『学校無双〜実は世界最強の俺が以下略〜』って本読んだけどこれ私のことだ…   作:んえその木

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確変記念日

学校生活2日目───

 

 私は今、理想通りの場面に出くわしている。

 

 

「えー…………ではね、皆さんの…実技のテストをします」

「「「「……はい」」」」

「はい」

 

 

 このアルランダ魔術学校では午前中が筆記、午後は実技の授業があるスタイルでどうやら4年前から変わっていないみたいだ。

 当時はまあ大変、スラムくせぇ奴とはペアを組みたくないと言われお姉ちゃんか先生と2人組を組むという、何とも微妙な記憶しか無いが今日はどうやら違うのだ。

 

 それにしても『学校無双〜実は世界最強の俺がクラスで実力を隠しているとバレてしまいハーレムに!?〜』によると何故か主人公が入ってきた時期に突然テストが行われるらしいがどうやらこの学校も変わらなかったらしい。

 ……正直記憶があやふやだけれどテストはもっと後だった気がしなくもないような。まあいいか。

 

 

「ッス~……ではね、えぇ、2人組をお願しいます…」

「「「………………」」」

 

 

 何やら皆目を見合わせて動こうとしないではないか。

 あれ、こういう時って皆もうできてて私が1人余るのが普通じゃないっけ。

 いや待った『学園無双〜以下略〜』によるとこういう場面では確か偉そうなやつが話しかけてきて、私の実力を確かめに来る……はず。

 

 しかし困った。

 秘めた力をギリギリまで隠しさなきゃいけないのに相手を殺さない程度に無力化し、それでなお周りに一目置かれる程度の力を見せないといけないとなると、それなりに縛りを付けなくてはいけない。

 

 ………………ちょっとめんどいな。

 というかまず偉そうなやつから話しかけられないと。

 

 えーっと偉そうなやつ偉そうなやつ…ん?

 

 

「お……おい、て、てめぇ…………サマ」

「……ん、私?」

「お、お、おま、お前……サマ昨日から、な、な、な……なま、生意気なんだよ……デス」

「………………わあ!」

 

 

 ぱあっと久しぶりに世界が明るく感じる気がする。世界が眩しい。

 丸刈りに剃りこみを入れた如何にも不良と言わんばかりの見た目に、ネックレス。

 俺喧嘩強いですよと言わんばかりの目つきにムキムキのガタイ。

 間違いない…!主人公に序盤のシーンでやられるパワータイプ系の偉そうな奴だ……!

 

 何やら足が震えている気がするが今は2年生。

 『学園無双』だと主人公は1年生だったから今まで"普通"を行う為の相手がいなくて1年間辛かったんだろう。うんうんわかるわかる。

 任せてくれ、私は作戦行動を失敗した事はあんまりないんだ…!一緒に普通を謳歌しよう!

 

 ほらみなよ、周囲はザワザワしていて私たちは注目されている…!本の通りだ!凄い!嬉しい!

 

 正直昨日なんにもなかったし、カレンとお話して勉強するだけで終わっちゃって期待外れだなぁと感じていたけれど、やっぱりこれが普通なんだ!

 

 えっと、なら私はこの後は……えっと…………あれ、なんだっけ。

 

 

「…………あの、その、生意気……なんだよ」

「あ、えっとね、ちょっと待ってね、えーーと……何ページだっけ」

「……………………マジなのかよ……」

 

 

 えーっとえー……あ、あった。

 

 

「……こほん『アーエットーオレナンカキミニワルイコトシタッケ?』」

「…………悪い、だぁ?いきなりこのクラスにてめぇみたいな御方が来るなんておかしいだろうがよォ!」

「『イヤソンナコトイワレテモー、センセイ、トメテクレマセン?』」

「本当に止められるなら今すぐ止めてくれないかな2人共……!先生そんなことされちゃうと胃がちぎれちゃうぞ……!」

「大体お前俺の事舐めてるでしょうか!?」

「ヤレヤレ、コウナッタラシカタナイー」

 

 

 かんっぺき……!完璧すぎる……!余りに本通り……!世界が私を中心に回っている……!

 なんかちょっと違和感あった気がしたけど普通ってこんなもんなんだろうね。

 達成感からか目の前の偉そう君は涙目で拳を握りしめているが私も同じ気分だ。

 おお偉大なる『学校無双〜実は世界最強の俺がクラスで実力を隠しているとバレてしまいハーレムに!?〜』よ、私に叡智を授けてくれたことに感謝します。それなりに。

 

 プルプル震える偉そう君に続きを促すためにその後の展開を読んでみる。すぐ忘れちゃうからダメだね。

 えーっとこの後は……決闘をすると。決闘……

 

 え、決闘?

 

 決闘……はぁ……不味いかなぁ……決闘って確か今は法律で禁止されてた気がするんだよな…

 レオがなんか個人的なそういうあれこれは禁止するよって言ってたもんな。

 チラッと前を見てみると偉そう君も困った顔でカレンと顔を見合わせているし。

 あー……えっと、どうしよう。

 

 

「……先生!魔術式個人戦の結界をお願いします!あくまで!あくまで魔法戦闘訓練の一環として扱われる安全性の担保された個人戦結界をお願いします!!!!本当にお願いします!!!!」

「         」

「おーそんな手が」

 

 

 決闘は禁止だけどそういう抜け道はあるのか。レオ達に教えた方がいいのかな。

 いや、そういえば抜け道はあえて作っておくと誘導しやすいとか何とかアホカス眼鏡が言ってた気がするしこれも分かっててやってるんだろう。ナイスカス。

 

 さて、2年ぶりの戦闘だ。しっかり良い感じに頑張ろう。

 ……ん?あれ、なんか偉そう君泣いてる?

 

 

 

 ***

 

 時は遡り前日夜───

 

 

 

 

「いや本当なんだって!信じて!」

「お前、皇帝陛下が俺ん家のパン買いに来る為に近所に住み始めたって言ったら信じる?」

「馬鹿な妄想にも限度があると思うよ?」

「ミラ、そいつの頭ぶん殴ってくれ」

「りょ〜」

 

 

 べしんと頭を引っぱたかれるも私は嘘は言っていない。断じて嘘は言っていないのである。

 だって無理だよ!だってさぁ!?学校歩き回る度に「ここがあの……」とか「食堂でイベント……」とか「もしかして明日実技テスト?」とか呟いてんだもん!

 あの本じっくり眺めながら呟いてるんだもん!

 

 

「くっ……!仕方ない!ほら!私にウソ判定やっていいから!」

「いやあの魔術本人が本気で思い込んでたら嘘判定になんないし……」

「カレち、やっぱり疲れてるんだって…明日また考えてみよ?」

「本当なんだよぉ〜〜〜!」

 

 

 じたばたとミラの太ももで暴れていると遂にぼふんとクッションに潰され動けなくされてしまう。

 うーーーーーーーんでもまぁ私も向こうの立場だったら何言ってんだこいつって思って、暫く近寄らん程度には頭おかしいこと言ってるから仕方ない。

 なんだよ『学校無双〜実は世界最強の俺がクラスで実力を隠しているとバレてしまいハーレムに!?〜』ごっこって、頭おかしくなったんか?

 

 

「いや…でもなぁ…カレンが言ってんのか…」

「これがもしミラとかアレンとかが言ってんなら冗談扱いするけど…」

「むぐ!?むぐぐぐむぐむぐぐむぐ!?」

「カレちそんな冗談言わないもんね〜〜」

「むぐ!」

「ユーモアが足りてねぇ」

「ギャグセンZERO」

「むぐううううううううううううううううう!!!」

 

 

 私への評価はさておき、流石に1年半共に過ごしてきた中で私達にはそれなりに強い信頼関係というものができている。

 私はこういった何かが起きた時に仕事をそつなくこなし決して初手は間違えないと定評があるのだ。

 

 

「実は今もう初手じゃないんじゃないか?」

「いっつも十手目位でアホなミスして迷惑かける係だもんな」

「詰めが甘い」

 

 

 …………まぁ、はい。初手は間違えないよ。

 以前、対抗魔法戦大会の時にも完璧な作戦を組んでいい感じになってたのに私が最後の最後でやらかして結局乱戦に………………うっトラウマが……

 はっ!違う!今はそれどころじゃない!

 

 

「ぷはっ!兎に角今回ばっかりは間違いないよ!あの人と関わる上でこの本は避けて通れない!」

「『学校無双〜実は世界最強の俺がクラスで実力を隠しているとバレてしまいハーレムに!?〜』が?」

「『学校無双〜実は世界最強の俺がクラスで実力を隠しているとバレてしまいハーレムに!?〜』が!」

「頭痛くなってきた」

「頭が確実に悪くなる音がした」

「確実に何かしらの冒涜にあたる」

 

 

 お互い困った様子で顔を見合わせ、本の事を知らない人は持ってる人から借りて読み始めてたりなんかしてる。すげぇ微妙な顔してるけど。

 それにしてもなんでわざわざこの本なんだろう。

 革命直後ってこともあって色んな英雄譚が本にされてる中でわざわざこの本を……?

 なんならユニア=クランケルの本なんかは現在の状況が不明ということもあって、死亡説とか今も戦場にいる説とか色んな都市伝説が流れてる位で本も色んな種類あるのに……

 

 まさかあの作者達も本人が学園でごっこ遊びをしに来ているだなんて思いもしまい。他所でやってくれ。

 そう思いウンウン唸っているとぬっと私を覆うほどに大きな影が出てくるではないか。

 まさかコイツは……!

 

 

「……ちっ、てめぇが嘘ついてるかどうかは知らねぇが、アイツがもし英雄サマだってんなら俺が確かめてやるよ」

「お前は……ライネル!」

「不良としてブイブイ言わせてた癖に3日目に猫に傘を指しているところを見られたライネル!」

「この前見知らぬお婆さんをおんぶしてたライネル!」

「昨日花壇で水遣りをしていたライネルじゃないか!」

「てめぇらいい加減にしねぇとぶっ殺すぞゴラァ!」

「こらライネル!そういう言葉遣いやめなさいって言ったでしょ!」

「うるせぇよ!てめぇは俺のなんなんだよえぇ!?」

「委員長!」

「ボケ!」

 

 

 着崩した制服(常識の範囲内で)

 坊主頭に剃りこみ(昔の傷)

 190を越える身長に鍛えこんだ身体(頑張ってるらしい)

 鋭い目つき(気にしているらしい)

 通称、学園唯一無二の不良(笑)

 と、語るライネルは今回もどうやら鉄砲玉として目の前の問題に突撃しようと言うのだ。

 しかし、普段ならそれいけライネルと放つのだが今回ばかりはそうもいかない。

 相手はあの英雄。暴力で勝てる訳もないが権力でも勝てない。ついでに財力も負けているであろう。

 

 

「いい?ライネル。今回ばかりはGOとは言えません。理由はわかるでしょ?いい子に出来る?」

「つくづくてめぇが俺を舐めてんのは理解してっけどよ、いい加減ガキ扱いすんなら出るとこ出るぞコラァ……!」

「手は出さないのか…」

「そういう所だよネルち」

 

 

 がたんっと机に脚を掛け…無い、チラッと後ろを振り返りいい感じの台を見つけると改めてそこに脚を乗せぐわぁっと叫び始める。

 

 

「うるせぇぞてめぇら!だったらコイツに後一年半あのクソg……チb………問題児を任せるってのかよえぇ!?」

「せめて居ない所でぐらいちゃんとイキれよ」

「心配が隠しきれてないよ」

「あいつがもし英雄サマだとしても関係ねぇ…!俺は授業を受けに学校に来てんのにビクついてたら集中できねぇだろうがよォ……!」

「もう不良名乗るのやめなよネルち……」

「テメェにだけは言われたくねぇぞミラァ!」

 

 

 まあ確かに、私達は一応真面目に学ぶ為にここに通っているのであって、何かの作戦に巻き込まれたのならともかく英雄の道楽に巻き込まれるというのは少しばかり頂けない。

 そうだ…!私達はこの国の為に頑張ろうと1年生の時に誓った仲ではないか…!

 将来どんな立場になってもお互い助け合おうと言ったではないか……!

 何が英雄じゃい!

 何が准将じゃい!

 やれる……!私達ならいける……!何か…こう……吹いてる……!風…!私達に吹いてきてる……!

 

 

「そうだそうだ!ライネルの言う通りだ!」

「えっ委員長壊れた?」

「スイッチ入っちゃったか」

 

「私達はここに遊びに来てるんじゃないんだ!」

「おぉ!」

「ソウダソウダー」

 

「あんなガキンチョのおままごとに付き合っていられるほど暇じゃないんだ!」

「おぉ……いや、言い過ぎじゃねえか?英雄サマっても同い歳らしいし……」

「そうだそうだ」

 

「私達は私達を解放するために!先人に習い革命を起こす!」

「いや…やり過ぎじゃないかなって」

「それは良くない」

 

「ではこれより!作戦会議を行う!!」

「おい誰かあいつ止めろ」

「そろそろ寝ようねカレち〜」

 

 

 これが特選クラス革命だああああああああああああああ!!!!!!

 

 

 ***

 

 

 そして現在、今日実技を担当する教授に頼み込み責任は全て私(と何故かライネル)が負うと言った上でテストを行ってもらうことにした。

 

 まず目的が正しいかどうか確かめる…!

 昨日の内にクラス全員があの本を読み込み、脳内に全てインプットした私達は劇団特選クラスとして一芝居打つ事にしたのだ。

 テスト…実力を隠した主人公……イキったパワータイプ……!目的が正しいなら何も起こらないはずがない!

 

 

「よし…頼むね……ライネル」

「……任せとけ」

「あの…ほんと、応援してるから……」

「………あぁ……」

「……あの、ゴメンね…?」

「……カレン……」

「な、何?」

「もし俺に何かあったら…妹を頼む……」

「ねぇちょっと止めてよ!大丈夫死なない!死なないって多分!」

「ああ、分かってる。俺帰ったら妹に渡したいものもある、昨日残したジュースも今夜お前らと乾杯するし、俺がやられる訳ないしなんなら別に倒してしまっても構わんのだろう?」

「マジでやめろ!口を閉じろ〜!」

 

 

 なんか嫌な予感がヒシヒシと伝わってくる台詞を吐く、元気ゼロ倍ライネル君を何とか舞台の上に立たせることは出来た。

 後はユニがどんな反応をするか次第…!大丈夫……大丈夫なんとかなる……………………あれ、何かライネルがアクセサリーしてる。

 

 

「その首飾りどうしたの?普段してないよね?」

「婆ちゃんの形見だ」

「………………そうなんだ」

「頼む……!俺を守ってくれ婆ちゃん……!」

「ねぇ作戦立てた私の心が張り裂けそうだから止めよう!?何で俺が行くとか言っちゃったのさ!?」

「うるせぇ!怖いもんは怖いんだよ……!」

 

 

 そして作戦は遂に実行されることとなった。

 実技の時間となった私達は服を着替え、そぞろに校庭へと集まっていく。

 その中にユニも当然いるのだが彼女は何処かワクワクした様子で服を着替えているではないか。

 流石に気になったのか、気を使ったのかは分からないがミラが話しかけると嬉しそうに返事をするほどだし。

 

 

「……えーっと、ユニさん、アタシミラって言うんだけど、ヨロシクね」

「…おぉ…本物のギャルだ……ユニでいいよ」

「そう?じゃー……えー……ユニち……とかって呼んでも大丈夫そ?」

「ユニち……ユニち……!凄い…!初めて渾名付けられた……!」

「マ〜?アタシが初めてか〜……!」

「うん、嬉しい。ありがとう」

「どういたま〜……?」

 

 

 2つ名はあっても渾名は初めてだった系の少女の相手をしているが明らかにミラは緊張している。

 普段なら許可なんて取らないしいきなり〇〇ち〜呼びしてくる彼女がこんなに冷や汗ダラダラで喋る所を見る機会が学生の内にあるとは思わなかった。

 そりゃ渾名つけられたこと無かったとか初めてが自分とか知らん地雷がいくつも出てきたら焦りもするか。凄いもん、目がすっごい泳いでるもん。

 

 

 

 そして遂にその時が訪れた。

 授業が始まり2人組を作る時間になった時、ライネルが動き出した。

 まるで戦場に向かうかのように、達観と諦観の混じった澄んだ目をした彼は粛々と処刑台へ向かう様に歩き始める。

 1歩、2歩と歩く度にクラスメイト達の息を飲む音が聞こえてくる気すらしてくる。

 

 そしてついに───

 

 

 

「お……おい、て、てめぇ…………サマ」

 

 

 私は1人ひっそりと崩れ落ちた。

 演技もクソもないあまりにもな様子に絶望したのだ。

 終わりだよ〜〜〜〜!!!何で恫喝する側が怯えてるんだよ〜〜〜〜!!!

 ミラなんか諦めて空見上げちゃってるよ〜〜〜〜〜〜〜!!!!もうヤダ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!

 おわ……おわわ……おわわわわ…………

 

 

「……ん、私?」

「お、お、おま、お前……サマ昨日から、な、な、な……なま、生意気なんだよ……デス」

「………………わあ!」

 

 

ぱあっと今まで見た事ない花開くような無表情(?)に輝く目。

なぜかは分からないが非常にご機嫌になっているのがなんとなくつたわってくるではありませんか。

つまり……つまり……

 

 許  さ  れ  た

 

 瞬間脳内で何故か虹色に光る謎の何かが見えるし確変って音もするしすげぇ歌が流れている。

 来た、何か分からないが逆転きた。来てる。何かが来てるんだ。うひょおおおおお

 脳内麻薬がバカバカ出でる気がする。これがジャックポットだったんだ。

 

 

「ミラ、私達やったんだ」

「やったのはネルちだよ」

「嬉しい、こんな気持ちなんだね酒場でバカみてぇに管を巻いて私のケツを触ろうとしてくるギャン中のカス共は。今後はちょっとくらい許してやっても良いかもしれない」

「口が過ぎるよカレち」

「確変……私達が求めていたのは革命じゃなくて確変だったんだね」

「カレち」

「今日という日を確変記念日と名づけようよ」

「カレち」

 

 

 ミラに肩を揺さぶられながら場を見守っていると、あれ、なんかユニさんがポケットを漁ってる……?

 

 え?なに?え?読んでる?まさか今読んでるの?

 

 ……セリフの確認してる!?

 ちょちょちょちょっと待って?え?ごっこっていうのはあくまで比喩であって?それっぽくしとけばいいかな位に思ってたけどまさか思った以上に入り込んでる?

いやぁ流石に冗談にしても過ぎるって言うか

 

 

「……こほん『アーエットーオレナンカキミニワルイコトシタッケ?』」

 

 

 ピシイッと空気が凍りつく音がした。

先程まであった何処か安堵した空気は一瞬にして消え去り、まだ年の半場に差掛る時だと言うのに身体の芯から凍らせてくるような寒さが精神的に襲ってきてた。

 

 あまりの棒読みに無表情ながらも何処か満足気な表情、そして私の言っていたことが本当だと言うことが分かったこと、にしてはユニ本人の本に対する理解が浅すぎること。

 この状況にクラスの脳内はほぼ撃沈寸前であったが気持ちだけは一致していた。

 

 ((((笑ったら死ぬ))))

 

 彼女は恐らく本気でやっているのだ。

 見てくださいよあの初めてトイレが出来た事をお母さんに自慢しに行くような表情を。

 もしこのクソみてぇな棒読みを笑おうもんならどれだけ不機嫌になるか私には分からない。下手したらこの場でお仕置(国家法)だ。

 ダメだ……!笑ったらダメだ……!

 

 あまりにも酷すぎる演技にもう笑いとかを通り越して居た堪れなくなっている一部のクラスメイト(ミラ)なんかは、もし誰かが笑おうものならそいつを即座にぶん殴れる体勢になってるし、もうカオスすぎる。なんなんだこれ。

 

 なんでこの状況でそんな『完璧に出来ました』みたいなドヤ顔をしているんだユニア=クランケル!!

 

 こんな状況にライネルは何とか食らいついているがもう本人は支離滅裂な言葉遣いになっているし助け舟を出さなくては行けない。

 というかこの後どうなるんだ。

 何をしたらこの状況は正解なんだ?どうしようなんにも考えてなかった。

 

 …………まさか、本通りに決闘か?

 

 あんまりにも魔術使いが好き勝手するせいで革命後に真っ先に禁止になった決闘をするの!?

 あわわわわわ不味いよヤバいよ助けてよ。

 幾ら英雄でもそれはダメでしょう!?というか英雄と決闘をするんですか!?

 それに気がついたのかライネルもキュッ……と金のネックレスを握りしめ震えた目で此方に助けを求めてくる。

 どうする?どうするどうしよ……

 

 ……っく!ええいままよ!

 

 

「………先生!魔術式個人戦の結界をお願いします!あくまで!あくまで魔法戦闘訓練の一環として扱われる安全性の担保された個人戦結界をお願いします!!!!本当にお願いします!!!!」

 

 

 逆に考えるんだ。

 

 命が無事が保証されるなら戦っても良いじゃないかと。

 

 そして、半強制的に英雄とのドリームマッチが決まったライネルを見ると、深い海のような感謝と共に仄暗い深海の薄暗さのような怨みを抱えた悲しい目を私に向け

 

 一筋の涙を流したのでした

 

 

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