頭ハッピーな悪魔が全員をハッピーにする   作:よくメガネを無くす海月のーれん

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三連休じっくり休めたから投稿!


迫真の脳破壊がゼツを襲う…!

 

「オワァー…ぼろっぼろですねぇ…」

 

 荒れ果てた山林。火でも付いたのか煙がもうもうと上がっており、追い打ちをかけるように山火事が始まろうとしていた。遠くで消防車のサイレンが鳴り、人の気配が近づいてくる。

 

 服は穴だらけでほぼ裸、ちらほら見える傷が痛々しく、端的に言えば死ぬほど痛いのだが辛うじて生きていた。

 

 恐竜の悪魔がひとりでに顕現する。ボロボロの顎がそっと、地面に突き刺さる犬〇家(比喩)していたゼツを引き抜く。地面に置くとそのまま煙のように消えていった。忠犬であった。

 

 ()()()()の姿で起き上がり、周りを見渡すゼツはとりあえずホッとした。なぜなら、リョコウバトや絶滅した動物をうっかり送還し忘れると、また繁殖し眷属から外れることがあるのだ。たとえ異形の姿と言えど、生殖できる肉体で、オスメスが揃っていれば繁殖の可能性は出てきてしまう。それで何度か眷属を連れ戻す(絶滅しなおす)ハメになったことを思い出すと、気が重たくなるので後始末は慎重になった。

 

 

 結果だけを話そう。勝ったのはゼツであった。銃の悪魔は確かに強いがそれでもリョコウバトの怨念に押しつぶされた。本来なら勝つわけないのだが、銃の悪魔は20%でしか復活していない。それなら勝てる可能性はあって、実際に勝ったというだけだ。

 

 ゼツの奥の手とも言えない奥の手。絶滅した生物と絶滅の要因を混ぜ合わせることで、その絶滅させた相手に対して特攻ともいうべき力を持たせられる。

 今回で言えば、銃の悪魔に対する特攻、銃により多くを殺され絶滅したリョコウバトだから出来たことだ。これが、普通の悪魔ならリョコウバトはそこまで強くない。相手が銃の悪魔だから出来ただけ。

 

 この奥の手はほぼ銃の悪魔専用の奥の手だ。なんせ、まず敵が絶滅の要因の悪魔であること、その要因で絶滅した生物がいること、この二つが前提となる。

 火の悪魔とかなら、ミヤイリガイの悪魔は強く出れるが、如何せんミヤイリガイの絶滅の要因が多すぎて、力が分散している。他の悪魔も同様に発揮できる悪魔が居ないと意味がない。せいぜい、氷の悪魔とか、冬の悪魔が居れば、恐竜の悪魔が特攻を持つだろう。それくらいだ。

 

 ちなみに、ゼツは死ぬようなダメージを受けても、絶滅生物を召喚していればそちらに死を映すことができるおまけみたいな能力がある。ただ、死なないだけでダメージは蓄積するので、傷は癒えにくくなるし、ゼツは治癒力が普通の悪魔並だ。ほっておくと、()()()()()だけになる。そうなると色々面倒になるのでならなくてひとまず安心だった。

 

 ()()を回す。銃の悪魔に持ってかれたが故に、20%銃の悪魔を左腕にする契約をしたのだ。といっても、ゼツの感覚で言えば、帰ってくるまでちょっと借りるくらいのものだが。

 

 契約内容は以下の通りだ。

《殺さない代わりに、左腕の代わりとなる。なるべく従う事》

《銃の悪魔の肉片を吸収し返還する。代わりに50%を超えた時点で綺麗にして出ていくこと》

《貸し一つ》

 

 ゼツがよく使う手法だった。

 悪魔は契約を重視する。そのため、契約に定義された貸しというものを重視しなければならず、それがどんな内容なのかわからないがゆえに下手に出るしかない。悪魔みたいなやり方だったが、実際悪魔なので無問題だった。

 

 ………なんとなく友達に部屋を貸す賃貸契約モドキみたいになってるが、ゼツとしては地元の友達がトラブって住むところに困ってるみたいなノリなので、案外間違いでもない。

 

「ホンット、銃はそーいうトコありますよねぇ~~~。まぁ自業自得で今そうなってんですから少しは反省してくださーい」

 

 そう言いながら左腕を撫で…思い出したように焦りだす。実際思い出に浸っている場合ではなかった。

 

「やっっっっ、い、急ぎますよ銃の悪魔!わたくしがお世話している方方が危ない感じなんでした…!そんな予感がするんですよ…!うぉー!!『銃の悪魔!私を弾丸にしなさい!』…久しぶりですがぶっつけ本番!3,2,1……BANG!」

 

 銃の悪魔の権能が一つ。銃弾の如く加速する力を使いながら、現場へと急行する。警鐘はもう止んでおり、ただ過ぎてしまったことを悔いるような感情がじわじわ広がっている状態だった。後悔後先に立たず、覆水盆に返らず。

 

 

 それでもと高速で向かい、ゼツが見たのは

 

 

 

 支配の悪魔…マキマにデンジが抱かれてる姿であった。

 

 

 

~~~~~

 

 デンジとポチタは廃工場におびき寄せられた餌だった。悪魔の力に魅入られ、溺れ、ゾンビの悪魔に唆されたヤクザ達は、支配されるがままにデンジを待っていた。

 

 そうしてデンジとポチタはヤクザのゾンビ達に切り刻まれ、砕かれ、ゴミ箱へと捨てられた。掃き溜めの中、デンジの頭に過るはゼツの記憶だった。

 

 クソみたいな人生を歩んでいくと思っていた。父親を失って、ただヤクザ達に良いように弄ばれて死ぬだけと思っていた。でも、ポチタと出会ってなんとかデビルハンターになって、あぁ、俺まだ生きてェって、そう思ったんだ。

 

 そんな中、ゼツに出会った。ゼツは何でもかんでも滅茶苦茶で、大雑把で迷惑ばっかりで、距離はt近ェし、どう接していけばいいかわからなかった。

 でも、寒い時、一緒に寝ようってみんなで集まって一塊になって寝た時は暖かったし温かった。寂しくなかった。

 

 ポチタが俺に生きたいって思わせてくれたなら、ゼツは生きてて楽しいって思わせてくれた。借金はちっとも減らなかったが、楽しかった。いろんな悪魔の話を聞かせてくれて、絶滅した生物しか知らない事を教えてくれた。わかんなかったけど、退屈しなかった。

 

 だから、ポチタと契約する時、デンジは少し迷って手を取った。一人は寂しいから、一人で残していきたくなかった。

 

 

 デンジはチェンソーマンとなった。掃き溜めからの復活。どん底からの再スタートは奇しくもポチタと出会った時のようだった。両手、頭に生やしたチェンソーが唸りを上げる。

 

「テメエら全員殺せばよォ!借金はパアだぜ!」

 

「な、何を…」

 

「ゼツの言う通りにすりゃよかったなぁ!後悔ばっかでやになんぜ!」

 

 積み上がるがれきに降り立ち、ゾンビの悪魔を見つめる。がれきの下にはゾンビになったヤクザ共が居て、その奥に居る。道は出来た。

 

 チェンソーをふかす。屍を切り刻む。飛び散る血を吸って、それが身体の傷を癒していく。悪魔の力。血を摂取することで傷を治すことができる。それはゾンビの血であっても通用した。

 

 殺す。殺す。殺す。コイツは俺をバカにした奴。コイツは俺を殴った奴。コイツはゼツに手を出そうとして腕を折られた奴。どいつもこいつも憎い顔ばっかで、殺すことにためらいはなかった。

 

「体を乗っ取ったんじゃないのか…!?仲間だろ?!」

 

「あァ!!?テメェが仲間なワケねーだろうがよォ~~!!!」

 

 駆け出す。雑魚を切り裂く。活路は見えた。だから。

 ゾンビが集る。それを振り払うが腕のチェンソーが折れた。親指がまだある。胸のスターターに引っ掛けた。叫ぶ

 

 

「俺達の邪魔ァすんなら死ね!」

 

 

 チェンソーがふかされた。

 

 

 マキマがそこに現れた時、廃工場は死屍累々の有様だった。バラバラ死体に血で塗装されたがれきが赤く光を反射する。

 

 奥からゆらゆらと動く死体のように歩いてくる少年が居た。

 

「ゼツ…ゼツに言わねぇと…」

 

 譫言をつぶやきながら廃工場を出ようとする。こちらが見えていないようだった。前に割り込むように進路をふさぐと問う。

 

「君がこれやったの?」

 

「あ、あー…行かな…」

 

 再度譫言、しかし力尽き、倒れようとするその身体を受け止める。そんな相手にマキマは問うた。悪魔として私に殺されるか、人として私に飼われるか。

 

 人とは違う匂い。いや、もっというなれば…

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 今すぐ取り出してもよかったが、しかし求めていたモノは休眠状態のようになっている。なら…

 

 そうしてデンジは悩み、選択した。人として飼われることを。それは決してジャムがたっぷり塗ったパンを食べれるからではなく、ゼツが心配で首輪を付けられたとしても生きなければならなかった…という建前を並べた。

 

 デンジは義務教育を受けていなかったが、ゼツから本音を隠すために建前を使うことを覚えていた。それは、ゼツが買ってきた食パンすべてを食べ尽くすことを、『絶滅の悪魔の本分だから~』とか、ゼツがやらかした時に、『偉大なる悪魔は他者を顧みないものです』とか言ってたのを覚えていたからであり、端的に言えば余計な知恵だった。

 

 すまん、ゼツと心にもないことを思いながら、今のところはこのゼツ以外の女性の温かさを味わおうとしているとき、コトは起こった。

 

 

 ズドンッ

 

 

 廃工場、その天井からナニカが落ちて来た。それはまるで隕石のようでもあり、通り道にあった瓦礫や天井の悉くを粉砕した。土煙からナニカが立ち上がる。ぬるりと出てきたソレ…ゼツは、デンジとマキマが抱き合っている(ように見える)姿を見て声にならない悲鳴を上げた。

 

「あ、わ、わぁ、わた、わたしのっ、わたくしのデンッ、デンジ様がっ」

 

 あっあっあっと脳が破壊されていくような声を上げて、ガクリと崩れ落ちる。

 

「し、知らない間にお、大人の、大人の階段を…」

 

 その姿、誰が絶滅の悪魔だと看破できようか。orzで項垂れる姿は滅びの悪魔の眷属であり、かつて気まぐれに地上に降り立っては混乱を齎していた者と同一とは思えなかった。

 

 それでも、マキマにとっては匂いでわかる。わかってしまう。その正体を、その恐ろしいハズの本性を。

 

 そっとデンジを離し、ゼツの方へ歩を進める。しゃがみこみ、肩に手を乗せた。そっと囁く。

 

「『これは命令です。絶滅の悪魔、私に従いなさい』」

 

 支配の悪魔、その権能。自身より下と認識した者を支配して操る。その力が、絶滅の悪魔に伸ばされる。見えず、しかし確かにある支配の鎖が絶滅の悪魔に繋がれようとして…

 

「するわけないでしょう?」

 

 逆にマキマの肩に置かれた左手、耳元で囁かれるその言葉。ゾッとするほどの微笑が支配の悪魔の臓腑をかき乱す。

 

 ゼツは知っていたのだ。銃の悪魔から教えられていた。日本に支配の悪魔が居ることを。もし、自分と出会ってしまえば支配される可能性があることを。だが、今のゼツは銃の悪魔の肉片を20%所持している。その左腕が抵抗の力を与えた。奇しくも、他国で怖れ、なんとしても阻止したいがために、差し向けた銃の悪魔が形を変えてその本願を果たしたのだ。

 

 絶滅の悪魔をマキマに支配されてはならない。その目的を。

 

「お久しぶりですねぇ~~~。支配…お人形遊びですか?」

 

 ゼツが崩れ落ちたのは演技半分、本音半分だった。ゼツにとってデンジを支配されてしまうことが最悪の状況であり、そこから引き離し、自分に意識を引かせることが大事であった。それはそれとして、デンジが知らぬ間に大人の階段上っていたことにFXで有り金溶かした顔になるのだが…。

 

「絶滅の悪魔…、何しに来たの?」

 

「今はゼツと名乗っております…。貴女と一緒ですよ。貴女とは違って節度を保った滅びの悪魔様の命により、わたくしはデンジ様並びにポチタ様のお世話をしております」

 

「へぇ…。でも、デンジ君しか居ないよ?チェンソーマンはデンジ君の中で眠ってる」

 

「まぁ…、まぁまぁまぁ…私は失敗してしまったのですね。ですが、デンジ様に託したとあれば、わたくしのやることは変わらず。デンジ様のお世話にございます」

 

「…デンジ君が大切なんだ。なら」

 

「デンジ様を支配してもいいですよ?それでチェンソーマン様が復活するかどうかは未知数ですが。それに、チェンソーマン様は貴女の所業を許すでしょうか?支配の悪魔、よくお考えなさい。その短絡さは姉妹共通なのですか?」

 

「………」

 

 静かに始まったキャットファイト。もとい厄介オタクの小競り合い。優勢なのはゼツであった。どちらもチェンソーマンに対する解像度“は”高いだけに支配したことでどういう態度を取るかは容易に想像ついた。マキマはチェンソーマンと幸せな生活がしたいのであって嫌われたいわけではない。そこを突かれたマキマは引くしかない。

 

「フンッ、雑魚がっ。」

 

 煽りも忘れない本物の悪魔(ゼツ)はしかし、自分から離れていくマキマのその後の行動に再度、声にならない悲鳴を上げた。

 

 ポツンと一人、取り残されていたデンジをマキマが抱き寄せたのだ…!貧血でふらふらとしていたデンジにそっと寄り添い、こちらに勝ち誇った顔を向ける。

 確かにマキマにとってデンジは大切で慕うチェンソーマンのその入れ物でしかない。が、それでも鼻で笑うゼツに泡を吹かせられるならやる価値はあった。

 抱き寄せ、抱え直す振りをして心臓の音を聞く。チェンソーマンの鼓動だ。ふと、横を見ると、こちらに人差し指を突き付けたゼツが、今度は明確な悲鳴として声を出した。

 

「あ、な、あぅあっ、あっ、あっ、あー!!!!!あ~~~~~!!!!!!寝取られました~~~~~~!!!!!!!!!!!!」

 

 




寝てから言えと思ったが寝てたわ(寝るだけ)
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