心を抉る質問が続いた。

 

つまるところ、質問はすでに…『拷問』に変わっているんだぜ、という事である。

 

「最近の若手ゲームクリエイターにも多いんですよね。テレビゲームしかやったことないのに作ろうとする奴。発想がワンパターンなんだ」

 

相模が冷たくカードを叩きつけた。音が無駄に良い。

 

「ぐぬぬぬぬ……!」

 

材木座が呻く。その様子はまるでダメージを受けるたびにボイス再生される小ボス。

 

さらに遊戯部の二人は追撃を仕掛けた。

 

「じゃあさ、好きな映画とか小説、挙げてみてください。アニメとラノベ以外で」

 

「ぐ、ぬ……っ」

 

材木座の口が開いたが、言葉は出なかった。脳内図書館はラノベとアニメで埋まっていたらしい。

 

遊戯部の目が冷たい。もう冷たいというか、もはや「電子レンジで冷凍モード」の温度だった。

 

「結局さ、あんた、浅いんだよ。エンタメの本質もわかってない。俺たちは源流から学んでんだ。半端者が“ゲーム作る”とか言うの、見てて恥ずかしいんだよね」

 

相模がトドメを刺すようにカードを放る。部室の空気が、ピキリと凍った。勝負はもう決していた。材木座のライフはゼロ、HPバーはとうに真っ黒。なのに、霜月はまだトドメを刺す気満々であった。

 

「確かに恥ずかしいわね」

 

静かに、しかし確実に地雷を踏み抜く声。彼女の言葉に遊戯部の二人は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。まるで「ほら見ろ」とでも言いたげに。

 

「おい、霜月。言い過ぎだぞ、材木座をオーバーキルする気か?」

 

比企谷のツッコミが入る。彼の声はかすかに残された“良識”という名のライフジャケットだった。だが霜月は、浮かぶ気ゼロである。

 

「比企谷、アンタ勘違いしてるわよ」

 

テーブルの上に視線を落とし、トランプを指先で弾きながら霜月が続けた。

 

「私が恥ずかしいって言ったのは」

 

そして、すっと顔を上げ、冷ややかな目を秦野と相模へ向けた。

 

「そこに居る、自分達の言ってることが正しいって思ってる腐れ眼鏡共よ」

 

空気が一瞬で“異様な静寂”に変わり比企谷は思った。

 

(あ、これ死人が出るやつだ。)

 

「確かに、材木座……いえ、腐れ眼鏡その3は言ってること滅茶苦茶で、そのうざったい口調直す気ないし、チームプレーなのに裏切りまでかまして、最低な野郎だけど……」

 

霜月は淡々と続ける。

 

「それでも“続けてる”。それだけで、少なくともアンタらよりはマシよ」

 

比企谷はパンイチ姿で内心で思った。

 

(……霜月、フォローしてるつもりで毒盛ってない?むしろ盛ってるよね?)

 

「“浅い”だの“源流”だのって他人を見下す暇があるなら、黙って努力でも続けたらどう?てか材木座の夢を“戯言”だと思うなら、わざわざ口出なんかしないで、自分たちのやり方に集中すればいいでしょ。結局アンタらがやってるのは創作じゃなくて模倣の研究じゃないの?」

 

霜月の声は冷たいが、一本芯が通っていた。その言葉に、秦野と相模の顔から余裕が消えていく。

 

「“源流から学ぶ”って言うけど、アンタらは何を創ったの?“学んだ”だけで偉くなった気になって、自分達に酔ってるだけでしょ」

 

霜月の容赦ない一撃。彼女の語気に圧され、二人の肩がわずかに揺れ秦野と相模の眼鏡にヒビが入る音がした。

 

「“好きだから作る”を笑う資格があるのは、“作ったことがある人間”だけ」

 

材木座が胸に手札を押し当て、一歩前へ踏み出した。目はうるみ、声は震え、まるで世界の命運を賭けた勇者のような面構えである。

 

「今さら何を言われたところで、我は諦めぬ」

 

「いいからとっととカード出しなさいよ」

 

霜月の冷たいツッコミにより、勇者(自称)は現実へ強制送還された。それでも材木座は深呼吸し、涙声をなんとか押さえつける。

 

「ふっ、待たせたな。このデュエル、決着をつけようではないか……!」

 

誰も待ってない。だが本人は本気だ。手札にはスペードのJ、クラブの8、ハートの3、ダイヤの4、そして6が4枚。

 

「くらえッ!インフィニティスラッシュ!」

 

彼は叫びながらカードを場に叩きつけた。まさかの効果音つきである。

 

(8を∞に見立てて8切り……スラッシュなのね。頭痛い……) 

 

霜月は眉を押さえながら心の中でため息をついた。

 

遊戯部の秦野が鼻で笑う。しかし先程材木座を罵倒した時より余裕は感じない

 

「現実見ろよ....剣豪さん....」

 

しかし材木座は、拳を震わせて言った。

 

「現実など、とうの昔に知っている!投稿を続けていた仲間は就職した!二次選考に通った奴はニートだ!我だって現実くらい知っている!」

 

その目は熱かった。痛いほどに。そして叫ぶ。

 

「なりたいから好きなわけではない!好きだから、なるのだッ!」

 

(……偶にはいいこと言うのね)

 

場が静まり返る。感動的な空気が一瞬だけ流れた。が、すぐに秦野がカードを2枚落とした。霜月はすかさず、そのカードの表面をチラ見する。

 

(拾って由比ヶ浜。あれ、スペードの3よ)

 

指先の合図で由比ヶ浜がこっそりカードを拾い上げる。落ちたカードを拾ってはいけない、なんてルールは言ってないからセーフだ。

 

つまりここから奉仕部の反撃開始である。

 

 

 

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