Wizardry Variants Daphne ~ ナナシノユーコ 作:まつだあきら
プロットは第2の奈落、交易水路編の途中まで出来てて、第3の奈落、グアルダ城塞編のおおまかなことまで考えてるんですけれど(´・ω・`)
「なにを飲まれているんですか?」
私はベンジャミンに声をかける。
彼は歩きながら酒を飲んでいた。
「薄いエールだ。強い酒は高くて手が出ん」
エールはドワーフにとって水みたいなものだと、私も小さい頃から聞かされて育った。
「この仕事が終わったら、まとめ役の僧侶に酒場で蒸留酒を奢ってもらうがの!」
はっはっは、とベンジャミンは笑った。
「はいはい、わかってますよ。必要経費としてコルさんの財布から出しますから」
マリアンヌがそう答えると、彼は少し機嫌を良くしたようだった。
「ベンジャミンさんは、今日の調子はどうですか?」
と私は訊ねてみる。
「ん。いつも通りだな」
と端的な答え。
「ジャンさんの件、ほんと申し訳ないです」
マリアンヌが言った。
「いや、気にせんでいい。あの盗賊のドワーフ嫌いは知っておった」
「私は知らなかったです。ジャンさん、愛想が良いからてっきり誰とでも仲良くできるかと」
「盗賊でもあやつが悪党ではないことぐらい、わしにもわかる。ドワーフは身内意識が強い。家族でも仲間でもない人間にはひどく当たる奴らも多い。そういうドワーフたちとの付き合いが多かったのだろう」
「そうなんですね。知らなかった」
マリアンヌが申し訳なさそうにつぶやく。
「でも、私はジャンさんとベンジャミンさんに仲良くしてもらいたいです」
と私はベンジャミンに言う。
「わしは構わん。あやつがそうするか、だの」
「仲良くはなれなくても、せめて並んで戦ってもらえるぐらいになれば」
「ふむ」
ベンジャミンは酒をあおる手を止めて私を見た。
「新入りの。おぬし、どうしてそう思う」
「ジャンさんとベンジャミンさんの相性はとても良いとお告げを頂いております。ベンジャミンさん、配置を変えたさっきの戦闘で、エリゼさんの動きをどう思いました?」
「うむ。ずいぶん良くなった」
「でしょう? エリゼさんもジャンさんと相性が良いんです。ベンジャミンさんも並んで戦ってみれば、ずっと調子が良くなると思います」
「そうか。それは面白そうだの」
ベンジャミンは髭をいじりながらそう答えたとき、ジャンが叫んだ。
「敵襲!」
襲ってきた骸骨の群れを倒して、また少し休憩することになった。
休憩中、私は意を決して隊列の再変更を提案することにした。
「皆さんに、というか今度はジャンさんにお願いなんですが」
「俺かい」
「はい。また隊列を変更したいです」
ベンジャミンが私の方を見る。
「今度はジャンさんとマリアンヌさんを入れ替えてみてください。ジャンさんを前列中央、マリアンヌさんを後列左に」
「ええぇ、それは」
と嫌そうな口調で口ごもったジャン。
「俺に前で、弓で戦えって言うの?」
その言い訳も想定済みだった。
彼の装備と持ち物も前日と出発前にタブレットで確認済みで、たしかに彼は武器を弓しか持ってきていなかった。
だが私はこんなこともあろうかと、彼に渡す短剣を用意して持ってきていた。
「実は、ジャンさんが前衛で戦うときのことを考えて短剣を持ってきていました。これを使ってください」
もちろんガラクタから戻した装備品を整理をしていて出てきた退魔の短剣で一番良かったもの。
道中に出る骸骨たちやフロアマスターのスケルトンジャイアントが持つ、不死特性のダメージ半減を貫通できる不死特攻武器だ。
「ええ? いいの? 準備良いなあ。でも短剣だけ持って前に出るのはちょっと心細いかな」
ジャンは短剣を受け取りながら、こめかみのあたりを指でポリポリとかきながら言った。
うーん。
やっぱりこれは前に出たくないというよりも、ベンジャミンの隣が嫌だというのをごまかすため、前衛の装備をしてきてないことを理由にごねてる感じっぽい。
実際今までジャンは決してベンジャミンの方を見ようとしなかった。
「なんなら私の盾を使いますか? 後ろに下がるときは私、両手杖ですし」
マリアンヌ、ナイスフォロー!
「私が持ってきてる盾もありますけど、好きな方を使ってもらっていいですよ?」
いちおう、私も前衛をするときのために盾を持ってきていたので、それを見せる。
「そこまで言うなら、わかったよ。じゃあその盾、具合を確認させて」
そう言ってジャンは私の持っていた盾とマリアンヌの盾を交互に持って、持ちやすさや重さを確認する。
「こっちの盾が良いかな。軽くて敵の攻撃をいなしやすそうだ」
選んだのはマリアンヌの盾だった。
そっちのほうが回避の追加護が高いからね。
「じゃあ、俺が真ん中でやらせてもらう。援護よろしく」
ようやく、ジャンの左右に土属性のエリゼとベンジャミン、後ろにエカテリーナという、ジャンの「土の陣形」を最大限活かせる配置にすることができた。
「やずや!!」
あと少しでフロアマスターがいる大広間というところで骸骨たちと会敵。
その戦闘でベンジャミンが雄叫びを上げた。
ジャンの隣になったベンジャミンは、見違えるほどの動きだった。
それまでの戦闘では、せいぜい木こりが木を切り倒すような事務的な動きで敵を仕留めていたのが、あふれる活力を抑えきれないと言わんばかりの力で文字通り、敵の骸骨たちを粉砕していた。
「わしのほうが止めを多く刺した!」
戦果をアピールしたくて仕方がない、といった様子で彼は自慢した。
ジャンは目を丸くしてドワーフを見ている。
「ええ。素晴らしいです」
とエカテリーナ。
「新入りの言ったとおりだ」
ベンジャミンが興奮気味に言う。
「えぇぇ。ユーコちゃん、何かふきこんだの?」
ジャンは困り顔で私に言った。
「私はただ、おふたりの相性がとても良いとお告げを頂いていたので、それをベンジャミンさんに教えてあげただけです」
「相性が良いって言われても、ドワーフとじゃあ…」
そう言いかけた彼の言葉を私は遮った。
「ベンジャミンさんだけじゃありません。エカテリーナさんとエリゼさんとも相性が良いです」
「どういうこと?」
「土の陣形。私がお告げで教えられている、ジャンさんの特別な能力です」
「特別な能力? 俺に?」
ジャンが間の抜けた声で言った。
「ええ。ジャンさんは土の精霊に愛されています。ジャンさんの近くに私達土属性の仲間がいると精霊が喜んで、力を貸してくれるようです」
エカテリーナが説明してくれた。
「ん? あぁ。なるほど。土属性…」
ジャンは腑に落ちたようだった。
「うん。調子が良くなるのは私も同じだよ」と、エリゼも同意する。
「そうか。土属性、土の陣形か」
ジャンは右手に持つ短剣を見つめながらつぶやいた。
「これまでも、こういうことが?」
私はジャンに訊ねる。
「ああ。どうしてかはわからなかったんだけど、今みたいに急に具合が良くなることはちょくちょくあった。そうか、土属性の仲間か」
彼も思い当たる節があるようだった。
「土の精霊に愛されし盗賊よ。もう一度その力を試させてくれないか。すぐそこにフロアマスターがおる。わしに討ち取らせてくれんか」
ベンジャミンがジャンに語りかける。
ジャンがベンジャミンの目を見た。
彼がベンジャミンと目を合わせたのはたぶんこれが初めてだ。
「いいだろう。やってみよう」
フロアマスターとの戦闘はあっけなかった。
鉛等級試験のボスである、フロアマスターのスケルトンジャイアントは仲間呼びをしてくるのだけれど。
呼び出された仲間の雑魚をすぐにエカテリーナが全体攻撃呪文のラエルリクの秘術で蹴散らす。
撃ち漏らした雑魚もベンジャミンとエリゼ、ジャンの前衛三人がすぐに処理して、残されたフロアマスターも袋叩きにする。
マリアンヌと私はその三人に支援呪文をかかけてからバディオスを使ったぐらいで、回復呪文を使うことなく終わった。
戦闘後、ベンジャミンがジャンに告げた。
「ジャンよ。おぬしがドワーフ嫌いなことは知っておる。だが、わしはおぬしのことを気に入った。わしは戦うことしか能がない。どこにでもいる飲んだくれのただの戦士だ。仮面の冒険者が蘇らせた仲間同士、これからもともに戦うことがあるだろう。そのときも、おぬしの隣で戦わせてはくれまいか」
ジャンは困った顔でその申し出を聞いていた。
そしてマリアンヌと私の顔を見てからエリゼとエカテリーナをまじまじと見て、しぶしぶといった感じで言った。
「好きにすると良い」
その言葉を聞いたマリアンヌは嬉しそうに言った。
「じゃあ、今から酒場に飲みに行きましょう! 奢りますよ!」
「ははっ、ただ酒にありつけた」とジャン。
「浴びるほど飲むぞ!」とベンジャミン。
「私もご相伴に与らせてもらうよ」とエリゼ。
「行きましょう行きましょう! ユーコさんとエカテリーナさんも」
そう言ったマリアンヌの後ろで微笑んでいるエカテリーナ。
私はそんな笑顔のみんなの後ろについていく。
仲間って良いかも、良いなと思えた気がして、私の鉛等級試験は終わった。
ちなみに今回メインのベンジャミンは交易水路では最強キャラです。
ジャンとエリゼはその強化パーツ。水路と第4の奈落、豪雪地帯を攻略中に解放される水の魔窟ではベンジャミンは伝説キャラより強いです。
残念なのは、担当声優さんの土師さんがすでに鬼籍に入られていることでしょうか。
ご冥福をお祈りしております。