月光に祈りを捧げて 作:LoL二次増えて♡
月代セレナという少女がシスターフッドの門を叩いたばかりの頃、彼女は少し周囲から浮いていた
「全然喋らなくて何を考えているのかわからない」
「凄い綺麗な子なんだけどなんかちょっと怖いよね」
彼女は言葉で自らの気持ちを伝えるという事を行わない
しかしそれは彼女が他者との関わりを断っているわけではないと今はシスターフッドの皆が理解している
「確かに彼女は自らの言葉で何かを伝えるという事はされませんが、その信仰心の深さと、規律を重んじる姿勢は我々シスターフッドの理想のひとつと言っていいかもしれません」
シスターフッドのリーダーである歌住サクラコはそう彼女を評する
少なくともサクラコは彼女が朝の礼拝の前に小礼拝堂でひとり祈りを捧げている事を知って以来、彼女がそれを欠かしたのを見た事がないという
「シスターセレナは、凄いです…私とは違って、いつも静かで落ち着いていて…
それに、私が失敗して物を壊してしまった時なんかは何も言わずに片付けや修繕を手伝ってくれます…。
残念ながら彼女のお声を聞いたことはまだありませんが、私達は彼女の行動にいつも助けられているんですよ」
シスターフッドの備品管理を一任されている若葉ヒナタは、彼女についてそう語る
たとえ言葉を発さなくても、彼女はその行動をもって周囲に心の奥に秘めた優しさや芯の強さを伝えているのだ
「シスターセレナが祈りを捧げている時は、他のシスターの皆様も彼女の静かな、とても深い祈りの時間の妨げにならないようにしておられますね
私が礼拝をしている時にシスターセレナが隣で一緒に祈りを捧げてくれる時があるのですが、その時はいつも以上に主の御意思を感じ、深くお祈りできてる気がするんです
それに、シスターセレナは確かにお話をされることはありませんが、それは他の方との断絶ではなく「沈黙」というあの方なりのコミュニケーションの方法だと、そう思うのです」
シスターフッドの新米シスターである伊落マリーは、そう嬉しそうに話しながら彼女に対する敬意を表す
マリーはよく彼女をお茶に誘ったりと積極的にコミュニケーションを取ろうとしているという
他のシスターも、マリーの淹れたハーブティーを楽しんでる時のセレナは、普段とは違う柔らかな印象を感じると話していた
"私が彼女について聞いたのはこれくらいかな"
『はえ~、セレナさんはシスターフッドの皆さんにとっても慕われているんですねぇ』
トリニティの自治区内を歩きながら、自身の持つタブレット「シッテムの箱」に住むOS兼秘書(自称)であるアロナと会話するヘイローを持たない大人の男性
連邦捜査本部「シャーレ」の顧問である「先生」である
彼は「とある出来事」をきっかけにトリニティ大聖堂に赴き、「月代セレナ」という生徒について彼女が所属するシスターフッドの生徒達から話を聞いていた
"彼女は何も話さない。だけどそれは何も感じていないとか、何も思っていないとかそういうことじゃないはずだ"
"彼女の行動、視線、そして祈る姿…その全てが彼女の「言葉」なんだ。私はそれを理解しなきゃいけない"
『だけど先生、あの時のセレナさんはシスターフッドの皆さんが話される内容とは少し違う印象がありましたよ』
"そうだね、そしてなによりもあの不思議な銃……あれに関しても詳しい事を知りたかったのだけど……"
以前トリニティへ向かう用事があった際にその途中、先生は不良生徒達に絡まれてしまい、間の悪い事にその日は軽い用事だからと護衛の生徒も連れて行かなかった為、窮地に陥っていた
そこに現れて銃を次々と「変形」させながら先生を救ったのがセレナだった
ちょうど空いた時間ができたのでその時のお礼も兼ねてトリニティへ再び足を運んだのだが、あいにくセレナは奉仕活動として治安維持活動の手伝いに向かっており会うことができなかった
なので代わりにシスターフッドの生徒達からセレナの事について聞いていた、というわけである
"状況に応じて姿を変える銃、と聞くとミレニアムの発明品かなと思ったけどあれはミレニアムの機能美的な美しさというよりかは宗教的な、どこか神聖な美しさがあった"
"その事についてサクラコに聞いてみたんだけど……どうも誤魔化されちゃったみたいでね"
そうこぼしながら先生はあの時のサクラコの表情を思い出す
あれは「こちらを信用していない」というよりも「あまり詳しいことを話したくない」といった印象だった
"とりあえずシャーレに戻ろうか、次に来るときにはナギサ達にも話を聞いてみるのもいいかもしれないし、タイミングが良ければセレナ本人と会ってみるのもいいかもしれない"
『はい!先生!今度はセレナさんに会えるといいですね!』
そうアロナと話しながら先生はシャーレへ帰る為に駅へと向かっていった
「……なんとか先生に知られる事は避けられましたか」
先生を見送った後、トリニティ大聖堂で安堵の表情を見せながらそう呟くのはシスターフッドのリーダー、歌住サクラコ
「あの銃の詳細に関してはなるべく秘匿せねばなりません、少なくともトリニティの情勢が安定するまでは」
「ああ、主よ。あの優しき少女がかの『聖遺物』の『担い手』に選ばれたのも試練だと仰るのでしょうか―――」
月代セレナが扱うその不可思議な銃の正体
それは、「月の兵装廠」と呼ばれる、持ち主の信仰に応じその姿を変えるという「奇跡」を体現するトリニティに今なお現存する「聖遺物」のひとつであり
過去に「ユスティナ聖徒会」の異端審問官が振るったとされる、曰くつきの物だった―――――
Twitter(自称X)公式アカウントによる生徒紹介ポスト
先生、こんにちは!アロナです!
今回は、とっても物静かで、神秘的な生徒さんをご紹介します!
トリニティ総合学園、シスターフッド所属の月代(つきしろ)セレナさんです!
いつも静かに祈りを捧げているセレナさんですが、任務ではたった一つの聖遺物を、なんと5種類もの銃器に変化させて戦うんです!
スナイパーライフルから火炎放射器まで…!一体どうなっているんでしょうか!?
言葉少ない彼女の祈りは、銃弾となって先生の道を照らしてくれるはずです!
「……先生。私の祈りは、この弾丸と共に。月の導きが、あなたにもありますように」