「あんた、息長いのかね?」
隣の爺さんが尋ねた。
どうやら、湯船に潜っていた、と判断したらしい。
これは、都合がいい。
南極ボケの話をしたら、乗って来た。
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
ここは、『声の国』。
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。
俺には聞こえる。殺してくれ、と。
どこの次元でも聞こえている。
跳んで来たのは、銭湯?
「あんた、息長いのかね?」
隣の爺さんが尋ねた。
どうやら、湯船に潜っていた、と判断したらしい。
これは、都合がいい。
南極ボケの話をしたら、乗って来た。
「ペンギンは、人慣れするのかね?」
「え?ええ。敵意がないと見て、横目でみるだけ。いるならいてもいいけどね、邪魔しないでね、って言っているみたいです。」
「成程。彼らのテリトリーに入る訳だからね。アンタ、イケるクチかい?」
「まあ、付き合い程度なら。」
「じゃ、付き合いなよ、いつも一人じゃ乾杯って感じじゃない。アンタの帰国祝いをしよう。風呂上がりに牛乳、は古いからな。」
服をどうしようかと思っていたら、ロッカーを2,3個開けたら俺の服があった。
「ははは。南極ぼけは本物だなあ。それとも『湯あたり』か。自分の服を必死に探すのは初めて見たよ。
俺は、つい愛想笑いした。
銭湯から1軒置いて隣のビルが、爺さんお勧めのビアホールだった。
常連なのだろう。
何も注文していないのに、ジョッキが2個出てきた。
中身はビールっぽくないな、と思っていたら、焼酎だった。
ちょっと、クラっと来た。
「アンタ、浮世の話は知らないだろうけど、『声の国』は生き地獄なんだ。焼酎飲んだら、焼酎にも、サービスにもジョッキにも冷蔵保管にも税金がかかってくる。今の『歳入省』は『歳入歳出省』になる予定だった。ところが、準備に時間がかかるってごねて『歳入省』だけ作った段階で、選挙になり、先々々代の総理の矢部さんが暗殺され、『歳出省』は出来無かった、というより作らなかった。これ幸いと、役人達は、今まで通り金の出入りが不透明な役所のままになった。『歳入省』は『歳出省』を兼ねているんだからいいんだって、屁理屈言って。金の入る部分は税金だからハッキリしているが、国民に還元しようとしない。矢部さんは、ハッキリ収支報告を国民に伝達するようにしたかったのに。噂じゃ、暗殺は『年貢省』、詰まり、『歳入省』が隣国哲の国から雇ったヒットマンの仕業。でもって、当日捕まった犯人は『役者』で、牢獄には入っていない、と言う。この頃、段々正体隠さないようになってきて、明日辺り、『先の戦争の責任は我が国にあるので、隣国に管理をお任せします』って国際会議で言う積もりらしいよ、飯島は。俺達は、長い間、『性善説』に踊らされてきたんだ。」
飯島が、この国のトップか。
「外国人に優しい国作りって、綺麗事言ってたけど、実は哲の国に、国を売る段取りだった。司法・立法・行政。三権分立なんかない。隣国人が帰化して入り込んで、『故郷』に有利な政治を行わせている。もう終わりだよ。」爺さんは、そのまま突っ伏した。
どこの次元でも似た状況だ。ただ、前の次元と、この次元では国民がストやデモを起こしている。ビアホールからデモが見えた。
俺は、黙ってデモに紛れ込んだ。
女の子の手を捻って、公開レイプをしようとしている、外国人警察官を見た。
俺がねじ伏せると、大勢の警察官が抑え込もうとしたが無駄だった。
一足早く俺が『跳んだ』からだ。
俺は、『歳入省』の中の電算室に入った。
『特別給付金』を『戸籍』のある全世帯に『歳入省宇預金』から分配した。
『歳入省から』という文書を全国の役所に通達する文書を作成して、歳入大臣の判子を押した。
総理の翌日の文書を作っている部署に行き、書き換えた。
翌日。総理は絶句し、卒倒した。
代わりに、記者会見で読み上げる筈の文書が官房長官によって読まれた。
「角義決定を待たずして、以下の決定をし、行動に移します。1つ、隣国哲の国との国交を氷結、『税金余剰分の歳入金から還付』、浪費税永久凍結、帰化したいない外国人は観光客ビジネス客を問わず、一時帰国。隣国からの攻撃に備え、国営防衛隊への予算を五倍に増額、各地に配備、再生化不可能エネルギーの施設を即時使用停止、休眠中の原発再稼働、私を含めた現主大臣の更迭・・・。」
今度は、官房長官が卒倒した。
また、救急車が呼ばれた。
この模様は、公共放送のライブ中継で『余すところなく』世界に発信された。
公共放送。メイン放送室。
職員は皆、天井を向いて昼寝している。外部からの侵入は、セキュリティーの為、ロックされている。
午後7時。銭湯。
主人に、銭湯の料金と焼酎代を渡した。
「済まないな。飛行機の時間がなくてね。爺さんには、手紙でも書くよ、って伝えておいてくれ。」
「あいよ。盆おやーじ!!」
「ボン。ボヤージュ、だよ。おやじさん。」
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。
入院した総理と官房長官は、暫く冬眠して貰うさ。
さ、次だ。俺は腕時計を触った。
―完―
銭湯から1軒置いて隣のビルが、爺さんお勧めのビアホールだった。
常連なのだろう。
何も注文していないのに、ジョッキが2個出てきた。
中身はビールっぽくないな、と思っていたら、焼酎だった。
ちょっと、クラっと来た。