やさぐれ女と時々奉仕部   作:レゾリューション

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タイトルのまんま

更新遅くなってすみません


やさぐれvs厚化粧

文化祭準備で学校は戦場と化していた。資料の山、未完成のポスター、作業机に散乱した文具。そのカオスの中心で、霜月澪はまるでプロの事務員のように無表情で仕事を片付けていた。

 

(相模という馬鹿がサボったせいで……なんで私が尻拭いしてんのよ……)

 

比企谷と共に徹夜スレスレの状態で作業を進めている。そんな疲労困憊の霜月に、家でも容赦ない追撃が来た。

 

 

学校での仕事が終わって家に戻り、机に向かって仕事を片付けようとした矢先。後ろからふっと影が差し込んだ。

 

霜月誠一、澪の父だ。

 

「澪、なんだか最近の顔つき、昔……働きすぎて心が擦り切れてた母さんにそっくりだったぞ」

 

たった一言で、霜月の精神はガラガラと崩れ落ちた。

 

「……え?嘘…………」

 

しかし父が哀れに震える暇さえなく、背後で“にこぉ”と笑った人物が強制連行する。

 

霜月綾、澪の母である。

 

「ふ〜ん? アナタ、ちょっと話があるわ」

 

「綾!? 違うんだ今のは冗談……いやその……あのぉ……!」

 

母に引きずられていく父。その背中に、澪は静かに手を合わせた。

 

(父さん……安らかに……いや生きて帰ってきて……)

 

こうして濃すぎる家庭劇に巻き込まれ、家での仕事は頓挫。澪は布団に吸い込まれるようにダイブし、8時間ぶっ通しで眠りに落ちた。

 

 

翌日。寝たはずなのに疲れが全然抜けない霜月の前に、さらなる試練が現れる。

 

「はい、頼まれた資料だよ、霜月ちゃん」

 

ぱっと振り返るとら雪ノ下陽乃が立っていた。圧の強い笑顔。圧の強い存在感。圧の強いメイク。間違いなく、あの時の一件で気に入られてしまったようだ。

 

(厚化粧……鬱陶しい……!)

 

霜月は眉一つ動かさず、心の中では泣き叫んでいた。

 

(雪ノ下の辛さ、初めて理解したわ……妹も姉も敵じゃん……)

 

比企谷はまたどこかの説得に放り出し済み。作業室では、霜月一人が黙々とタイピングしていた。だが――空気を読まない存在は必ず現れる。

 

 

そう雪ノ下陽乃である。

 

 

「霜月さん。雪乃ちゃんから聞いたよ。君は自由を大切にしてて、“理性”“責任”“覚悟”が必要って言ってたんだって?」

 

視線を上げると、陽乃が“楽しげに微笑む”顔で立っていた。部屋の空気をわずかに乱すような、傍若無人な陽の笑み。霜月は舌打ちしながら指を止めず、心の中で呟く。

 

(厚化粧の仕事量……倍にしてやる……)

 

陽乃がくすりと笑う。

 

「そんなに自由が怖いの?ちゃんと枠で囲わないと、暴れちゃうと思ってるみたい」

 

明らかに挑発。明らかに揺さぶりに来ている。陽乃は、“霜月の反応そのもの”を楽しんでいるのだ。理性と責任と覚悟を背負う霜月は、彼女の目には「揺さぶると面白い鎖」に見える。これを弄らないわけが無い。

 

(これが雪ノ下の姉?……性格悪っ。いや妹と変わらないわね……)

 

霜月は顔も上げず、さらりと切り捨てた。

 

「暴れるって何よ。アンタみたいに“自分が面白がれるかどうか”だけで人の心弄るタイプと一緒にしないで。枠が必要なのは自由じゃなくて……」

 

カタカタとキーを叩きながら、

 

「アンタみたいな“暇つぶしで生きてる人間”の方よ」

 

陽乃は口元に手を添え、くすっと笑う。

 

「ひどい言い方だなぁ。私はただ、自分から縛られてるのに“自由”って言い切る霜月さんが不思議でさ?」

 

霜月は冷えた視線を向ける。

 

「……アンタ、ほんと頭お花畑なの?それとも私を試してんの?」

 

陽乃はさらに笑みを深める。

 

「じゃあ霜月さんは“自分は自由をコントロールできる側”って思ってるのかな?大人っぽいこと言うんだね」

 

(はい挑発その②)

 

霜月は鼻で笑った。

 

「……は?アンタの方がズレてるでしょ」

 

書類を片手で束ねながら、冷淡に続ける。

 

「私が縛られてるんじゃなくて、自分で決めてるの。責任も覚悟も、その辺の理性すらない厚化粧には一生分かんないでしょうね。自分の退屈しのぎのためなら、他人がどうなっても平気な顔してるし」

 

さらに追撃。

 

「“自由”を好き勝手に解釈して、気まぐれで人の心弄って遊ぶアンタに、不思議とか言われたくないんだけど?」

 

そしてさらに追撃。

 

「それでも暇なら、家で人形でも買って相手にしてなさいよ。そっちの方がまだ誰も傷つかないでしょ?向こうはアンタを全部肯定してくれるし。まぁ、どうせアンタのことだから、無駄に高い人形買って数日で飽きそうだけど...」

 

最後に陽乃との会話という名の殴り合いにトドメを刺す。

 

「他人の自由に口出しする暇あったら、自分の趣味悪い性格どうにかしてきたら?あっ治す気が無いからこんな事言うか、ごめんなさい。配慮する気無かったからつい...」

 

 

陽乃の眉が一瞬だけ動いた。しかしすぐに、にこりと楽しげに微笑む。

 

「……いいね。やっぱり霜月さん、面白いよ。もっと話したくなっちゃった」

 

その瞬間、霜月は無言で書類の山をまとめ――陽乃の胸にどん、と押し付けた。

 

「そんなアンタにプレゼント。頑張ってください。そして、二度とうざったい会話持ち込まないでください」

 

「多くない?」

 

「仮にも先輩なので」

 

陽乃は驚きつつも、楽しげに書類の山を抱え込む。霜月は黙々と作業を再開し、心の中でちょっとだけ満足していた。嫌味を言い切り、鬱憤も晴らした――不思議と心が軽くなったのだ。

 

(……スッとした)

 

 

しばらくして説得から戻ってきた比企谷が二人を見て呟いた。

 

「……おかしいだろ。なんであの二人、あんだけ喋ってたのに、他の誰より仕事速いんだ……?」

 

作業室には静寂だけが残り、霜月澪のタイピング音が妙に力強く響いていた。

 

さらに、

 

「ここの収支合ってないよ?」

 

「んなもん自分で確認してください。紙そっちにあるので。アンタハイスペックなんでしょ?頼んだ」

 

「ふーん分かった....」

 

なんてやり取りがあったとか無かったとか....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、霜月が待っていた雪ノ下雪乃がついに復活し文化祭実行委員会に参戦し霜月は代理としての役割を果たし終えた。代理とはいえ副実行委員長は大変だった。

 

(主に厚化粧の相手だけど)

 

 

そして文化祭実行委員はいつものように、いや――いつも以上にカオスな空気が漂っていた。

 

「それでは、委員会を始めます」

 

形ばかりの宣言をする相模。声のトーンは低く、目の光はどこか遠い。完全に「仕事してるフリ」の代表格だった。

 

(いや“始めます”じゃなくて“とりあえず座ってます”の間違いじゃない?)

 

霜月は内心で毒を吐く。

 

しかも今日の顔ぶれが、また妙に濃かった。なぜか厚化粧の卒業生、雪ノ下陽乃が、まるで常連のように席を陣取り、さらにF組クラス劇の主役・迷惑イケメンの葉山まで当然のように混じっている。

 

(いや、あんたら出席率どうなってんのよ)

 

霜月は思わず心の中で突っ込んだ。本来“外部枠”のはずの二人のほうが、正規メンバーより委員会に来ているという異常事態。

 

(ほんとどんだけサボってんのよ、他の奴ら……)

 

そんな中、雪ノ下が進行役として立ち上がる。背筋を伸ばし、凛とした声で告げた。

 

「本日の議題ですが、城廻会長からの連絡どおり、文化祭のスローガンについてです」

 

その言葉に合わせ、生徒会の女子がホワイトボードに“問題のスローガン”を書き出す。

 

『友情・努力・勝利』

 

(ジャンプの三原則……?)

 

霜月の頭の中に、少年誌の表紙とナレーションが浮かんだ。『友情・努力・勝利!! 次号、完結!』みたいなやつである。

 

そして、そこから地獄のスローガン選考会が始まった。

 

最初の案。

 

『面白い!面白すぎる!~潮風の音が聞こえます総武高校文化祭~』

 

(いや、パクリじゃないの……?)

 

霜月が冷や汗を垂らす横で、比企谷は目を細めてボソッと呟いた。

 

「これ、たぶん某地方CMだよな……」

 

次。

 

『ONE FOR ALL』

 

葉山が反応した。

 

「お。ああいうの、ちょっといいな」

 

その横で比企谷が、例によってひねくれた方向に発言する。

 

「一人を犠牲にして、全員のために働かせるって意味なら完璧だな」

 

(凄いわ……いい言葉のはずなのに悪意の塊に聞こえる)

 

霜月は頭を抱えた。そして最後。相模チームの発表。

 

「じゃあ、最後。うちらの方から」

 

相模は妙にドヤ顔で立ち上がり、金魚のフンみたいな取り巻き二人とアイコンタクト。そして勢いよくペンを走らせた。

 

『☆絆~ともに助け合う文化祭~』

 

その場に漂う空気が、五秒ほどで完全に死んだ。

 

「う、うわぁ……」

 

比企谷、思わず素で声を出して引く。教室にいた霜月を含む極数名(最後までサボらなかった人々)が、その“生理的なリアクション”に共感した。

 

(比企谷、気持ちは分かるけど声に出したら負けよ……いやでもこれは無理ない)

 

霜月はため息をつきつつ、ペンで机を軽くトントン叩く。相模の眉がピクピク動いた。

 

「……何かな?何か変だった?」

 

「いや、別に。いーんじゃないッスか?ハハっ」

 

比企谷のその“雑な挑発”が、思いのほか刺さったらしい。相模の笑顔がギシギシと軋む。やはり無事には終わってくれないようだ。

 




陽乃からのそれぞれの評価

八幡は“弄り甲斐のあるおもちゃ”
結衣は“素直で扱いやすい良い子”、
雪乃は“可愛いこじらせ妹、姉として妹の成長を近くで見たい”※ただしその為に周りを巻き込む可能性有り
霜月は”耐久性が異様に高いおもちゃ、下手にいじると反撃を喰らう※陽乃が勝手に限界値を測ろうとする
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