英雄に憧れるのは間違っているだろうか? 作:カステラ
指一本動かせない、まどろみのなかにいた。
それはとても心地よくて、このまま落ちて行ってしまいそうになる。
ここが自分のいるべき場所、還るべき故郷。
そんな言葉が浮かんでは消えてゆく。本当にこのまま落ちて行くのだろうか、そして自分という存在が解けて消えるのだろうか。
声が聞こえた
───本当にいいの?
なにが?
───諦めていいの?
なにを?
───あの光を
ーーーー
───君はそのために来たんでしょ?
……ああ、そうだ、俺はそのために来たんだ──!
───じゃあ
───始めようか
───君にとって魔法って?
英雄
───言葉にすれば簡単だね、じゃあどんな英雄になりたいの?
あの憧れと同じ英雄に
───ふーん、そうなんだ、それってとっても険しい道だと思うけど
そんなこと承知の上だ。
険しいだろう、苦しいだろう、苦痛にあえぎ、逃げ出したくなることもあるだろう。
それでも俺は、俺は、進むときめた──!
だからよこせ、■■■──!!!
───いいよ、合格だ。渡してあげる。
───それと一つアドバイス、君はいつか
───自分の本当の望みを知るよ───
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朝、いつもと同じように小鳥の囀りとカーテンの隙間からの日差しで目が覚める。
「……なんか、変な夢見たような」
彼はそうつぶやき、ベッドから降りる。
いつも通りに支度をし、いつもどうりに木剣を持ち、いつもどうりに鍛錬に出かける。
出かけてからも、先程の夢が気になっていた。
(ただの夢と言ってしまえばそれまでだが、なにかある気がする)
(まあ、今はいい、それより日課の鍛錬が終わったら試したいことがある)
「……そういえば、あいつ今日も来るのかな」
修練場につき、いつもの日課を終えたあと
「はぁ、はぁ、うっぷ、……よし、試してみよう魔法、使える気はしないけど」
試してみたいことと言ったのはこれである。
魔法、本来なら神の恩恵を刻んだものか、エルフにしか使えないもの。
それを彼は試そうと言ったのである。
「魔法の基本的なことは学んだし、使えたらいいなぁ」
などとアホみたいなことを言っているが、彼自身さほど期待していない。恩恵を授からなければ魔法は使えないと転生者ゆえの知識で知っているからだ。
「えっと確か、詠唱してから魔法名をとなえるんだっけ?」
「……詠唱ってどうしよ、……ええいままよ!詠唱省略!!」
「カオス」
その瞬間、閃光が弾けた。
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「まじか……」
彼が詠唱した次の瞬間、閃光が弾け辺りをえぐり取っていった
だがしかし、閃光の割にはそこまで高威力でもなく、せいぜい幹の下部分を削り取る程度。つまり見かけ倒しである。
「───ッ!!」
次に襲ってきたのは強烈な目眩。そして眠気。
この現象を、彼は知っている。
魔法を使いすぎると起こる、魔力切れである。
(ここまで強烈だとは───ッ!正直舐めてたッ!)
襲ってくる眠気と目眩に耐えながら彼は思考する、そしてある答えを導き出す。
(あれ、これ精神疲弊を耐えれば、何発でもうてんじゃね?)
やっぱり馬鹿であった。
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それは捕食者だった。
絶対的な強者であり、歯向かうことを許さぬもの。
叩き潰し、轢き潰す。
その強者は飽きていた、この周辺で自分に歯向かうものはもういない。
それがすべて叩き潰したからだ。
───故に、新たな獲物を求めた。
───故に、戦いを求めた。
───そして、その場所を選んだのは偶然だった。
読んでくださりありがとうございます。主人公が突然魔法を使えるようになりましたが、これにはあの本と声の主のようなものが関わっています、今後明かされるかもなので楽しみにしててくださいね。
次回はバトル回にしたいなぁ。