Wizardry Variants Daphne ~ ナナシノユーコ 作:まつだあきら
聖水まみれの回とかいう人は!(´・ω・)プンスカ
小休止した分岐から北に向かい、仮面の冒険者が何人かの遺骸を逆転の右手で蘇生した。
広間に向かうと入り口で騎士長のディランハルトを始めとした騎士達がいた。
「仮面の冒険者たちか」
私たちに気が付いたディランハルトが声をかけてきた。
「尋常じゃない。気を引き締めろ」
広間はむせかえるような血の臭いが立ち込めて、遺体が散らばっている。
ゲームの表現より、これはちょっと、グロい。
指が欠けた腕や肉がそげ落ちた足や胴体、一部が白骨化している首も転がっている。
吐き気がしてくるけれど、私のスカートを掴む手を感じて吐き気をこらえる。
「アイラちゃん、私の後ろで目を瞑って、しっかり掴まっていて」
「はい」
私のスカートを掴む手に力がこもる。
「雑に食い散らかしている。ここの主はきれい好きではないようだ」
ルルナーデが言った。
「アソビマショ」
私は杖と盾を構えた。
「今、誰かの声が」
ディランハルトが言う。
「サムイ……ノ。アタタメ、テ」
声がする広間の奥にぼんやりと、壁に掛けられた灯りに照らされる半裸の女性の姿が見えた。
「冒険者の生き残りでしょうか」
騎士団員がのんきなことを言う。
「……いや、あれは魔物だ! 来るぞ!」
ディランハルトが叫ぶ。
「サソリ女です、気を付けて!」
たまらず、私も注意喚起する。
騎士たちは一斉にサソリ女に襲い掛かる。
サソリ女はその動きを予想していたのか、女性の上半身を起こして巨体を翻し、尻尾で騎士たちを薙ぎ払った。
薙ぎ払われて吹き飛ばされた騎士の一人が私にぶつかる。
私は盾で受け止めたけれど、よろけてしまった。
そのはずみで、私のスカートをつかんでいた手が離れる。
「アイラちゃん!」
とっさにアイラの姿を確認する。
「あ、あああぁぁ」
倒れ込んで目を開けてしまったアイラが、サソリ女の姿を見てうめき声をあげた。
「そこで、じっとしてて!」
アイラをかばうように位置を変えると足元からぴちゃぴちゃと水たまりを踏む音がして、床が濡れていることに気が付いた。
見ると、水たまりの中でへたりこんだアイラのスカートが濡れている。
子どもがこんな化け物を見たら仕方ないよね、と頭の片隅で思いつつ、アイラがいなかったら漏らしていたのは私かもしれない、と冷静に思った。
サソリ女の姿はゲームで見慣れていたけれど、実物は想像以上に大きい。
女性の上半身が起き上がった姿だと、2メートルぐらいあるだろう。
腰の部分から下のサソリの部分だけでも全長で3メートル近くあるように見える。
横幅も、サソリのハサミを広げたら2メートル以上あるだろう。
単純な大きさだけなら自動車より大きい。
そんな巨体が襲ってくるのだ。
自分が今、冷静でいられることが不思議だった。
たぶん、アイラという自分より弱い、守らなければいけない存在がいるからだろうか。
私はアイラをかばう位置で、盾を構えた。
騎士たちを薙ぎ払ったサソリ女がカサカサと迫ってくる。
ゲルルフ、ビビアナ、仮面の冒険者の三人の前衛がそれを迎え撃つ姿勢をとる。
マリアンヌは呪文を詠唱し、前衛の周りに彼らを模した幻影が現れる。
マソロツだ。
エカテリーナも詠唱したが「あら、やはり効きませんね」とつぶやいたのが聞こえる。
おそらくカティノ、睡眠の呪文を掛けたのだろう。
サソリ女にカティノは全く効かないわけではないが、他の呪文、防御力を下げる酸の霧、モーリスや動きを遅くする鈍化、バティルガレフの方が良い。
私は、すでにかかった支援効果を邪魔せずに自分ができることは何かを考え、視野を広げて命中しやすく会心が出やすくなるカルディアを仮面の冒険者に掛ける。
「エカテリーナさん、サソリ女はカティノよりバティルガレフやモーリスの方が通りやすいです」
「あら、そうなのね。ありがとう」
エカテリーナはそういうと次の詠唱を始める。
前衛の三人はサソリ女が高く掲げた尻尾の先から噴き出す、腐食液らしき謎の液体の攻撃を喰らっている。
サソリ女は毒を使うわけでなく、この液体攻撃はといえば、喰らうと防御力が下がる。
マソロツがかかっているから攻撃を喰らいにくくなっているとはいえ、油断はできない。
謎の液体に濡れながら、サソリ女のすぐそばでビビアナが短剣を振るいながら注意を引き付けている。
ゲルルフは少し離れた位置で両手に持った大槌を叩き込むチャンスを見計らっている。
仮面の冒険者は、サソリの部分の殻の継ぎ目や柔らかそうな肌がむき出しの女性の上半身を狙って攻撃を入れている。
そんな間にも、エカテリーナが呪文で防御力を下げる酸の霧をサソリ女に浴びせる。
ビビアナはサソリ女の攻撃をステップを踏んで避けつつ注意を引き付けているものの、彼女の攻撃は当たらずどこかやりにくそうだった。
「なんかこいつ、やりづらい」
ビビアナがぽつりと言った言葉に私は気が付いた。
気が付いてしまった。
ビビアナは、サソリ女に対して属性相性不利だ。