転生したハイエルフが奮闘するのは間違っているだろうか   作:野生の鹿

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兄弟決裂

 ペイルに押し倒された状態で彼の願望を聞いたフロディは、ペイルの顔を殴ると同時に、素早く頭上に身体をスライドして距離を離す。

 

 殴られたペイルは、不意打ち気味にやられたこともあってか防御も遅れて姿勢を崩してしまうが、眼前で構えているフロディに目を向ける。

 

「おいおい、清剛ちゃん………、拒絶してもとか言ったけど、こういう手荒な真似は不本意なんだよ?」

「それは俺のセリフだ、巧斗………。いや、ペイル!」

 

 どこか距離を感じさせる声色で改めて偽名を呼んだフロディに、ペイルは怪訝な表情をする。

 

「心のどこかで、お前と手を組めたらなって思いはしたが………、こんなことをするお前とは、到底手を組むことはできない………!」

「はぁ、そんなに彼らを実験台にしたことが気に食わないわけ?」

 

 ペイルは、眼鏡を右手でかけ直しながら、面倒くさいと言わんばかりの表情で眉毛を小指でかく。

 

「そもそも、彼らは現世で死んでも、その魂はとっくにあの世に行ってるじゃないか………。文字通り魂の抜けた彼らの遺体には、彼らの意思というものはなくなってるから、僕が何をしても当人にとってはあんま気にしていないんじゃないの?」

「彼らの尊厳を踏みにじってでもか!?」

「尊厳?それは生者の勝手な理屈でしょ?それに、おんなじ箱庭に住んでたこの子たちはともかく、この世界に住んでる連中は無関係じゃないかぁ?どうして彼らまで気にかけるの?」

 

 心の底から、疑問を呈しているペイルに、フロディは怒り心頭であった。

 

「お前のその理屈も勝手なものだろ!それに、人が死んで魂が抜けても、その人の生きた証である死体に何をしてもいいという理由にはならない!」

 

 フロディの反論に、ペイルはため息を吐いて天を仰ぐ。

 

「こういう手段をとってる僕に、どうしても賛同できないってことかい?」

「あぁ……!!」

「じゃあ、仕方ないか………」

 

 ペイルはそう言うと、左の手首にはめているブレスレットに手をかざして魔力を注入すると、そのブレスレットから魔道具(マジックアイテム)が出現する。フロディを気絶させるのに使われた、銃によく似たものだ。

 

「もう一度、寝ててもらうよ」

 

 魔道具をフロディに向けているペイルは、容赦なく発射していく。

 

バンッ! バンッ!

 

 銃声を響かせて猛攻を仕掛けていくペイルに対し、フロディは姿勢を低くしたり、その部屋にある机を盾にして避けていく。

 

「はぁ………。一度見られたからそう簡単にいかないか………。」

 

 面倒とでも言いたげに息を吐くペイルは、弾を装填してさらに撃つがフロディに対応される。

 

 不意打ちともいえる大使館の襲撃の時とは違って、真正面から戦うことになっている今の状況では、ペイルに不利であった。

 【闇派閥】におけるペイルの役割は、武器の製造を始めとした裏方作業全般であるため、表に出ての正々堂々とした戦いをする場合だと、どうしてもフロディに分があった。

 

「うぉりゃぁ!!」

 

 銃弾を避けながら接近したフロディは、ペイルを拳で殴りつける。

 

「ぐっ……!」

 

 魔道具(マジックアイテム)で防いだペイルは殴られた衝撃を利用して距離を取ると、後ろに控えていた主神であるタナトスに目を向ける。

 

「苦戦しちゃってるね、たっくん」

「そう言うのならさっさと神威を解放してよ」

 

 どこか余裕があるのか、軽口をたたきあっているペイルとタナトスであるが、事態は急変する。

 

「【吹雪け三度の厳冬――我が名はアールヴ】」

「「ん?」」

 

 突如感じた魔力に、フロディとペイルは訝し気になって同時に目を向けるが、その視線の先から冷気がやってくる。

 

「【ウィン・フィンブルヴェトル】!」

 

 ペイルに向かって氷の魔法が放たれると、ペイルは咄嗟にブレスレット型の魔道具(マジックアイテム)を起動して防御する。

 

 第三者からの攻撃にフロディは、かすかに聞こえた詠唱文から正体を察した。

 

「もしかして、リヴェリアさんか?」

「フロディ!無事か!?」

 

 部下を引き連れたリヴェリアがその部屋に入ると、彼女たちは部屋中に広がっている凄惨な光景を見て顔をしかめる。中には顔を青ざめたり、吐きそうな表情をする者もいる。

 

「これは一体……?」

「もしや、彼らと同じように、フロディ様を………!?」

 

 どこか勘違いしている者もいるが、目の前に広がる光景に怒りや不快感、戸惑いといった感情を漏らしていくが、すぐに、近くにいるペイルとタナトスに目を向ける。

 

「お前は………!?」

「えぇ、【九魔姫(ナインヘル)】がやってくるとは……。どうする?」

「まあ、僕の存在がバレるのは時間の問題だから、大したことはない。けど、さっさと逃げた方がいいね」

 

 あくまでも冷静さを失っていないペイルに、昔から彼の性質を理解しているフロディは彼から目を背けずに警戒する。

 

「貴様がフロディ様を……!!この手で、必ず……!!」

 

 そう言ってペイルに襲い掛かるのは、リヴェリアが連れてきた部下であるエルフの青年だ。彼に続いて複数の冒険者がペイルに攻撃を仕掛けようとするが、ペイルは容易にいなしていく。

 

「さて、()()()()ちゃん。またいつか会おうよ。その時は、一緒にお茶でもしばこうか」

 

 フロディにそう言い切ったペイルは、余裕の表情を浮かべて手を振った。

 

 それが癪に障ったのか、エルフの男性は手に持っている剣でペイルに突きを見舞い、彼の持っていた魔道具(マジックアイテム)を奪い取る。

 

「これで、貴様は無防備だ!」

「待て!!」

 

 それを見たフロディは、奪い取ったエルフに向かって叫ぶ。ペイルの浮かべた表情についても、ようやく理解できた。

 

「それを今すぐ捨てるんだ!!」

「えっ?」

 

 理解が追い付いていないのか、エルフの男は戸惑いの言葉を漏らすが、それが彼の遺言となった。

 

ドォォン!!

 

 彼の持っていた魔道具(マジックアイテム)が轟音と共に爆発し、エルフの青年はもちろん、周囲にいた仲間にも爆発が及ぶ。

 

 所持していたエルフの男性を中心に小規模な爆発が起き、リヴェリアを含むフロディの救出部隊は呆気にとられる。

 

「ペイル………!!」

 

 ふと、ペイルとタナトスのいた場所に目を向けるが、幽霊の如く消え去っており、爆発の混乱に乗じて退散したことが推測できた。

 

 こうして、フロディの救出はできたが、向こうには大した損害を与えることはできなかったことを後で理解することになるリヴェリアたちは、悔しさに顔を歪ませた。

 

 

*     *     *

 

 

 オラリオの地下空間

 

闇派閥(イヴィルス)】が根城としているその場に戻ってきたペイルとタナトスは、疲れを癒すかのようにくつろいでいたが、その場に不機嫌といった表情でやってきたのはヴァレッタであった。

 

「おい、ペイル。拠点を一つ潰されたってのはどういうことなんだ?」

「報告を聞いたなら、そのまんまの意味だよ。あそこに【九魔姫(ナインヘル)】がやってきて結局バレちゃった。」

「それだけなら、まあ、むかつきはするが納得してやる………。なんで、あの王子も奪還されてんだよぉ!」

 

 ヴァレッタの脳内では、ハイエルフの王子であるフロディを人質にして、自分たちの都合の良いように立ち回ることを計画していた。相手方の動きを封じ込めるのもよし、王国の資源を好き放題引き出させるのもよし、といった感じだ。

 ヴァレッタはペイルのことを有能なやつだと評価しているが、それ故今回の失態は、ペイルらしくないと勘づいて、何か裏があると見抜いている。もっとも、タナトスとは違って彼女はペイル(巧斗)の経歴を知らないので、真相にたどり着くことは難しいが。

 

「まあまあ。僕の存在もバレたし、ここは過去の失態の追求ではない、建設的な話をしようじゃないか」

「反省してんのか、ペイル!?」

 

 どこか飄々とした雰囲気で話すペイルに、ヴァレッタの堪忍袋の緒が切れる事態になりそうだが、タナトスが宥めるように割って入る。

 

 こうして、ペイルは本拠地に戻ってからも余裕ともいえる雰囲気を出して優雅に過ごす。

 

 いつの日か、フロディ(清剛)と二人並び立つことを夢見て………。

 

 

*     *     *

 

 

「つまり、あのペイルという男が【闇派閥(イヴィルス)】における重要人物であると?」

「えぇ。しかも彼の言う『破滅の炎を持つ者(エム・シュニル)』は、数多くの犠牲を引き換えに生み出されてきました。すでに3桁はいくであろう犠牲者を、ペイル一人で出していると思われます」

「なるほど………。何とも、気分の悪くなる話だな………」

 

 【闇派閥(イヴィルス)】の拠点から救出されてから1日経過した。

 

 その間、摘発された拠点は【ガネーシャ・ファミリア】とギルドによって隈なく捜索され、件の実験室に数多く存在した遺体についても調べられていった。

 身元が分かるものは全体的に少ないため、多くはオラリオの墓地へと埋葬されることとなった。その中には、フロディ(清剛)の家族であった子供たちも含まれている。異世界の住人でしたなどと、簡単に口にすることはできない状況では、どうしても正体不明の人間とされるからだ。それでも、丁重に遺体を埋めてくれたことに、フロディは内心感謝していた。

 

 ギルドおよび【ガネーシャ・ファミリア】に聴収されて、彼らの保護の元から解放されてから、ネメシスの元へと向かおうとしたところに、リヴェリア・リヨス・アールヴに呼び止められたのだ。そして、彼女の案内のもと、【ロキ・ファミリア】の本拠地、『黄昏の館』へとやってきて、ロキ、フィン、リヴェリア、ガレスの首脳陣と対面している。

 

「それにしても、よく無事でいてくれたな、フロディ。あのペイルとかいう男、少なくともLv.3はあった上、未知の魔道具を使っていたが………」

「それに関しては、誘拐したのがあいつで、その時にも同じものを使っていたから対応できたというだけです。言ってみれば、運に恵まれていただけです」

 

 そう謙遜するフロディは、出された紅茶を一度口に含み、疑問に思ったことを相手方に投げる。

 

「それにしても、なぜあそこが分かったのですか?」

「あぁ、それは………」

「ギルド職員のグレイスを詰めたからです、フロディ」

 

 突然、扉の方から声が聞こえて、全員が目を向けると、ネメシスが入室してきた。

 

「ネメシス?ここにいたの?」

「いえ。ニヨルドやブランズと一緒にギルドにいたのですが、あなたがリヴェリア殿に連れていかれたと聞いたので、ここに。」

「ネメシスやないか。例の、グレイスってやつは今どうなってるんや?」

 

 ロキがネメシスに質問すると、彼女の表情は暗いものへと変化した。

 

「グレイスですが、洗いざらい情報を吐いた後はギルドの管轄する牢屋へと入れられましたが、つい先ほど、殺された状態で発見されました。おそらく【闇派閥(イヴィルス)】の報復でしょう………」

 

 その言葉を聞いた面々は驚き、どこか気分が悪くなるのをうかがわせる表情へと変わる。

 

「これについては、【ガネーシャ・ファミリア】と話し合って、すぐにでも対策を立てていこう。悠長に構えていたら、すぐにまた多くの犠牲が出てしまうのかも知れない」

「そうじゃなぁ。わしらの知らんところで、こんなことが行われていたとは……。向こうが強くなるのも納得できるわい」

 

 フィンとガレスの言葉に、危機感を増していくフロディであるが、その後、フィンの口が開いていく。

 

「とにかく、【闇派閥(イヴィルス)】の実害が及んでしまった以上、しばらくの間は、【ロキ・ファミリア(うち)】にいさせてもらおうか」

 

 話題を切り替えるかのように、フィンがフロディの保護を提案すると、フロディは驚きの表情を浮かべる。一度断った話をまた提案されるとは思いもしなかったからだ。

 

「それは一度断ったはずじゃ………。それに、保護するといっても、他派閥な上、団員の中にも迷惑というか、不満に思う人が大勢いるのでは………。」

 

 遠回しに断ろうとしたフロディであるが、それにはリヴェリアはもちろんのこと、ネメシスでさえフロディの意見に反対した。

 

「一度誘拐されてしまった以上、ニヨルドを始めとした王国の人間やエルフたちのためにも、大人しくしていた方が良いと思いますよ。第一、あなたは無茶をする性分ですから、断るにしても他者に心配させることがないようにしてからです。」

「女神ネメシスと同じ意見だ、フロディ。団員の方には、私の方から説明しておく。」

 

 そう言って懇願するリヴェリアに、フロディは何も言えなかった。

 

 もちろん、派閥が違う上に外交大使としての立場もあるので、あくまでも一時的であることは理解している。ここは、彼らの提案に乗っかることにしたフロディは肯定の意を示す。

 

「承知いたしました。しばらくの間ですが、お世話になります、【ロキ・ファミリア】の皆様方………。」

 

 そう言ったフロディに、【ロキ・ファミリア】の首脳陣はさっそくこれからについて話し合っていくことにした。

 

 だが、フロディの脳内では、【闇派閥(イヴィルス)】に加担するようになってしまった、兄弟分であるペイル(巧斗)について、怒りや悲しみといった複雑な感情が渦巻いていた。

 

 

*     *     *

 

 

 夢を見ている。

 

 そう認識したペイルは、次々に浮かび上がってきた光景をみて、自分自身の記憶を見せつけられていく。

 

『どうしてなんだっ!?どうして……!私が………!?』

 

 ペイル―――桐原巧斗の父親は、最終的に病気で死んでしまったが、その前に警察に逮捕されていた。だが、その光景を見た巧斗は、父親が無実であることを分かっていたが、明確な証拠もなく、ただ犯罪者というレッテルを貼られたまま連れていかれる後ろ姿を見るしかなかった。

 

『こいつの父親、人を殺したんだってぇ』

『マジかよ。じゃあ、こいつも人殺しなんじゃねぇか?』

『それは嫌だなぁ』

 

 父親が罪を犯したと見なされ、冤罪であることを証明できなくなると、残された家族はどうなるか?

 答えは明白。集団から排除される傾向にある。

 

『こっちに来るなよ、人殺し!!』

『ぐっ……!!』

『悪者は退治しないとなぁ!』

 

 そう言って、「正義の味方」を自称する者たちによって、幼少期の巧斗は、集団から徹底的にいじめられていた。助けを求めても、周りの大人は手を差し伸べるばかりか、どこか軽蔑するかのような表情を向けるだけだった。蛙の子は蛙だと言わんばかりに。

 

『お母さん………、どうして死んじゃったの………?』

 

 巧斗にとって唯一の味方でもあった母親の死は、巧斗の心を傷つけた。

 

 過労死であると断定されたが、これには職場での冷遇が関係していることは、成長した今では容易に推察することができた。

 

 こうして、天涯孤独の身になった巧斗の行きつく場所は、親戚ではなく、その時から運営されていた児童養護施設『アジサイ』であった。

 

『君が、桐原巧斗くんかい?』

 

 そう言って、目線を合わせるように腰を低くした壮年の男―――長岡慶次は、施設長として挨拶に来ていた。その時の巧斗は、不愛想ともいえる態度をとっていたが、それに構うことなく接する。

 

『今日からここが君の家だ。ゆっくりと、なじ―――』

『長岡さ~ん。トイレ掃除やっといたよ~』

 

 どこか疲れを感じさせる声色をした少年の声が聞こえた。

 

『って、清剛!?それはうちの仕事だって………』

『暇だったからさ………。って、お客さん?』

 

 それが彼―――倉本清剛との出会いであった。

 

 清剛のことを、巧斗は最初は何とも思っていなかったのだが、一緒に暮らしていくうちに、鬱陶しく思うようになった。

 

『お前もここに住むんだからさ、仲良くしようよ』

 

 そういって何度も絡んでくる彼に苛立ちを覚えてしまうが、清剛のことを好意的に捉えてしまう出来事が起きる。

 

『よう、人殺し。相変わらず、しけた顔してんなぁ』

 

 そう言ってくるのは、当時巧斗が通っていた小学校の上級生であった。

 

『ぐっ……!』

『ごみは片付けないとなぁ!!』

 

 また、殴ったり、蹴ったりといった暴力と、人格を否定するような暴言を浴びせながら笑っている彼らに、巧斗はやられたままだが、その場に、あの男がやってきた。

 

『俺の友達に何やってんだぁ!!』

『ん?』

『うぉりゃぁ!!』

 

 全力で走って近づいていき、掛け声と共にドロップキックをかましてきた清剛のことを、今でも忘れることはないと、巧斗は断言する。

 

『がはっ……!』

『はい、つぎぃ!!』

『えっ?うおっ……!』

 

 呆けたような顔をする上級生に対して、次々と攻撃をする清剛の後ろ姿に、巧斗はただ見ることしかできなかった。

 

『無事か!?』

 

 そういって手を差し伸べる清剛に、巧斗はどこか光を見出した。

 

 自分を助けてくれる、自分だけの英雄という光を………。

 

『はぁ!?そんな理由で!?』

 

 思い切って、自分がいじめられてきた理由を打ち明けると、清剛は怒りで顔を真っ赤にした。

 それはおかしいことだと。父親がそうだからといって、息子もそうだという理由にはならないと。

 

 巧斗以上に怒りを露にする清剛に、巧斗は質問した。

 

『どうして………、君は僕のことで怒っているんだい?』

『どうしてって、それは、君がわけわかんないことでいじめられていたら、こうなるよ。それに、巧斗は巧斗じゃんか。父親とか関係なく、巧斗っていう良いやつを知ってるから、俺は怒ってんの!』

『父親は……、関係ない………?』

 

 巧斗にとっては、初めてのことだった。

 

 人殺しの子供ではなく、一人の男として接してくれたことは、彼が最初にして唯一の人間だ。

 

 成長した後でも、いじめをしてくる者はいないが、どこか遠ざけられている状態の中、こうして気にせず接してくれる人間は清剛ただ一人であった。

 

 この時から、巧斗は清剛のことを、大切な人間であると認識を改めた。

 

 彼と共に歩んでいきたいとさえ思うようにもなっていたのだ。

 

 

「ふぁぁ~。夢か………」

 

 そう言って目を覚まし、眼鏡をかけ直した男―――ペイル(巧斗)は、【闇派閥(イヴィルス)】の拠点にある作業台に向き合っていく。

 

 何かの作業の途中だったのか、傍らには、アルベイム王国で採れる希少金属があった。

 

「さあ、待っててよ、清剛ちゃん………。僕だけの英雄………。今度は僕が、君を救い出す番だ………」

 

 ねっとりとした声で黙々と作業をする後ろ姿は、何かの報告にやってきた構成員が見ると、どこか不気味に映っていたのは、想像に難くなかった。

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