やさぐれ女と時々奉仕部   作:レゾリューション

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今回長め、なんとか間に合った....,


今日一番と言っていいほどの笑顔

そして、ディスティニーランドの件は土曜日に行くことになった。つまり今日が土曜日。奉仕部一行は例のディスティニーランドへと足を運んでいた。

 

開園直後だというのに、ゲート前はすでに人、人、人。楽しげな音楽、はしゃぐ子どもたち、カチューシャを装備した夢の国戦士たち――それらすべてが、霜月の精神HPをじわじわ削っていた。

 

由比ヶ浜はというと、朝からテンションが振り切れている。スマホを構え、ぴょんぴょん跳ねる姿は完全に“夢の国仕様”だ。

 

「……もう帰りたい」

 

「まだ入ってすらないよ!?」

 

由比ヶ浜の即ツッコミが入るが、霜月は聞こえないふりを決め込む。霜月は、深いため息をひとつ落とした。

 

(……なんでわざわざ週末に人混みって概念を物質化したみたいな場所に来なきゃならないのよ)

 

ただでさえ人混みが苦手なのに今日のそれはレベルが違う。下手をすれば修学旅行の京都を超える密度だ。肩が触れる、カチューシャが当たる。謎の着ぐるみが視界を横切る。

 

霜月の表情は、開園からまだ十分も経っていないにもかかわらず、すでに「帰りたい」を通り越して「悟り」の域に達していた。

 

「……何が夢の国よ。現実逃避の集団催眠でしょ、これ」

 

ぼそっと放たれたその一言は、夢の国ガチ勢に聞かせたら即刻追放レベルの暴言だったが、奉仕部の面々は誰一人としてツッコまなかった。

 

比企谷は人の流れを眺めながら、静かに頷く。

 

「まぁ……いつも通りだな」

 

「想定内ね」

 

雪ノ下も、淡々と同意する。由比ヶ浜だけが一瞬「え?」と首を傾げたが、すぐに「あ、そっか」と納得した顔になった。そして、問題はもう一つあった。

 

今日のメンバー構成である。

 

奉仕部に加え、葉山隼人、戸部翔、縦ロール(三浦優美子)、海老名姫菜、そして一色いろは。

 

通称、縦ロール陣営。

 

この時点で霜月のストレスゲージは、すでに黄色信号を点灯させていた。

 

「ねぇ霜月、アンタ、歩くの遅くない?」

 

三浦が振り返り、あからさまに不満そうな視線を向ける。

 

「……人が多い場所では、無駄に前に詰めない主義なだけよ」

 

「は?意味わかんないんだけど」

 

縦ロールの舌打ちが炸裂する。それに対し、霜月は一切表情を変えない。

 

「奇遇ね。私も今、同じ感想もってんのよ、縦ロールに伝えるって難しいわね」

 

空気が一瞬凍ったが、葉山が「まあまあ」と笑顔で間に入ることで事なきを得た。その横で一色は、完全に慣れた様子だった。

 

(よくやるわよね、このメンバーで一日)

 

内心でそう呟きつつも、霜月は隊列から離れない。離れたら迷子になる確率が高すぎるし、何より面倒だ。

 

長蛇の列に並ばされ、やっと乗れたアトラクションでは、戸部が無駄に叫び、三浦がうるさく、比企谷は終始無言。由比ヶ浜は写真を撮り、海老名は何かを妄想し、雪ノ下は真面目に演出を観察していた。

 

それでも――

 

奉仕部メンバーで撮った写真は、なぜか悪くなかった。雪ノ下が目を輝かせて見ていた、パンダのパンさんのアトラクションも、意外と完成度が高い。

 

「……まあ、嫌いではないわね」

 

霜月は誰にも聞こえないように呟いた。

 

その直後に三浦にカチューシャをぶつけられて舌打ちする羽目になり、すぐにその感情は撤回した。

 

それも含めて、今日という一日は間違いなく“騒がしくて、面倒で、それなりに記憶に残る日”になりそうだった。霜月は、もう一度だけため息をつき、再び人波の中へと歩き出した。

 

夢の国という名の、現実そのものの中へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディスティニーに出かけて一週間がたち、クリスマスイベントの準備が進んで行く。そして、ついに冬休み寸前になり終業式が終わった瞬間、校内に漂っていたのは解放感と「冬休みだー!」という雑音だった。廊下では生徒たちが一斉にスマホを取り出し、帰りの予定や遊びの約束を交わし始める。

 

教師の「静かにしろ」という声も、今日はどこか形だけだ。だが、奉仕部にとっては、ここからが本番だった。

 

「はい解散!」の空気に背を向けるように、彼らは足早に校舎を出る。向かう先は、イベント会場のコミュニティセンター。午後から始まるクリスマスイベントの、裏方中の裏方である。

 

 

 

 

調理室に入った瞬間、甘い匂いと熱気が一気に押し寄せた。すでにオーブンはフル稼働。予熱完了を知らせる電子音、ボウルと泡立て器がぶつかる乾いた音、誰かが砂糖を入れすぎたかもしれないという小さな悲鳴。

 

そんな中、霜月は黙々と手を動かしていた。

 

(……腕、普通に疲れるんだけど)

 

内心ではそうぼやく。だが、口には出さない。理由は単純明快だ。雪ノ下雪乃がすぐ近くにいる。

 

「口を動かす暇があるなら、手を動かしなさい」

 

その一言が、脳内で先読み再生される程度には、霜月は彼女の思考回路を理解していた。現在、霜月の担当はアイスボックスクッキー。比較的地味で、だが失敗すると見た目が壊滅する代物だ。この割り振りについて雪ノ下は淡々と理由を述べた。

 

「霜月さんは、口は悪いけれど手先は器用でしょう」

 

評価として正しい。だが、どこか余計な一言が混ざっている。

 

(ほんと、いちいち棘があるのよね……)

 

霜月は心の中でだけため息をつき、冷蔵庫を開ける。中には、先ほど仕込んでおいた生地が整然と並んでいた。

 

ココア入りの濃い色の生地。プレーンの、淡い色の生地。

 

それぞれを取り出し、打ち粉を軽く振って伸ばす。厚さを揃え、端を切り落とし、定規で測るようにきっちり一センチ幅。包丁を入れる動きは迷いがない。トントン、と一定のリズムで切り分けられていく。卵白を刷毛で薄く塗り、模様がずれないよう、神経を集中させて生地を重ねる。

 

(……これ、クッキー作りっていうより工作よね)

 

そう思いながらも、手は正確だ。重ね終えた生地を再び冷蔵庫へ。十分に冷やした後、今度は断面を意識しながらスパッとカット。模様が綺麗に出ているのを確認し、天板へ並べていく。

 

その様子を、横から由比ヶ浜が覗き込んだ。

 

「すごっ。しもっち、なんか職人さんみたい」

 

「……普通にやってるだけよ」

 

霜月は視線を逸らしたまま、素っ気なく返す。

 

「手伝おっか?」

 

その一言で、霜月の手がぴたりと止まった。

 

脳裏に蘇る、過去の惨劇。

 

形が自由すぎるクッキー。

焼く前から自己主張を始める生地。

完成形が“クッキーという概念”だった何か、というか木炭。

 

「……大丈夫」

 

即答だった。

 

「由比ヶ浜は、飾り付けとか、盛り付け担当でお願い」

 

「えー、ひどーい」

 

そう言いながらも、由比ヶ浜は引き下がる。自覚がないわけではないらしい。

 

そのやり取りを、雪ノ下は黙って見ていた。資料を確認する手を止めることはないが、霜月の作業の正確さに、ほんの一瞬だけ視線を向ける。

 

そして、何も言わない。それが、彼女なりの評価だった。オーブンに入れられたクッキー生地は次第に色づき、香ばしい匂いを放ち始める。

 

甘い香りと慌ただしい足音。誰かの小さな成功と、別の誰かの軽い失敗。イベント開始まで、残された時間は少ない。だがこの調理室では、それぞれが自分の役割を理解し、文句を言いながらも、確実に前へ進んでいた。焼き色を確認しながら、霜月はひとつだけ思う。

 

(……これ、普通に文化祭よりハードなんだけど)

 

もちろん、その感想を口に出すことは最後まで、なかった。

 

 

 

 

ケーキとクッキーが完成すると、調理室は一気に戦場から後方支援基地へと姿を変えた。甘い匂いと達成感だけが残り、あとは運ぶだけである。

 

「……で、俺か」

 

比企谷は、両手にケーキの箱、さらにクッキーの入ったトレーを抱え、静かに悟った。奉仕部で唯一の男部員。つまり、重量物担当である。

 

「ヒッキー、落としたら一生恨むからね?」

 

由比ヶ浜の軽口に、

 

「その前に腰が死ぬ」

 

と即答しつつ、比企谷は慎重に歩き出した。ケーキは崩すと精神も崩れる。これは常識だ。一方その後ろで、霜月は腕を回しながら一息つく。

 

(結局、最後は人力輸送なのよね……文明とは)

 

そんな哲学的なことを考えているうちに、会場では――ついに、クリスマスイベントが幕を開けた。

 

 

 

最初のプログラムは、海浜側がどうしても譲らなかった「音楽」。

 

まずは海浜の生徒によるバンド演奏。ノリは良い。音量も良い。主張も強い。

 

「若さって音量で表現するものだったかしら……」

 

霜月は遠い目で思う。続いて、クラシックの主張コンサート。こちらは音量こそ控えめだが、思想が強い。

 

「この曲を選ぶあたり、“わかってます感”がすごいわね」

 

雪ノ下が淡々と評し、一色はパンフレットを見ながら小声で、

 

「これでも、だいぶ削ったんですよ……」

 

と、遠い戦いを思い出すように呟いた。霜月も同意する。

 

(削ったわねー、ほんと……原案のままだったら、途中で客が悟りを開いてたわ)

 

演奏が終わると、会場は万雷の拍手に包まれた。なんだかんだで、盛り上がっている。悔しいが事実だ。そして、次の演目へ。総武側と海浜側、血と汗と舌打ちの末に生まれた折衷案。劇である。内容は『賢者の贈り物』。

 

「……まぁ無難ね」

 

霜月の率直な感想を出し雪ノ下も珍しく肯定的だ。

 

「泣かせに来てるけど、押しつけがましくない。ちょうどいいわ」

 

一色は小さくガッツポーズを作る。この“ちょうどいい”を引き出すまでが、地獄だったのだ。舞台袖では、役者たちが緊張した面持ちで待機している。その様子を見て、霜月は少しだけ肩の力を抜いた。

 

(……まあ、悪くないイベントにはなりそうね)

 

少なくとも、横文字の洪水も、責任の丸投げも、今日はない。今はただ、拍手と照明と、ほんの少しのクリスマスらしさが、会場を満たしていた。そして奉仕部は、舞台の裏で静かに思う。

 

(ここまで来たなら、最後まで付き合うしかないわね)

 

クリスマスイベントは、まだ始まったばかりだった。劇は、静かに――だが確実に終盤へと雪崩れ込んでいった。舞台の中央に立つのは、千葉村で出会った少女、鶴見留美。小学生とは思えない落ち着いた声で、物語の核心を担う役を演じている。

 

客席は、しんと静まり返っていた。

 

(……良い演技ね)

 

客席後方、スタッフ席に立つ霜月は、腕を組みながら冷静にそう評価する。身内贔屓でもなく、忖度でもない。純粋な感想だ。過剰に感情を盛るわけでもなく、かといって淡白すぎない。子どもらしさを残しながら、物語をきちんと“伝える”演技。ナレーションが、次々と小学生たちの手によってリレーされていく。少し噛む子、妙に張り切る子、声が小さすぎる子。だが、それも含めて“味”だった。

 

そして――

 

「わたしたちから、彼らへ。そして、みなさんへ」

 

一拍置いて、

 

「心ばかりの、贈り物を」

 

その瞬間、舞台上と客席の空気がふっと緩む。

 

「メリークリスマス!」

 

複数の声が重なり、ホールに響いたその言葉を合図に、ばっ、と舞台袖から飛び出してきたのは、小さな天使。

 

「めりーくりすまーす!」

 

白い衣装に羽を背負い満面の笑みを浮かべるのは川崎沙希の妹、京華だった。

 

彼女は両手で大事そうにケーキを抱え、よちよちと舞台を進んでいく。客席から、思わず笑い声と拍手がこぼれた。ほぼ同時に、ホール後方の扉が開く。比企谷と、総武高校の副会長――二人がかりで、重そうな扉を押し開ける。その向こうから現れたのは、同じく天使の衣装を着た園児たち。

 

列は少し歪んでいるし、歩幅もバラバラ。だが、それでいい。園児たちは客席を回り、慎重に、しかし誇らしげに、お年寄り一人ひとりへケーキを配っていく。

 

「はい、どうぞ」

「めりーくりすます」

 

言い方はまちまち。だが、受け取る側の表情は、例外なく柔らかかった。

 

そして――

 

舞台上で、鶴見と京華が並び、そっと蝋燭に火を灯す。その光を合図に、客席でも、次々と小さな炎が揺らめき始める。キャンドルサービス。会場全体が、柔らかな光に包まれた。

 

「……まぁ」

 

霜月は、肩の力を抜くように小さく息を吐いた。

 

「なんとかなったわね」

 

誰に向けた言葉でもない。自分自身への区切りの一言だった。やがて舞台は片付けられ、会場はそのまま、ケーキとクッキーを囲む“クリスマスパーティー”へと移行する。

 

海浜総合高校の生徒も、総武高校の生徒も、同じテーブルでフォークを動かし、ぎこちなく、だが確かに談笑していた。

 

霜月たちスタッフは交代制で給仕に回りつつ、合間にクッキーをつまみ、紅茶を飲む。忙しい。だが、不思議と嫌ではない。

 

その途中――ふと視線を上げた霜月の目に、向こうの生徒会長、玉縄の姿が映る。目が合った次の瞬間、即座に逸らされた。

 

(反応、早っ)

 

霜月はクッキーを一口かじりながら、内心でそう突っ込む。甘さは控えめで焼き加減、問題なし。

 

(……仕事はちゃんとやったでしょ)

 

霜月はそう思いながら、騒がしくも温かな会場を、もう一度ぐるりと見渡した。

 

少なくとも今夜は、この場所に、失敗という言葉はなかった。

 

 

 

 

 

合同クリスマスイベントが無事、本当に“無事”に終わり、奉仕部には久しぶりの静寂が戻ってきていた。部室の空気は、張り詰めていた数週間が嘘のようにゆるんでいる。誰かが深く息を吐くたび、「ああ、終わったんだな」という実感がじわじわ染みてくる。

 

霜月は椅子に腰を下ろし、雪ノ下が淹れた紅茶を片手に文庫本を開いていた。湯気は細く立ち上り、茶葉の香りが静かに広がる。

 

平穏、これほど尊いものはない。

 

(……イベントが終わると、世界ってちゃんと回るのね)

 

内心でそんな感想を抱きつつ、ページをめくる。騒音も横文字も責任転嫁もない。奇跡に近い。と、その平穏を破るように、控えめなノック音が響いた。

 

コン、コン。

 

雪ノ下が顔を上げる。

 

「どうぞ」

 

「失礼しまーす」

 

軽い調子で入ってきたのは、一色いろはだった。相変わらず小動物的な笑顔だが、今日はどこかすっきりしている。

 

「あ、いろはちゃん。どうしたの?」

 

由比ヶ浜がぱっと明るい声をかける。一色は少しだけ姿勢を正し、照れたように笑った。

 

「えっと……今回のイベント、奉仕部のみなさんのおかげで、ちゃんとやり切ることができたので。そのお礼に、と思って」

 

その瞬間、比企谷が腕を組んだまま、淡々と口を挟む。

 

「礼なら俺たちじゃなくて、霜月に言ってくれ」

 

唐突だが、的確だった。

 

「後半どころか、ほぼ最初から最後まで一色と霜月で回してたろ。俺たちは途中参加だ」

 

雪ノ下も小さく頷く。

 

「事実ね。全体設計と現場対応、その両方を同時に処理していたのは、その二人よ」

 

「うんうん。私たち、後半でやっと追いついた感じだし....」

 

由比ヶ浜も素直に同意する。視線が一斉に霜月へ集まる。当の本人は、紅茶を一口飲んでから本を閉じた後に

 

「まぁアンタらもちゃんと仕事はしてたでしょ」

 

そう言ってから、一色に視線を向ける。

 

「それに、一色が“お礼”って言ってるんだから、素直に受け取りなさいよ」

 

空気を和らげる、実に霜月らしい収め方だった。一色は改めて一歩前に出て、ぺこりと頭を下げる。

 

「本当にありがとうございました。みなさんがいなかったら、途中で絶対折れてました」

 

その言葉に、部室の空気がふっと柔らぐ。ちょうどいい区切りだ、と判断したのか、比企谷が立ち上がった。

 

「じゃ、俺はこの辺で――」

 

が、その瞬間。

 

「で」

 

一色の声が、やけに明るく響いた。

 

「話は、まだ終わってないんですよ」

 

比企谷の動きが止まる。

 

「……え?」

 

「終わってない?」

 

由比ヶ浜が首を傾げ、雪ノ下も眉をわずかに動かす。その中で、霜月だけが察したように小さく息を吐いた。

 

「……そうね。終わってなかったわ」

 

一色はにこにことしたまま、比企谷に一歩、また一歩と近づく。その笑顔は可愛い。可愛いが、どこか危険だった。

 

「実はですね~」

 

甘ったるい声で、爆弾を投下する。

 

「先輩からのお詫びのハーゲンダッツ、まだ買ってもらってないんですよ」

 

「あと」

 

ちらりと霜月を見る。

 

「しもっち先輩のペプシコーラも」

 

比企谷の顔から、血の気が引いた。

 

「……あれ?」

 

完全に忘れていた人間の顔だった。

 

「このまま、いい感じの雰囲気で終わらないの?ここで『完』って文字出ないの?次のPartに進まないの?」

 

「何言ってるんですか」

 

一色は即答する。

 

「まだ『To Be Continued』ですよ。時代も世代も交代しませんよ」

 

逃がす気ゼロである。雪ノ下が静かに追い打ちをかけた。

 

「比企谷くん。約束は守るものよ」

 

「信用の問題だよ!」

 

由比ヶ浜も笑顔で参戦する。比企谷は観念したように、無言で財布を取り出し、千円札を一枚、霜月に差し出した。その手は、わずかに震えている。

 

「……お釣り、いらない」

 

霜月はあっさり受け取り、立ち上がった。

 

「一色」

 

「はい?」

 

「一緒にコンビニ行きましょ。どうせならちゃんと選びたいし」

 

「はーい!」

 

二人は、驚くほど息の合った動きで部室を後にする。その顔は、今日一番と言って”いいほどの笑顔"(※比企谷視点)だった。残された奉仕部メンバーは、その様子を見送りながら、自然と同じ感想に行き着く。

 

「……あの二人、ほんと良い相棒だよね」

 

「そうね。一見、性格や価値観は真逆に見えても根っこは同じなのかもしれないわね」

 

由比ヶ浜と雪ノ下の一言に、比企谷は否定しなかった。彼だけが、空になった財布を見つめながら、静かに呟いた。

 

「……クリスマスって、こんなに痛い行事だったっけ....」

 

平穏は戻った。ただし、財布は軽くなった。

 




皆様良いお年を!

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