英雄に憧れるのは間違っているだろうか? 作:カステラ
ニーベルンゲン商会とは、複数の噂がある商会である。
「古の時代のアーティファクトを持っている」「歴代会長は全員女性」などなどの噂がある。
まあもちろん我らが主人公アルスは知らない。
閑話休題まあ、それはともかく
この商会は北方の発祥であり、かの竜の谷の付近の出自のものが(付近と言ってもそこまで近くはない)初代会長を務めたという。
そして、特に一番不気味な噂は初代会長の霊が歴代会長に取り憑いているという噂。
そして、
竜に並々ならぬ憎悪を抱いているという噂。
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昼、先程精神疲弊マインド・ダウンを起こした少年、アルス。彼は現在自室のベッドの上で寝そべっていた。
「……なんか魔法使えちゃった」
なんともまあ情けない声色だった。
あのあとマインド・ダウンを起こしながらもいつもの修行を気合いで2セットやり通し、家に帰って顔色がすこぶる悪かったため今日は寝てなさいと両親に言われたのである。
「しかし、なんで使えたんだ?俺は神の恩恵ももってないしなぁ」
「それこそ寝てただけで魔法が使えるようになるものなんて……はッ!」
それを思いついた瞬間、彼は先程までマインド・ダウンで苦しんでいたとは思えない速度で起き上がり、まだ返していない物知りおじいさんから借りてきた本を取り出す。
「あれ?文字が消えてない?じゃあ魔導書グリモアではない?」
魔導書グリモア、神の恩恵を授かったものが読めば、強制的に魔法が発現するまさに夢のような本。
しかしその値段はとてつもなくとても一般農民に払えるものではない。
「なんか安堵したような、がっかりしたような…グリモアだったら説明つくかもしれないけど賠償に何ヴァリス掛かるんだって話だよな」
まあ賠償を要求するならそもそも渡していない方が自然かもだが。
「でもやっぱりおかしいよな、そもそも俺神の恩恵持ってないし」
謎は謎のまま、残ってしまった。
「でもいっか!せっかく魔法が使えるんだし、使わなきゃ損だよな!」
彼はいい意味で無鉄砲であった。
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私は昔から自分の役目に疑問を持っていた。
なぜ自分なのか?なぜ自分がやらねばならぬのか?
そんなことばかり考えていた。
そんなことを考えてはいけないことは分かっていた。
自分の役目に疑問を持つのは悪いことだと。
しかし、
「ああああああアァァァァァァァァァァ!!」
母が憎悪に狂うその姿をみてから、どうしても考えてしまう。
私はどうなるの?どうなってしまうの?
どうしてお母様があんな目にあわなければならないの?
どうして私たちなの?
そんなことを考えても、私は私の役目から逃げる方法を知らなかった。
彼に会うまでは。
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微睡みの中から目覚める。
なんだか懐かしい夢を見ていた気がする。
とても悲しくて、最後には温かい夢だったはず。
そう耽っていた時だった、
ゴンゴンゴンと扉が乱暴に叩かれる。
「お嬢様!!」
新しい拠点への移動に連れてきていたメイドが扉を乱雑に開け放つ。
「どうしました?随分と慌てているようですが「竜の襲来です!!」」
「───────」
一瞬で頭が真っ白になる。
竜?あの竜が?ここに?この村にくる?
次に出てきたのは恐ろしいまでの憎悪だった。
(あの人を奪った竜がくるッ!必ず、必ずこの手で───ッ!
なに、今のは?!今のは私?それともわたし?ああ、わたしは私は竜ヲ───)
唐突な■■ー■■■■
その自我の本流に飲まれそうになっていたその時。
『俺結構ここにいるからさ、またなんかあったら来なよ』
「ぁ─────」
彼の言葉を思い出した。彼は何気なく言った一言だったのかもしれない、けれど私にとっては紛れもない救いの言葉だった。彼は無自覚かもしれないけど、逃げ道を作ってくれた。
辛いことばかりじゃないって思わせてくれた。
「……………」
「大丈夫ですか!?お嬢様!」
落ち着いたからなのか、周りの声が耳に入ってくる。
「………ロー」
「はっ!」
いつの間にか、来ていた騎士に呼び掛ける。
少女は覚悟を決めたのか、とても強い決意をもって言葉を発する。
「この私、マリヤ・ニーベルンゲンが命じます」
「あの竜に民を殺させてはなりません」
「はっ!この命に変えても、守り抜いて見せます」
少女が号令をかけ終えたとき、少女の指にはまる指輪が鈍く光ったような気がした。
どうでしたか?次回こそは戦闘シーンに行きたいですね。