ある男が街宣カーで怒鳴っている。
俺は、聴衆の中に交じって聞いていた。
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
ここは、『訪の国』。
俺の名は、加賀見進。別名「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。俺のことを仲間は、仮の名の「五十嵐」と呼ぶことが多い。
俺には聞こえる。殺してくれ、と。
どこの次元でも聞こえている。
跳んで来たのは・・・地震の被災地だった。
ある男が街宣カーで怒鳴っている。
俺は、聴衆の中に交じって聞いていた。
どうやら、新しくできた政権の前の前の宗理らしい。
「皆様の為に・・・。」
「何が皆様の為に、だ、中途半端に放り出して支援しなくなったくせに。政府が支援続行しなければ、何しているんだ、って突っ込む気だ。」
俺は、その猟師に南極ボケをかましてから、現状を尋ねた。
「今、小麦国の大統領が来ていて、新宗理と会談が進んでいる。隣国『麻辣国』の手下だったから、『麻辣国』とばかり仲良くして、小麦国は『小国』扱いだった。この岸部も、次の石焼も酷かった。石焼は、露骨に小麦国を敬遠していた。『麻辣国』は乗っ取ろうとしている敵国で、小麦国は同盟国だと言うのに。大統領の来訪に立ち会いたくないから逃げてきたのさ。核僚でもないのに、何を公約するって言うんだ。」
猟師は、漁協長だった。震災のお陰で漁は壊滅、補助金は『予算オーバー』だと言って、打ち切られたようだ。その分、裏金に回った、という噂がある。『予算オーバー』というのは、『一般会計』で随時用意された災害補助金で、『復興用』は『特別会計』から用意されたのに、『使途不明金』は『行方不明』になった。
俺は、石焼の様子を見る必要がない、と感じ、新宗理官邸に跳んだ。
新宗理は、ナイフで首を切られる寸前だった。俺は、『追っ手』の右手に、そのナイフを跳ばした。
「宗理。警備かSPを呼んで下さい。話は、その後で。」
俺は一旦、姿を消した。
実際は、その部屋にいるのだが、姿は見えない。
警備もSPもやって来た。
「暴漢に襲われました。合気道を披露しようかと思いましたが、その必要は無かったようです。暴漢は手を滑らし、自分の手にナイフを刺してしまいました。」
1時間後。俺は、率直に事情を話した。
「では、他の次元でも政権交代した、国のトップが襲われているのですね。そして、貴方たち次元管理局が事前に、あるいは、その場で助けたのですね。今夜の大統領とのディナー、大丈夫かしら。」
「常に警護出来る訳ではありませんから、SPや警護は厳重に願います。貴方の核領も同様です。」
「分かりました。せめて、貴方のお名前を・・・。」
「万華鏡、と呼ばれています。」
「万華鏡。素敵なお名前ね、ありがとうございます。万華鏡さん。」
俺は、ゆっくりと、姿を消した。
とうとう、『おいつおわれつ』になってしまった。
だが、俺はやる。
俺の名は、加賀見進。別名「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。
パラレルワールドの次元修復は、いつ終わりになるか分からない。
俺にまつわるオンナ達の幸せも来るかどうかは分からない。
迷っている暇はない。跳ぶぞ。
―完―