Wizardry Variants Daphne ~ ナナシノユーコ 作:まつだあきら
ドワーフは普段から水のように酒を飲む=肝臓が強い=解毒能力が高い、というようなメタ的な設定なのでしょうかね?(・ω・`)
今回はいったんここまで。続きはある程度書けてますが、飛び飛びなのでアップできません(´・ω・`)
B5Fに降りてからは異形やゴブリン、魔物との戦闘が続いた。
降りてすぐの西側フロアで異形ばかりとエンカウントする「異形の巣」には立ち寄らず、そのまま南へと進む。
このフロア近辺によく出る貪る大口は、ゲームで見る以上に気持ち悪かった。
うつろな瞳でゴブリンらしき死体を貪る姿に出くわした時には、さすがに声が出そうになった。
喉から手が生えているのは、喉から手が出るほど飢えているからなのだろうか。
その喉から生えた手でゴブリンの死体をちぎっては口の中に放り込む姿を見て、この異形がもともと人だったと思いたくなかった。
それになんで、股間の真ん中から三本目の足が生えてるの!
ゴブリンの死体を夢中に貪っていて気が付かない異形を私たちは奇襲して、容赦なく叩きのめした。
亜人種のゴブリンは人を襲って食べるという点で魔物とみなされるし、ボーパルバニーのような動物や奈落蟲の昆虫も人を襲うことから魔物とみなされる。
結局、人間やエルフ、ドワーフや獣人といったヒト種と敵対する存在がこの世界の魔物であり、ヒト種であったものが奈落の瘴気に中てられて魔物のように変化したのが異形なのだろう。
そんなことを前衛をすり抜けたゴブリンに耳を齧られそうになり、ゲルルフのハンマーで潰されて飛び散った奈落蟲の臭い汁に濡れながら、私は思った。
道中、何か所か瓦礫が道をふさいでいるところもゲーム通り。
仮面の冒険者が瓦礫に手をかざそうとしたときに「後ろから魔物が奇襲してきます、警戒してください」と皆に注意喚起することで奇襲されることはなかった。
いくつかの瓦礫を逆転して二股三股に分岐する道を毒沼がないルートを進む。
仮面の冒険者は小休憩をとることにして、次にどちらに行くか迷っているようだった。
「メメント・コルさん、どうしました?」
私は声をかける。
「ここから北に行けば確か大きな広間があって騎士団と合流できるはずだが、強力な魔物もいたはずだ。だが、西にある、こちらの瓦礫の奥も気になる」
「ああ、ここは」
私はタブレットを取り出して念のためマップを確認する。
現在地は南側ルートを西に抜けて、瓦礫を逆転してそのまま西に進めば幼女の遺骸と毒沼がある行き止まりで、北に進めばサソリ女がいる広間に抜ける分岐だ。
「前回の救出の時にここは探索しなかったんですか?」
「探索したが、毒沼の向こうには行っていない。あと、小さな女の子を生き返らせたがどこかに行ってしまった」
なるほど。
「お告げをしても、よろしいですか」
仮面の冒険者は頷く。
ルルナーデも興味深そうな顔をして近寄ってくる。
「まず、毒沼の向こうにはぜひ行ってください。行き止まりで往復するのにも消耗しますが、どなたかはわかりませんが仲間になってくれる冒険者の遺骸があります。廃屋でメメント・コルさんの右手で蘇生できる方です」
仮面の冒険者の雰囲気が変わった。
「本当か」
「なんなら、まずルルナーデさんに確認してもらってから回収しに行くので良いと思います」
「前にルルナーデに確認させたときは暗くてよくわからなかったらしいが」
「暗いと見落とすことがあるからね」
と、ルルナーデ。
実際、索敵でも奇襲を受けてからルルナーデが気付くこともある。
それだけ敵が奈落の闇に身を潜めているということなのだろうけれど。
そうそう、はじまりの奈落はゲーム内では灯りがあってけっこう明るいように思えるけれど、実際はかなり薄暗い。
ある程度の間隔で燭台が灯っているることもあるけれど、その灯りが届く範囲はゲーム内で見える範囲よりも実際にはずっと狭い。
だから幽霊でモノを持つことができない、松明のような灯りを持つこともできないルルナーデが見落とすということは十分にあり得る。
それぐらい、ゲームではプレイヤーに都合のよいような描写になっている。
そもそもゲーム内では通路がかなり狭いように描写されていても、その大きさは実際とかなり異なる場合もある。
とても広い通路がゲームでは狭く描かれていたり、狭い場所が広く描かれていたり。
場面によって縮尺も違う感じなのだ。
けれど、大まかな地図として描くとゲーム内のマップとだいたい同じ構造であることはわかる。
私もまだこの違いに慣れていないけれど、そういうものなのだ、と納得するしかない。
「あと、小さな女の子、アイラですがこの子は町に連れていくことができます。放っておくとどこかに行ってしまいますが、町まで送るときちんと伝えれば付いてくるはずです」
「名前も知っているのか」
「ええ。お告げで知らされています。この子も救えと」
町に連れて行って適切にイベントをこなせば縁になるしね。
「そうか」
仮面の冒険者は少しうつむいて考え込んでいるようだった。
たぶん、私と同じことを考えている。
蘇らせたばかりの子どもが、奈落で一人うろついていたらどうなるか。
「身寄りのない子供か。クリステルが孤児の保護をしていなかったっけ。寺院に連れて行ったら」
私たちの話を聞いていたルルナーデの意見。
「そうするのが良いと思います」
私と話し込んでいた仮面の冒険者がマリアンヌに声をかけた。
「どうかなさいましたか?」
「前回、ここに来た時のことを覚えているか」
マリアンヌは少し首をかしげてから「ああ!」と手を叩いた。
「女の子、どこかに行っちゃいましたね」
「ユーコがいうには、町に連れて帰れるらしい」
マリアンヌの顔がぱあっと明るくなる
「ほんとーですか!」
マリアンヌが私の手を取る。
「ぜひ、ぜひ、連れて帰りましょう!」
おそらく前回もマリアンヌが同行していて、アイラのことが心残りだったのだろう。
私は頷いて彼女の手を握り返す。
「女の子がどうかしたんですか?」
エカテリーナも寄ってきた。
「この奥に、女の子がいるんですよ。コルさんが右手で蘇生できるんですけど。前回は蘇生してすぐどこかに行ってしまったんです。でも、ユーコさんによれば町に連れて帰れるそうなんです」
マリアンヌが興奮気味に説明してくれた。
「まあ、それは大変良いことです。でも、連れ帰った後はどうするんですか」
エカテリーナの腰にしがみついたドクターも、口をパクパクさせながら頷いている。
「それは大丈夫です。寺院に連れて行けば、シスタークリステルが預かってくださるはずです」
「まあまあ、それなら安心ですね」
エカテリーナは微笑んでドクターと目を合わせた。
ドクターも心なしか嬉しそうに頷いている。
「というわけでこの後は二班に分かれて、あ、その前に瓦礫を逆転したあとすぐに敵に襲われますが、その戦闘後ですね、二班に分かれて行動することを提案します」
「どうして二班なのでしょう?」
エカテリーナが小首をかしげて尋ねる。
「女の子の他に、南側の毒沼の先に仲間になってくださる冒険者の遺骸があります。その冒険者は廃屋でなら蘇生できますので、そちらを回収する班と女の子を蘇生して連れてくる班に分かれるのがよいかと。毒沼を全員で往復すると余計に回復しなければならなくなりますし」
「なるほど」
仮面の冒険者とエカテリーナも納得したようで頷いていた。
「じゃあ、私は毒沼の方に。解毒は得意ですので」
と、マリアンヌ。
さすが継承スキルが解毒呪文のラツモフィスは伊達じゃない。
「ええ、まずマリアンヌさんは遺骸回収班でお願いします。あと、そちらの班はゲルルフさんとビビアナさんで」
仮面の冒険者が挙手する。
「その人選の根拠は?」
彼は仮面を私の方に向けた。
おそらくこの人選は戒律、性格から判断すると相性が良くないと思ったのかもしれない。
「理由は三つ。一つ目は私よりマリアンヌさんの方が回復も解毒呪文も得意であること。二つ目はドワーフは種族的に毒に対する耐性が他の種族より高い、あ、分かりにくい言い方ですね。要はドワーフであるゲルルフさんが他種族より毒に強いからです。三つ目は毒沼の奥の遺骸の周囲にたぶん罠が仕掛けられてます。それを解除するのに盗賊が居た方がいいから、ビビアナさんもこちらの班。
女の子の蘇生にはいずれにせよメメント・コルさんがいないと出来ませんので、メメント・コルさんは女の子を蘇生する班になります。エカテリーナさんはお子様がいらっしゃったことから子どもの扱いにはたぶん、このメンバーの中で一番慣れてらっしゃるでしょうし、人数的に余った私も女の子を蘇生する班でバランスが取れるかと」
その場にいた4人は目を見合わせた。
「非の打ち所がない判断ですね。ドクターも感心しています」
とエカテリーナ。
ルルナーデもドワーフが毒に強いなんて知らなかったと感心している。
「となると、あとはゲルルフとビビアナが了承してくれるかだな」
「そこはもう、コルさんがお二人にお願いするしかないでしょう。私は問題ありませんよ」
マリアンヌは覚悟を決めた表情で言った。
「ああ。頼んでみる」
「まあ、お前の頼みなら仕方がない」
「報酬を上乗せしてくれるんならそれぐらいやるよ。ちゃんと解毒してくれるんでしょ」
私たちと少し離れた場所で休んでいたゲルルフとビビアナは、あっけなく了承してくれた。
「そこの僧侶! ちゃんと回復せんとただでは済まさんからな!」
「はいはい。誠心誠意、心を込めて回復させていただきます」
と、マリアンヌは心のこもってない声で答えた。
「魔術師、お前はこっちに来ないのか!」
ゲルルフはエカテリーナに声をかける。
「あら、私は毒消しを持っていませんし、解毒の呪文も使えませんよ?」
と、すました声で返事をする。
「ふん。使えんな」
そういったゲルルフの後ろで、ビビアナもふんと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
「ではそろそろ、瓦礫を逆転する。瓦礫を除去するとまた別の瓦礫と敵がくるが、それを排除してから打ち合わせ通り二手に分かれる」
「おう、まかせろ」
とゲルルフは胸を叩いて言った。
仮面の冒険者は、瓦礫に右手をかざして集中した。
続きはまた、気長に待っていただければ(´・ω・)