英雄に憧れるのは間違っているだろうか?   作:カステラ

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6話目です、今回こそは戦闘シーンに行きたいなぁ。


第6話

 

竜がくる。その情報はすぐに村全体に行き渡った。

 

驚愕するもの、絶望するもの、パニックに陥るもの、さまざまな者たちがいた。共通しているのは、誰もが終わりだと思ったこと。「竜に勝てるわけがない」「神の恩恵をもらっていない自分たちでは勝てない」「もうすぐ死ぬ」などと悲観的な思考が村全体に広がっていた。

 

「アルス?!起きなさい!!」

 

その村の一軒家、何の変哲もない農家の家。そこに、焦燥と恐怖が入り交じった声が響く。

 

「うーん…どうしたんだ母さん?」

 

「モンスターの襲撃よ!!」

 

瞬間、少年の表情は驚愕に染まる。さまざまな思考が駆け巡り、そして恐怖に支配され────

 

 

 

 

 

「母さん、なにが来るかわかる?種類は?推定Lvは?村の避難はもう開始してる?」

 

 

 

 

なかった

 

 

「えっ」

 

母親がポカンとした表情をする。

 

「村の避難が始まってないなら避難誘導をしないと、それからあの行商人たちにも知らせて────」

 

「ちょ、ちょっとまって!?」

 

アルスの母親の声が響く、先ほどとは違い驚愕を大いに含んだ声だった。

 

「えっ、なんでそんな冷静なの?怖くないの?最初から知ってたの?あらやだそんなキリッ!とした顔できるようになってお母さん嬉しい─じゃなくて、えっ、ほんとにどうしちゃったの?」

 

困惑が収まりきらないようで、矢継ぎ早に質問を投げかけて来る、なにか一つ変なものが混じっていたようだが、まあそこは御愛嬌ということで。

 

「……俺だって怖いよ、竜なんて最低でもLv2に近いんだから、怖いに決まってる」

 

「……じゃあどうして?」

 

アルスの母は不思議そうに問いかけてくる。

この状況で焦りもせず、淡々と状況説明を求めてきたにしては恐怖しているという。

じゃあどうして恐怖に飲まれずに動けるのかといえば、

 

「俺の憧れたやつならそうする」

 

「─────!!」

 

ただそれだけである。

 

 

 

 

 

「あと俺モンスターと戦ったことあるし」

 

「え"っ」

 

「じゃあ、俺外の様子を偵察しに行ってくるから」

 

「ちょっとまって!?待ちなさい!アルスー!?」

 

────────────────────────

 

村の離れ、そこにある一団がいた。騎士のような鎧を身にまとい、統率の取れた軍隊のような動きをしている。

 

まあ、それでも神の恩恵を持つものには及ばないのだが。

 

 

 

「全員、集まったな」

 

今話しかけた男、恰幅の良い鎧を身にまとい筋肉質な体をした騎士ぜんとしたものだった。

 

「これより我々は竜を迎え撃つ……と言いたいところだが、相手は我々が敵うようなものではない」

 

その言葉を聞き、集団全員の顔が強張る。

当たり前だ、それほどまでの相手と言うならば、自分たちが生きて帰れる確率は低いだろう。

 

しかしそれでも、その男──ローは言う。

 

「これは、次期会長からの命令である」

 

そう言うと、またしても集団の顔つきが変わる。

先ほどまでの怯えた表情から、一気に覚悟を決めたような顔つきへと、変貌する。

 

「今こそ、会長たちに救ってもらったご恩を返す時だ!!」

 

「我々は必ず、この村の民を守り抜いて見せる!!」

 

「総員、心せよ!!」

 

「「「「「「「「はッ!」」」」」」」」

 

もはや彼らの表情には、恐怖はなかった。

 

 

「…………来たか」

 

ローがそう口に出す、かの竜が確認されたのは2時間前、そろそろだろうか。

 

お嬢様は村の者たちに預けた。少数の護衛を残してあるし。我らの商会、その本隊まで届けてくれると村の衛兵たちも約束してくれた。

 

この村の者たちはひとが良く、信頼できる。

それを短い間でも感じ取っていたから、任せられる。

 

ならばもう、思い残すことはない。

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

絶望がやってくる。

 

─────────────

 

その巨体は紅かった、見上げるような巨躯を誇るその身体は、人が抗うようなものではないと思わせるほどのもの。

あれが移動するだけで、草木は倒れ、倒壊するだろう。

それほどまでにそれは脅威だった。

 

かつて人類を破滅の一歩手前に追いやった怪物種、その中でも一際脅威と成りうるとされていた、龍種。

 

その名は、

 

 

 

 

 

 

 

インファント・ドラゴン

 

 

 

 

 

 

「前衛、掛かれぇぇぇぇぇ!!!」

 

だが、抗おうとする者たちがいた。その竜に比べれば矮小に過ぎず、まさに無謀とも言える行為。

だが号令をかけられた者たちはひるまずに突撃する。

 

盾を、剣を持ち、訓練された動きで突貫する。

 

 

なにを馬鹿なことをと、その竜は嘲笑う。

 

この身体に、その程度の剣が立つわけがない。

この破爪が、その程度の盾で受け止められるわけがない。

 

事実、竜の考えは正しかった。

竜が爪を振るう、前衛の2人が紙くずのように吹き飛ぶ。

死んではいないだろうが、もはや戦闘はできない、致命傷だ。

 

さらに竜は尾を振るう、ギリギリで範囲から逃れたもの以外、グシャリという音がして潰れる。今度は確実に死亡した。

 

なんだ、こんなものか。

未だ先ほど突貫してきた人間は残っているものの、相手にはならないだろう。そう思った矢先、

 

「うおおおおおおおおお!!」

 

一人の統率者らしき人間が、突撃してくる。

この集団の中では一番の手練れだろう。

 

そう思った竜は少し遊んでみることにした。

 

竜の顎の中に、火炎が収束する。

 

放たれれば神の恩恵を受けたものだろうと焼き尽くすものがいま、ただの人間に向かって放たれようとしていた。

 

その炎は、必滅の火としては放たれて───

 

 

 

 

 

 

「今だッ!」

 

 

 

 

 

瞬間、雷撃や火炎、吹雪などが竜の身体に直撃する。

 

「────────ッッ!」

 

身体がぐらつく、なんだ、なにを食らった?

 

そう竜は思考する。

 

だが、考えるのを許さないように、またも連続で魔法が放たれる。

 

彼らは最初からこれが目的だった。

 

前衛が引きつけ、竜が釘付けになり、隙をさらすその時まで、待っていたのだ。

 

ローは最初から、自分たちのみで勝てるとは思っていないし、自分たちの力では時間稼ぎすら難しいと思っていた。

 

だが、魔剣ならば話は別だ。

 

 

 

 

 

魔剣、それは魔法を持たないものでも魔法を放てるもの。それだけ聞けばかなりの反則だが、「魔剣は壊れる」という法則により使い続けることはできない。

 

だからこそ、冒険者たちはそれを必殺として用いるのだ。

 

 

だが、今ここに至っては、こここそが必殺を用いる場面だろうと、ローは踏んだ。

 

 

 

竜の巨体がぐらつく、確実に効いている!

 

「ありったけを討ち続けろ!やつが倒れるその時まで!!」

 

いける──!このままならば勝てる───!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グオオオオオオオオオオオオォォォォ!!」

 

 

 

 

その咆哮が轟いた瞬間、彼ら全員が脱力した。

 

 

 

「ゔっ─────ッ!」

 

 

 

ローは思い切り膝をついてしまった。

 

 

 

(なんだ、なにが起きた───!?)

 

状況が把握できず、混乱してしまう。

それもそのはず、ローはダンジョンに潜っているものではない。

故にそれを知らない、モンスターのなかには、Lvが低いものを強制停止されるもの、咆哮(ハウル)を使うものがいると。

 

そしてインファント・ドラゴンには、もう一つ能力がある。

 

それは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「グオオオオオオオオオオ!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

周囲のモンスターを、呼び寄せるものである。

 

 

 

 

 

 

「総員!!陣形を乱すな!!迎え撃て!!」

 

号令を掛ける。

しかし、誰も動かない、否、動けないのだ。

 

恐怖によるものもあるだろうが、ハウルの効果がまだ残っておりうまく体を動かせない。

 

唯一かろうじて動けるローは、決断を余儀なくされる。

 

もう部隊は戦えない。ならばどうする?足止めをしなければ村人が避難した場所に追いつかれる。

 

どうすれば────

 

絶望的な状況が、ローから正常な思考を奪っていく。

そうこうしている間に、竜は体勢を立て直していた。

 

竜は激怒した。不遜にも自分を嵌めようとした矮小なる存在に。

叩き潰してやる、轢き潰してやる、その様な感情を胸に抱えその爪を振り下ろす。

 

 

爪が振り下ろされる刹那、ローは走馬灯とでも言うような光景を見ていた。

 

幼き日、両親が魔物に殺され、途方に暮れていたあのとき。

 

『大丈夫?』

 

今よりも随分と幼き日の主に、お嬢様に出会った。

 

私はお嬢様に救われた。

 

だから恩を返したかった、守りたかった。

 

だから、

 

(すみません、お嬢様……)

 

ローはその爪が自分を引き裂くことを受け入れて────

 

 

 

 

 

 

直後、轟音が鳴り響く。

 

 

 

 

 

それはまるで何かが衝突したような音だった。

 

ローは恐る恐る目を開ける、

 

 

 

 

一体何が─────?

 

 

 

 

そして、ある一人の少年が竜の破爪を、受け止めていた。

 

 

 

「大丈夫か?」

 

 

 

安心させるような声色で、その少年は背中越しに語りかけて来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたか?面白く書けて居たら幸いです。
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