雀の鉄砲   作:もがお*りが

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ジェイクは防衛任務に向かう。
お前の罪を知れ。


2

 アリサとカンナ、コウタは外部居住区を歩いていた。

 アリサが提案した炊き出しの手伝いもあるがいつでも出撃できるよう神機ケースを持っている。

 

「復興は進んでいますけど…被害は…」

「家を喪ったり、家族がいなくなったって聞いたわ」

「二人とも暗い顔すんなよな!飯冷めちゃうよ。アリサ、手が止まってるぞ~」

「コウタも止まってるじゃありませんか」

 

 コウタの明るさに、救われている。

 カンナはアリサがもしかしたら炊き出しで会った誰かを喪っているのかもしれないと思ったし、コウタだって知り合いがいなくなってしまったのかもしれないと、脳裏に過っていた。

 

「アーサソールの人たちの遺体、どうなってしまったんでしょうか」

「あいつらも、もしかしたら帰る場所があったのかもしんないな」

「……」

 

 アリサとコウタは、まだ解決の見えないものまで見ていた。

 

 

※

 

 

「っくし!」

 

 ジェイクはくしゃみをした。

 

「お大事に」

 

 偵察班の班長で隊長ことミノル。

 くすくすと笑って資料に目を通した。

 

「今回は防衛任務に赴いてもらうわ」

「了解」

「いいんですか?こいつまだ地下街と贖罪の街しか行ってないですよ」

 

 カリンはターミナルを操作している。

 

「急だけど、今後何時人員貸し出しされるか分からないもの。慣れてね」

 

 ミノルは微笑んでいる。

 日本人離れした容姿の彼女は青い目がジェイクの瞳孔を見抜いている。

 ジェイクはミノルの事が苦手だ。

 この目。

 喜怒哀楽を表現しても何を考えているかが分からない。

 

 

※

 

 エントランス。

 第二部隊の面々との任務らしい。

 第三部隊は既に出撃しているとのことだった。

 

「アンタがジェイク?こっちは大森タツミ。よろしくな」

「はい、本日はよろしくお願いします」

「ブレンダンだ。お前さんも新型か。多いな」

「台場カノンです!よろしくお願いします」

「大型種の討伐経験があるんだって?頼りになるねえ~」

「そんな、防衛班の皆さんの足を引っ張らないよう頑張る次第です」

「これが謙遜か…」

 

 ジェイクは撤退判断が偵察時より遅くなることを理解していた。

 ここを守れないとどうにもならないからだ。

 出撃ゲートを通る。

 

「今回は外壁近くの復興作業員を守ってもらう。俺たちは侵入したアラガミを撃退するけど、ジェイクは復興作業員を守るために動いてくれ」

 

 任務概要を話しつつそれぞれ神機を手にしていく。

 今回、刀身はショートを選択した。

 ジェイク自身、小回りが利いた方が良いと考えたためだ。

 

「避難経路の確保のために敵を誘導して逃げ場を作るということですね」

「おう。まあ気張っていこうぜ」

 

 足はやに外壁へ向かう途中、現場付近の区画を目にする。

 建物が崩れている。

 子どもの落書きだろうか、クレヨンを走らせた画用紙は無残に破けている。

 ぬいぐるみさえ買えない外部居住区民は、もげた布団の切れはしで代用品を作っている。

 それらの首がもげたのであろう跡が見えた。

 

「酷い…」

「お前さん、記憶喪失らしいな。こういうのは初めてか」

「はい」

 

 ブレンダンの問いにジェイクは頷いた。

 記憶の無い自分としては、身体が戦場を覚えていたとしても心が追い付かない。

 新鮮な気持ちと懐かしさが同時に来る。

 

「本部から来たアーサソールという新型部隊がアラガミを誘導した」

「で、突然強い偏食場パルス…っていうのか?が発生してアラガミが暴走してこれだ」

 

 ブレンダンの説明を引き継ぐ形で、タツミが伝えた。

 彼らは一瞬の苦々しさを持ちながら切り替えている。

 

「人が人を脅かす…」

 

 ジェイクは呟く。

 茶色の瞳が脳裏に浮かんだ。

 任務中だと意識を戻す。

 

 装甲車で走り去っても残る光景に、上官たちは反応した。

 あまり上下関係はないらしい。

 

 現場に到着した。

 

 銃声と肉を切る音。

 既に交戦開始しており、ジーナとカレル、シュン、フェデリコが小型種と中型種を相手取っていた。

 ジェイクは近くのオウガテイルを捕食して交戦中のジーナたちに弾を受け渡す。

 新型は受け渡しができても、もう一人新型がいなければリンクバーストはできない。

 フェデリコはリンクバーストし、更に動いていく。

 第三部隊は相性が良い。

 ハイドアタック持ちが一名、状態異常攻撃を得意とするものが二名、積極的に受け渡し仲間の強化に専念する者が一名。 

 リンクエイドで体力を少なく渡すカレルは生存しやすいし長期戦向き、生存本能系を持つフェデリコはHPが少なくなるほど攻撃力が増す。

 

「アネットは!?」

 

 駆け付けた第二部隊とジェイクを見て増援だと感じたシュン。

 話しかけながら顔は正面のアラガミに向いている。

 

「あいつは討伐任務だ!」

 

 タツミはジャンプで青い堕天種のザイゴートを切り裂く。

 倒れたザイゴートをコンボ捕食で食べるとカノンのOPが蓄積される。

 

「回復弾撃ちますね!」

 

 カノンは疲労した第三部隊メンバーに放射回復弾を放射する。

 

 コンゴウ、グボロ・グボロ、シユウ、サリエルを入れ代わり立ち代わり対処していく。

 ザイゴートの群れをアサルトがハチの巣にしていく。

 ジェイクは防衛班の攻撃範囲を超えて行こうとするアラガミの対処へ向かう。

 

 レーザーの貫通音。

 

 狙撃。

 ジーナが対処した。

 

「行きなさい」

「ありがとうございます」

 

 ジェイクは走り外壁から避難しようとする復興作業員に追従する。

 彼らが一人でも死なないよう守って戦うということ。

 避難誘導の者が出た。

 アナグラへ避難させている。

 その道すがら襲われないよう、これ以上アラガミを進ませまいと体を張って戦うGEと一人でも多く生きてもらうよう避難誘導をする職員。

 

「下がってください!」

 

 ジェイクは捕喰されそうな復興作業員の前に着地する。

 同時にザイゴート目がけて体重を乗せた突きを放つ。

 

 

「キリがない…」

 

 ジェイクは迫りくるアラガミを打ち落とし、落としそこねたものを切り払っていく。

 全体的に弱いのはともかく…

 

 多い。

 アラガミの数が多すぎる。

 人員が足りていない。

 だから避難者を守れという命令が下りた。

 旧型では遠近を兼ねられないからと。

 

 他の者は?

 討伐班は討伐任務に向かっている。

 より強いアラガミをアナグラに侵攻させないように。

 あるいは、アラガミテロの対応のために。

 偵察班は?状況を把握するために各地で観測、即時報告をし、対処できるものであれば対処する。 

 部隊所属でないGEもいる。ニコラスなどは反対方向を警戒している。

 

 ジェイクは外壁を越えようとする飛行型の群れを睨む。

 邪魔だ。

 

 

※

 

 

 フェデリコはカノンとジーナにアラガミバレットを受け渡していた。

 経験として、本当は二人に三発ずつ受け渡しておけばアラガミを一掃できると分かってはいる。

 分かってはいるが…誤射によって今は戦線を乱すわけにはいかなかった。

 

 今の技術では、アラガミバレットはまだ識別ができないでいた。

 

 他の神機使いを巻き込めばふっとび、攻撃の手が緩むどころか相手の攻撃を喰らうこと、それで命を落とすことだって想像は容易い。

 

 タツミが入ったことで指揮命令系統がはっきりし、動きやすくはなった。

 だが、疲労は着実に溜まっている。

 カノンが回復弾を撃ってはいるが、疲労を治すわけではない。

 疲労が濃くなれば集中力と判断力が鈍り、一瞬の隙が仇となって死ぬ。

 それに、偏食因子は投与リミットがある。

 

 タツミは眉を顰める。

 タツミはアラガミの動きに違和感を覚えた。

 

「フェデリコ、カノンをLV3までリンクバーストさせてくれ!」

「り、了解!」

「みんなちょっと下がれ!カノンより後ろだ!」

「了解だ」

「えっ、いいんですか?」

「はあ!?」

「巻き込まれたかったら、このままでいいんじゃないか?」

「やめなさいよ」

 

 カノンはフェデリコからさらにアラガミバレットを受けとる。

 近接も遠距離もアラガミに警戒したまま下がっていく。

 

 神機連結解放Lv3

 爆炎玉

 

「肉片にしてあげるね!」

 

 カノンが放った濃縮バレットはアラガミの群れを爆発させた。

 爆風が衣服をはためかせる。

 

「や、やりました~!」

「一網打尽かよ」

「コアの回収を開始する」

 

 ブレンダンの一言に、近接の神機使いはブレードを捕喰形態に移行させていく。

 ジーナは周辺をスコープで覗きながら

 

「…あのアラガミ達、わざと纏まった気がするのよね」

「ジーナもか」

「貴方も気づいていたの?」

「向こうへ進もうとしたアラガミまで引き返すそぶりを見せたんだ。そりゃあな」

 

 横でアラガミのコアを摘出していたタツミは、神機を担ぐ。

 

「さて、帰るか。あいつも無事だろうな…」

 

 タツミは無線でオペレーターのヒバリに繋ぐ。

 

 

※

 

 

 帰投中、アナグラ近辺で行列を見た。

 みんな痩せた子どもたちだ。

 目に生気が無い。

 

 復興作業員がジェイクを見つける。

 

「さっきはありがとう、気になるか?」

「…はい」

「あの事件で親と家を喪った子どもたちだ。孤児院が引き取ることになってる」

 

 一人、列から外れている子どもがいる。

 大きな帽子を被った幼児だ。

 親の帽子だろう。

 ジェイクは近づく。

 

「君は?列ならあっちだよ」

「いない」

「誰が」

「かーさん」

 

「なんで?なんでいないの?」

「…」

「おうちない」

「…」

「かーさんどこ!」

「…」

 

 ジェイクは自分がどんな顔をしているか分からなかった。

 ここにいるということは、親はもう。

 

 復興作業員が幼児に近づく。

 

「君、お名前は?」

「にいどがく」

「そうか、ガクくんか。おじさんはススムって言うんだ」

「お母さんとお父さんは、もしかしたらはぐれたのかもしれないな」

「あそこで並んで、あそこのお姉さんたちの言うことをよく聞いて、いい子にして待ってたら来るかもしれないな」

「そう?」

「そうだ。じゃ、あそこまでこのお兄さんと進もうか…」

 

 復興作業員のススムがジェイクに視線を送る。

 ジェイクは少し戸惑って、手を差し出す。

 ガクと名乗った幼児は、ジェイクの手を握らなかった。

 そういう年頃だ。二歳ほどか。

 

「行こうか」

 

 ジェイクはガクの小さな、おぼつかない足取りに合わせて歩く。

 ガクは手を繋がない。

 

 遅い歩み。

 

 影法師が伸びてく。

 逆光が列を黒く塗りつぶす。

 

 ガクは涙を堪えていた。

 堪え切れなくて、顔を落として鼻水を流していた。

 途方に暮れる子どもの列へ彼を連れて行かなければならない。

 

 ガクはジェイクのボトムズの裾を掴んでいた。

 ジェイクはガクの顔を見ることが出来なかった。

 

 

 

 

※

 

 

 

 

「待たせたな」

「いえ。…あの、皆さんは?」

「先に帰ったよ。投与時間があるからな」

「そう、ですか」

 

 ジェイクの様子をタツミは見ていた。

 F武装下衣の左外側が濡れているから。

 

「どうしたよ、しっかりできてたじゃないか」

「あそこの行列を見てしまって、子どもと話していました」

「…そうか」

 

 

 

※

 

 タツミはジェイクの話を聞いていた。

 行列を見てからのことを。

 

「迷子かもしれないってのは、嘘だと思います」

「だな。ああでもしねえと並ぼうとしないだろうよ」 

「それにな。ススムって人は、ジェイクが守ったから男の子に話ができたんじゃねえかな」

「そこまで無力とか思うんじゃねえよ。包帯巻いてるからどんな面か分かんねえけど、思い詰めんな」

 

「…はい」

 

 

 防衛任務は、ジェイクに外部居住区の一端を見せることとなった。

 

 少しでも、復興の手伝いが出来たら…

 

 

※

 

 

 

『隊長~強化パーツのことばれちゃったかもしれないです。小型一匹倒した痕跡で、サクヤさんあたりから』

『そう、いいわ。安心なさい。誘導に使えるもの』

『それにしても、本部のGEの装備はいいわね』

『おかげで強化パーツ代が浮きますよ~』

 

 

 

 

 

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