Wizardry Variants Daphne ~ ナナシノユーコ   作:まつだあきら

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ダフネやってて戦闘後、敵の遺体とかどうしてるんだろうって思ったので、こういうことかなあと。
そしてたぶん、マリアンヌには京言葉は実装されていない。
ユズナミキには実装されてそうだけど(´・ω・)


13.初戦闘

 私はダンジョン内でタブレットがどう表示されるのか気になっていた。

 ハーケンで転送されてすぐに確認してみると、実際のダンジョン内がダフネの画面に落とし込んで表示されている、といった感じ。

 自分で操作出来る範囲は少ないけれど、ダフネのゲーム内のダンジョンで編成にいる仲間の状態やマップは確認できる。

 マップが確認できるのはもちろん、踏破済みの場所でないと表示されない。

 けれどマッピングの手間が掛からないのは便利かもという印象だった。

 そういえば、このメンバーで地図の記録係は誰になるのだろう。

 そう思って隣にいるエカテリーナに聞いてみたら「あら、私たちはメメント・コルに付いて行くだけですよ。もし道がわからなくなったら、ドクターが教えてくれますし」という返事だった。

 その会話を聞いていたらしいビビアナから「冒険者なら地図なんて作らなくてもどこにいるかわかるでしょ」と、にべもない言葉が飛んできた。

 マリアンヌは「ビビアナさんは地図がなくてもどこにいるかわかるなんてすごいですね」と言う。

 一瞬、京言葉?と思ったけれど、マリアンヌのいつもと変わらない様子からすると京言葉のような意味で言った訳ではないらしい。

 ビビアナはその言葉に、ふん、とそっぽを向いて先に進んでいく。

 うーん、要するに移動は基本、仮面の冒険者について行くだけで、地図の記録はとくにしていないらしい。

 その仮面の冒険者はルルナーデを先行させて敵がいないかどうかや宝箱の有無などをメモを取り確認しながら進んでいる。

 その足取りは確かで、何度か来たことがあって土地勘はある、という印象。

 それならまあ、地図係はいらないのかな。

 とはいえ、はぐれた場合にタブレットの地図は時々確認しながらの方が個人的にはいいかもしれない。

 もっともタブレットでわかる範囲、今のところ地形的には私が知っているはじまりの奈落のB4Fと全く同じだったけれど。

 

 ジャンに指摘されたタブレットの問題は、失くしたり盗まれたりしないよう、普段使わない時は腰に下げている聖典に挟むことにした。

 聖典自体は革の装丁に革のベルトでしっかり固定できるようになっていて、聖典の大きさもちょうどタブレットより一回り大きいぐらいだったからだ。

 ずっと持っていると手がふさがってしまうし、現実問題としても持ち歩きつつどこかにしまえるように工夫しなければならないし。

 けれど、ダンジョン内の戦闘の際、とっさにすぐ仕舞える訳ではない感じ。

 いっそのこと聖典を下げているバンドを改造するか、エプロンのような前掛けにタブレットが入るポケットを付けて冒険に出るか。

 そういった諸々のことを考慮の上の妥協で、とりあえずの対応としていつも持ち歩く聖典に挟む、という落としどころだった。

 宿の部屋で出来る限り早くタブレットを出し入れする練習もしていた。

 けれど実際ダンジョンの中で歩きながら出し入れを試してみると、思っていたよりも時間がかかる感じだった。

 そんなことを確認しながら歩いていたら、ひゅん!と何かが私のそばに飛んできた。

「敵の気配がする」

 ルルナーデが言った。

 その言葉が聞こえるのはたぶん私とメメント・コルだけなんだけど、矢が飛んできてから言われても遅いんだな。

 私は練習したとおりにタブレットを仕舞おうとしたけれど、あたふたしてしまった。

「マソロツ!」

 マリアンヌがとっさに回避バフをかける。

 前衛の3人のまわりに彼らと似た姿の幻影が現れる。

「何をもたもたしておる!」

 ゲルルフに叱られた。

 タブレットを何とか仕舞って周りを見るとビビアナが短剣を構えて仮面の冒険者と飛び出している。

 ゲルルフは大槌を両手に構えてその後ろをどかどかとついて行く。

 エカテリーナは詠唱を始めている。

 おそらく敵を眠らせるカティノだ。

 敵は冒険者たち。

 どうやらギルド依頼を受けずに奈落に降りた、もぐりの冒険者たち。

 いや、冒険者というより追いはぎやならず者と言った方がいい輩たちだ。

 彼らは魔物だけでなく他の冒険者たちも襲う。

 私も含めた仮面の冒険者一行を獲物として見定めたようだった。

 私は、私は何をすればいい?

 七篠優子として初めての戦闘で、ユーコとしては久しぶりの実戦。

 七篠優子の部分の私は焦っているけれど、ユーコの部分の私が冷静に状況を分析する。

 仲間はすでに行動している。

 敵には弓使いがいる、ということは後衛も狙われる。

 マリアンヌはマソロツの回避バフを前衛にかけた。

 それならば、私の中のユーコが後衛の三人にマソロツをかける。

 私たちの周りに、私たちの姿に似た幻が現れる。

 マリアンヌは次の詠唱に移っている。

 ダニエルに教えてもらったマカルディアだろう。

 私は、次に何をすればいい?

 エカテリーナのカティノで意識を保てず倒れ込む敵冒険者に、前衛の三人が襲い掛かる。

 ビビアナとメメント・コルは倒れ込んだ敵の急所に狙い、ゲルルフは大槌で容赦なく無防備になった敵に叩き潰す。

 よく見ればゲルルフが怪我をしている。

 カティノで眠らされる前の敵に傷つけられたのだろう。

「ディオス!」

 私はゲルルフを回復する。

「余計なことをするな!」

 ゲルルフは私の方を見ることもなく言い放つ。

 友好度が低い性格悪の仲間は、他の仲間から恩を売るような行為を受けると悪態をつく。

 けれど放っておくわけにもいかない。

 放っておいて死なれてしまえば、仮面の冒険者に逆転の右手を使わせることになる。

 逆転に失敗すればその遺体を寺院まで運ばなければいけない。

 悪循環になる。

 ゲルルフはすぐさま、敵の後衛に殴りかかる。

 見れば、ビビアナと仮面の冒険者も敵の前衛を倒して、後衛を攻撃している。

 私に何かできることはあるか、と見ているうちに敵は全滅していた。

 

 初めての戦闘はあっという間だった。

 ゲームでの戦闘とは全然違う。

 コマンドで迷う暇も、敵が待っていてくれることもないし、仲間がどう動くのかもわからない。

 いや、わからないわけじゃない。

 冷静に今考えれば、前衛の三人は敵を攻撃するために動いているし、後衛のマリアンヌは前衛が回避しやすくなるためのマソロツ、幻影の呪文を、エカテリーナは敵の足止めをするためにカティノ、睡眠の呪文を唱えている。

 だから私の中のユーコは、飛び道具を警戒して後衛にマソロツをかけた。

 ゲームではこういう流れはプレイヤーが一人で考えて、キャラクターを駒として順に動かす。

 けれど実際キャラクターとして自分が戦闘の中でその都度判断していくのは難しい。

 せめて誰かが指示を出してくれるか、最低限の事前の申し合わせをしておいた方がいいと思った。

「今の動きで、私は良かったんでしょうか」

 私は隣にいたエカテリーナとマリアンヌに尋ねた。

「あら、後列に幻影呪文をかけるのは悪い手ではないと思いますよ」

 とエカテリーナ。

「てっきり、ユーコさんのことだから深い意味があるマソロツだと思いましたけど」

 とマリアンヌ。

「いえ、意味というか、弓を使う敵がいたようでしたから、後列も狙われるかと思いましたので。いつも皆さん、こんな感じで?」

 私は尋ねた。

「そうですね。コルさんが指示を出す時もありますけど、たいていは今みたいなサポートをしてから、自分で判断して動いてます」

「私はメメント・コルの指示があればそれに従いますけれど、たいていはドクターがどうすればいいか教えてくれますし」

 うーむ。

 プレイヤーとして深く考えてなかったけど、現実の戦闘だとそうだよね。

 仕事でも、誰かとチームで動くときは自分で判断して動くこともあれば、誰かが指示を出してくれることもあるけれど、私にはまだ、仲間がどんなタイミングでどう動くかがわからない。

「じゃあ、今みたいに魔法で支援してから仲間の様子を伺って、必要があれば回復を、支援呪文の効果が切れそうであればかけ直す形で問題ないですか」

 これは私がプレイヤーとして後列のキャラにさせていることだ。

「ええ、それで問題ないでしょう」

 とエカテリーナ。

「むしろ、私はユーコさんに教えてもらったから、まず支援することを意識するようになりましたよ?」

 とマリアンヌ。

 たしかにそう彼女に教えたのは私だった。

 

 後列の三人で簡単な打ち合わせをしている間に、前衛の三人は倒した敵に念のためとどめを刺して、金目のモノ、使えそうなアイテム、ガラクタなんかを回収していたようだった。

 人を殺すのに平気になれる気がしなかったけれど、相手が殺す気で来ている以上、仕方がないのかもしれない。

「遺体は? このままにしていくんですか?」

「ええ、はじまりの奈落では捜索願が出ている冒険者であれば回収しますけれど、こういったならず者はそうではないですし、寺院に運ぶのも手間ですし。放っておいても誰かが回収しているようですから」

 とマリアンヌ。

 そういえば遺体回収屋をしているキャラもいるんだっけか。

「ならず者はならず者で他に仲間がいて、運が良ければその仲間が回収して蘇生させているみたいですし、運が悪ければゴブリンや魔物、ここだとに異形たちに食べられてしまうこともあるようです」

 とエカテリーナ。

 ああ、そうだ、異形の貪る大口が、人の遺体を保存食に加工しているところに遭遇するイベントが、ゲームの序盤にあるんだった。

 漠然とハードモードな世界に放り込まれたと思っていたけれど、戒律が違うとはいえ目の前で仲間が自分たちを襲ってきたならず者たちに躊躇なくとどめを刺す、冒険者がそんな心持ちでいることが当たり前の世界なのだ。

 やっていけるのだろうかと、少し不安になる。

 でも、私の中のもう一人の私が、もう一度心の中で強く言った。

 相手がこちらを殺す気で来ている以上、仕方のないことだ、と。

 迷宮の中は治外法権。

 私は、ゲームの中で当たり前のように眺めていた現実を、初めての戦闘で思い知らされた。




まあ、人を殺していいですよ、と言われて、平均的な現代日本人の感覚ですぐに殺せるかと言われたら、できないでしょうね。ユーコちゃん、性格善ですし(・ω・`)
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