英雄に憧れるのは間違っているだろうか?   作:カステラ

10 / 15
第8話です、よろしくお願いします。


第8話

 

地を蹴り、急速に竜に接近する。

剣を爪とリーダーの様な人の間に滑りこませる。

 

ガキンッ!という音とともに、腕にすさまじい衝撃が伝わってくる。

やっぱり、

 

(魔力を噴射してなきゃ叩き潰されてたな)

 

受け止められたことに安堵し、後ろにいる男性に声を掛ける。

 

「大丈夫か?」

 

男はポカンとしていたが、はっとすると言葉を発する。

 

「き、君は?」

 

死の瀬戸際にいるのも忘れて、少年に声を掛ける。

君は何者だ?どうしてここに?などの疑問は口から出てこなかった。

 

「俺は─────」

 

「グオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「おっと」

 

苛立った竜が振るう爪を躱し、男を抱えて後衛の場所まで離脱する。

その時も魔力を噴射して一気に加速していた。

 

(ダメだな、やはりそう何度も使えるものじゃない。やりすぎればマインド・ダウンを起こす)

 

強力なものだが、所詮は自らの魔力で加速しているに過ぎない、まだ複雑な操作もできないし、これ以上使えば切り札たる魔法が使えない。

 

(さて、どうしようか)

 

あの竜を俺が抑えるのは確定だが───

 

(周りのモンスターが厄介だな)

 

ただでさえ竜そのものが強力だと言うのに、まわりのモンスターも集まっては手の施しようがない。

どうしようかと悩んでるいると。

 

「済まない、提案がある」

 

先程抱えて離脱した男が声を発する。

 

「周りのモンスターは私たちに任せてくれないか?」

 

その声に残っていた後衛の人々や生きている前衛の人たちが反感を示す。

 

「まさか隊長、この子にあの竜を任せると言うのですか!?身代わりにでもするつもりですか!!」

 

部隊の中の一人が声をあげる、そんな小さな子を戦わせるつもりかと。だが隊長と呼ばれた男はひるまずに言い返す。

 

「ならば、このまま全員死ぬか?」

 

「───ッ!」

 

その言葉に面食らったのか、その人は言葉を発さなくなる。

確かにその通りなのだ、自分たちではあの竜に敵わない。

それは先ほど思い知らされた。言われなくてもわかっている、自分達が生きるには、こうするしかないと。

 

しかし、彼自身の善性がそれを良しとせず板挟みに遭っているのだ。

 

「いいですよ」

 

「!!!」

 

少年が答える、了解したと。

 

「だ、だめだ!そんなことをしたら君は死んでしまう!?」

 

最善はこれだとわかっているのに、どうしても了承できない。

自分は分からずやなのだろう。

だが、安心させるように、彼は──

 

 

「大丈夫です、俺は─────」

 

少年は言葉を紡ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「絶対に死にません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────

 

 

竜は苛立っていた。

あの男を叩き潰し、溜飲を下げようとしたというのに。

邪魔をされた。

あの子供に。

 

だがそれ以上に困惑していた、今まで自分の攻撃を受け止めるのもなどいなかったからだ。

 

竜は常に頂点だった。

 

だからこそ、初めて自分に匹敵するかもしれないものを見て少量の恐怖を抱いた。

 

少年───アルスに言わせれば、それは井の中の蛙大海を知らずというものだと言うだろう。

 

なにせオラリオや学区には、第一級冒険者という化け物がいるのだから。

 

だがそんなこと竜は知る由もない。あるのは、初めての対等な戦いという未知の事柄のみ。

 

だからこそ、その竜は

 

 

 

 

 

ほんの少しでも恐怖したものに対して全力で殺すことを決めた。

 

────────────────────────────

 

 

作戦は決まった。

ならばあとは実行するのみ。

少年は駆け出す。

 

そして今、竜も動き出す。

 

「グオオオオオオオオオオ!!!」

 

咆哮(ハウル)を放ち、接近してくる少年を牽制しようとする。

しかし、少年は身をよじるだけで躱し、さらに接近する。

 

竜は周りの駒にも指示を出そうとし、咆哮しようとしたとき、

魔剣によって周囲のモンスターは焼き払われ、凍結される。

これで竜の周りはフリーになった。

 

竜はブレスを吐き、距離を取ろうとするがそれを少年が許さない。

手に持っていたもう一本の剣を投擲し、竜の目玉へ突き刺す。

竜は突然の痛みに悶える。

 

いくら外皮が硬くとも目玉までそうは行かない。

これが神の恩恵ならば別だろうと少年は考えているが、今は関係ない。

 

(狙うならやはり、柔らかく露出している部分である目だろう)

 

だがさっきので、目への攻撃はしづらくなった。

 

恐らく警戒しているだろう。防がれる確率が高い。

だがああしなければ、後衛にいる人達にも被害が出る。

 

(あるいは、ベル・クラネルがミノタウロスを倒したときのように体内から破裂させるか。いや─────)

 

俺の魔法ならば別の方法でできるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

少年はもう間近に迫っていた。

竜はそれ以上は許さんというように、尾をふるう。

 

尾を回避し、少年が飛び上がる。

空中から、魔法を打ち込む気だ。

 

竜は今防御に集中している、故に通る─────!!

 

少年は魔法名を唱える。

 

【カオ─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、竜の身体が転がった。

 

「がはっ───────!!」

 

転がった衝撃により、したから打ち上げた尾が少年に命中する。

 

少年は血を吐き舞い上がった。

 

 

 

 

─────────────────────────────

 

 

 

竜は勝利を確信した。

なんとも屈辱的だった。傷を負わされただけでなく、このような卑劣な手を使わされた。実に王者らしくない勝利だった。

 

だがこれで、竜の威厳は保たれる。

同格と思われたものももう死ぬだろう。

耐久はさほどでもない、人間は脆いのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜の失敗は、やはり慢心だった。

 

 

 

 

 

「───ッ!!!【カオス】!!」

 

 

 

 

瞬間、閃光とともに爆裂が起きる。

 

 

 

「グオオオオオオオオオオアアアアアア!!???」

 

なんだ、なにをした、あの人間は!?

 

とてつもない痛みが走る。

先ほどの魔剣とも投擲とも比べものにならない一撃が竜の顔面に直撃する。

 

竜の予測を裏切り、少年は生きていた。

 

尾と己の体の間に剣を滑り込ませ防御し、さらに魔力を噴射して勢いを殺していた。

 

そしてさらに、一点に魔力を集中させ魔法を放ち、威力を底上げしていた。

 

「よくもやってくれたなあ!!!」

 

少年は今も苦しみ悶える竜の頭に、先ほどの衝撃で折れてしまった剣を突き刺す。

 

「【カオス】」

 

竜の頭が膨張する。

 

「【カオス】─!」

 

さらに膨張しメキメキと音が鳴り始める。

竜も必死にもがくが、少年が唱えるほうが早い。

 

「【カオス】───!!」

 

遂に限界が来たのか、膨張した頭部から光が溢れ始め────

 

「【カオス】──────!!!」

 

破裂した。

 




読んでくださりありがとうございます。
この回でやっと主人公の戦闘シーンらしい戦闘シーンが描けました。うまく描けているかは分かりませんが、これからもよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。