転生したハイエルフが奮闘するのは間違っているだろうか   作:野生の鹿

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後々、大幅に修正するかもしれません(特に最後)


報復決心

 フロディは目の前の光景を受け入れることができずにいた。

 

 自分の信頼する従者が、内通者という事実に逃避したい思考に駆られるも、どこか冷静にいる自分の頭脳が、スキュールンが内通者だと辻褄があってしまうことが多くあるのだ。

 

 そもそも、アルディが怪しいと思われていた例の10億ヴァリスと希少金属の取引だが、あれの取引履歴がどこから手に入れたのかを聞けていなかった。普通、アルディ本人が持っているか、どこかに隠匿されているかしているはずなので、それを門外漢であるスキュールンが見つけ出すことは不可能のはずだが、その時からすでに【闇派閥(イヴィルス)】の一員であれば納得できる。

 それに、従者として王宮を出入りしているスキュールンならば、こちら側の動きをいち早く知ることができる上、暗殺者を招き入れるのにも一役買っていることも容易に推察できた。

 

 それでも、所々で訳の分からないこともある。アルディの取引が発覚してからの今の今まで、何の行動も起こしていないことだ。

 

「あぁ、色々考えておりますけど、たぶん考えても無駄ですよ」

 

 フロディの表情から察しているのか、どこか疲れたような感情を滲みだしながら忠告してきたスキュールンは、ため息をついて剣を鞘に納める。

 

「…………スキュールン、疑問に思うところは多くあるが、大人しくついてきてもらおうか…………」

「お断りしますよ、フロディ様。あなたのことだから、知ってることを洗いざらい話させようとするでしょう…………。」

 

 スキュールンは、腰に引っ提げてある折りたたまれた弓を手に持ち、それを振るって一般的な大きさの弓に展開させる。

 

「私にも、譲れないものがあるんです。ですので、諦めてください」

 

 矢を持っていないはずなのに、スキュールンは弓の弦を引いていく。瞬間、何もなかったはずの弓に炎の矢が生成されていた。

 

「いつの間に恩恵を刻まれていたのか…………!?」

 

 スキュールンがスキルを持っていること、つまり【闇派閥】の神から恩恵を刻まれていたことを察したフロディは、次々に生成され発射されてくる炎の矢を躱しながら、倒れている母親の方へ向かう。

 

「大丈夫ですか!?母上!?」

 

 一度身体を揺さぶって意識があるのかを確かめるが、気絶したままであった。だが、虫の息と称してもいいほど僅かながら、息はしていた。

 

「よっと…………」

 

 母親の身体を背負い、スキュールンを警戒するフロディは、彼に向き合う。

 

「フロディ様…………、申し訳ありませんが、ここで死んでもらいますよ、お母様と一緒に、ね」

「上からの命令か…………?」

「まぁ、そういうことにしてもいいですよ」

 

 そう言い切ったスキュールンは、次々に弓を引いていき、炎の矢を発射させていく。フロディの背中には、アルディほど強いものではないが、【反逆闘魂(スキル)】が弱く反応している。つまり、ステータスが上のLv.1か、下位のステータスのLv.2かということが推察できたフロディは、炎の矢を見切ることができた。

 

 背中に背負っている母に気を遣いながら、最小限の動きで躱すか持っていた剣で防ぐフロディは、スキュールンのその正確な射撃に舌を巻く。自分の知らぬところで強い弓兵となっているスキュールンの経歴が気になってくるが、今はその場合ではなく、母を優先する。

 

 病室にある窓に目を向けたフロディは、そこに向かって全力で近づいていく。

 

(スキュールン…………)

 

 フロディは、自分の従者に裏切られたことにショックを隠しきれていないが、それでも、母という明確な被害者がいることから、考えを改めていく。

 

(このケジメ…………必ずつけさせてもらうぞ…………!!)

 

 そんなことを思いながら、窓を突き破って外に飛び出していく。

 

 窓から飛び出してきた王子と王妃に、下にいる国民と兵士は驚愕するが、すぐに王妃の様子を見るや否や治療を行うようにしていく。

 

 病院の周りは混乱した状態となっているが、フロディはそんな状況を少しずつ収めていこうとしていた。

 

 

*     *     *

 

 

『へぇ~~。そんでお前は、あの王子を逃がしてしまった………、そういうことでいいんだな。』

「言い訳のしようもありません」

 

 その日の夜、自らが放火した病院からあっさりと脱出したスキュールンは、王都郊外の廃墟にいた。傍らには、改造人間となり、事実上のスキュールンの傀儡となっているドゥウェイン・アルディが佇んでいた。

 スキュールンは、王宮内では身だしなみチェックのために使っていた鏡―――【闇派閥】の支給した『遠話鏡』に話しかけている。話の相手は、幹部のヴァレッタ・グレーデだ。

 

「フロディ・リヨス・アールヴですが、女神ネメシスの眷属として恩恵を刻まれています」

『それは聞いたぞ。つっても眷属になってまだ1年ちょっとだろ?お前のレベルでも大したことは……』

「そのことですが、彼のステイタスは私やアルディに匹敵していました」

『なんだと?』

「私の矢は威力は別として、同じレベルの者の中では速射に優れていると自負しております。しかし彼の場合、それらをすべて見切ったり、簡単に防いだりしていました。」

 

 戦闘におけるスキュールンは、基本的に後衛から矢を放ち、相手の情報を分析したものを元に勝ちに行くというものだ。その洞察力もあってか、比較的新参ながらも単独で諜報任務に出されるような一定の信頼を得ている。

 

 そんな彼の見立てでは、恩恵を刻まれて1年程しか経ってないフロディの成長ぶりは異常であった。Lv.2には至っていないものの、Lv.2に限りなく近いステイタスをしていたことが身をもって分かった。また、以前にアルディにやられたと聞いたが、それまでは彼の攻撃を避けていたことも聞いた。

 

 本来、レベルには絶対的な差がある。レベルが一つ違うだけで、勝敗が決することがあるのは神時代における常識だ。

 

 だが、フロディはそんな常識に当てはまらないことを推察したスキュールンは、今度こそ仕留めることを決意した。

 

「ヴァレッタ様…………、フロディの首は私がとって…………、この手であなたに差し上げますよ…………」

『おう、精々頑張れよ』

 

 そう言ったのと同時に、スキュールンの持っていた『遠話鏡』は砕け散った。その効力が限界に達したことの表れだ。

 

 決意を新たにしたスキュールンは、アルディに指示を出していく。自分の願望のために戦うことを選んだ彼に、迷いはない…………。

 

 

*     *     *

 

 

「さて…………。ペイル、あのドワーフはどんな仕様にしたんだ?」

「忙しい所を見てそれかい?」

「まあまあ、少しは休憩に入ったらどうだい、ペイルちゃん?俺も気になってることだし」

 

 オラリオの地下空間、【闇派閥】の拠点にあるペイルの実験室には、部屋の主であるペイルの他にヴァレッタ、邪心の一柱であるタナトスがいた。そんな中でペイルは、てきぱきと腕を動かして、新たな魔道具を開発していく。

 

「アルディだったっけ?そいつに肉薄したのが恩恵を刻まれて1年ちょっとのガキだ。なにかお前のミスがあるか聞いてんだ」

「…………へぇ。そのガキが一体どんなものなのか、気になってくるよ。あのドワーフはLv.2の中でも上位に匹敵する潜在能力(ポテンシャル)を持ってるはずなのに、ね…………」

「えっ、そうなの?じゃあ、その子供が強いってことじゃない?ヴァレッタちゃん?」

 

 ペイルの施した改造手術によって人ならざる者に変貌した者たちは、オラリオの冒険者に匹敵する強さを持ち合わせていた。中には、Lv.5と張り合える個体もいる。アルディがそこまでの強さに匹敵しなくとも、フロディというハイエルフの少年が、果敢に戦っていたことは異常であった。

 

「もし彼が勝っちゃったら、神時代最速でLv.2になれるのかな~?」

「そうでなくとも、レアスキル持ちなのかもしれないね」

 

 間延びした声で言うタナトスに、眼鏡を拭きながら推察するペイルは、どんな子供なのか気になってきた。

 

「前々から思ってたが、つれないやつだなぁ、ペイル。」

「君の無茶ぶりに応える部下(こっち)の身にもなってよ」

「おぉっと、失礼。じゃあ、引き続き、改造手術の被験者は連れてきてやるから、強いの頼むぜ」

 

 棘のある言い方をするペイルに気に留めてないヴァレッタは、彼が【闇派閥】の活動に貢献していることもあってか、そうそうに退出する。

 その後ろ姿を見たペイルは、眼鏡をかけて眉毛を小指でかきながら、作業を再開した。

 

 

*     *     *

 

 

「ネメシス、話がある」

 

 スキュールンの造反が判明した日の翌朝、アルベイム王国の王宮内にいるフロディは、ネメシスに尋ねた。

 

 被害に遭った王妃、つまりフロディの母は、息を引き取った。

 

 この報せを聞いたフロディとニヨルドは、家族が死んだことに慟哭した。ニヨルドは、長年連れ添った妻ということもあり、その悲しみは息子のフロディでも受け止められない。今、ニヨルドは自室に籠っている。それほどショックを受けていることの証明だ。

 

 フロディもまた、悲しみに暮れていた。彼の場合、自分の従者が直接の加害者ということもあり責任を感じていたし、あと少しだけ間に合えば…………と何度思ったことか分かっていない。前世(清剛)のときでは孤児だった彼は、初めて母の愛というものを受け取ったことで、彼女のことを愛していた。

 

 今、アルベイム王国には王妃の死亡という衝撃が響き渡っており、悲しみに暮れる者、王家を裏切り牙を向けたスキュールンへの怨嗟を持つ者など、それぞれで違っていた。ハイエルフが死んだとなれば、世界中のエルフにも衝撃が走ることだろう。

 

 そんな中、フロディはネメシスに話があった。自分のことについてだ。

 

「俺のステイタスだが、おかしくないか…………?」

「おかしい………、というのは?」

「とぼけないでよ…………。俺のステイタス、いつも隠しているけど、アルディやスキュールンとの戦いで、不自然なほど高いものだと確信してる。何か隠してるんでしょ?」

 

 目を離すことなくそう告げるフロディに、ネメシスも目を離すことなく見つめ返す。

 

「フロディ、それを聞いてどうするつもりですか?」

「どうするって…………。その隠し事が何かであるのなら、スキュールン討伐の手札にする」

 

 フロディは決意に満ち溢れた表情をする。

 

「この際、何も取り繕うことはないけど…………、俺は今怒り狂ってるよ…………。大好きな母は殺されたし、信じてた従者にも裏切られるし、それでも自分はやられたままだし…………。何もかもが嫌になってる…………。けどさ、それでも気が済んでないよ。この怒りを、この屈辱を、何かにたたきつけないとダメだ!やられたままで終わるのはやだよ!あの二人にやり返したいんだよ!何があろうと…………、スキュールンとアルディには仕返しする…………。奴らには、必ず落とし前をつけてやる…………!!そのためにも、自分の持ちうる手札をすべて把握して勝ちに行きたいんだよ!!何か隠しているのなら!全部俺に教えてよ!!」

 

 その言葉を聞いたネメシスは、少し息を吐いて、観念したかのように話し始める。

 

「あなたには、あるスキルが発現していましたが、それを消したものを渡しました。」

「それって、苦笑いしてたやつのこと?」

 

 フロディはネメシスが口にしてたある言葉を思い出した。『中々に珍しいものをお持ちですね……』という台詞だ。あの時は見せられたものだと思っていたが、別のスキルに対しても言っていたのかと、衝撃を受けた。

 

「えぇ、ですが、それはあなたにとってあまり知りたくないものなのかもしれません。それで、私は隠すことにしましたが、ステイタスの更新も兼ねてみてみますか?」

「もちろん」

 

 覚悟決めたような顔つきをして了承するフロディは、ネメシスによるステイタス更新をしていく。

 

「これがあなたに発現したスキルです…………。それと、魔法が発現していました…………」

 

 そう言って完全版ともいえるステイタスが記された羊皮紙をフロディに手渡していく。

 

 それを見たフロディは、ネメシスの言葉通り、あまり知りたくないものであることを理解したが、新たに分かったスキルや発現した魔法もあって、すぐに表情を引き締める。

 

「これを使って…………、倍で返してやる…………!!」

 

 

フロディ・リヨス・アールヴ

Lv.1

 

力 :A881

耐久:B775

器用:C691

敏捷:A841

魔力:I0

 

《魔法》

【ディア・ゲルズ】

 ・付与魔法

 ・氷属性

 ・任意発動で冷気を発生・放出させる。

 ・発動式【吹雪よ(ブリザード)】の詠唱で、追加で冷気を発生させる。

 ・詠唱式【静かなる冬の息吹よ、白き大地を覆う精錬の輝きよ。我が胸に宿りし想いを汲み取り、荘厳なる霜の羽衣となりて舞い降りよ。この思いは恐怖の炎ではなく、希望の銀雪となって澄み渡る。迫りくる影が、愛する者を奪うとするなら、二度と奪われぬよう立ち向かおう。わが身を氷壁と化し、吹き荒れる闇さえ凍てつかせよう。親の愛を無駄にはせず、この身で愛を繋げよう。応えよ雪の精よ。わが祈りを顕現せよ。反逆の誓いと共に輝け。我が名はアールヴ】

 

【】

 

【】

 

《スキル》

反逆闘魂(リベンジ・ソウル)

 ・逆境時、全てのアビリティに低補正

 ・Lvが上の敵と交戦時、『力』、『敏捷』、『耐久』のアビリティに高補正

 

妖精王詠(フェアリー・カントゥス)

 ・魔法効果増幅

 ・魔法使用時、しばらくの間『魔力』アビリティの高補正

 ・付与魔法使用時、持続時間の延長および威力の増大

 

冥霊祝福(スピリット・ブレッシング)

 ・冥界の精霊の祝福の証

 ・獲得経験値の高補正

 ・肉体的、精神的に傷を負うたび、攻撃の強化

 ・瀕死状態のとき、精神力(マインド)の自動回復

 ・非戦闘時、肉体の自動回復

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