新運命「愚弄」の行人「マネモブ」 作:異常猿愛者
”ファントム・ジョー”こと”金城剣史”ってスタレ宇宙だと”巡海レンジャー”やってるんスかね。
実態は兎も角本人は現代の義賊騙ってるしありそうでしょう。
「しかしお前が”黄泉”って女と知り合いだったとはな。」
「さっきも言っただろ。死に掛けた時に偶然会っただけで大した関係じゃないって。」
マネモブ、悪魔王子、そしてトダーの”愚弄”チームは”夢境ホテル”のとある一室を物色していた。
一見するとコソ泥にも見えるが、”アベンチュリン”から聞いた”ロビン”の殺害現場に来れば何か証拠が得られるかもと期待しただけである。
殺人事件が起きたからか、”ファミリー”がホテルを一時的に閉鎖したようで、人っ子一人見当たらない。
「ソンナ臨死体験デ人ト会ウナンテアルヤンケ?」
トダーはAIーっロボットなので悪魔王子やマネモブが死後の世界で他者と会ったというオカルト体験には懐疑的である。
「そうでもないぞ。この宇宙にはあるんだよ…」
”虚無”の運命…壮絶な死や喪失を目の当たりにした時、絶望と共に人を包み込むという厄介な運命。マネモブは悪魔王子が”黒き太陽”こと”IX”に呑み込まれかけているのではないかと懸念していた。
「あの金髪は黄泉を疑っていたが…」
黄泉は群星を駆け巡り悪党に悪因悪果を突き付けるのを生業としている”巡海レンジャー”を騙っている。しかしアベンチュリンが言うには、その実”虚無”の影響を強く受けた”使令級”の存在だという。
そんな彼女なら”ファミリー”の”調和”を貫通し”夢境”で人を殺す事も可能ではないかと。
「けど悪魔王子の話聞く限り黄泉っていい奴そうだよな。」
死の淵でIXを目撃した悪魔王子を追い返そうとした、そこは好感が持てる。そないな彼女が人を殺したりするだろうか?
「ソンナ事ヨリマネモブ、モウコレ以上コノ部屋漁ッテモ無駄ソウヤンケ?」
「うーん、事件現場に戻れば何か手掛かりが得られるのが推理小説の定石なのになぁ。」
ハウンド家は徹底的に事件現場を調べ尽くしていたようだ。犯人は相当用意周到だったのか、痕跡は一切残っていない。
マネモブ達は現場を後にし容疑者を虱潰しに当たる事にした。マサイの権能で嘘を見破れる上に”灘神影流”には下手な自白剤より相手に洗いざらい真実を喋らせたりする恐ろしい拷問技もある。彼等にかかれば真実を掴むなど容易な事だ。
………
「それにしても…気味の悪い場所だね。」「うん。」
時を同じくして、開拓者とホタルも夢境ホテルを練り歩いていた。
開拓者の友人(?)に化けていた正体不明の小柄な女”愚者”の使う催眠のような術式で昏睡させられた二人は、不幸にも夢境の暗部に潜む魔の手が届く懐、”魔合い”へと迷い込んでしまった。
(◇あの愚者の目的は一体ー?)
彼女はホタルとの逢引に現を抜かしていた開拓者に対して”表面上は煌びやかだがその裏側に満ちている欺瞞に気付いていない” ”葦毛ちゃんは能天気だね、世界情勢が大きく動こうとしているのに。”などと忠告めいた発言をしていた。単なる敵対者ではなく、自分達に気付きでも与えたかったのだろうか?考え込むが現状答えは出てこない。
「兎に角、ここは危険だよ。早く脱出した方がいいッ」
ここは通常の夢境と違い”憶質”が重苦しく、冷たい空気が肌を突き刺してくる。素人でも直感で命の危機を理解出来るだろう。
「それはそうだけど…出口は一体どこへー」
「あれっ開拓者じゃん。」
「「うああああああああ!(PC書き文字)」」
自分達以外には誰もいない世界だと思い込んでいた所へ急に声を掛けられたので思わずビックリしてしま二人。
「な、なんだマネモブか…脅かさないでよ。」
「オマエ等ドウシテココニ居ルヤンケ?」ここは封鎖されてるヤンケ危ないからさっさと出ていけヤンケと忠言するトダー。
「いやあ、私達にもサッパリ…」
謎の”仮面の愚者”によりこの夢境に堕とされたと開拓者は説明する。目論見は分からず、単なる悪戯かも分からないと。
「お、お兄さんたちはこんな所で何を?」
恐る恐る、といった感じで、そちらこそこんな場所にいる理由は何故だと三人の巨漢達に質問するホタル。
「”S”の代行…それ以上は話せない。」
マネモブは当主との契約を慮ってはぐらかすが、そんな説明では理解出来ないと目の前の若人二人は困惑している。
「機密保持って奴だよ。」
俺達は遊び惚けてたお前等と違って仕事をしているんだと皮肉を言い放つ悪魔王子だった。
「ムッ、つい数システム時間前まで男同士で楽しんでた癖に。」
開拓者の反論に悪魔王子は黙れとキレる。
「落チ着ケヤンケ。」ワシ等はここに来るまでの道程を知っているから、着いて来れば一緒に安全な場所まで出られるぞとトダーが諫めた。
「ありがとうございます…」ぎこちなくお礼を言うホタル。”愚弄”の三人衆はいかつい見た目をしているので、一歩下がった態度になるのはまあしょうがないだろう。
「フン、ホタルは大っぴらに気を付けた方がいいよ。」
開拓者がマネモブと出会う時は大抵トラブルの渦中に巻き込まれる。ジンクス通りにいけば今回も、
「ククク、酷い言われ様だな。まあ事実だからしょうがないけど。」
「!」マネモブが冗談を飛ばした矢先、悪魔王子の顔が険しくなる。格闘家の”気”を読む力でいち早く異様な妖気を纏ったモノが近付いていると気付いた。
「ほらやっぱり!!」「今回フラグ立てたのはお前だろうがよえーっ。」
開拓者とマネモブが小競り合いするがそんな場合ではないと呆れながらトダーは音速パンチを叩き込む為にファイティングポーズを取る。
『ホギャアアアアアアアアアアアアアアアア』
「な、なにあれ…」紫色の巨大な腕に大量の眼玉が付いた気色の悪い魑魅魍魎。けたたましい雄たけびを上げながらその掌が獲物を掴もうと襲い掛かって来る。
「ホタルは下がって。」「お前が今回の事件首謀者かい!?」
仲間を守る為にバットを持った開拓者と悪魔王子が勇敢にも二人で突っ込んでいく。
『ホアアアアアアアアアアアア』
バケモノの横凪が二人を襲うが寸前の所で回避した、
「フッ効いてな…」ガクッ
避けたかに見えた攻撃はちゃんと効果を及ぼしたらしく、二人は地面に膝をついた。
「あれは…」独断専行した二人に敵の能力を引き出させて目付けしようと様子を伺っていたマネモブが、敵の能力を見抜いた。
「俺の”陰陽互根”と同じタイプの術か。」
常人には観測できなが、バケモノの手には開拓者達の魂の一部が握られている。魂を削り取られるのは四肢を欠損するのと似たようなもので、これでは魂の器である肉体を万全に動かす事は出来ない。
(どうしよう…場合によっては今ここで)謎の端末に手を伸ばすホタル。次の攻撃で本格的に刈り取られそうな開拓者達を前に何か考えているようだが、
「残念やったのォ。」『ホギャ!?』
分析を完全に終えたマネモブがいち早く動く。魂を掌握する幽幻の術を使い敵が抜き取った魂を奪い返そうと綱引きをする。
「ぐう…なんて馬鹿力や。」マネモブも健闘しているが、中々敵から魂を引き剥がせない。
「トダー!!」「ハイデース。」
ボボボボボボボボボボボボパンパンパンパンパンパンパンパン
『ホギャアアアアアアアアア』
マネモブとの力比べに集中していたバケモノの意識外からトダーの”霞突き”を連続撃ちするコンビネーションが襲い掛かる。鉄拳による地獄の滅多撃ちはさぞ痛かろう。
「しゃあっ」トダーの攻撃により拘束が緩んだ魂を一気に引っ張るマネモブ。
本来あるべき場所へと帰って来た事で、開拓者と悪魔王子は肉体の調子を取り戻した。
『ホアアアアアア!!!』
狩りを邪魔された事に完全にキレたバケモノはトダーを標的にし魂を刈り取る爪で襲い掛かる。
キンッ『ホギャ!?』トダーは平然と爪を受け止めた。
「ンゴーッコイツ馬鹿ヤンケ。AIロボットニ魂ガアル訳ナイヤンケ。」
機械なのだから当たり前と言っては当たり前だが、トダーに魂をどうこうするタイプの術は一切通用しない。
「しゃあっ
バコンッ バットと悪魔王子の拳が敵にめり込む鈍い音がする。
『ホ、ホアッ…』
形勢不利を悟ったバケモノは目の前の獲物を諦めその場から逃走する。煙のように実体を離散させていった。
「逃げるんかいこの人殺しっ」
「この勝負…痛み分けだな。モンスターは逃げた。」
現場近くに現れた魂を狩るバケモノ、嫌でもロビンの死を連想させられる。怪しげな敵を取り逃した事をマネモブは悔しがるが、
「マア一連ノ戦闘ハ全テ撮影したヤンケ。」
当主に渡す為のデータには困らないだろうとトダーは抜かりない。
「ホタル大丈夫?」「う、うん…」
戦闘中はさながら騎士に守られるお姫様のようにただ後ろから開拓者の勇姿を見つめていた少女を正義のヒーローが労う。
「これ以上ここに居座るのは危険や。」
この様子だと、まだ殺人犯がうろついてるかもしれない。ファミリーの裏切り者があのモンスターを飼っているのか、それともあのモンスター自身が単独で起こした凶行なのかはまだ理解不能だが…後ろからあの爪で刺されようものなら、流石のマネモブにも対処は至難の業だ。有益な手掛かりが得られた以上、もうこの場からは引き下がり、当初の予定通り容疑者を調べていく方が安全だろう。
「ねぇマネモブ。」
やっぱり私達にもマネモブ達の目的を教えてくれよと開拓者は頼んだ。サンポに化けていた謎の女の言葉、悪魔王子が言っていた機密保持に守られた謎の仕事、襲ってきた謎の怪物…これらの事象全てが密接に絡み合っていると思えた。
つい先刻まではただ観光デートを愉しみ、この夢の地に渦巻く陰謀とは無関係だった。自分達をここに送り込んだ愚者は、呑気に遊び回っていた私達にもこの異常事態へ関与させたかったのかもしれない。開拓者はそう考えた。
「フン、お前等に教える訳ないだろう。」
依頼内容をバラすのは契約違反だ、さっきも言ったのに何度も説明させるなと悪魔王子は苛ついたように吐き捨てる。ファーストコンタクトが最悪だったからだろうか?開拓者とは仲の悪い部類に入る。
「知らなかった?お節介はナナシビトの家訓なんだよ。」
トラブルを見かけたら代価も求めずに人助けに動く。基本的に利で動いているマネモブとは対照的だ。
「喧嘩はやめよ?」悪魔王子とバチバチ火花を散らし合っている開拓者をホタルは宥める。
「もう滅茶苦茶だな…」二人の仲を取り持つなど”愚弄”を生業とする者には難しい。かく言う彼も悪魔王子同様契約は履行する考えなので、黙っているしかなかった。
「そこの寝ぼすけさんが知りたい事は…私から話させて貰うわ。」
「誰やねん?誰誰誰」険悪な雰囲気をぶち壊すかのように突如として現れた謎の女。タロットカードを手に持ち薄紫色のローブを身に纏っている。占い師のような格好だ。
「安心して、列車の”姫子”さんにそこのお二人さんを助けるよう頼まれただけなの。」
マネモブ達を見ながらその必要はなかったけどと自嘲する女。
「一先ず現実のホテルに帰還しましょう?」
そこで積もる話もあるだろうと占い師は一行を先導していく。
◇この女の目的はー?
「…という事だ。」
「つまり星穹列車もファミリーから事件捜査を頼まれていたということか?」
「怒らないでくださいね?守秘義務とか言ってた俺達が馬鹿みたいじゃないですか。」
「ヤンケ…」
開拓者とホタルが夢を漫遊してる間に列車の保護者である”ヴェルト”や”姫子”がファミリーからマネモブ達と同じ依頼を受けていたらしい。
その事で一旦招集をかけたが、開拓者が一向に夢から戻ってこず…
で、姫子さんに派遣されたのがこの私!悪名高い"ガーデン・オブ・リコレクション"の"メモキーパー" "
ちなみに列車に捜査協力を依頼をしたのは"偉大なる長兄" "週休なのか"ではなく"ハウンド家"のつもりで作者は書いてるらしいよ。