Wizardry Variants Daphne ~ ナナシノユーコ   作:まつだあきら

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ユーコの中の人、ラナヴィーユのキャラクエ履修済み。


4.ギルド酒場

 アルナの説明が済んで、私はマリアンヌたちが待っている酒場に向かった。

 マリアンヌは酔っぱらって眠いのか舟を漕いでいる。

 そういえば、ゲームで酒場に誘われたときや宿屋での僧侶マリアンヌは、だいたい眠そうにうつらうつらしていたっけ。

 マリアンヌ以外のメンバーもゲームで見知った顔。

 2つのテーブルに分かれて座っていて、数人、離れたところで一人で飲んでいるメンバーもいた。

 私はマリアンヌがいるテーブルに近づく。

「ひゅー! 聞いてた以上のかわいこちゃんが来た!」

 さっそく声を掛けてきたのはジャンだった。

 明るい声とセリフの割に目は笑っていない。

「ラツモフィス! ディアルコ!」

 マリアンヌさんはそう叫ぶと、舟を漕いでいたのが嘘のようにシャキッとした。

 呪文の使い方、それでいいの?

「みなさんに紹介します。新しく仲間になってくださったユーコさんです!」

「はじめまして。ユーコです」

 そう言って私はぺこりと頭を下げた。

 仲間たちの反応はそれぞれ。

 性格善と中立の仲間、パッとわかる範囲でジャン、ラナヴィーユ、エッカルト、ヴァルドル、エリゼ、ベンジャミンあたりは歓迎ムードの笑顔で、性格悪のゲルルフは面白くなさそうな何とも言い難い雰囲気を醸し出しながらジョッキを煽っている。

 皆が集まったテーブルから離れて座っているアリスは不敵な笑顔を浮かべて、ミラナはゲルルフと同じような面白くなさそうな顔を、ガリーナはつまらなそうな顔で私の方を見ていた。

 2つのテーブルに分かれて座っている配置と離れて座っているメンバーの配置で、すでにどういった関係性が出来上がっているのか察した。

 ゲームを通じて仲間たちの性格や生前の物語を知ってるからね。

 ジャンはラナヴィーユとマリアンヌのそば、その脇にエッカルトとヴァルドルが同じテーブルに。

 もう一つのテーブルにはエリゼとベンジャミン、そしてゲルルフ。仮面の冒険者メメント・コルはゲルルフの隣に座っている。

 ここはとりあえず、マリアンヌの側に行くべきか。

「マリアンヌさん、隣いいですか?」

「どうぞどうぞ! 何注文します?」

「じゃあ、エルフ印のミードを」

 マリアンヌがアルナさーん、ユーコさんにミードひとつ!と元気よく声をかけると、離れたところからはーいという返事がした。

 ミードは一度飲んでみたかった。

 現代日本ではゲームとかファンタジーものの漫画とかでよく見るお酒だけれど、実際には近所で売っていなくて、通販で取り寄せることもできたみたいだけれど、そこまでして飲みたいというほどでもなかった。

 だって、七篠優子は下戸だったから。

 私はマリアンヌに促されるまま、ジャンと彼女の間に座る形になった。 

「僧侶が増えてくれてよかったよ」

 とジャン。

「そうなんですか?」

「そーなんですよぅ。僧侶が足りなくて、回復が間に合わなくて死んじゃうこともありますし。蘇生代がもったいないです」

 ここにいる僧侶の数だけでも、足りてると思う人数いると思うのだけれど。

「僧侶は今、仲間に何人いるんですか? マリアンヌさんの他に、ヴァルドルさんとガリーナさん、アリスさんがいるのはわかりましたけど」

 ラナヴィーユが飲み物を口に含みながらちらと私の方を見て、ジャンがぎょっとしたのが分った。

「あぁ、ここにいる人以外だと、ダニエルさんが宿で休んでますよ」

 大柄な僧侶、ダニエルか。

 ということは現時点で伝説の冒険者と名もなき冒険者以外で仲間になっていない僧侶はエーミルだけじゃん。

 それで足りないとは。

「いつもどんなメンバーで探索に?」

「少なくとも、僧侶一人と盗賊一人は入れて。あとはその時に探索に出かける気力のある、アニマが弱っていない人達で出る感じですね」

 ああ、メンタルの回復待ちか。

「ダニエルさんも、アニマが弱ってるんですか?」

「そーなんですよ! 霊廟のあの罠! どうにかならないんですかね!」

「どうにもならないよ。あれは盗賊じゃ解除できない魔術的なモノだし、エカテリーナさんや魔術師たちも、高度すぎる神がかりな仕掛けで手出しできないから我慢するしかないって、さじをなげてる」

 ジャンは肩をすくめてやれやれといった感じで言った。

 テーブルに陶器のジョッキが運ばれてきて私の前に置かれた。

 私はミードを一口含んでどんな味かを確かめて満足した。

 たしかに香りはいい。

 けれどアルコールが喉から頭に広がって熱くなるような、思考がぼやけそうになる感じがしたので、一口だけでおしまい。

 霊廟の入り口の罠は、通り過ぎるまでに死ぬよりもメンタルを削られる。

 その上で冒険者の遺骸が手に入るかも確定じゃないのだから、霊廟に行くメンバーからしたらたまったモノではない。

 霊廟の側からしてみれば、納められた遺骸を持っていかれてしまうのだから、対価として死ぬよりもしんどい思いをさせているのだろうか。

 そう言えばルルナーデは?と辺りを見回してみたら、彼女は酒場の中で他の冒険者の会話に耳を傾けているようだった。

 情報収集しているのだろう。

「だからユーコちゃ、ユーコさんには早く戦力になってもらいたいのさ」

「ちゃんでいいですよ。ジャンさん」

「えぇ? 俺のことも知ってるの? マリアンヌちゃんが教えたの?」

「いいえ。私は教えてませんけど。でも、ユーコさんはたぶん、ここにいらっしゃるみなさんのことをご存知だと思います」

 マリアンヌは意味深な笑みを浮かべて言った。

「どういうこと?」

 ジャンは怪訝そうな顔で私を見た。

「私、死んでいた間に神様にお告げをいただいたみたいなのです。来るべき十大異形に立ち向かう仮面の冒険者とその仲間たちの手助けをしろと。そしてこの神のお告げが示されるタブレットを授かったのです」

 廃屋で仮面の冒険者たちに言ったセリフと一言一句同じセリフを言って、私はジャンにタブレットを見せた。

 ギルド酒場に皆がいる画面だ。

「すごいですよね、これ。私もさっき見せてもらいました」

 ジャンはタブレットの画面をのぞき込む。

 そこに描かれているメンバーたちの姿を見て、ジャンは間の抜けたうめき声をあげた。

 私はタブレットを少し操作して、画面の中のジャンの呼びだした。

 画面の中のジャンは「ん? 俺ですかぁ?」と、気の抜けた声で返事をした。

「これはまた、すごいお宝だ」

 画面の外のジャンがつぶやいた。

「ユーコちゃん、ひとつ忠告しておく」

「はい。何でしょう」

 ジャンはキリっとした鋭い視線で私を見て言った。

「それはたぶん、神様の魔法か何かで出来たすごい代物だ。それは俺にもわかる。そんなお宝はめったにない。お宝はお宝である、それだけで欲しがる輩もいるし金になると思う奴がいる。盗賊の俺が言うのも変な話だけれど、盗まれたり失くしたりしないように気を付けるんだよ」

 それは確かにそうだ。

 現代でもこのタブレットは中古でも結構いい値段で売れる。

 ましてやこの世界では魔法の道具なのだから価値はずっと高いはず。

「ご忠告ありがとうございます。そこらへんもこのあと考えます」

 私は感謝の気持ちも込めて笑顔でジャンに言った。

 そうだよなあ。

 ダフネの世界はどう考えても、現代日本よりずっと治安が悪いし民度も低い。

 何か対策しないと。

「すごい、魔道具ですね。いえ、魔の道具、ではなく神の道具ですか」

 ジャンの隣にいたラナヴィーユが小さな声で言った。

「私にもよくわかりません。ですが神様から授かったものですので、たぶんラナヴィーユさんの言う通りなのでしょう」

 私は適当に話を合わせた。

 あまり設定を作りこみすぎると後でぼろが出たりしかねない。

「私のことも知っているのですね」

「ええ、ここにいる皆さんのことは大体知っています。ラナヴィーユさんが、国を救った英雄だということも」

 ラナヴィーユは驚いたように大きく瞳を見開いた。

「私は、本当に国を救ったと言えるのだろうか…」

 ラナヴィーユは持っていたジョッキを両手で包み込むように持って、うつむいてつぶやいた。

 あ、面倒くさい女幽霊に面倒くさい女って言われるぐらい、このラナは面倒くさいんだった。

 雑に扱ってはいけない。

「マギルとスイが攻めてきた時、ラナヴィーユさんが頑張ったからこそ、クロロアは滅ぼされずに済んだのは間違いないじゃないですか。そのあと、ラナヴィーユさんが政治で失敗して国を追われたのかもしれませんが、クロロアを外敵から守ったことは紛れもない事実です。ラナヴィーユさんの後にクロロアを治めた人が滅ぼしたんです。クロロアはすでに滅んでしまった大昔の国かもしれませんが、国を守ったことは誇っていいこと。そんなラナヴィーユさんは、私は間違いなく救国の英雄だと思いますよ」

 そうフォローした。

 それを聞いていたジャンとマリアンヌは、不思議そうな顔で見ている。

 ラナヴィーユは綺麗で可愛らしい顔を私に向け、驚いたようにまた瞳を大きく見開いて、今度は大粒の涙が溢れだした。

「ありがとう。初めて会ったあなたがなぜそのことを知っているのかはわからないけれど、ありがとう」

 ラナヴィーユはジョッキを両手で持ったまま、またうつむいて溢れる涙が流れるに任せて泣き出した。

 泣いているラナヴィーユを隣に座っていたジャンが背中をさすって、エッカルトがナプキンで涙を拭いて口々に、ラナヴィーユちゃんがみんなのことをいつも守ってくれてるのは知ってるよとか、おぬしはよくがんばった、たくさん泣くといい、慰めている。

 うーん。

 丁寧に扱っても面倒くさそうだ。

 でも、ラナヴィーユにきついことを言って泣かせてしまったわけではなく、これはうれし涙なのだろうからヨシっ!としよう。

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