「うーん、どれがいいかな?」
月夜はピンクや黄色、黄緑色など色とりどりのぬいぐるみたちを見まわしている。うさぎやくまといった動物園にいそうな動物やさらには、ユニーコーンやドラゴンといった空想上の動物の型をしたぬいぐるみたちを見つめる彼女の顔は真剣そのものだ。
「このユニコーンとかどうだかな?
きれいな色だし、いいんじゃないかな」
大中小さまざまな大きさの虹色デサインユニコーンから、中くらいの大きさを選ぶと月夜の前に渡した。彼女はそれをみるとはにかんだ笑顔を作った。
「わあ、かわいい。
うん、いいね。じゃあ、これにするね。
それじゃー、買ってくる」
渡したユニコーンを抱きかかえたまま、月夜はレジの方に向かっていった。
――君の方が可愛いです!
『兄貴!
なんで、ここまで来て固まってるの?
ぬいぐるみ、買ってくれるって言ったじゃんか!』
「いや、そうだけどなんか場違い感が半端ないです。
桐乃、ぬいぐるみを買うならほかの場所でもよくないか?」
「だめだめ、ここのユニコーン、めっちゃかわいいんだから」
大きな声がした方をみてみると金髪に近い栗色の長い髪をしたきれいな子が、黒髪の男性を引っ張りながら、ファンシーショップに入ってきているところだった。
――えっと、兄貴って言ったからにはこの2人は兄妹なんだよな?
2人は兄妹といいつつ、その距離はあまりにも近い。
まるで、恋人同士のやり取りを見ているようだった。俺は思わず2人の様子をじっと見続けてしまっている。
「ちゃんと買ってくれるまで、離さないんだから」
女の子は顔を赤らめながら、男性の腕に体を寄せて幸せそうにしている。その様子を見ながら先ほど見た例の箱の存在を思い出した。
――そういえば、あれ幼い男の子がデザインされてたよな。
あんま見たくなくて、チラッとしか見てないけど・・・・・・。
あれは結局、どういうことだったんだ?
姉から結局、何の説明もなくこんな格好までさせられ、追い出されたことを考えると俺のことを変な対象にされてるとはあんまり考えられなかった。
「・・・・・・瑞樹?」
「ああ、月夜悪い」
「どうかしたの?」
俺よりも少し小さな月夜が不安そうな顔で見上げている。
「・・・・・・いや、なんでもない」
――まあ、もういいか。
・・・・・・
「そっ、じゃあ帰ろう瑞樹」
――あんなへんちくりんな箱を気にするより、この時間を楽しみたい!
「おかえり」
――天国から地獄とはこのことだな。
月夜に家から追い出されたことも話すと一緒に家に行ってくれたので、ようやく家の中に入ることができた。中に入ると姉貴が仁王立ちして立っていた。
「まて!
なんで不満そうなんだ? 追い出したのは姉貴だろう??」
「だって、せっかく月夜ちゃんや翔を派遣したのに修羅場にならなかったなんて・・・・・」
姉貴はよよよといった感じで、オーバーリアクションを取っている。そんな姿を見てあきれるがこれは聞いておく。
「・・・・・・姉貴、なんで俺の場所が分かった?」
「GPSつけてるわよ」
「なっ、携帯?
いや、持つ前に追い出されたし」
俺は慌てて、体中を触りながらGPSを探してみるとスカートのポケットに、掌に入るくらい小さな機械が入っている。
「気づかなかった・・・・・・orn」
リアルでornのアスキートアートそのものの格好になってしまった。