英雄に憧れるのは間違っているだろうか? 作:カステラ
なぜアイズ・ヴァレンシュタインがあの村にいるのか。
それは少し前に遡る。
現在ギルド上層部では、例の強化種の問題が深刻化していた。
と言ってもなにか続けて被害が出ている訳ではなく、オラリオ付近で一体だけ目撃され、それも冒険者によって討伐されたため被害なく片付いた。
問題は、そんなことを
当然強化種など、地上の個体ということを加味しても恩恵がないものの手に負えるものではない。このまま放置すればオラリオの名声にもかかわる問題だ。(今の時点でだいぶ低下しているとは言ってはいけない)
そこでギルド長ロイマンが、ロキ・ファミリアに
あとついでに、前途ある冒険者になるかもしれない人材を確保してこいと指示も添えて。
「まったく、突然こんな依頼を押し付けてくるなど困ったものだ」
「うーん、まぁそうだけど、これはいつかやらなければならないことだったと思うよ」
「わかっている、フィン」
所変わってロキ・ファミリア。
彼らは
万が一強化種にあたっても、地上の個体ならば問題ない範囲の人員だ。
ちなみに、あのインファント・ドラゴンはかなりの量の魔石、それもダンジョン産を食らっていたのであれほど強くなっていた。
「インファント・ドラゴンであのレベルだからね、元中層個体、例えばミノタウロスなんかはかなりのものになるんじゃないかな」
「同じ量の魔石を喰えばの話だろう。地上の個体は元がかなり劣化している、インファント・ドラゴンレベルになるにはかなりの魔石を喰らわねばならん」
「わかっているよ、リヴェリア」
そんな話をしながらも、書類仕事を進めていくリヴェリアとフィン。かなりの手際で進んでいくため、あともう少しというところまで来ていた。
と、その時
扉が開け放たれる。
フィンとリヴェリアが少し驚く。
入ってきたのは、
「リヴェリア、私も調査隊?につれてって」
アイズ・ヴァレンシュタインだった。
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「……リヴェリアも、ついてきてよかったの?」
「馬鹿者、お前一人で行かせられるか」
馬車の中でそんな話をする。
アイズが行きたいと言ったとき、リヴェリアはすぐさま反対しようとしていた。
しかし、アイズが「お願い」と言い、とても真剣な目をしていたので迷ってしまった。
そうこうしている間に、フィンが言う。
「なぜそんなことを言うんだい?」と。
アイズは答える。
「インファント・ドラゴンを倒した人のつよさを知りたいから」と。
リヴェリアはやはりな、と思った。
初めてこの話を聞いたときから、興味を持つだろうとも思っていた。
恩恵なしでインファント・ドラゴンを討伐するのはそれだけの偉業だ。恩恵を持っていたならランクアップしているほどの。
そして、リヴェリアは思い至る。
初めてアイズが、強くなること、ダンジョンの外に興味を持った。
いや、正確に言えばこれもまた強くなるためにその少年の秘訣を探ろうとしているのだろうが、これまで向けてこなかった場所に、アイズが目を向けた。
これはもしや、いい兆候になるのではと、リヴェリアは思った。
だからこそ、試してみようと思った。
アイズが戦い以外に目を向けるようになるのではないかと。
「どんな人なんだろうね」
「……そうだな」
恩恵なしでインファント・ドラゴンを討伐した少年。
リヴェリアも興味がないと言えば嘘になる。
そう話していたところで、馬車の先頭にいる団員が声を掛ける。
「リヴェリア副団長、もうすぐ到着します」
「わかった、準備しておこう」
────────────────
そんなこんなで、アイズ・ヴァレンシュタインはここにいるのだが、主人公は知る由もない。
(なっなんで、ここにこの人が!?)
盛大に困惑し、内心は荒れ狂っていた。
なんでメインヒロインがここにいるんだとか、この時期はダンジョンに夢中のはずだろとか、考えても意味のないことが浮かんでくる。
(いやいやいやいや、おかしいだろ!?ナンデ!?アイズ・ヴァレンシュタイン=サンなんで!!?)
自分に興味を持ったからだとは露ほどにも思っていないアルスは、混乱しまくりであった。
その時、アイズが口を開く。
「……あなたが、インファント・ドラゴンをやっつけた人?」
「えっ!?あっ、は、はい、そうです」
混乱しているため、正直に答えてしまった。
「そっか……じゃあ─────」
「戦お?」
「へっ?」
そう言葉を発すると、アイズは剣を投げ捨て鞘を持ち、こちらへ駆け出した。
(えっ、はっ、はあああああ〜〜〜!?!?!?)
咄嗟に木剣を構え、振るわれる鞘を受け止める。
そのままの勢いで体を回転させ、木剣で相手の鞘を抑え外側に持っていく。つまり力を流そうとする。
しかし、そこでアイズは飛び退きもう一度接近して連撃を繰り出す。
必死に受け続ける、だが────
(やっぱり力が違いすぎる!!!)
恩恵を授かったものと、授かっていないものの差。
それを突きつけられる。
そもそもの身体能力が大違いである。
(使うか?魔力を噴射すれば、一時的にだけど追いつける。いや、でも─────)
意味のない暴力を振るうのは────そう考えてしまう。
格上との戦闘時にそんなことを考えている暇はないと言うのに。
一方、アイズも少し困惑していた。
(こうげきしてこない?なんでだろう)
あなたが急に襲って来たからです、とは。この場にいるもので言うものはいない。
連撃をやめ、また飛び退いて、次は突きの体勢を取る。
それをみたアルスは、また受けるか、迎撃するかを迫られる。
(なにか、戦いを終わらす方法はないか!?なにか─────)
その時、アルスははっとする。
そうだ、この方法なら。でも誤って怪我をさせたら────
そんな考えが逡巡する。しかし相手は待ってくれない。
「いくよ」
(ああもう!考えてる暇はないか!!!)
その声と共に、アイズが突貫する。
鞘が突き出され、アルスの身体に直撃する。
その前に、下方向から木剣を振り抜き、アイズの手から鞘を吹き飛ばした。
「えっ………」
アイズは呆然とする、当たり前だ。
いきなり鞘が弾き飛ばされたのだから。
(なにが────?)
アイズが思考しようとする、その前に
アルスは木剣をアイズの首に突きつけた。
「俺の勝ち、だな」
どうでしたか?うまく描けていると嬉しいです。