梅子は俺を外に連れだした。
「この次元の『驫の国』は安全だ。それより、『干の国』に跳べ。局長からの指令だ。」
「安全って、どういうことです?」
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
ここは???
俺の名は、加賀見進。別名「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。俺のことを仲間は、仮の名の「五十嵐」と呼ぶことが多い。
俺には聞こえる。殺してくれ、と。
どこの次元でも聞こえている。
跳んで来たのは・・・新聞社玄関。
そこにいたのは、局次長梅子だった。
「五十嵐、ちょっと来い。」
梅子は俺を外に連れだした。
「この次元の『驫の国』は安全だ。それより、『干の国』に跳べ。局長からの指令だ。」
「安全って、どういうことです?」
「新政権の宗理は『隣国派』の人間を全て追い出したそうだ。しかもだ。野党の中にも『隣国派』以外の党が台頭してきた。そして、隣国は、他の国と戦争を始めた。つまらない諍いをきっかけにな。私も次の任地に跳ぶ。」
「了解です。」
俺は、腕時計を触って、『干の国』と念じた。
跳んできたのは、また、新聞社玄関。
お誂え向きに、広報ビジョンにニュースが流れている。
「隣国まあジャン国領事館の、『宗理の首を討ち取ってやる』という暴言に、本国から『渡航禁止』の指令が出て、古場宗理は、『安全保障問題に関する危機の為』、領事館の外交官に撤去を指示しました。古場鷹之助宗理は、名前通りの鷹派で知られており、友好国であるバナナ国が有事の際には、うってでると発言されていました。隣国まあジャン国本国からの罵倒の声明を受けて、『内政干渉するなら国交断絶』と、宗理は反発しました。野党の猛反発が始まりました。」
「また、偏向報道やら切り抜き報道やらが始まるな。ジャーナリストでなく、『ジャーマリスト』だ。金や色で釣られた奴らばかりだ。」
清掃員の格好をした高齢者が、吐き捨てるように呟いた。
「おい、そこのジジイ、今、何て言った?」
「隣国に尻尾振ってる『犬』ばかりだと言ったんだ。」
「何だと?」と、会社の課長代理の名札をぶら下げた男が手を挙げたので、俺がその手を捻って倒した。
「社員の教育がなってないな。」
「すまんな、若いの。社主として詫びを入れよう。」
そこに援軍が現れた。10人はいる。
「どうした、有田君。」
「あ、部長。このジジイが・・・。」
「待て。ひょっとしたら、松平様では?社主の。」
「控えおろう、この方は、実景新聞の社主、奥信重郎様だ。」
「ははーっ!!」
え?ここ時代劇の撮影現場???
社主奥の自宅。
「自分の作った会社だからね。愛着あるから、時々掃除してる。メタボ予防に。あんた、なんであそこに?今日は一般見学無い日だが。」
大物と睨んで、俺は身分を明かした。
「ほう。じゃ、『次元管理局』ってのは、『次元警察』みたいなものかね?こう見えてもSFは好きなんだ。パラレルワールドかあ。」
「警察でもないですけど、今話した通り、次元を歪めた犯人がいる筈なんです。歪められた次元では、悪政が続いたり、奇妙なことが起こっている。」
「確かに。隣国は、これまで政治家やマスコミを抱き込んで、静かに侵略を開始してきたのに、それを引っくり返そうと立ち上がった新政権になった途端、攻撃的になった。新宗理は抱き込めないタイプだからな。」
「社主の会社もマスコミでは?」
「ああ。系列会社のテレビは、『右へならえ』してるな。お恥ずかしいことだ。」
「領事館の暴言で火が点いたってことですか。」「うむ。ことによると、ヒットマンを送り込んで来るかもな。実は、4代前の宗理は暗殺された。マスコミは、その元総理に非があったような報道をした。根も葉も無いことでっち上げてな。裏切り者達が協力したから。」
「では、今回も裏切り者が出るとか?」
「閣外にな。流石に古場も近くに裏切りそうなのは置かなかったが、宗理を決める際に、党内議員が真っ二つのグループができた。負けた方は悔しくてならない。マスコミ抱き込んで、新宗理の邪魔ばかりする。」
「ジャーマリスト、ですか。」「左様。」
「裏切りそうな人物をピックアップして下さい。」
「ピックアップしなくても、今夜、動くよ。」
「え?」
「新宗理就任祝いの会。いかにも、だろう?売れ義理者オールスターの企画だ。」
午後7時、はえなわプリンセスホテル。
監房長官の音頭で、乾杯がなされた。
下戸の古場は、お茶で乾杯したが・・・。
「どこのお茶だろう?あジャン国のお茶かな?流石に本場は味が違うな。」
会場はざわついた。
ヒットマンが現れ、宗理を撃った。
だが、弾丸は、宗理を通り抜け、壁にめり込んだ。
「ようこそ、イリュージョンへ。」
給仕に化けていた俺は、ヒットマンをねじ伏せた。
「誰か、SPを。」
SPが来て、ヒットマンを連れ去った。
どこからか、音声が流れた。
宗理を亡き者にするための会議の録音だ。
宗理官邸。
宗理と大臣達が揃ってお辞儀をした。
あの爺さんにも挨拶したかったが、時間が無さそうだった。
俺の名は、加賀見進。別名「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。
世の中、色んな人がいるな、と感心して、俺は跳んだ。
―完―