Wizardry Variants Daphne ~ ナナシノユーコ 作:まつだあきら
ガラクタを逆転してどんどん増えていく武器と防具を私は片っ端からチェックする。
ほとんどが大したことのないモノばかりだったけれど、今マリアンヌが装備しているモノより追加護もランクも良いものを選び出す。
武器は後衛をするときのためのサブ武器に神力の付いた両手杖をいくつか。
盾を活かすなら片手杖の方がいいのだけれど、はじまりの奈落で手に入るランク2ランク3の片手杖はあまり強くない。
後衛ならばいっそのこと両手杖にしてしまった方が同じMPを使って回復量も多くなるという判断。
防具はまず、前衛をする以上防御力をある程度確保するための軽鎧、それも回避の追加護が付いたモノをいくつか。
盾は軽盾と小盾で回避か行動速度が付いたものを、腕は軽篭手と手袋で神力が付いたものを、脚は、軽足鎧か靴で回避か行動速度が付いたものを、指輪は神力と回避が付いたものを。
はじまりの奈落から水路にかけて、前衛は回避ビルドが適している。
私がダフネを始めてすぐのころ、防具は防御力が高ければ高いほど良いと思っていたけれど、戦闘ごとに回復が必要で大変だったのを思い出す。
攻略情報をネットで検索したら、ずっと先に進んでいるプレイヤーたちは皆、回避装備を基本にしていた。
理由についても少し調べたら、なるほどと納得してしまった。
ダフネのゲームでは、おおよそ敵からの被ダメージを1減らすために防御力は2上げなければいけない。
単純に敵からのダメージを100減らしたいと思えば防御力は200増やす必要がある。
防具を強化して防具の基礎値と追加護で防御力を200増やすのはかなり大変だ。
けれど回避を上げれば、敵の攻撃を受けるか0にするかの確率の問題になる。
そして回避は上げれば上げるほど、被ダメージが0になる確率が高くなる。
つまりある程度敵の攻撃をほぼ避けきれる回避の値まで高めてしまえば、装備品の強化は別の追加護に回すことができる。
はじまりの奈落は回避100近くもあれば十分すぎるし、次の奈落、交易水路も120程度あれば十分。
防御を200増やすより手間より、回避を100まで増やす方がずっと簡単だ。
その理屈がわかってしまえば、ゲームのダフネのはじまりの奈落と水路の攻略は、なんてことはなくなってしまった。
私がいるこのダフネの世界がゲームそのままとは限らないけれど、考え方は通じるはず。
そう思って、私は使えそうな装備品を片っ端からピックアップしていった。
「すごい。装備ってモノによってこんなに違うんですね!」
私がピックアップした装備品から気に入ったモノを選んだマリアンヌは上機嫌に言った。
それはそうだろう。
攻撃力と防御力こそそんなに上がっていないものの、ステータス上、両手杖では神力が倍以上、メイスと軽盾を装備した場合の行動速度も倍以上、回避に至っては100には届かなかったものの3倍近く上がっている。
「鍛冶屋で強化、というか調整してもらえばもっと良くなりますけど、お金ないですもんね」
本当はマリアンヌが選んだ鉄の軽鎧、実際には胸当てなんだけれど、少しサイズが合っていない。
窮屈そうで、これも鍛冶で直すことができるけれど、お金がかかる。
道具があれば私でも応急処置は出来るけれど。
「そうなんですよねえ。もっとお金稼がないと」
マリアンヌはため息をついた。
その様子を見ていたメメント・コルに、ルルナーデが「少し手合わせをしてみたら」と言った。
「マリアンヌ、ルルナーデが手合わせして見ろっていうんだが、いいか」
「ええもちろん。ユーコさんが選んでくれた武器と防具、すごく良い感じなので試してみたいです」
二人は少し広い場所に移動して、武器を構えて向き合った。
「ユーコさん、始めの合図をお願いします」
そう言われて、私は二人の気配が張りつめたものに変わったのを感じて「始め!」と言った。
その瞬間、マリアンヌが「えいっ!」っと一歩速くメイスで殴りかかった。
仮面の冒険者は何とかその衝撃を盾で受け止められたものの、体勢を崩して受けに回る。
回避ダメージが入ったのかな?
仮面の冒険者もマリアンヌに斬りかかるものの、今一歩のところで当てられない。
手数自体はマリアンヌの方が少ないのに、圧されているのはメメント・コルの方だ。
時間にして1分少々、メメント・コルの消耗が目に見え始めたので、私は「止め!」と言った。
「ええぇ? 私ってこんなに強かったんですか?」
息ひとつ切らさず、マリアンヌは言った。
「本気ではないとはいえ、ちょっと、これは自信を失くすな」
対照的なまでにメメント・コルの息を切らしている吐息が伝わってくる。
マリアンヌがメメント・コルに回復呪文を掛けている。
「たぶん今のはマリアンヌさんの本当の実力を、それに見合った武器と防具で発揮できたんだと思います」
私は言った。
正直なところ、僧侶は前衛としては中途半端という印象だったけれど、装備の差でここまでやりあえるとは思っていなかった。
「あなたもユーコに見繕ってもらったら」
ルルナーデが言った。
「ああ、お願いしたい」
仮面の冒険者が私に向かってそう言って、マリアンヌがきょとんとしている。
「ルルナーデさんが、メメント・コルさんの装備も見繕ったらって言ったんです」
「ああなるほど! そうしてもらうといいですよ! すごいですもん。ユーコさんの目利き」
メメント・コルにどういうビルド、装備の方向性がいいか尋ねると「任せる」と言われてしまった。
いやいや、自分の装備なんだから自分で考えろと一瞬思ったけれど、私がダフネのプレイヤーとしてはじまりの奈落を攻略していた時も装備の方向性なんてわからなかったのだ。
だから先に進んでいたプレイヤーの話を参考にして回避装備を集め始めた。
目の前にいるメメント・コルは、そんな先達になるプレイヤーなんかいない状態で、とりあえず強そうな武器、身を守ってくれそうな防具を身につけてがむしゃらに戦ってきたのだ。
どういう装備がいいのかを考える暇もなく、国王救出という目的を達成するために。
「じゃあ、お言葉に甘えて私の好みで選ばせてもらいます」
そう言って私はタブレットに表示されるメメント・コルの情報と、逆転したばかりの元ガラクタとのにらめっこを始めた。