頭ハッピーな悪魔が全員をハッピーにする   作:よくメガネを無くす海月のーれん

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変な丁寧語のくせして口悪い、間延びした口調で情緒爆発したかと思えば急に冷静になる割と全肯定チェンソーマン光のガチ勢オタクを投下ッッ!!!!!勝ったなガハハ


頭ハッピーな悪魔、地上に降り立つ

 

「滅びなさぁぁぁぁい!!!!」

 

 

 瑞々しい草花が生い茂り、空にはびっしりと大量の扉が覆う此処は地獄。地獄の悪魔が管理し、悪魔にとって故郷に当たる地獄である。

 

 そんな地獄に場違いに甲高い音が響き渡った。子供っぽい、しかし、明確な殺意が含まれた言葉に世界は答えるようにして軋みを上げる。産声、あるいは涙、それはまるで大いなる存在が流した涙のようだった。

 

 扉に覆われた人工の空、その彼方虚空から巨大な、それは巨大なナニカが降り注ぐ。

 

 それは、はるか遠い昔に地球を席巻し、地上を支配した偉大なる竜を滅ぼしたもの。その後の世界に極寒を齎したもの。それが降り落ちれば多くの生き物が滅ぶしかないもの。

 

 星の涙、名を隕石という。

 

「はぁ、はぁ、…はぁ~~~。ホンっっっっっっト小ッ賢しいですね~~~!!!えぇっと?鬼の悪魔でしたっけ。セイヨーでは鬼も悪魔でしょうに」

 

 掻き上げた蒼い髪の毛に絡まり合うは乱雑に生えた骨…のようなモノ。頭からすっぽり被るような衣服…所謂、貫頭衣を着ていたが、それらは全て血で染色されていた。

 顔は血に濡れ、危険な妖しさを纏う女…はずがその言動がすべてを台無しにしている。手から滴る血を乱暴に服で拭いながら体の匂いを嗅ぐ仕草は犬のようだった。

 

「匂いは~~~…付いてませんねぇ。これから大っっっ切な報告会なんですから身だしなみは…」

 

『”#%#&#”』

 

「おっと…このような姿での拝謁、失礼いたします」

 

 虚空が割れ、姿を現すは巨大なナニカ。それは、巨大な、巨大な、指。人差し指だけが虚空からこちらを覗いていた。目はなく、鼻もなく、耳もない。それなのに、その悪魔からすればこちらを知覚出来ていると確信をもって言う事が出来た。それが出来ない方ではないと。

 静かに膝をついて、頭を垂れる。例え身なりが整っていなくとも、出来うる限りの敬意を支払うことが自らの裁量であると認識しているのだ。犬は犬でも忠犬らしい姿であった。

 

「そうですねぇ。とりあえず、供物は大体この程度でよろしいかと。これで、問題なく地上へ迎える量と。足りなければ地獄の悪魔に少しばかり頑張ってもらいましょう」

 

『$)#”’$$?』

 

「あ~~~~…所在についてはアチラで探すしかないですねぇ。といっても匂いや血は覚えているのでそうそう見つからないということはないかと」

 

『”)(&"()'%"#』

 

「はい、はい!大丈夫ですよ。貴方様の最優の眷属はいついかなる要望も叶える所存でございます!」

 

『&’)'()"')(%』

 

「はい。ではこのまま向かいます。…改めてお聞きしますが伝言等はございますか?」

 

『$%’()’”()%””%%#”&………”#%&”#%”』

 

「はい。はい…はい、承りました。しっかり伝えておきますとも!では行って参ります」

 

『’)(%”』

 

「はい。それではしばらくの間、お傍を離れさせていただきます」

 

 

()()()()()様」

 

 

 虚空は一瞬にして何事もなかったかのように遠くを映す。一通り会話を終えたのであろう女は、すっくと立ちあがり、空…正確には虚空に向けて言葉を吐き捨てる。

 

「地獄の悪魔、見えているんでしょう?対価は用意した。私を地上へ送りなさい。足りないとは言わせませんよ?前の契約…破格な条件を提示したのですから、そちらも譲歩なさい」

 

 その言葉と共に、空を覆う扉の一つがガチャリ、音を立てて開く。逆さまに落ちるように吸い込まれる女は、大したことでもないように笑った。その下、重なり合った死体が消えていく悍ましい姿さえ気にしないというように。

 

「さぁ~~~~!今向かいますよ~~~~!地獄のヒーロー!貴方様のマブ!マブの眷属が今そちらに向かいます!私、わたくし絶滅が!絶滅の悪魔が貴方様のお助けに地獄より参りますよ~~~~!」

 

 そして、一体の悪魔が地獄を出た。

 

~~~~~

 

 デンジにとって、世界とはこれが普通だった。

 

 借金を残して自殺した父親、子供にさえ容赦がないヤクザの借金取り。明日の生活さえままならないのに他人に支払わなければならない金は山ほどある。

 

 いつどこでくたばるかもわからないのが、明日くたばるかもしれないになっただけ。親を失ってもさしたる感慨はなく、しかし、生きていくための何かを模索しなければならなかった。

 

 それでも、デンジにとってはこれが当たり前だった。だから、この小さく、弱っているこの犬のような悪魔…名前をポチタと名付けたその悪魔を助けることが、同情か、親を亡くした寂しさなのか、この状況を打開するためなのかは結局、わからなかった。

 それでも、それでも一緒に眠ると温かった。デンジにとって、それが今の生活の救いだった。

 

 だから、唐突に差し伸べられた手の正体が悪魔のものだとは…いや、悪魔のものだとしても取る以外の選択肢を持たなかったのだろう。

 

 ソレは、デンジが親を失った次の日、野良のデビルハンターとしてヤクザに雇ってもらった日の最後に現れた。

 

「おやぁ~~~~?おかしいですねぇ。ここに地獄のヒーローがいらっしゃるハズなのですが」

 

「…誰だ?」

 

「おや、人が居る。えぇーとですねぇ~~~。ここにチェンソーを頭から生やした悪魔はいらっしゃいませんか~?」

 

「チェンソー…ポチタのことか?ポチタなら…なんでポチタを探してるんだ?」

 

 警戒心たっぷりの表情で訪ねてきた女を見つめるが、当の本人はのほほんとしながらも首をかしげていた。

 

(おかしいですね~~~~。チェンソーマン様の匂いは確実に此処なのにそれらしき姿が見えない…。わたくしの鼻が鈍った?)

 

「おい…オイ!」

 

「…えっ?あぁ。すみませんねぇ、聞いていませんでした。なんでしょう?」

 

「あ、えっと。なんでポチタを探してるんだ?」

 

「ポチタ…名前を変えたのでしょうか。そうですねぇ。とりあえず会いたいのですが~~~~…目的と言えば伝言…が真っ先に来るんでしょうか?旧知の仲のお方から伝言を預かっておりまして…」

 

「…ポチタの知り合い…悪魔なのか?」

 

「えぇまぁ。そこそこに名のある悪魔と自負しておりますねぇ」

 

 至極当たり前に言うもので一瞬のけぞるデンジだったが、もし、それが本当であるならすぐに殺されたっておかしくなかった。勘とも言うべきものが強く警鐘を鳴らしていたのもあって、大人しくポチタを呼ぶことにした。

 

「ポチター!お前に客…?だってよ」

 

「ワンッ」

 

「まぁ…!!!!」

 

 その女は俊敏にポチタを抱え上げると、警戒心むき出しのポチタを気にせず天高々に上げ、嘆きともいえる絶叫を吐き散らした。

 

「偉大なるお方のマブがっっっ!チェンソーマン様がこんなにも愛らしいお姿に!!!!なんということでしょう!!!!滅びの悪魔様!貴方様のマブが愛らしくなられていますよ!!!!」

 

「ワンッワンッ、ガヴッ」

 

「いっっっっ!…これはこれは失礼いたしました。貴方様の前で取り乱してしまうなど…。」

 

「ちぇんそーまん?」

 

「えぇ。このお方の名前ですが…そうですか。地上ではポチタと名乗っておられるのですね。僭越ながら、私もポチタ様と呼ばせていただきます」

 

「お、や、俺が名付けたんだけど…」

 

 名付けた直後と言ってもいいのに元の名前を知ってしまったデンジは、少しばつが悪そうな顔を浮かべ、ポチタはこちらの名前の方が良い、寧ろ、なぜその名前を出すと不機嫌そうな顔を浮かべていた。

 一方、尋ねた悪魔はその返答に、ぶるぶると震え、何かに耐えるような仕草の後、爆発させるように言葉を切った。

 

「まぁ!まぁまぁまぁ!チェンソーマン様に新しいお名前を?いいですねぇ。とても良いかと。あのお方も呼べば来る点は便利に使っていましたが、うっかりすることもあったと記憶しております。独り言が多かったものですから。それに皆、チェンソーマンという名前を聞いただけで震え怯えるくらいですから、新しい名前にすればそのようなことも起こらないでしょう」

 

「…ポチタの過去を知ってるのか?」

 

「はいはい!もちろんですとも。わたくしも戦った事は一度や二度ではありません。その姿、その様、実体験として知っております」

 

「ワウッ!」

 

「あぁ…これは失礼いたしました。ごめんなさい。人。ポチタ様からお口チャックが言われてしまったのでお口を閉めさせていただきます。ジィー」

 

 まるでギャグのように口をつまんで引っ張る姿にデンジは毒気を抜かれた。もし、自分を殺す悪魔だとしてもここまで気が抜けることはないだろうと思った。だから、少しだけ安心して、話すことにした。自分のことを。ポチタの出会いを。

 

「…そっか。ポチタの話聞きたかったな。…あ、俺デンジ。ポチタと一緒に暮らしてる。ポチタとは…その契約したんだ。ポチタが死にかけてて、俺が血を上げる代わりに俺を助けるって契約」

 

「まぁ…!まぁまぁまぁ…!それはそれは…デンジ、いえデンジ様とお呼びしても?」

 

「あー…別にいいけど」

 

「ではデンジ様と。貴方様のおかげでポチタ様が救われたのですね…!感謝しきれないほどにございます」

 

「あ、と、それで、ポチタに伝言ってのは?」

 

「あぁ!これはこれは…ポチタ様の姿に衝撃を受けていましたね。本題を」

 

「私、わたくし、チェンソーマン様改めポチタ様のマブ、マブダチの滅びの悪魔様の最優の眷属が貴方様に伝言をお伝えしに参りました」

 

 その姿は先ほどの雰囲気とは打って変わって静謐、圧死すると錯覚するほどの重厚さを持って言葉が紡がれる。悪魔とは『恐怖されたもの』の名前を冠し、恐れが大きい程その力も強くなる。ならば、滅びの名を冠する悪魔は一体どれだけの力を持つのか。その悪魔が伝えたい言葉とは何なのか。一人と一匹が固唾を飲む。

 

「伝言…人に伝わるようにするならばこのようなものにございます『また、あそぼ』」

 

「あそぼ…?」

 

「はい。ポチタ様がこの地に降り立って滅びの悪魔様は寂しそうにしておりました。遊び相手が居なくなったと。それでもまぁ…何とかできる手段はありますので、しばらくの間会えなくなることへの伝言でございます」

 

 たったそれだけ。それだけの為にここまで来たのかとびっくりするほどだった。しかし、ポチタの顔が歪む。

 

「…ポチタ。その滅びの悪魔とは遊んでたのか?」

 

「ワゥ……」

 

 嫌そうな顔を浮かべるポチタからそこまで好印象を感じられなかったデンジ、その姿を見て苦笑する眷属はフォローとも言えないフォローをする。

 

「まぁ滅びの悪魔様は少し、少々…その、遊び方が乱暴でしたので…それとですねぇ!ポチタ様にお伝えしたいことがもう一つ」

 

 ごまかしたな。一人と一匹は確かに思ったがそれをスルーするだけの優しさは持ち合わせていた。

 

「ワゥ?」

 

「なんだ?」

 

「本来はポチタ様だけなのですが、その様子を見るに友誼を結んでいる様子。それにポチタ様を救った大恩もある。それならばデンジ様も一緒の方がポチタ様もお喜びになられるでしょう!」

 

「私、わたくし!滅びの悪魔様の~~~~!最ッッッ優ッッッの眷属!!!!

 

絶 滅!あ~~~~!絶滅の悪魔が~~~~~!

 

 サッと地面に頭をつけ、三つ指をついて平伏す。

 

「ポチタ様並びにデンジ様のお世話をさせていただきます。以後、よろしくお願い致します」

 

 

 世界の歯車がはっきりと狂いだした。

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