新運命「愚弄」の行人「マネモブ」   作:異常猿愛者

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そこでだ…カンパニーの下につくのを嫌がるベロブルグの代わりに、我々全員で手を組む事にした

「アンタ誰よ!?」余所者が首を突っ込むなと警戒するゼーレ。彼女のキツイ言動は余裕のなさの現れ。

 

「初めまして。”愚弄”の行人”マネモブ”です。」今日はビジネスをしに来ましたと丁寧に、だが不遜な雰囲気も併せ持ちながら自己紹介するマネモブ。

「トダーヤンケ。マネモブノ仲間ヤンケ。」トパーズは彼等こそ自身の提案した再生事業の出資者だと紹介する。その言葉にベロブルグの面々は敵意を向ける。

 

「なんや歓迎されて無さそうやのォ。」「ヤンケェ。」

取って喰ってやろうという訳ではないのに悪者扱いが心外なマネモブである。

 

『余所者、一つ聞きたい事がある。』

「おいそこのデカブツ、今ガイジンって言ったか。」

遥か昔から寒波と闘う人々を見守って来たスヴァローグが口を開く。マネモブは余所者呼ばわりに少々気分を害したようで、その様子にクラーラはヒエッと縮こまる。スヴァローグは彼の言葉を無視をして話を進めた。

 

『お前達は何故そこまで我々をカンパニーの傘下に組み込もうとするのに拘る。』何も踏み倒そうという訳ではない、猶予を与えてくれないものかと話を引きだしお互いの妥協点を擦り合わせたいのだろう。

 

「何って…」マネモブは平然と言い放つ、金の為以外にあるのかと。

 

「「「「!!」」」」

「ちょっと!!」本音では誰もが分かっている事だ。しかし建前を隠さないその姿勢にベロブルグの不信感は頂点に達する。トパーズは星間ネットワークとの繋がりを得るには、カンパニーに入る事は一番の信用記録になるなど誠心誠意を込めて説明したのが無駄になったとマネモブを咎める。

 

「大守護者!やっぱりコイツ等信用ならないわよ!」

「俺が信用ならない…?冗談だろ。」心の底から正直に目論見を告げた俺程信じられる人間はいないだろうと。寧ろ、借金を返さなきゃいけない立場ながら折衷案を蹴るお前等の方が余程誠意がないんじゃないかとマネモブはゼーレに言う。

 

「ああもう…」穏便に済ませたかったのに、態々挑発してどうするのか。トパーズはどうすれば仲裁出来るのか分からない。投資して貰う以上交渉のテーブルに呼ぶのが礼儀だと思ったが、やはり彼を呼ぶべきではなかったかもしれないと後悔する。

 

「トパーズちゃん、ハッキリ言ってアンタも甘すぎルと申します。」取り立てをやるなら、多少は不動産屋の感覚で政治をやるような強引さも必要だろうとマネモブは言う。

「私はそういうビジネスはしたくないの!」強引な商売は同僚であるギャンブラーの専売特許だ。彼女には向いていない。

 

「コイツ…」今の発言で完全に敵だと判断したゼーレはムキになって鎌を振るう。

「これが幽玄のかわし。」「小賢しいッ」

マネモブの体が真っ二つに割れて鎌が空を斬った事に舌打ちするゼーレ。

”幽幻真影流” ”朦朧拳” 周辺視野、人の視界のボヤけている部分を利用し高速移動と体のブレですり抜けたように錯視させる幽幻の身のこなしだ。文字通り柳の下の幽霊のように実体がない。

 

 

闘う一歩手前な状況にトパーズは訴えた。マネモブが来る前に伝えた私の母星の◇哀しき過去…の話をしただろうと。

ベロブルグの牙が向けられるのがマネモブ相手ならまだいい、カンパニーの者に牙が向けば、関係構築はもう不可能だろう。トパーズ個人としては自身の過去とも重なるこの星を見捨てたくないが、戦略投資部辺りが過激な手段に出る口実にしてくるかもしれない。

 

「もう話なんてまどろっこしいわ。そこの女は同情を誘うような謳い文句を垂れてたけど、そっちの投資者とやらの言動で化けの皮は剥がれたわ!」喧嘩早いゼーレはもう戦闘態勢を取っている。

「ワシは南京町のブタマンと同じくらい喧嘩が好きやねんで。おいしいてハッピーハッピーヤンケ。」売られた喧嘩は買いますよとニタニタしているマネモブ。

 

「ゼーレ…」静観していたブローニャが動き彼女の体に触れ、ここで戦ったら和解の芽は途絶えるかもしれないとゼーレを諭す。医者が患者を落ち着かせる時に使う話し方によく似ている。

 

「けど俺理解出来ないんだよね。」誇りや帰属意識というのは命や金に換えられる程のものなのか?末端の社員は薄給と聞くがそれでもこの狭い星の中で細く経済を回すよりはずっとマシなのではないかとマネモブは考えている。温度は少しずつ上昇し裂界の影響も弱まれば居住区はどんどん増えるかもしれないが、カンパニーの力が無ければ一体どれだけの時間が掛かるか分からない。

 

『大守護者…』ここに来てスヴァローグは、カンパニーやマネモブの話にも利があると言い出した。

「アンタねぇ!!」「す、スヴァローグにも考えがあるんです。」クラーラは家族を庇う。

「スヴァローグ、機械である貴方には…」我々の心は理解し難いだろうとオレグは言う。同じ下層部同士でも地炎と機械集落は対立してきたので、この二者間にもやはり軋轢がありそうだ。

 

『私は感情で動く人間とは違う。』彼が重視するのはデータや論理だ。

「ナンカヤヤコシクナッテキタヤンケ?」トダーは仲間内でも意見が割れる様子を興味深そうに見ている。マネモブは対岸の火事を見ているようでいい気なもんである。

 

「大守護者として、カンパニーに隷属するくらいなら…」カカリアはやはり過激派である。星核の幻魔が完全に抜けてない様だ。

「大守護者様大丈夫?」カンパニー相手に辺境の星一つが勝てる道理がないのは勿論の事、少なくともデカブツの機械は感情論より現実論派、カンパニーと闘う前に内紛が起きかねない。

 

「スヴァローグよ、歴代大守護者を守るようにと作られた貴様が…」

『私はヤリーロ‐Ⅵを救う提案をしているに過ぎない。』心と理、人と機械が一触即発である。

 

「ああもう、なんでこうなるの…」この様子だと、マネモブの失言が無かろうがどの道分裂していたかもしれないとトパーズは途方に暮れる。

 

「ちょっと待ったあ!!」そんな地獄のような会議中に、新たな仲裁役がやって来た。

「私達はここの英雄なんだからね。」なのかと開拓者が自分達も間に挟めと言う。

 

「来てくれたのね!」「お姉さん!」

出来れば穏便に済ませたいブローニャとクラーラは二人の参上を心底喜んでいる。

「私達も事情は聴いてるよ。」双方の言い分が理解できるので、列車としてはお互いが納得出来る結論を出して欲しいと。

 

「ねぇ、一つ聞きたいんだけどさ。」マネモブがカンパニーの側に立っているのは利益の為だけだろうと。

「そうですけどなにか?」

「つまり、カンパニーより利を示せるとしたら、アンタはベロブルグに味方してくれるよね?」

金の為なら親の仇であっても武器を売るように金銭が目当てのこの男こそが和解案のカギだと開拓者は考えた。彼はトパーズ程ベロブルグの住民を社員に雇用する事に拘っていない筈、

 

「条件次第っスね。」「あっ、じゃあこんなのはどう?」

500億信用ポイントもの財産を所有しているならベロブルグの借金を肩代わり出来る筈、借金の相手をカンパニーからマネモブにすり替えやというのがなのかの発想だった。

 

「カンパニーの考えはシラナイけど…アンタは急いで借金返して欲しいって訳じゃないでしょう?」

「フム…」戦闘で圧倒的力の差を分からせ強引な取り立てをして心象を悪くする位ならこの星に恩を売っておけば同盟関係を発足し”愚弄”派閥の強化に繋がるか、顎に手を当てて考え込むマネモブは列車の案も魅力的だと考えた。

 

「いやちょっと待ってよ!」マネモブの考えが揺らぎ始めた事で焦るトパーズ。

今回の目的は債権の回収だけじゃないの!私達は人材確保も目論んでる。アンタが借金建て替えるだけだと、」星の再建事業を口実に社員を増強する、その計画が破綻すれば責任者の私が降格処分になると耳打ちする。

 

「ハハハ、参ったなァ。」列車とベロブルグ、カンパニーが”愚弄派閥”を取り合っている現状は心底面白い。マネモブの選択はー

 

「そこでだ。カンパニーの犬になるのを嫌がるベロブルグの代わりに…俺達”愚弄”派閥の人材を引き渡す事にした。」

ヒュンヒュン 猿空間から取り出した高そうなワインをグラスに注ぎながら仰ぐマネモブ。

人を増やしたいなら俺の故郷にいるニート、ゴア博士が量産しているトダーを幾らでも引き渡しますよという。

 

「俺の故郷も不況の時代でね、職にあぶれている連中は幾らでもいる。」それにトダーはノーモーションの音速パンチ、時速100㎞での移動と高度な自立思考も兼ね備えたスーパーAIロボットだ。宇宙の旅路で”オムニック”という無機生命体は数多く見てきたが、トダー程優れた性能を有する者は早々いないと自負している。

 

「………それは魅力的な提案だけど。」貴方はあくまで米軍所属の特殊工作員であって国の代表じゃないだろう、そんな勝手に決められるのかと問う。

「断言してやるよ、世界最強の”大統領”を殺せるのはこの俺だけ…」核スイッチを押せる程度の事で最強を自負している奴を御する事など造作もないと自信たっぷりだ。

 

「それに、その手の交渉をするのが君の仕事だろう。」お前の手腕なら説得は簡単だよ、どうという事はないと。彼女のビジネスの腕は信用に足るとマネモブは考えている。

 

「………マネモブとやら、」貴様に肩代わりさせれば返済に猶予を与えてくれるし、我々をそちら側に引き込む事もないのかと再度確認する大守護者である。

対してマネモブは、返済の為にこちらが提案する事業を犬のように働いて全うして貰うぞという事だけは念押しする。

 

「下層部も同じ意見だ。」オレグは我々がカンパニーに入らなくて済みそうだという事に心底安堵しているように見える。特に異論はないとスヴァローグは黙っているが、クラーラは大守護者との戦闘が勃発しないで済んだとホッと息を吐く。

 

「マネモブヤッタヤンケ。」最初はただの金儲けの一環だと想定していたが、このまま事が上手く運べば、ベロブルグとカンパニー双方の協力関係をゲットだぜと浮かれるマネモブ。これぞ三方良しというものだ。

 

「開拓者、三月さん。本当にありがとう…」「また助けて貰ったわね。」

ゼーレとブローニャは素直な感謝を列車の二人にぶつける。

「フーッ、仲直り出来たみたいで何よりだよ!」これも一種の”開拓”だよね?と笑い合う。

 

「そ、総監!!」そんな折角丸く収まったという状況が、駆け込んで来たカンパニー平社員の報告で崩れる。社員達の差し押さえに市民感情は臨界点を超え、暴動まで発展させたと。

 

「ああもう、手荒な真似はするなって指示しといたのに!!」マネモブと言い、人は思い通りに動いてはくれないものだ。

「全く、部下への教育が行き届いてないんじゃないの?」ゼーレの強烈な批判にトパーズは申し訳なさを見せる。

 

『騒動の鎮圧、これが三者の同盟関係の最初の足掛かりとなるだろう。』論理の観点からモノを言うスヴァローグだが、この意見には幾分か人間感情を踏まえていると見受けられた。

 

「それじゃあ行こうか!」列車のなのかがいの一番に元気よく走り出した。

明日は誰にも分からない、だが明日を信じるこの星の住民達にはきっと明るい未来が待っていだろう。

極寒の星であっても、また日は登る…




米国にて
「スペンサー、君の部下である”マネモブ”…少々増長してるのではないかな?」 スペンサー長官に嫌味をぶつけているのは米国現大統領、”不動産屋の感覚で政治をやる強引な男”と呼ばれている。

自分を差し置いてマネモブが勝手にカンパニーへ地球の人材を引き渡す口約束をしたと連絡が入った事について糾弾しているようだ。
しかし、ニヤリと底意地の悪い笑い方をするので、心の底からマネモブを忌々しく思っているというよりは、単にスペンサーへのハラスメントを楽しんでるようにも見える。

「先日の”悪魔王子”脱走の件といい…最近不始末が目立つな?」
「ハッ…」逆らえない長官は終始頭を下げるしかない。ステファニーに回復の兆候が見え始めたのはめでたいが、胃薬の量は減らせないかもしれない。

「まあ、マネモブ君の事は私も買っているけどね。」地球での地位に拘らず危険な宇宙を練り歩いて様々な恩恵を地球に持ち帰って来るマネモブはこの星のトップとしてはこれ以上なく都合がいい人材である。今回の件も米国に莫大な富を齎すだろうと内心では沸き立っていた。

だがスペンサー、最近の彼は不祥事を起こすだけで国益を齎すような事はしていない。彼は切ってもいい人材だと大統領は考えている。 どないする?まあスペンサーみたいなクズは酷い目に遭ってもええやろ。
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