沖新一。7歳。
ベッドサイドモニターで波形が踊っている。
もう長くないのか。
傍らに、手紙が置いてあった。
『内岳宗祇代臣石橋告様』と書いてある。
封はしていない。
俺は、急いで読んだ。
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
ここは、『義の国』。
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。
俺には聞こえる。殺してくれ、と。
どこの次元でも聞こえている。
跳んで来たのは・・・ここは、また病院か。
沖新一。7歳。
ベッドサイドモニターで波形が踊っている。
もう長くないのか。
傍らに、手紙が置いてあった。
『内岳宗祇代臣石橋告様』と書いてある。
封はしていない。
俺は、急いで読んだ。
「宗祇。これ以上、税金を上げないで下さい。お母さんは、いつも泣いています。僕の入院費もいつか払えなくなるかも知れません。宗祇は外国人に『劣等感』があるのですか?僕は背が低いです。ずっと誰もに見下ろされてきました。バカにしていないかも知れないけど、バカにしているように思えます。ある時幼稚園の先生に相談したら、『みんなそうなんだよ。みんな劣等感がある。優越感しかない人間こそ、他の人にバカにされる。みんなそれぞれ特徴を持っている。背の低い人背の高い人、おでぶちゃんの人ガリガリの人、字の上手い人字の下手な人。おしゃべりの得意な人おしゃべりが苦手な人。成績のいい人成績の悪い人。どんな特徴があっても、その人の個性なんだ。気にしないで皆と仲良くやっていこうと思えば、人の短所はどうでもよくなる。自分の短所もどうでもよくなる。』僕は、出来れば小学校に行きたいです。勉強して、野球やサッカーして喧嘩して仲直りして。僕は、本当は長生き出来ません。でも、お母さんを助けて下さい。お願いします。」
俺は、手紙を懐にして、スタッフステーションに跳んだ。
そこで、看護師達の心を読んだ。
国際平和推進連盟、略して国盟の総会で、「止めてくれ」と言われ続けてきた『戦後80年総括』を話す積もりの宗祇。内容は既に知れ渡っている。他の次元の世界でも似た様な感じだった。この子の言う『劣等感』が『外国人優先』思想になっているのだろうか?
9月21日。飛行機の中に、宗祇はいた。
記者の振りをして、尋ねてみた。
「当たり前じゃないか。この国は、あの戦争を通じて世界の人に迷惑をかけた。国民が犠牲を払って、末代までお詫びしなければいけないんだ。我が国の民族は『劣等民族』なんだ。
9月22日。国盟総会。
宗祇は、『戦後80年総括』を読んだ。
「我が国は、不幸にも戦争に巻き込まれ、軍部の暴走が始まりました。敗戦を迎えて、人々は希望の光が見え無くともどこかにあると信じ、邁進して参りました。『戦争放棄』を謳った憲法の下、経済成長を遂げました。ところが、それをよく思わない勢力が徐々に台頭、勤勉実直な民族性、クーデターの起ることが皆無に近い民族性につけ込まれ、土地は侵略、領空領海の侵犯を平気で行い、自らの『劣等感』をエネルギーに『逆恨み』した勢力に司法・立法・行政に迄干渉されるようになりました。多額の資金で国盟をも操り、我が国を含め世界に巣食う『白蟻』と決別する決意を致しました。我が国は、国盟を脱退します。新たに立ち上げる『国際共存機構』に参加される国は、ご連絡ください。なお、私が常々言っていた言葉を翻意して、この演説に切り替えた『きっかけ』の手紙を読ませて頂きます。」
そう言って、宗祇は少年の手紙を読んだ。
「消えようとする自らの命よりも母を思う少年の気持ちに、私は目が覚めました。我が国は、独立国。隣国の属国でも植民地でもない。」
そう言って、宗祇は、国旗を振りかざした。
それまで、彼が避けて来た筈の麦国の大統領は握手を求めて来た。
騒然とする中、総会は、幕を閉じた。
数十分後、控え室には、内臓を抜かれた宗祇が横たわっていた。
そして、ソレを見ていた、宗祇を演じていた男、俺は呟いた。
「まあ、そうなるわな。」
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。
俺は、少年の病室に跳んだ。
「手紙、読んだの?」「ああ、宗祇に読んで貰った。これからは変わるよ、世の中は。」
当然のことだが、宗祇を演じた俺は、偽の公文書を沢山書いた。
事務員の更迭命令とか。人事に口だし出来ないのは、単なる習慣だったから。
さ。次の世界に跳ぶぞ。
―完―