Wizardry Variants Daphne ~ ナナシノユーコ   作:まつだあきら

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おはだけ(/ω\)イヤン


20.髑髏に取り憑かれた魔術師エカテリーナ

 街に戻ると、日が昇ったばかりだった。

 マリアンヌとエカテリーナと私は宿に直行した。

 一度死んだせいかしんどさでメンタルが低下しているのを実感したけれど、出来るかぎり早くアイラを孤児院に連れて行きたかった。

 それにマリアンヌも一緒に寺院についてきてくれると言っていた。

 ゲルルフとビビアナは仮面の冒険者を誘って酒場で一杯ひっかけてくるらしい。

 宿に着いて、女将のダナに事情を説明してアイラの替えの服を用意してくれるようお願いし、お湯を多めにもらって簡単に摂れる食事も用意してもらう。

 部屋に戻ろうというところでダナに声をかけられて、アイラの着替えを渡してくれた。

 私だけでなく、アイラの体も清めなければ。

 相部屋のマリアンヌはまた、体を清める前に寝落ちしていた。

 彼女も疲れているのだろう。

 アイラを清めようかというところでエカテリーナが部屋を訪ねてきて、一緒に彼女の体を清めたいと言った。

 生前産んだという子どもたちのことを思い出したのだろうと、私は快く部屋に招き入れた。

 アイラがドクターをこわがっていたので、エカテリーナはテーブルの上にドクターをお座りさせる。

 アイラの汚れている服を脱がせて、エカテリーナと一緒にアイラの身体を一通り拭い始めた。

 アイラのお清めの最中、エカテリーナは何を思っていたのだろう。

 ドクターはというと、お座りしたままアイラに向かって、しゃれこうべの両側に手を広げてひらひらさせたり、いないいないばぁのような動作をしてみせて気を引こうとしていた。

 こわがっていたアイラも、さすがにドクターのその滑稽な様子をくすくすと笑うようになった。

 ダナにお願いして用意してもらった服を着せるとアイラは眠そうにうつらうつらし始めたので、一旦ベッドで寝かしつける。

 仕方がないので、アイラが目を覚ましてから寺院に連れていくことにしよう。

 アイラの着ていた服も洗濯しなければ。

 エカテリーナがアイラに子守唄を歌って聴かせている間に、冷めてしまったお湯のおかわりを私がもらいに行く。

 エカテリーナの子守唄は、ユーコとしての私も知らない歌だった。とても昔の忘れられてしまった歌なのかもしれない。

 部屋に戻るとアイラはぐっすり眠っていた。

 それからエカテリーナと私は一緒に服をはだけさせて体を拭いながら、話をした。

 エカテリーナは生前の家族のこと、ドクターのこと。

 当のドクターはエカテリーナから分離したまま、テーブルの上でお座りしている。

 両手で目を隠しているのは、女性の裸を見るのは失礼だというアピールなのだろうか。

 私はユーコとしての子どもの頃の話や生前の冒険者暮らしのこと、お告げのタブレットのことを話した。

 体を拭き終わり、寝間着に着替えてドクターも装着したエカテリーナは、部屋を出るとき「私たちはその子の親になれませんからね」と寂しそうに言った。

 私も横になったものの、初めての探索に興奮したままなのか目が冴えたままだった。

 仕方がないので横になって目を瞑って、さっきまでの探索の事を思い出す。

 気持ち悪い異形やゴブリン、サソリ女、迷宮の臭い。

 そんなものがぐるぐると頭の中を回る。

 昼過ぎにマリアンヌが目を覚まして体を拭い、アイラも目を覚ましてから三人で一緒に食事を済ませる。

 エカテリーナも食事に誘おうかと部屋を訪ねてみたが、まだ寝ているようだった。

 身支度を整えていざ寺院に行くというタイミングで仮面の冒険者も戻ってきて、彼もついてくることになった。

 アイラは私にしがみついたまま、私を挟んで仮面の冒険者と反対側にいる。

 メメント・コルの仮面と格好が、子どもには怖いらしい。

 寺院に着くとシスタークリステルが何の用かと言わんばかりの表情で出てきた。

 奈落に子どもがいたので連れてきたと伝えると、シスターは驚いた表情を見せた。

「奈落に子どもがいたのですか、恐ろしい目に遭ったのですね。こちらにおいでなさい」

 クリステルは表情を緩めて、アイラに優しく声を掛けた。

 アイラは私の顔とクリステルの顔とを見比べて戸惑っている。

「ついておいで」

 私はそういってアイラの手を引く。

 アイラは黙っている。

「よく来られましたね。ここはもう安全ですよ。お名前は?」

「アイラ。アイラだよ」

「はじめまして、アイラ。私はシスタークリステルです。いましばらく、ここで暮らしましょうね」

「さあ、アイラちゃん」

 私はアイラとつないでいた手を離して、彼女の背中を押した。

 シスタークリステルは両手を広げる。

 アイラが一歩シスタークリステルの方に進み、私の方を見てから、クリステルの側に行った。

 シスターはアイラを包み込むように受け入れた。

「奈落が開いたことで孤児の数が増え、孤児院は満杯です。行き先が決まるまで寺院で預かりましょう。この子のためにできれば寺院への寄付をお願いいたします」

 そういえば数日前にダニエルと寺院に来た時も、孤児院の子どもが増えているというような話をしていた。

「こちらを」

 マリアンヌがそう言って冒険者ギルドの小切手を差し出した。

 シスターは小切手に書き込まれた金額を確認する。

「ありがとうございます。彼女の生活費として使用させていただきます。時々はアイラの様子を見に来てあげてください。私にお声がけいただければアイラを連れてきます。あなた方の善行はきっと神が見ておられますよ」

「お姉さん、会いに来てくれる?」

 アイラは言った。

「もちろん。冒険に行かなくて、他のお仕事もない時は会いに来るよ」

「わかった。待ってる」

 たしかゲームでは仮面の冒険者が怖くて、アイラは泣きながらシスタークリステルにしがみついていたはずだけれど、彼女が泣き出すようなことはなかった。

「では、あなた方の旅路に幸あらんことを」

 軽く会釈をしたシスタークリステルにマリアンヌと私は返礼し、仮面の冒険者と共に帰り支度をする。

 そこで私はひとつ、仮面の冒険者とマリアンヌに言おうと思って忘れていたことを思い出した。

「そういえば、お二人にお願いしたいことがあったんですけれど」

「はい、何でしょう」

 マリアンヌが答え、メメント・コルは仮面を私に向ける。

「鉛等級の試験を受けたいんですが、連れて行ってもらえますか」

「ええぇー? ユーコさんまだ鉛等級になってなかったんですか!」

 メメント・コルはそっと、そっぽを向いた。

「てっきり、前の探索中にだれかと一緒に受けてたモノかと」

「試験を受けるにもメンバーが揃っていなかったので」

 これは事実だ。仮面の冒険者が探索に出かけている間、ギルドに顔を出しても顔見知りの仲間はほとんどいなかった。

 等級試験を受けるにはある程度の依頼をこなした実績のある冒険者、もしくはその冒険者と一緒受けないとダメとアルナに言われた。

 受けたくても受けられなかったのだ。

「すまない、失念していた。マリアンヌ、お願いしてもいいか」

「いいですよ。報酬もはずんでもらいますけどね!」

「もちろんだ」

「じゃあ、メンバーを揃えないと。誰にお願いしましょうか」

「それは任せる」

 そんなやり取りをしながら寺院を出ると、どこかで嗅いだことのあるいい匂いがした。

 たしか最近会ったことのある、誰かの甘い匂い。

 生前の七篠優子のころにも嗅いだことがある匂いのような気がするけれど。

 日が傾き始めている。

 丸一日以上起きていて、ようやく眠気が襲ってきたので私はあくびをした。

 眠気のせいか、頭がうまく働かなくて思い出せない。

 誰だろう、そんなことを考えながら宿に戻った私はその誰かを思い出すことなく、眠りについた。




等級試験云々は、ゲーム的にはこれを突破しないとレベル上限が解放されず、経験値を貯めてもレベルを上げられなくなります。
ユーコは無等級のLv20で鉛等級Lv30で挑むサソリ女討伐に参加させられていたのでした。

エカテリーナはこの物語の前日譚やこのゲームに前作があるとすれば、その主人公ポジションの救国の英雄、国母ともいうべき人物です。
ドラクエで言うところの1や2の主人公たちに対しての3の勇者ロトでしょうか。
今開いてるはじまりの奈落が過去に開いたとき、夫と子どもたちを残して一人で下りて封印したという伝説の魔術師です。
その夫と子供たちは彼女の功績と遺した奈落封印の魔術で、物語の舞台である国、ルクナリアの王家となっています。
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