雀の鉄砲   作:もがお*りが

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 僕はジェイク・ロペス。

 極東の神機使いだ。

 顔に大きな火傷を負い、顔に包帯を巻いているらしい。

 『らしい』というのも、顔に包帯の感覚はあれど、火傷を負ったことについては覚えていないからだ。

 配属前に大きな怪我をしたらしく、顔が変わったショックで記憶を失い、上官に「火傷などで顔が以前と違うと、精神的なショックが大きいから包帯を外す作業中あなたには眠ってもらう」と説明された。

 

 

 ここアナグラは奇抜な服装の人が多い。

 だから、顔に包帯を巻いている僕をあまり見ることはない。

 はずだ。

 

「あいつ、アナグラにいたっけ?」

「おいジロジロ見てやるなよ」

 

 僕は入隊して日が浅いのかもしれない。

 目立つな、これ。

 

 

 

 帰投後、ジェイクは食堂で蘇芳さんと話していた。

 

「リハビリ?蘇芳さんもですか」

「うん、筋力が落ちたしね。定期的に検査する必要があるから、遠征偵察できないんだ」

「何か事故にでも?」

「いや、挑発フェロモンをよく飲んでていてね。自業自得だよ」

 

 外部居住区の識字率は2050年の日本を基準として下がる一方である。

 学校へ行けないことにより、薬を乱用するリスクを軽く見る人も多い。

 この人が、それを理解していないはずもないのだが。

 

 どうやら、記憶を喪う僕は少しだけ教養があったようだ。

 

「近辺偵察は俺も同行できるから、これからもよろしく」

「頼りになります」

 

 足音。軽快な足音とゆっくりとした足音。

 どちらも重心は安定している。

 

「マサノブ~!頑張ってるな~!今飯?」

「こんにちは、先輩。はい、ジェイクと食べてます」

「隣座るな。おっすジェイク、最近飯の供給増えて嬉しいね~」

「みたいですね。ショウヘイさんは昔と比べてどうです?」

「うん、増えてるな。俺が物心つく前はもっと食えたらしいゾ」

「金持ちもあんだけ働いて食える量は…ってところがいいよな」

「先輩性格悪いですよ」

「へっへっへ、昔の標準家庭でももっと食えたろうな~」

 

 ショウヘイはスプーンを綺麗に動かす。育ちがイイとカリンから聞いていた。

 カリンは見た目に反して音を立てない。

 マサノブもそうだ。胃が弱いのかよく噛んでいる。

 といっても、皆食えない時期があったのでよく噛んで空腹をごまかす癖がついている。

 食糧を奪われることもあったからか、早く食べる。

 GEもそうでない人も。

 

 この経験は緊急出動の多いGEに活かされる。

 

 偵察任務はツーマンセルもしくはスリーマンセルが多い。

 調査隊の護衛のためであったり

 

「ジェイクは新人だから暫くわたしら誰か一人がついてるぜ。今回はわたしな」

「カリンさんといれば撤退しやすいですよ」

「何言ってんだよマサノブぅ~お前も囮役するから評判いいぜ?」

「俺は装甲兵ですから」

 

 カリンはマサノブと特に仲が良い。

 ジェイクが見るに、あまり会話を得意としないマサノブに気を使っているというよりは、興味があるから話している印象が強い。

 おそらくある程度特別な感情を抱いているのではないかとジェイクは予想している。

 

「それじゃあ、俺は嘆きの平原に行くゾ。ヘリ待たせてるからお先」

「行ってらっしゃ~い、お土産待ってるわん」

「アホ抜かせ」

「いやんひどぅい」

「それじゃ、俺は廃寺に。先輩たちは贖罪の街ですよね?」

「おう。地下街は討伐班のやつが行ってるしな」

「隊長や副隊長は?」

「隊長はエイジスから愚者の空母で、グレンは鉄塔の森で他の隊員討伐任務中ゾ」

 

 カリンの返答でジェイクは遠距離型の不便さを思い出す。

 

 遠距離型は単体での戦闘を得意としない。まず近接型と異なり、攻撃回数に限りがある。

 遠距離型はバレット…発射できるオラクル細胞の量が有限だからだ。

 旧型は新型と異なりオラクル細胞を近接で奪ってOPを貯蔵する仕組みはない。

 オラクルカートリッジが存在するが、近接型がアラガミからオラクル細胞を奪い遠距離型が使うという方式をとる以上、偵察を完了した段階で増援の近接型を待つか、一次撤退し部隊を編成するかどちらかになる。

 

 近接の隊長、カリン、ミノルの三人は必然的にどちらかと組むことになるが今回は新人であるジェイクを教育するためローテーションで組むことになる。

 

 一人一人の戦い方を理解してもらうためだ。

 乱戦が発生しやすい戦闘において、連携は要となる。

 雨宮ツバキ教官が言うように、味方の生存率が高いほど敵の攻撃が分散され被弾し難くなるのだ。

 自分の生存にもつながる。

 そのため異なる場所と異なる人員でローテーションを組み、地形の特徴と隊員の戦闘スタイルを叩き込み連携をとるようにしている。

 

 本来、任務を行う場所を覚えるために煉獄の地下街→鎮魂の廃寺→贖罪の街→愚者の空母→エイジス→鉄塔の森→嘆きの平原のローテーションを組んだ方が良いのかもしれないが、討伐班、防衛班、アラガミテロの対応や民間人の避難、人員の貸し出し、護送任務、調査日程の兼ね合いで異なってしまう。

 

 そういうわけで、対応人員と地形が異なってしまう。

 

 ヘリの中、万事屋から買ったアンチジャミング剤を見ながら、双眼鏡を用意する。

 

 

 

 贖罪の街。

 A地点に二人は立っていた。

 

 今日はいつもより強い風が吹いているためか、制服に砂が良く付着する。

 ちょうどいい。カムフラージュにはなる…といいたいところだが、ジェイクはまっ白い制服、カリンは紫の制服なので微妙なところだ。

 

 ヘリが飛び去って行くのを確認しつつ、ジェイクは腕輪を確認する。

 

「ビーコンの位置良し、アンチジャミング剤良し」

「今回は物資回収と偵察任務の両方をやるからな」

「了解」

「良かったな、わたしは”ユーバーセンス”と”敵体力視覚化”があるから今日は捗るぞ~」

 

 カリンは五感が鋭い。

 観察力が高く、それを活かす力がある。

 手際も良いのでアイテムを即座に使用してアラガミを罠にかけたり、撤退戦の救援に向かうことも多い。

 回収できるならば遺体の回収もする。

 

「回収素材って、一旦検査して回収指標分はアナグラに、残りは神機の強化や衣装、アイテムの合成に使って良いんですよね。アナグラに渡した素材は何に使うんでしょうか?復興作業?」

「そーなんよ。ミスリル銀とか、エーテルとかとかいうアラガミが吐いたものもアラガミ装甲に使うわけ」

 

 火石などの属性名のついたオラクル石、金属を捕食することで別の金属に変換する哲学の石、コアを喪ったアラガミの筋線維こと超アラガミ繊維などオラクル細胞やアラガミ由来のものは研究、オラクル技術に利用される。オラクル細胞であるということは、中に偏食を誘導する物質である偏食因子を含んでおり、装甲の更新に役立ったり、アラガミ装甲を作成する時に役立つ。

 

 アラガミ装甲はデータベースで確認できるように外壁や輸送ヘリ、神機の拘束具や神機パーツ等様々な用途で使用される。

 

 カリンは風と反響、足音、体臭など様々な情報から敵を常時捕捉している。

 当時は2074年と異なり通信技術や偏食場パルスに関する技術がまだ発達しておらず、スキル無しにはマップでアラガミを補足することは出来なかった(※1)

※リザレクションではマップに常時アラガミの位置が載っているが、GEBではユーバーセンス無しで常時捕捉はできなかった

 

 

「ビルからだな」

 

 穿たれたビルの方から音がする。

 H地点に向かって何かが飛行している。

 カリンは風にぶつかる音から大きさを割り出す。

 

「サリエル系あるいは新種のアラガミか」

「接触禁忌種だった場合は…」

「交戦せずに逃げる、ですよね」

「そうだよ。オラ見に行くぞ~」

 

 小声で話し終え、息をひそめながら進む。

 二人ともEでは高台、教会の入り口を警戒する。

 H地点手前のF地点にいる。

 二人は教会の壁を遮蔽物にして身を隠す。

 

「どうだ?」

 

 ジェイクの実地訓練なので、アラガミの種別と名称が分かっていてもあえて外見の報告をさせるカリン。

 

「黒い、アイテール?」

「まずい、ゼウスだ」

「団体ですね。下から追従する形でゼウスと似たような色のセクメトみたいなのもいます」

「なんだと思う?」

「ヘラでしたっけ…」

「あたり…うお~」 

 

「交戦しますか?」 

「お前新人、わたし偵察上等兵」

 

 ジェイクと己を指さすカリン。

 接触禁忌種数体乱戦は無~理~とでもいいたげな笑顔。

 

「こんなん第一部隊に任せてとっとと帰りますよ~帰る帰る」

 

 そそくさとA地点へ戻る二人。

 ゼウスもヘラも聴覚はまだしも、視覚は良い。

 見つからないうちに逃げる方が良いのだ。

 

「待て。…小型がいる。奇襲して撤退だ」

「了解」

 

 ジェイクは冷や汗をかいた。

 小型に吼えられた場合、合流される可能性があるからだ。

 ジェイクはヘラとゼウスとの交戦経験が無いため、聴覚が並だとしても不安であるし、潰しておこうと考えている。

 

 茶色のヴァジュラテイルだ。

 厄介な落雷攻撃を有している。

 落雷の色と光で、ゼウスたちに気付かれるとまずい。

 

 カリンはクロノスサイズを下段に構え、ステップで斬り上げる。

 ジェイクはショートでジャンプ攻撃。

 奇襲に成功する。

 カリンの神属性神機での弱点属性を突く攻撃に、ハイドアタックによる奇襲攻撃で乗算される。

 空気+消音+神属性(近接)×ハイドアタック(三倍)だ。

 ハイドアタックは強化パーツを使用している。

 生意気なことにランク9だ。お前討伐班行けよ。

 

「わたしヘラの報告するわ。数も報告しとく」

「僕はゼウスの報告をします。小型の分も報告した方が良いですよね」

「おう、一匹いたら何匹かは出るもんな」

 

 二人は待機しているヘリに乗ろうとする。

 上空からプロペラの音がした。

 別のヘリが降りてきたのだ。

 

「お待たせしました」

「速いですね」

 

 カリンは第一部隊に外向けの敬語を使う。

 とはいっても相手によってですますを使うかどうか程度の一般的なものだ。

 アナグラへ報告する前に討伐班たちが来た場合は偵察状況を報告するよう、ミノルに指示されている。

 

「H地点に向かって、ゼウス一体、ヘラ三体が進行中です。やつらは視覚に優れています」

 

 霧散する一歩手前だったヴァジュラテイルを見ながら、カリンは引継ぎをする。

 

「A地点真下にヴァジュラテイルがいたことから小型が発生する可能性が高いです。離脱時のスタングレネードはお持ちですか」

 

 ジェイクは確認を取る。

 カンナは頷いて二人を見る。

 

「状況報告ありがとう。あんたたちも気を付けて帰りなさい」

「了解」

「もちろん!それじゃ帰るぞジェイク~」

「はい、それでは」

 

 包帯男ことジェイクは会釈をして、神機をアサルトに変形しヘリに乗り込む。

 撃墜対策に近接をカリンが、遠距離をジェイクが担当するからだ。

 

 

 

 

 カンナたち第一部隊は帰投していた。

 ゼウス一体と、ヘラ数体を分断しながら仕留めた。

 アリサとソーマ、サクヤの四人でだ。

 

「ヴァジュラテイル、二撃で仕留めていますね」

 

 アリサは合流時に討伐完了されていたヴァジュラテイルのことを話していた。

 

「ハイドアタックと…状態異常攻撃を上げるものかしら」

 

 サクヤが高威力の出どころを推測する。

 カリンは封神付きの神機を使用している。

 一度対峙してみて、高い身体能力と戦闘技術があることは分かるが、アラガミに通用するものでは無かったはず。

 威力は出せたとはいえ、ハイドアタックは持っていなかったはずだ。

 状態異常攻撃を強化するパーツも然り。

 

「そんな強い強化パーツ持ってたかしらね」

「あいつ…」

 

 ソーマが怪訝な顔をする。

 

「どうしたのソーマ」

「あの新型、気に入らねえな」

 

 

 

 極東支部の屋上、ヘリからカリンとジェイクが降りる。

 

「やっべ、気付いたかな?」

「何がですか?」

「ミノル隊長に報告することが増えた。機密だからジェイクはアナグラに戻って休憩しな」

「了解」

 

 一体何が問題だったのだろうか。

 ブッキングしたときの対処も、報告も完了している。

 ジェイクは疑問に思いながらも、屋上から立ち去ることにした。

 

 

 




必ず完結します。
本編はプロローグ~エピローグで16話。
幕間は6話です。
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