『学校無双〜実は世界最強の俺が以下略〜』って本読んだけどこれ私のことだ… 作:んえその木
「ではこれより!!!安全性に考慮された実践形式の決闘を行う!!!!」
「うおおおおおおおおおお!(ヤケクソ)」
「頑張れ死ぬな生き残れライネルウゥゥゥゥ!!!!(切実)」
「決闘開始の合図をしろ委員長!!!」
「決闘開始ィィィィィィ!!!!」
うぉぉぉおぉぉおおぉぉぉぉぉおおおぉぉぉ
「すごい盛り上がってる……よし、やりますか」
「見ててくれよ婆ちゃん……!」
手首をコキコキと鳴らしながら(鳴ってない)久々の決闘という事もあって油断なく構える。
最近の子はどんな魔術を使うか知らないし、油断したら碌な事にならないよってのは散々学んでいるので適度な緊張感っていうのが1番大事なのだ。
戦闘用の結界はかなり広い範囲に展開され、校庭の真ん中程から校舎裏の森まで広がっているけれども、一体どんな戦いになると思って先生はこんなに広く作ったんだろう。
さて、今更になるが魔術式とはなんぞや。
改めて考えてみると不思議なものだが人間は内に秘めている魔力を使い、魔法陣を描く事が出来る。
その魔法陣は様々好きな様に書き加える事や新たに作り出すことが出来るが、大抵は画一化された利便性の高い魔術式が使われている。
目の前の偉そう君…ライネル君もそれに違わず、教科書に載せても恥ずかしくない程にお手本通りの魔法陣を展開しながら、森の方へ走り出した。
おお、描きながら動けるのは凄いじゃない。
私も昔はそれはそれは苦労してね、コツを掴めば簡単なんだけれど出来るまでが長いというか。卵焼きを作る感覚に似ているというか……
「喰らえやオラァ!!!」
「おっ」
追い掛けながら私も森に入ろうと思った途端に眼前に強い光と音が弾ける。
魔法陣を見て分かっていたが予想通り爆裂魔術を使ってきたようだ。
防御結界で防いだものの音と光によりライネル君を見失い、次に放ってくる魔術と場所が分からなくなる。
まさにセオリー通りの戦い方だ。教科書を相手にしてるみたい。
それにしても……ふむ……爆破魔術……
………………爆破魔術かぁ………………
えー…どうしよ、私1番得意な魔術式、爆破魔術なんだよね……
えーいやいいけどさー…普通にメジャー寄りな魔術ではあるしー?軍に入ったらまあ結構な人数が使えるしー…
いやでもここは私の魔術を見て「なっ…!何だあの魔術は……!?」とかってなる感じかと思ってたからなー…
そしたら私は困った顔をしながら「あれ、割と有名だと思ってたんだけどな…」って言うつもりだったのに本当に有名だからダメじゃないのさ。
「うーん……なんかちょうどいい魔術無かったっけ…」
なんかいい感じの……飛行魔術……も普通だし……かと言って他の魔術はあんまり使わないから火力調整とか出来ないしなぁ……
結界があるから大丈夫と思っていたけど、この結界と私の使う魔術式は相性が悪いっぽく…というか、ぶっちゃけ私の魔術式は破壊にかなりリソースを振っているせいで大体の結界とかの類を壊してしまうのだ。とんだ縛りプレイである。
…………なんか、そう考えると面倒くさくなってきたな。
よく考えたら同じ魔術で力の差を見せつけた方がそれっぽくないか?
うん、そうだよとりあえず爆破しよう。
爆裂は全てを解決してくれるって私は知ってんだ。
「えーい」
「うぉぉおおおおおおあっぶねええぇぇえええええ!!!!」
ちゅどーーんと何処か間抜けな音を出しながら、多分この辺なんだろうなぁって所に魔術を撃ち込んでみると叫び声を上げながらライネル君が転がり出てきた。
安心安全、直撃しても今日の晩御飯時には起きられる爆破だ。
「てっ…テメェ……俺の居場所が分かるなんて流石ですね……!」
「教科書通り過ぎるかも、あんまりにもセオリー通りだと逆にわかりやすいよ」
「えっ…そうかな…」
「うん」
そうなのか…と呟いているのでとりあえずもう1発撃ち込んでみるが油断はしていないらしく、きちんと守りつつまた隠れようとしている。
すぐ様私の言ったことを取り入れたのか今までだったらここに来るかな?という所に地雷を埋め込んでおいたけれど引っかからない。
うん…なんと言うか……
普通に優秀だな…………
なんかもっとこう…ないのかい、オラァ!みたいな感じ。見た目通りに来てくれよ。
このままだと呆気なく終わってしまう。順当にこのまま倒してしまう。
なんか突然「これが俺のなんちゃらかんちゃらーっ!」とかって叫びながら突っ込んできてくれないかな。
主人公っていうのはそれを片手でペシってやって「なんかやっちゃいましたか?」って言うのがお決まりらしいし。
……ダメだ、また面倒くさくなってきた
あれ、おかしいな…なんか主人公は楽そうに色々やってたけど全体的にめんどくさい。
考えるのもめんどくさいな……もう森ごと発破したらダメだろうか。流石にダメだろうな。
大体私は多人数を纏めてシバくタイプで1体1とかするタイプじゃないんだ。
……いや違う…!そう、最後にあの決め台詞さえ言えればいいはず……!
そうだ私。頑張れ私。これだけは成し遂げるんだ────!
「……ライネル君、だっけ」
「ヒィッ」
「あのね、本当に申し訳無いなって思うんだけど、面倒くさくなってきちゃって」
「ヒィィィィィ…!」
「森諸共逝くのは良くないかなって、思うんだ。だから出てきてくれたら嬉しいな」
「バアチャン……!」
「えーっと……あ、あったあった。コホン……『コウサン…デイイヨナ?』」
本来ならメタメタにのした後剣を突きつけながら言うセリフらしいが、諸々考えるのが今日一日で私ができる面倒事の範疇を超え始めたので森全体に広域魔法陣を貼って「今から学園ごと爆破されたくなければ出てきてください」と脅しをかけてみる。
確か3年生になったらこれを防ぐ方法を教わると思うけど、まだ2年生の彼等には防げまい。ふっ……まっ年季の差ってやつかな、後でこの方法を教えてあげれば主人公ポイントも上昇するし。
「……助かった……!降参します……!」
「次のページ…『ヤレヤレーアンガイアッケナカッタナー』」
「あんた相手にして呆気なく無かったのがどんだけ居るんだよ……!」
「『コレニコリタラ、アノコヲイジメルノハ、モウヤメルンダナ』」
「俺は一体誰を虐めたんだよ…!」
よし、満足。
私はこれ以上なく普通になれている。この調子で頑張ろう。
それにしても……4年前に比べて今は随分と皆優秀なんだな。
特選クラスといえば昔は貴族ばっかりで金さえあれば入れるクラスって印象だったのに、今はしっかり優秀な子だけが入れるようになっているらしい。
どれもこれもレオ達が頑張っている証拠なんだろう。
「ライネル君」
「はい、なんでしょうスか?」
「すごいね、昔のレオより強いよ、あいつ卵焼き焼くの下手くそなんだ」
「レ…………スーーーッ……マジか……皇帝陛下………え?なに……卵焼き焼くの下手くそなの……?」
「後ね、あの爆破魔術の魔法陣、あれ1箇所変えた方がいい場所あるから教えてあげる」
「マジすか!?やっ………………あぁ、うん、そう、ちっ…まあ……教わってやってもいいよコラァ……」
それにしても…こういう偉そうタイプの人達は主人公にやられた後何処に消えてるんだろう。
そういえば本の中でも同じクラスだったのにこの後一回も出てきてないな…………
まさか……消してるのか……!?
そういえば主人公は元軍人設定だったし、後々の障害を消すという意味では間違ってないか……
…………うーん私はそこまでやんなくていっかな。めんどいし。
さー帰ろ帰ろー
***
「祝゛!!!!!!ライネル無事生還おめでとうパーティィィィィィィィィィィ!!!!!!!!」
「いえええええええええええええええええい!!!!」
「うぉおおおおおめでとおおおおおおおお!!!」
「流石俺らのライネル!!!!!」
「っぱライネルよ!!!!!!」
「へっ…まぁそれ程でもあるかもな」
私達は今、今日という日を乗り越え、明日を迎えられるという幸福を噛み締めライネルを胴上げしています。
田舎のお父さん、お母さん。私は今日、1つ大人になりました。
そして調子に乗りまくった私達以上に浮かれきっているのはこの男ライネルである。
自称不良の彼は何かを乗り越えた感動からか普段見れない程ニコニコと笑顔のままジュースを飲んでいます。
「ヤバかったよなぁあの広域魔術!あれ防げる奴いんの!?」
「いやー習った方法じゃ無理だろあれ!魔力とんでもねえって!めっちゃ圧縮されてんだろ!」
「つーかライネルよく2発も防いだよな!やるなぁ!」
「ふっ……まぁ…………それ程でもあるかもなぁぁ〜〜〜〜〜〜!!!?」
「「「うおおおおおおお!!!ラッイネル!ラッイネル!!」」」
かの英雄がチキンレースの様な扱いになっていることにどうなんだこれはと理性の部分が囁きかけてきていますが、この流れを作ったのは私。
なんならチキンレースの原因になったのも半分は私。
今更止められるわけ無いよねぇ〜〜
「というか!ライネルって確かクランケル准将に憧れて爆破魔術使い始めたんでしょ?どうだったのよ本家は!」
「っぱ違ぇな…!爆破魔術って普通ぶっぱなすもんなのに繊細っていうかさ……!しかも俺の魔法陣後で見てくれるんだってよ……!」
「ご褒美じゃん」
「こいつ何?実は推し活する為に今日戦ってたの?」
「言ってやるなよ」
さて、場も温まりライネル君もウキウキ。
クラスの皆もにこやかな笑顔……という訳で私はそっと床に魔法陣を貼る。
私の得意魔術、固定魔術である。
気づいた時には時すでに遅し、対策しようにも私の意図を理解したミラとライネルや一部メンバーが動けないよう見張っているので問題はなしだ。
何故なら……昨日は散々罵倒してくれやがったがどうやら私の見つけ出した目的は正しかったことが証明され、今後この本についての会議をしないといけないからね!!
『学校無双〜実は世界最強の俺がクラスで実力を隠しているとバレてしまいハーレムに!?〜』を改めて読み合わせなきゃ行けないからね!!!!!!
誰も逃がさねえからな。
「やめろ!そんな頭悪くなる本これ以上読ませるんじゃねえ!」
「せめて魔法陣の挿絵くらい描いてあるやつにしてよ!」
「嫌だ!戦闘描写が箇条書きで終わる様な本読みたくない!しかもなんだよ箇条書きの挙句最後はヤレヤレ面倒だな、とかほざいてよぉ!」
「うるせぇ!私も読んだんだからお前らも読め!」
「ひでぇ暴論」
私も昼間は開放感と何故か分からないが脳に虹色の何かを流し込まれてしまいハイになっていたが、本来の目的はこの本という名の呪物とユニをどの様に扱うかを確かめる為にあんな茶番を起こしたのだ。
今回得したのはユニとライネルの2人だけで教授の1人負けである。
可哀想な教授はお腹を押えながら医務室に行ってしまわれた。
「にしてもまさか丸々読み上げるほどまでごっこ遊びに夢中だとは私も思ってなかったよ……」
「ごっこ遊び……いやまぁおままごと並の棒読みだったけどよぉ」
「お前が言うな生意気なんだよデス」
「何だあのカスみてぇな棒読みは、何処ぞの英雄ユニア様並にひでぇ演技だ」
「ネルち、人には向き不向きってのがあるんだよ」
「言いたい放題じゃねえかボケナス共……!」
それにしても酷い棒読みだった。互いに。
やる気がまるで感じられないのになぜああまでしてあの本に執着するのだろうか。
私もこの2日間で既に精査するため3回ほど読んだが夢中になれる理由がわからない。
何か暗号でもあるのかと色々見てみたがそんな訳もなく、聞き込みをミラにお願いしてみたところ集まった情報は「この本は総じてカスである」という事実だけであった。
時間を返して欲しい。
「さてこれからどうしようかねぇ」
「もう諦めて普通に接するとか?」
「なんか今日のが許されるなら大体大丈夫な気がしてきたわ…」
「思考停止!」
まあ確かに口が悪いライネルがオラついたにも関わらずそれに関してなんなら嬉しそうにしていたくらいだから、案外大丈夫なのでは?と思ってしまうがそれにしても色々とあるだろう色々と。
私はこういう時ミラが案外鋭い意見を出してくれると知っているのだ。私も思考停止。
「ミラ、何か良いアイデアとかある?」
「……いや〜アタシ思ったんだけどね?」
「うん」
「案外アレンの言う通りかもよ」
「え、俺ぇ?普通に接するって事?」
「一応その心は?」
「なんかねー、ユニちって呼んだ時も嬉しそうだったし?小説読んで学校来てるし〜…マジ、普通に学生として過ごしてみたくて来てんじゃね?って思った感じ〜?」
「普通に、か…」
まあ確かに、同い歳というのが嘘では無いなら彼女は壮絶な人生を歩んできたであろうことは想像できる。
これまで6年以上戦争が続き、私たちの代は運良く戦争が終わった後学校に入れている立場であり恵まれている立場なのだ。
つまり…えー10歳くらいから戦争にずっと行っていて帰ってきた頃には英雄として祭り上げられ……16歳真っ只中でも青春を謳歌することもなくこれから先も元帥として立場に縛られる…………
……うん……まぁ……うーん…………
「まあ…俺ァ戦ったからよ、幾らか話したが……案外ふつーに接してみてさ、そんでダメでも、何かあの人ならいきなりどうこうってのはないと思うぜ」
「とりあえず、ビビらず話しかけてみっかなー」
「そうしようぜ、処刑される時は一緒な」
「じゃあアタシもユニちに色々してあげよ〜あの髪お手入れ何にもしてないっしょ」
なんと言うか、すごく今更ながら一番最初に来た辞令の意味がわかってきたかもしれない。
「何も知らない振りをしろ」ってのはつまり…ただのユニという人物として接して欲しいという事なのかもしれない。
そうか…私達は彼女に青春を与えてあげればいいんですね……
そっか…………
「ごめん、なんかいい感じになってるとこ悪いけどやっぱ意味わかんないよ???何でそうなってこの本を参考にするの????」
「誰も触れなかったことを……!」
「おい!委員長が場を乱すんじゃねぇ!」
「空気読め!」
「そうだそうだー!」
「私が悪いの!?間違ったこと言ってなくない!?」