ジェイクは人工島エイジスに到着した。
交戦場所であるエイジス中心ではなく、宇宙港や生産区画、居住区がある外側に立っている。
カンナやシュウから貰ったディスクが役立っているのか、今のところ妨害工作は働かず、トラップも作動していない。
ミノル達がここへ来るまでに時間がかかるだろう。
ジェイクはラボに侵入しようとしていた。
真っ暗な施設。非常灯以外が光っていない場所。
「何してるんだ」
蘇芳がそこにいた。
いつもの枯れ木のように穏やかな様子ではなかった。
押しつぶすような威圧感を発しながら、ジェイクに近づいている。
どうして彼がここにいる。
「ここは君が来てはいけない場所だ」
ジェイクは鋭い殺意を受けながら、ベルトにセットした小刀を意識する。
エイジス崩落事故前、彼は支部長の護衛を務めていた。
前線での戦闘歴は、自分と同じ一年と少し。
リハビリして間もないと聞いているが、油断ならないことは分かる。
ジェイクは背中から小刀を出して接近、マサノブは回し蹴りで小刀をあらぬ方向へ飛ばす。
続いてマサノブは足を曲げ伸ばし、ジェイクを壁へ蹴飛ばす。
ジェイクは壁に叩きつけられ正面を見ると追撃の右ストレートが自分の頭部目がけて進んでいることに気付く。
右ストレートが着弾する前に、ジェイクは壁を駆け上がって拳を避ける。
駆け上がり、拳を避けた瞬間に、マサノブはジェイクの背中を掴む。
アルゼンチンバックブリーカーで背骨をへし折る。
「ぐっ…う…!」
「まだだ」
蘇芳、口の中に回復錠を腕ごと突っ込む。
腕の勢いで、常人ならば顎がひしゃげ、歯が飛び散る威力。
ジェイクはGEなのでそうはならなかった。
だが、GEの歯をものともせず腕を突っ込んだマサノブは噛まれる。
激痛が走って反射的に腕を出すはずなのに、変わらない速度で手を抜いた。
ジェイクは鼻から血が止まらない。
躊躇の無い暴力が続く。
ジェイクの頭を地面に叩きつけて強制で目覚めさせる。
顔面に足が迫ったジェイクは身を捩って避ける。
ジェイクは立ち上がり、スウェイで一旦距離を取る。
マサノブ、暗がりから何かをノーモーションで投げる。
注射器だ。
脇腹のような死角を狙っている。
ジェイクは足元に刺さった小刀をサッカーの様に蹴り上げる。
蹴りあがった小刀は注射器を弾き飛ばす。
ガラスの割れる音がして、針が外の月に照らされて一瞬煌めく。
両者は針と刀身の光で位置を確認。
ジェイクの横スウェイから、回転裏拳。
マサノブは仰け反り、裏拳を放って伸びたジェイクの腕を掴み、己ん振り向いて肩に乗せる。
乗せると同時に引っ張り肩に腕を叩きつける。
腕が曲がらない方へ乗せられたジェイクの腕は異音を鳴らす。
マサノブはそのまま地面に一本背負い。
叩きつけられる瞬間、受け身を取り後ろへ転がりマサノブの足に組み付き倒そうとする。
しかし、どこからその細い筋肉に体幹が残っているのか、びくりとも動かない。
むしろ、組み付かれた足を軸に、もう片方の足でジェイクの胴体を蹴る。
ジェイクは浴びせ蹴り。
マサノブは自分の耳目がけての蹴りに対し、朽木倒し。
ジェイクはマサノブの腕につかまり、関節技をかける。
マサノブはジェイクの技が冴えていくことに気付いた。
こいつは、記憶と共に技を思い出している。
腕挫十字固との違いは、技を受けるマサノブが立ったままだということだろう。
マサノブは技をかけられた腕を強制脱臼させる。
ぐらりと下がっていく腕から離れようとしたジェイクを膝蹴り。
ジェイクは口から液体を出しながら離れる。
マサノブはジェイクの脳天目がけて後ろ回し蹴り。
脳が揺れる。
何とか止まらないのか。
ジェイクはマサノブを睨む。
マサノブは懐から針を取り出して近づく。
ジェイクは視界が白く染まっていた。
灰色の影が近づいていくのに、脳が揺れて…
マサノブが止まった。
マサノブは体を動かそうとする。
痛覚を無視した動きに限界が出たわけでもない。
単純に肉体が動かない。
脳にそういう命令を出されているように。
暗示か?
いつから?
あの針が反射したときから?
いいや違う。
こいつはアーサソール出身。
薬剤の影響がモロに出ている俺はこいつの支配下に置かれる可能性がある。
だが
作戦通りだ。
澄んだ金属の音。
暗い室内は閃光につつまれた。