俺は、食券を買い、カレーライスを注文し、トレーに乗せて、その男のテーブルに行き、前に座った。
議員会館の食堂や売店は、どの次元でも一般人でも使用出来る。
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
ここは『話の国』。
俺の名は、加賀見進。別名「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。俺のことを仲間は、仮の名の「五十嵐」と呼ぶことが多い。
俺には聞こえる。殺してくれ、と。
どこの次元でも聞こえている。
跳んで来たのは・・・刻会議員会館。食堂。
俺は、食券を買い、カレーライスを注文し、トレーに乗せて、その男のテーブルに行き、前に座った。
議員会館の食堂や売店は、どの次元でも一般人でも使用出来る。
今は、午後2時。外に食べに行く機会を逸したか。
その男の頭から、『殺してくれ』という叫びが聞こえてくる。
かなり、珍しい現象だ。男は、前政権の曹祭であり、宗理だ。
曹祭選挙で、若い大場進次郎に負けた。
そして、大場は、『首班指名』で見事宗理になった。
この男、石巻茂も、前任の岸科文雄も喜んだ。
大場を押していたからだ。
ところが、大人しいから税印省の事務員の言いなり政権になるはずが、違った。
大場の父親大場甚一朗に仕込まれていたのだ。
ギリギリまで、『赤い精力』の言いなりになる振りをしろ、と。
石巻は、国民に嫌われていた。
選挙で3回も負けて辞任しなかったのは、前代未聞だった。
曹祭は、党の『顔』、責任者である。選挙に負けて大敗となり、議席を失ったということは、一般の会社であれば、大赤字を出したに等しい。株主総会で退任を要求される。
ところが、党の代表の解任を決めるというシステムがないことをいいことに、ギリギリまで、宗理にしがみついた。
無駄な省庁を増やしたり、税金を上げるだけ上げる税印省の言いなりになっていて、隣国に甘い、自国民に厳しいという、出鱈目な政治を行い続けた。
最初は、岸科のワンポイントリリーフだったのに、何でも出来る権利を『勝ち取った』積りで有頂天になっていた。
同盟国とは疎遠になり、反対側の隣国に親密になっていた。
国民は怒った。『石巻辞めろデモ』が続いた。
そんなある日、石巻は病に倒れた。
いざと言う時は、というシナリオがあって、都合の悪い時に『雲隠れ入院』する準備は既に出来ていた。
ところが、入院は早まった。
前々日の『健康診断』で『異常なし』だったのにだ。
石巻は、レントゲン医師が急に交替したことに違和感を覚えていた。
バリウムを飲んでレントゲンを撮った後、「お口直しに」とジャスミン茶を飲まされた。
36時間後、ジャスミン茶は『効いて』きた。
石巻は、検査のやり直しで、『初期のガン』と診断された。
入院中、『病気による辞任』が決まり、曹祭選挙が始まった。
新宗理の大場は、見事に前政権を否定し、『修正していくことが死命』と言った。
そして、矢継ぎ早に、政策を実行して行った。
今日は、記者会見で『経過報告』をし、荷物を取りに来ただけだった。
「もう、こんなことなら殺してくれ。」心の中でずっと叫んでいた。
石巻は食べ終わると、食堂を出て行った。
元総理の惨めな姿だった。
トレーを返す時、食堂の職員に言われた。
「変だと思わないか、五十嵐。」
局長だった。
石巻の入院している病院に俺と局長は跳んだ。
麻酔をかけられ、石巻の手術が始まった。
がん細胞摘出ではない。
臓器を取り出した医師の心を俺は読んだ。
「〇〇様にぴったりの臓器が、まさか元宗理のお腹にあったとはねえ。」
公園。
「ヤツに同情する気はありませんが、他の次元よりある意味残虐な民族ですね、隣国の民族は。」
「国は滅ぼさなかったが、今の時点での話だ。新政権が邪魔になったら、また活発に動くのかも知れないな。今回は、あまり時間がない。私への『サービス』は、今度利子付きでな。」
局長は、腕時計が光り出すと同時に消えた。
俺には、あのハンバーガーショップの女の子と同一人物とは、とても思えない。オンナは時間が経てば、歳が増えれば変わるのか?
おっと、俺の腕時計も光り出した。
俺の名は、加賀見進。別名「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。
今回は、『見殺し』だった。
さあ、跳ぶぞ。
―完―