Wizardry Variants Daphne ~ ナナシノユーコ   作:まつだあきら

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19.火山を目覚めさせた鉱人ゲルルフ

「ところでその子どうすんのよ。あんたが育てんの?」

 ビビアナは私にしがみついているアイラを見て言った。

「ルルナーデさんも言ってたんですけど、王都の寺院に孤児院がありますので、まずはそこに」

 実際は孤児院じゃなくて寺院預かりになるのだけれど、いちいち細かく説明していたら話がややこしくなる。

「孤児院? 結局、孤児院に捨てるんだ」

 ビビアナは言った。

「捨てるんじゃありません。寺院に連れていけば、アイラちゃんにきちんとした引き取り手が現れます」

 正直、私はその「捨てる」という言葉にカチンときて言い返してしまった。

「そんなの、わかんないじゃん」

 ビビアナは面白くなさそうに言って、そっぽを向いてしまった。

「お姉さん、コジインって何?」

 アイラが尋ねる。

「孤児院はね、アイラちゃんぐらいの歳の子どもたちがたくさんいる所。アイラちゃんが眠ってた間に、アイラちゃんのお母さんがお願いした神様からお姉さんに、アイラちゃんを町の孤児院がある寺院に連れて行くように頼まれたの。だから心配しなくて大丈夫」

 アイラは私にしがみつく手に力を込めた。

「お姉ちゃんも寺院の人なの?」

「ううん。お姉さんは冒険者で寺院の人じゃないけど、寺院の偉い人の、シスタークリステルとは知り合いだから。それに寺院にはアイラちゃんの好きな本もたくさんあるよ」

「ご本があるなら」

「だから一緒に行こう」

 アイラは少し考えてから「わかった」と言った。

 けれど、私にしがみついて離れることはない。

「その子、字が読めるの?」

 ビビアナが言った。

「ええ、読めます。ね、アイラちゃん」

 アイラは小さく頷いた。

「ふぅん」

 ビビアナはまた、面白くなさそうな様子でまたそっぽを向いた。

「さあ皆さん、ハーケンで街に戻りましょう」

 マリアンヌが言った。

「後処理は騎士団の方たちに任せて、続きの探索は街で休んでからにしましょう」

 私たちは頷いて、ハーケンのある奥の扉へと向かった。

「お前さん、僧侶だてらに武器の目利きができるようだが、どこでそれを?」

 歩きながら、ゲルルフが話しかけてきた。

「私、鍛冶屋の娘なんです。小さいころから工房で親やドワーフ達の手伝いをしてました」

「そうか。わしにはビビアナにやったような武器はないのか」

「ゲルルフさんは私が目利きしなくても、自分で目利きできるでしょう」

「違いない」

「それに少なくともこの間メメント・コルさんが逆転した装備品に、ゲルルフさんが満足できるようなモノはなかったです」

「違いない。この時代の王都で、ろくな武器を見かけやしない」

 ゲルルフは吐き捨てるように言った。

「私、ゲルルフさんのこと憧れてたんですよ。周りのみんなが伝説の鍛冶師だって話してたから」

「幻滅したか?」

「いえ、幻滅というより伝説の人物だからと言って聖人君子というわけではなく、やっぱりふつうの、どこにでもいるような偏屈なドワーフなんだなあと」

「ふはは、違わない」

 ゲルルフは自嘲気味に笑った。

「お前さん、名前は?」

「ユーコです」

「そうか。覚えておく」

「ええ、覚えてもらえるとうれしいです」

「ユーコ、今度わしにも大槌をいくつか見繕ってくれ。それに、お前さんがまともだと思った武器が手に入ったらそれも見せてくれ。わしの目に適うモノでなくてかまわん」

「わかりました。見繕っておきます」

 たしかにゲルルフが今使ってる大槌は、この進行度では悪くないモノだ。

 とはいえ、それが伝説の鍛冶師が満足できるものであるわけではなく、手に入る範囲でマシなモノとして仕方なく使っているだけなのだろう。

 ハーケンの祠に着くと、仮面の冒険者が逆転の右手でハーケンを修復し終えていた。

 エカテリーナが声をかけてくる。

「その子、無事でよかったですね」

「ええ、みなさんのおかげです」

「ドクターも喜んでいますよ。それにその歳頃の子どもを見ると、私が産んだ子どもたちと夫のことを思い出します」

 エカテリーナの腰にしがみついた髑髏は、カタカタ言いながら私にしがみつく幼女をのぞきこんだ。

 アイラはしがみついたままドクターから隠れるように移動する。

「あら、ドクターは嫌われてしまったようね」

「アイラちゃん、このドクターはこんなおっかない見た目だけど、人のことを傷つけたりこわがらせたりしない、いい髑髏なんだよ」

 そう言って私はアイラの頭を撫でた。

「そうなの?」

 アイラはそう言って隠れながらドクターのことを見ている。

 ドクターは髑髏の頭をぶんぶんと上下に振った。

 たぶん頷いているのだろう。

 今回エカテリーナと一緒に探索して思ったのは、ドクターはけっこう愛嬌があるというか、かわいいところがあるということだ。

 顎をかくかくぱたぱた動かしてるのも首をかしげる動作も、よくよく見ると滑稽。

「まあまあ、ユーコさんはドクターのことがわかってらっしゃるのね」

「お話はできないですけど、ドクターに悪意や害意がないことはわかります」

「ええ。ドクターの見た目で私たちを疎んじる方が多い中で、そう言ってくださる方は少ないです」

 そうだろうねえ。

 私も最初、ぎょっとしたもの。

「今日はもう疲れました。でも、お時間があるときに、お話ししましょう」

「ええ、お話ししましょう。エカテリーナさんのこともドクターのことも、もっと知りたいです」

「ええ、ええ、ドクターも喜んでいますよ」

 ドクターは口をパクパクさせながら頷き、エカテリーナは上品に微笑んだ。

 




今パーティーにいるゲルルフとエカテリーナはゲーム的にはSSRの伝説の冒険者です。
ゲルルフはドワーフ(鉱人)で火の悪魔と契約した伝説の鍛冶屋、エカテリーナはダフネの物語世界の中では救国の英雄として、二人ともおとぎ話で語り継がれるような伝説の存在みたいです。
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